![誰も知らない物語](/img/users/c0/w52565-60f02a.png)
誰も知らない物語
これは、誰も知らない物語。
たった一人の少女が生きていく、ただ一つの物語。
そして、決して終わることのない、物語。
Episode 1 The Girl
![Episode 1 The Girl](/img/users/1e/c264321-616fa4.png)
「ここはどこ……?」
私はつぶやいた。
そこは、一面草花で覆われた大地だった。
「私は、誰……?」
自らの手を見る。白くて、すべすべな肌。
見上げると、怖くなるほどの青い空。
私は立ち上がり、自分の体を見る。
普通の人間の体だ。
「女の子の、体、だよね……?」
白いワンピースに緑のひもを腰に巻いていた。
ふわりと揺れる髪に触れてみる。
「銀色だ……」
しかも、毛先に行くほど、赤色が混ざっている。
「私は、なんなんだろう」
ぎゅっとこぶしを握り、歩き始める。
どうしていいかわからぬまま、あたりを見渡しながら歩く。
「だれか……だれかいませんか?」
少しだけ大きな声を出すが、それは地平線の彼方まで続く草原に、ただ響くだけ。
「どうすればいいんだろう」
私は立ち止まって、頭の中にある情報を探った。
「私は誰なんだろう。ここはどこなんだろう」
どうしても、疑問しか浮かばなかった。
『ああ、目覚めたのですね』
そういう女性的な声が聞こえた。
「誰? どこにいるの?」
『わたしは、ずっとあなたのそばにいますよ』
「ねぇ、私は誰なの?」
『それは、あなたが決めることです。何でもなれます』
「なんにでも……?」
『わたしには、あなたを直接的に支えることはできないのです。しかし、導くことはできます。
進みなさい。さすれば、道は開けることでしょう』
「あなたの名前は?」
『わたしは……ソラ、とでも名乗っておきましょうか』
「ソラ? ここはどこなの?」
『ここは、どこでもありません。あなたが決めるべき場所です』
「私が、すべて決めなければならないの?」
『ええ。ここは、そういう場所ですから』
「歩けば、私がなんなのか、ここはどこなのか、わかるのね」
『ええ』
ソラの声をきいて、彼女は歩き出した。
誰も知らない物語