ふたりの絆⑯
お墓参りとアカリの気持ち(後半)
ヒカルは、自分の鞄から小さな箱を取り出した。
「はい、これアカリに。」
そう言ってアカリに手渡した。
「何これ、開けていいの?」
アカリは、驚いた顔で言った。
箱を開いたアカリは、その中身をみて満面の笑みを見せてくれた。
「ありがとうヒカル、大切に使うね。」
箱の中身は、ヒカルがアカリの為に探してきたカップだった。
ヒカルは、カップを手にしたアカリに伝えたのである。
「このカップを僕の分身だと思って側においてください。」
「それと・・・たまには、僕のことを思い出してメールしてね。」
ヒカルのお願いであった。
そして、アカリは知らないうちに眠っていた。
寝相の悪いアカリにそっと布団をかけ、ヒカルは思った。
(本当に僕のことを、信頼しているんだな。)
アカリの寝相を見ながら眠りについた。
翌朝、目が覚めたヒカルが目にしたのは、化粧をし終わったいつものアカリの姿であった。
朝食をすませ、チェックアウトの準備をしていた2人。
「アカリ、忘れ物は無いかい?」
「うん、無いよ。」
ホテルのフロントの方に丁寧に御礼を言って出た。
この日は、近くにある恐竜博物館の見学に行った2人だ。
前日に立ち寄ったのだが、混んでいて諦めたのである。
ヒカルもアカリも、本音のところではどこでもいいのだ。
ただ2人で居る時間があればそれでいい。
アカリは夕方には三重県で大事な面接があるとの事。
博物館を出たヒカルは、時間の余裕を見て三重県に向かった。
三重に予定よりも早く着いた2人は、大型ショッピングセンターに立ち寄ることにした。
「群馬でのバイト頑張れよ!体には気をつけて、ちゃんと食べるようにな。」
ヒカルは、アカリを応援した。
「ありがとう、ひかる。このカップ、群馬に持っていくね。」
そういうとヒカルが渡したカップを手に持つアカリ。
ヒカルは、正直淋しくなった。
「アカリ、たまにはメールくれよな。」
アカリはヒカルに言った。
「当たり前でしょ。私とヒカルの絆は深いんだから。」
そう話すアカリを、ますます好きになるヒカルだった。
「ヒカル、一緒にプリクラ撮ろうよ。」
2人の記念写真が出来上がり、そこには幸せそうな顔をしたヒカルがいた。
いよいよ別れの時間が来た。
「元気でな、アカリ。」
「ヒカルも、元気でね。」
お互いの思いは同じであろう。
どちらからともなく、お互いの右手を握り合っていたヒカルとアカリだった。
「また会おうな。」
その言葉を残してヒカルはアカリと別れた。
次の日の事だ。
ヒカルが会社で仕事をしているとメールが入ってきた。
「朝から誰だ?」
メールの相手はアカリであった。
「ヒカル、ホテルに白の短パン忘れたみたい。」
確かに2日目は、スカート姿のアカリであった。
「一度ホテルに確認してみるから。」
慌てるアカリをなだめるヒカルである。
ヒカルは、早々ホテルに電話を入れた。
「すいませんが、白の短パンなかったでしょうか?」
「はい、こちらで預かっております。」
「住所を教えてくだされば、宅配便で送らせていただきます。」
ホテルのフロント係の返事であった。
ヒカルは直ぐにアカリに電話をいれた。
「アカリ、あったから安心していいよ。宅配便でそちらに送るからね。」
「ありがとう、ヒカルに迷惑掛けてごめんなさい。」
後日、アカリからメールが入っていた。
「無事に届いたよ。ありがとう。」
→「ヒカルの誕生日と喧嘩」をお楽しみに。 1/7更新
ホタル:アカリは案外おっちょこちょいですね。
ヒカルはそんなアカリでも大事にしている姿が
ここの文章を読んでわかりました。
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ふたりの絆⑯