観客
季節外れの雪が降った夜
月が積もった雪を照らす
まるでスポットライト
月明かりを独り占めして
君は踊っていたね
観客は僕一人きり
いつまでも見ていたよ
渡す花束もない
声を掛けることもできない
拍手さえもできないまま
舞台を降りた君の後ろ姿
ずっと見ているだけだった
僕の片想い
君は僕の存在さえ知らない
それでも…
観客でいられるだけで幸せ
雪が溶けると君も消えた
お伽話なんて信じないけど
雪の妖精にでも恋をした?
時は流れて桜が咲いた
短い美しさに終わりを告げる桜吹雪
雪と見間違う花びらの中に
君の姿を見たようで
今度逢えたら声を掛けよう
抱えきれないほどの桜の花束を持って
観客