トマト
トマトは誰かを想起させる。一瞬そう感じた。
赤くて丸い…
君はトマトのようだ……と、トマトを見て思った。今。
こんなことを言ったらきっと笑われる。いや、訝しんで眉をひそめるかもしれない。その形のいい眉が、とても好きなんだけど。
……これはまた別の話で。
トマトというものは甘いのか、酸っぱいのか、よく分からない。
果実のように甘いトマトもある。けどやっぱりトマトといえば酸っぱい気がする。
君はもしかしたらとても甘いのかもしれない。と、思うことが最近多々ある。けれども君の特性というのはそのクールさにあり、自分にも他人にも少し厳しめであるところにあると思う。
これは勝手な印象で、決めつけるわけではない。
決めつけ、ではなけれど。
君に相対したときの緊張感や一瞬感じる怖さみたいなものは、みんなが感じているんじゃないだろうかな、と心配もしている。決して、怖い人ではないから。
むしろ、その緊張感の中に感じる君の孤独さや、自分に厳しすぎてちょっと辛そうかもしれない、と思えるところが好きになったきっかけでもあり。
ただこれを、誰もが知る必要性はない。
一人で、感じていればいいものだ、と思っている。
本当は君が思いやりでできた人なんだということとか、心配するあまりにきつい物言いをよくしてしまっているところだとか、あまりに不器用で、言いたいことも言えなくなるところがあるとか。告げたら君はきっと赤くなる。
ああ、だからトマト。
今、納得がいったような気がした。
君のことが好きすぎて、ちょっと自分でもクレイジーだと思う。クレイジーという言葉は、こんなときにぴったりだな。
たぶんトマトじゃなくてもリンゴでも。むしろ空に浮かぶ雲さえ見ても、君のことを考えるのだろうけど。
そしてそれを迂闊にも君に言ってしまったならば、君は大いに照れながら不機嫌になるんだろう。
目に浮かぶ。
君はトマトのようだ。
甘くて、とても酸っぱい。
君はそれで、リンゴでもあるし羽ばたく鳥でもあるし、あの澄み切った青い空に浮かぶ雲でもある。
君を思うんだ。
ただ、何を見てもね。
それは確実な真実。
トマト
やはり甘くて酸っぱい。
トマトは誰かなんだ。