雨のコンパス
雨のコンパスで描いた唄が
手の甲に乗せた鎖のように
水溜りをそっと増やしていく
半径をどのくらいに広げても
踵に当たるメロディが好きだから
優しい言葉でなぞる世界に
いつの間に追いつけたのかな
雨のコンパスで回した傘を
唄の感情で曲げるられるほど
誰かに向けて渡したくなるよ
本当は濡れても良い人なんて
ひとりもいないという綺麗事さえ
鍵を握る前に受け止って欲しい
夢を抱く前に駆け抜けて欲しい
雨のコンパスで閉じた瞼が
誰かの化粧を落とす唄になる
それは素顔に戻るための時間
それは自分を抱くための毛布
雫がワイパーみたいに揺さぶる
心がまだ眠りたくないと言って
私は終わりの言葉を綴らない
雨のコンパス