遺言
「小説家になろう」時代。
ともすれば溢れ出しそうになる腹部を抱えて、
必死に自分で自分の喉をきつくきつく。
ずくずくと耐えず苛むその激痛よりも何よりも、
今こうして喉から溢れ出しそうな想いの奔流が何よりも一番苦しかった。
赤く銅く朱く紅く染まっていく手の平よりも、
今こうして真っ白に洗練されていく視界と思考が一番怖い。
洗練されたあとに残るのは、
一切の無駄を排した真実だけだ。
偽りも虚像も全て全て取っ払われて、
そうして私のココロを丸裸にする。
この瞬間を今まで恐れていた。
こうして全て吐き出したくなるようなこの一念を恐れていた。
痛くてもいい、何を捥がれても捻じ切られても良いから。
「お願い……」
こんな風にみっともなく額をアスファルトに擦り付けることくらい厭わないから。
そうしてそのまま、
踏まれても蹴られても、
意地汚く這いつくばって見せるから。
「早く、殺して……」
あの人が来る前に。
私があの人に、
『愛してる』を伝えたくなる前に。
死んでも、
あの人に、
『愛してる』だけは言いたくないから。
遺言