供物
罰の矢印が常に自己に向いているきみは
まるで傷つけば傷つくほど幸福に
救済に近づくとでも言わんばかりに
傷つくことを欲している
これ以上きみに傷ついてほしくないという僕の望みは
幸福も救済も手にしてほしくないという風に換言されてしまう
そんなことを続けていたら死んでしまうよ
と諭しても、きみは聞く耳を持たない
傷つくことが神への供物ででもあるかのように
きみは傷つくことに、傷を抉り返すことに執心している
きみの懺悔はとうに終わっているはずなのに
きみは嬉々としてそれを延長しようとする
僕にできることはないのだろうか、ないんだろうな
傷つくことが生き甲斐になってしまった人間を救う手立てはないんだろうな
いい加減正気に戻れよ、という僕の望みは
聞き届けられることもなく、掻き消えてしまう
傷を増やすことで己を保っていると錯覚しているきみを見ていると
昔の自分を思い出すよ
供物