図書館の奇跡
これは、本が大好きで病気を持っている優季。
図書館で運命を変えるときが来る。
図書委員会の高橋正哉君には秘密があって・・・。
第一話:教室の中

桜井優李小学5年生。
本が大好きで、特に取り柄もない普通の小5。
「ねぇ、どーせ今日もまた図書館行くんでしょ。」
この子は吉木瑠樹、いじめっこ。
どんな子にもかまわず、ちょっかいを出してくる。
「じめじめしてるしさ、臭いよ?正直。」
周りの子は見て見ぬふりをして、黒板を消したり、話しを続ける。
「・・・そう・・・ですか。」
その一言を言った瞬間、私は本を持って教室から走り出した。
今は休み時間、廊下はがやがやしていた。
なのに、私はまるで別の次元にいるみたいに、何も聞こえなかった。
階段を滑るように降りる。
下を向いたまま、図書館に向かう。
「こらっ!桜井、廊下は歩け―!」
先生に注意されて、少しスピードを下げる。
図書館は冷房がきいているため、ドアは閉められている。
私はいつも通り、ドアを開けた。
ふわっと冷たい風が私の顔を包む。
さっき少し走ったため、汗をかいた。
その汗がエアコンの冷房の風で冷やされる。
とてもいい気持ちだった。
私の借りていた、「虹の光」と「猫の独り言」をカウンターに出す。
「あ・・・あの!これお願いします。」
カウンターの向こうに、図書委員会の高橋正哉君が居眠りしていた。
「ん?あぁ、返すんだよね?」
「は・・・はい。」
「はい、確かに受け取ったよ・・・っと。」
そう言い残してまたイスにぐーっ体重をかけて、気持ち良さそうに目を瞑った。
「ほ・・・本借りにきますからね?」
少し小声で呟いてみた。
そうすると、背中を向けていた正哉君がOKの合図を手でした。
私の通う雛林小学校は図書館が一番綺麗。
窓はステンドグラスになってて、日当たりがいいから綺麗にキラキラ輝いて床に映る。
そしてまた、本棚で面白そうな本を探す。
「・・・あ、これ面白そう。」
手にとった本は「朝日の迷路」。
ある、有名な作家さんが書いている小説。
「すみません、貸出してください。」
今度は完全に眠ってる状態だった。
「えぇ・・・そろそろ休み時間終わっちゃうよぉ・・・。」
今度はゆさゆさと肩を揺らしてみる。
「んぅ・・・。」
とぼけた声をだして、目を開けた。
「え?あ、さっきの・・・、うん貸出ね。」
「あ、はい。」
あの本を手にとってにっこり微笑んだ。
「俺もこの本、好きなんだよね。」
正哉君は5-2で隣のクラス。
初めて正哉君の笑顔を見た。
「あ、はぁ・・・。」
にこにこしたままの顔で貸出のハンコを押してくれた。
「あ・・・!それじゃあ。」
そろそろ休み時間が終わってしまうので今度は本気で教室に向かう。
「・・・!ケホッゲホッ・・・カハッ」
急に走ったり階段を駆け上がると、倒れてしまう。
体が生まれつき弱くて、心臓も弱いのだ。
「・・・きもちわる・・い・・・よ。」
階段の手すりにしがみつきながら一段一段あがる。
でも、もう限界かもしれない。
吐き気が増して、視界がぐるぐる回って目眩がする。
「ぁ・・・う」
へたりと階段に尻をついた。
そのまま視界は狭くなって、意識を手放した。
図書館の奇跡