なつぞらダイバー 第4週 なつよ、女優になれ
ようこそ、ムービーダイバーへ
ムービーダイバーは、お客様の希望する小説、映画、ドラマの作者、脚本家の傾向を分析し、AI化する事で、お客様の希望するストーリーの中に入り込む事ができる、
バーチャル体験型アトラクションです。
俺は、またムービーダイバーの店舗に入った。
「いらっしゃいませ。今日はナレーションの収録ですか?」
女性店員は、元気よく声をかけてきた。
「なつよ、十勝の夏は・・・・」
女性店員の表情が驚きに変わった、途端。
「違います!前も言ったと思うけど、よく似ていると言われますが、別人です!」
「そうですか・・・すみません。」
「いえ、謝るほどの事ではありません。気にしないでください。」
女性店員は釈然としていないようだが、仕事モードになった。
「お客様は、今日はどの物語へのダイブをご希望でしょう?」
「今週も、なつぞらできるでしょうか?」
「なつぞら、大好きなんですね。まるで関係者みたい。。。」
「そうなんですよ!毎日見てると、まるで自分が関係者になった気分です。」
俺と女性店員は不穏な笑顔で微笑みあった。
「では今日は何処にどの様な立場で参加されますか?」
「今週は演劇、よっちゃんは、大道具なので、劇には出てこないと思ってたんだけど、蛇の役で出てきたでしょ。
出番がなかったはずなのに、急に変わったのが気になって。。。誰かがなんか言ったんじゃないかな?とか、、、、なんか、いきさつが、あるんじゃないかなって。」
「難しいですね、、、誰が言ったかわからないから、、、、いっそのこと、よっちゃん、居村良子さんにダイブしてみますか。そうすれば、受ける側なので誰が来ても大丈夫です。どうでしょう?」
おれは、快諾して、カプセルに向かった。
七色の光に包まれて、十勝農業高校の上空に現れた。
やがて、演劇部の部室に近づいた。
なつや、雪次郎、天陽、番長、メガネの高木君や演劇部員たち、そしてターゲットのよっちゃんもいた。
そして、ゆっくりよっちゃんにダイブした。
「高木!俺が村長のお手本を見せてやる!ちょっと代われ!」
番長の声が響き渡った、誰もがビックリした顔をして番長を見た。
しぶしぶと、高木君は、番長と代わった。
番長は練習舞台に立つと見事に、村長のセリフを迫力満点に語りきった。
さすがだ!
村長らしいかどうかはともかく、どう見ても、その筋の人に見える。
この村長なら、下流の村を皆殺しにして帰ってきそうな迫力だ!
番長は全員を見渡して、言った。
「高木!村長の役を代わりたくなったろ。」
高木くんは、下を向いている。
「高木!決めにくいなら、俺が選択肢を用意してやる!
1.喜んで交代する
2.しぶしぶ交代する
どっちだ!?」
高木君の同級生の演劇部員が近付き小さな声で、囁いた。
「生きていれば来年があります。今は生きることを大切にしましょう。」
高木君は、しぶしぶ1.と答えた。
これを見てなつが驚いた。
「倉田先生に無断で役を変わってもいいの?」
「いいに決まっとろう!ワシらの部活じゃ!」
たしかに部活は学生の自治だ。
たしかに、その通りだ、なつは納得しているようだ。
「じゃ、私もペチカと白蛇の両方やるのは大変だから、白蛇役を代わって!」
演劇部員一同が驚いた。そっちに、振るのか。。。。
番長は大きな声でなつにいう。
「白蛇様を高木にやらすのは、いくらなんでも無理だ!男には絶対に無理!女がおらん以上、他に誰ができるんだ!」
カチン!
俺は頭にきた。
よっちゃんは女だ!
それを無視するようなシーンが多いことに、いらっとすることも何度もあった。
すると、よっちゃん(俺)の言葉で喋り始めた。
「おれだって、女だ!何でそんな無視する!芝居は美人しかしちゃなんねーのか!?」
美人しか芝居をしてはならないなんてルールはどこにも無い。
そう感じていた部員たちもたくさんいるようだ。
それを見ていた天陽が急に参加してきた。
「よっちゃんは、普通よりゃだいぶ綺麗だ。なつと比較されるから、厳しい目で見られるけど、絶対に綺麗だ!」
天陽の言葉に急に嬉しい気持ちになった。
これは、よっちゃんの感情が俺にまで流れ込んできたのだ。
「ちょっと待ってくれ!」
雪次郎がみんなの会話を止めた。
「台本では、ペチカと白蛇様は瓜二つとなっている。そして、この設定を無視すると、ペチカを眠らせる、ストーリーの本線が崩れてしまう。だから、ペチカと白蛇様は一人二役じゃ無いとダメなんだ。」
たしかにごもっともだ。
「でも、それじゃよっちゃんが可哀想だ!みんなの為にこんなに、頑張って衣装とか舞台を作ってくれたのに、出番がないなんて。。。。」
なつがよっちゃんを気遣って、言っている。
でも、そもそもなつが役が多すぎて大変って話じゃなかったっけ?
「それじゃ、人の姿に変わる前の白蛇はどうでしょう?」
いきなり高木君が言い出した。
「さすが高木、姿が変わるから、白蛇がペチカにそっくりってところに驚きが生まれる!ワシは賛成じゃ。」
番長まで同調した。
みんな俺(よっちゃん)が出演しゅることに肯定的だ。
「でも、よっちゃん白蛇の衣装、もう完成しているのに、サイズ直し大変じゃない?」
雪次郎が心配してくれている。
「大丈夫!あたしとなっちゃんサイズが同じだから、手直しいらないよ。」
一同凍りついている。
そして、俺は七色の光に包まれて、よっちゃんの体から離脱した。
気づくと、カプセルの中に戻っていた。
女性店員の声が聞こえる、
「お客様、いかがでしたか。」
「あぁ、良かったよ。よっちゃんは、いろいろ我慢して暮らしてるんだろね。でも、みんな気持ちをぶつけると返してくれる人たちで、良かった。」
今日は、前よりよっちゃんが好きになった。
なつぞらダイバー 第4週 なつよ、女優になれ