U0物語
契約
西村 結羽の高校生活が終わりを告げようとしている。
大学受験も無事終わり、残りの高校生活をバイトと遊びに費やしていた。
そんなある朝、一枚のチラシが目に止まった
「独り暮らしか……」
できれば大学の近くで格安なのは……ん?シンプルな文面に可愛らしい女の子の絵が書かれたチラシ
[独りが嫌な寂しがり屋さん!!今なら一人付いてきます]
いわゆる訳あり物件ってやつか、ここまで開き直ってるのは珍しいな……立地と家賃はかなり良いし、見るだけなら大丈夫だろ
だいたい幽霊なんているのか?まぁいるかもしれないけど見えない俺には関係ない話だ
翌朝、チラシの電話番号に連絡して現地集合の約束をした
昼過ぎ わりと綺麗な二階建てのアパートで合流
管理人の女性と一緒に室内を見ていた、思った通り何も変わった事なんか起きない
「西村様は本当に”ここ”で良いのですか?あの広告を見て来られたんですよね?」
20代前半ぐらいの優しいお姉さん系管理人さんは心配そうに言ってくれる
「いやぁ大丈夫ですよ、幽霊とか信じて無いですしこんなに良い物件は他に無いです」
「皆さん最初はそう言うんですよ、まぁ危険を感じたら管理人室まで来て下さいね」
管理人室はこの部屋の真下ですと笑顔で言い鍵をくれた
「契約するかはまた明日聞きますね、では私はこれでっ」
逃げるように部屋から出ていった
ひとまず一晩体験してから決めて欲しいって事らしい、まぁ布団も無いし友達呼んで飲み明かすか
数人に連絡してみたがなんの返信もない……っと電話?
「どしたん?遊びにこんのか?」
「ユウ……お前そこはヤバイよ、俺ら昔そこらで遊んどったけど絶対近づいたらいけんって言われとった場所がそのアパートなんよ、悪いこと言わんから早く出ろよ」
心配そうに言って電話を切った
どいつも心配性だ、母さんには普通の格安物件って説明しないといけないな
夜
近くのコンビニで夕食を買い独り寂しく食べていた
スリスリ
ハンバーグがなかなか
サワサワ
唐揚げ串も旨いよな
ウンウン
…………いやいやないない
何も聞こえない、そうだテレビでも見て時間潰すか!
ちょっと古い型だけど大丈夫そうだ、ん?ホラー映画?
…………タイミングが悪いな、いやいや悪くないよ?タイミング?何のタイミング!?
そして長いようで短い夜が始まる
映画も中盤になり凝った演出を繰り広げていた、そして俺も悪戦苦闘している
何故かチャンネルが勝手に変わってしまう、古いからコントローラーが壊れているのか……俺は諦めて寝転がる
「明日は引っ越しの手続きして……母さん達に連絡……あぁ、でも旅行中だったなぁ……ぁ……いいか……」
ヒンヤリした畳が気持ちよくて眠気が襲ってくる
深夜
何処からか微かに鼻歌が聞こえる、悲しい歌だなと思った
これは夢だろうか……鼻歌は部屋の中、しかもすぐ近くから聞こえる
「……ふぅ~ん……っと静かにしないと起こしてしまうわね♪毎回毎回驚いて逃げてくから今回は慎重にやらないといけないわ……でも唐揚げ串美味しそうだったなぁ……最近食べてないからなぁ……って幽霊だから食えないだろって突っ込んでくれる人も無しっと……それにしても寝るなら電気消しなさいよね……それに毛布ぐらいかけないと風邪引いちゃうじゃない……これでよしっと」
めちゃくちゃ喋っとる!?これあれだろ!?ラジオとか勝手についたりテレビついてたりだろ!?でも毛布!?
いやいや無いから!!あれだよ?俺が起き上がって幽霊何ていないの確認したらいいだけだろ!?
やるか?
でも残念ながら金縛り……にはなってないか、やるか?
1.2.3でやるか?
……1……2…………3
勢いよく起き上がってそれと目が合った
「あっ……」
「えっ……?」
お互いに目が離せない、いや……何て言ったらいいんだろうか?確かに透けてて幽霊っぽいんだけど
我ながら頭がちょっと変なのか……俺が幽霊を初めて見た第一声は
「綺麗だ……」
の一言だった
そして意識を失った
続く
U0物語