例えばこの世界が、誰かの夢だったとしたら
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「どうしてこんな世界になっちゃったのかなぁ?」
「人間より"ろぼっと"のほうが優遇されているなんて、可笑しな話だと思わない?」
"彼等"を作ったのは"私たち"なのにね。
「奴らは残酷だ」
「奴らは非道だ」
「奴らに感情は無い」
「我々のほうが賢いというのに」
子供たちは無邪気に笑いながら大人たちの真似をして、悪口を言う。
意味もわからず、そんなことばかり言っているから時々大人に叱られる。
「そんなことを言ってはいけない」
みんな大人が言っていることなのに。いつだってそう思っていた。
◇◆◇◆◇
柵を越えてはいけない。幼い頃から教えられたルールだ。
川を渡った先にあるその柵の向こう側には"ろぼっと"という種族が住んでいるらしい。
決して立ち入ってはいけない、そう強く大人たちに教えられてきた。
今日は僕の12歳の誕生日。この日に決めていたことがある。
それはこの柵の向こう側を"見る"こと。単なる屁理屈だが、柵を越えてはいけないと言われたが
向こう側を"見てはいけない"とは教えられていない。
両親はもちろん、弟や妹たちにも気付かれないようにベッドを抜け出し、
あらかじめ用意していたリュックを背負ってひっそりと外へ出た。
「ナイン」
「っ!」
うまく抜け出すことができて、安心しきっていたところに、
急に名前を呼ばれ思わず叫びそうになる。
ここで声を上げてしまってはこれまでの努力が水の泡になるところだ。
「なんだよ……クロウ」
「行くんだろ、あそこ」
「な、なんのことだよ!?」
例えばこの世界が、誰かの夢だったとしたら