お題 思い出
Twitterのお題にそって書いてます。
銀土ですが、
ヤってません。
甘〜〜い感じです。
定食屋,
土方スペシャルと宇治銀時丼を互いに交換し平らげた。げふっと息をついた後に出る一言。
「不味い」
声をはもらせそういう万事屋と俺は、
屈託のない笑みを浮かべゲラゲラと声を上げて笑った。
「なぁ…」
煙草に火をつけ口に咥えると,
少し切なげな声がした万事屋の声が耳に届き、横を見る。
万事屋は茶を見つめたままポツポツと話し出した。
「俺達の出会いって,傍から見れば最悪だったよなぁ」
最初出会い…
嗚呼、俺が万事屋をいきなり斬りつけたんだっけ。確か桂と一緒に居たから奴の仲間かと思ったからな。
「そうだな」
その後近藤さんがやられて、
俺も負かされたんだったな。
普段思い出に浸ることをしない俺は、
改めて考えるとなかなかこいつらにも助けて貰ってたんだなと気付かされる。
ー借りは持って帰ってくるな、
皆と飲める酒を持ってくりゃ良いー
…そうは言ってもな。
俺はこいつから色んなものを教わり過ぎたんだ。何もかも気に食わねぇこいつに。近藤さんや総悟とまた違った世界に住んでいるこいつに。
「…土方」
「あ?」
少し思い出に更けていた俺は、
つい乱暴な口調で返してしまうが、なんだかそれすらもこの空気に馴染んでいた。
ニコリと笑う万事屋から、
そんな様子が伺いとれる。
そして優し気な顔をし,俺の目をみて
こう言った。
「俺はね、良い思い出だと思ってるよ。土方との思い出,全部」
俺もだよ、
と素直に言えたらなんて楽か。
「御前ェにとってどうかは分かんねぇけどよ。つか,俺だけ覚えてるっつーのずりィわ。御前も全部良い思い出にしとけ」
なんて強引な男なんだろうか。
…言われなくても良い思い出だわ。
だから俺はこう言ってやったんだ。
「御前ェが俺との思い出を,良い思い出と言うならば…少なくともその思い出が色褪せねェ限り,俺の中でも良い思い出だ」
御前ェの記憶が色褪せた時は、
俺の中でも御前ェの記憶を色褪せてやる。
ま、
そんな事が出来たら苦労はしねぇんだがな。
そういうと万事屋は暫く何度も瞬きを繰り返し、ニタッと笑みを浮かべ満足そうに
「そっか」
と言った。
するとそれまで黙って俺達のやり取りを母親顔で見ていた定食屋のおばちゃんが、いきなり声を出した。
「銀さんに土方さん。ちょっと買い物して来なくちゃ行けなくなったの!店番頼んだわよ」
あっという間に去っていくおばちゃん。
きっと気を使ってくれたんだろう。
俺達の返事を聞く前に居なくなったおばちゃんに、俺と万事屋は再び声をあげ笑った。
「おばちゃん気ィ遣い過ぎだっての」
俺がそう言うと、
万事屋は改めて俺に向き直る体勢を取った。
俺もつい小さな緊張が走る。
テーブルについていた俺の手の上に万事屋は手を重ね,指を絡めこう言った。
「有難う、十四郎」
その手はとても温かくて、
俺の名を呼ぶ声はとても優しくて、
自分の鼻の奥がツンとするのに気付いた。
馬鹿か、
此処で泣いたら男として情けねェ。
「俺も……有難うな,銀時」
語尾が掠れた事に、
気付かせない様に。
俺が今目に浮かべてるものが、
バレないように。
俺は銀時にそっと抱きついた。
ポン、と頭に空き手が置かれる。
「ははっ,また一つ思い出が増えちまったな…」
銀時の声に,
涙ぐんだ声が含んでいた事は
俺の秘密である。
-fin-
お題 思い出