幕末という、この時代に__
※事実をもとにしたフィクションです。
日常とは。
私、神崎 茜にとっての日常とは。
いつもの時間帯に起き、
小学生の頃から続けてきた朝の準備を流れ作業のごとくこなし、
学校での授業を適当に流し、
休息時間には友達数人と笑い合い、
学校が終わるとすぐ家に帰り、
ぐうたらと過ごして日付の変わる時にベットに入る。
__というものであって、決して朝起きると見慣れない天井がーーというものではない。
それにしても…
「どこだ、ここ……」
ぼそり、と呟いた言葉は吸い込まれるようにしてなくなり、私はいいようのない孤独感に襲われた。
辺りを見回すと私の寝ていた白い布団以外には薬だなのようなモノがあるだけ。
ほんと、それだけ。
私の正面にはスライドするタイプのドアがあるけれど、動こうにも動けない。
何故なら、
_足がしびれたから。
「あーあ、この足じゃ走ってもそんなスピードでないしなー。まずここどこだー。私は茜だー。」
気を紛らわすために頭に浮かんだことを声に出してみる。
__うん、虚しい。
とてもとても虚しくなったという結果を得たところで、目の前の扉が開かれた。
そして入ってくる、和服のオジサン。
「おお、起きたか起きたか。体は大丈夫か?」
第一印象、和服。
第二印象、気の良さそうな人。
優しいコスプレイヤーか。
私の中でおじさんの位置づけが決まった。
__すぐに変わることにもなるのだが。
「あの、ここってどこですか?私、倒れてたんですか?」
まだまだ聞きたいこともあるけれど、ここは二つに絞ろう。うん。
「?ここは七条町の呉服屋、彩や。お前さんはここの近くの神社に倒れとったんや。」
シ、シチジョウチョウ?
待って待って、私が住んでるのは七条町じゃないって!
しかもこの時代に呉服屋…どこまでキャラ突き通すんだよ、おじさん。
嘘だ、と信じたいがおじさんの優しそうなほほ笑みからは真を語っているように見える。
「あのあの!それじゃあ今って西暦何年ですか?」
するとおじさんはきょとん、とした顔になった。
「セイレキ?そのー、セイレキとかいうんは知らんが、今は文久三年だが?」
え、ええ、え
「えぇぇぇぇぇえええっ!?」
神崎 茜、17歳。
どうやらタイムスリップしてしまったみたいです……
幕末という、この時代に__