雑詠(四月)

花冷えの部屋に籠りて夢をみる




春の店 にほひ辿ればカサブランカ

ラーメン店に入ってカウンターに座った
一番手前の端の席だった
ふっと臭い、いや香りがしたので
見上げると、沢山の花が飾ってあって、その中に大きな百合の花があった
カサブランカだった




春の雨 心はガラスのごとくなり

コンビニのすぐ手前に車を停めて雨の中を歩いていった
冷たい風の中、薄い水溜まりに雨が落ちて、雨の輪が幾つも起きては消えてゆく
その何気ない足元の小さな光景が新鮮で確かなものに感じられて、思わず「春の雨だ・・」と心の中で呟いた

(悟性が感性に対して概念の附与を命じている間の時間は静寂である
そこには私という存在はなく、ただ事実という対象のみが存在する
心に映じているものは、それらの感性の知る働きに等しい対象の姿である
感性は永遠という言葉を使わない
ただ永遠をそのままに伝えようとしている
悟性という小さな問いかけに差し向けられた使者のごとく、掴み得るものを惜しげもなく目の前に差し出しては語りかける
知る限りの事実をもって、あなたは永遠の中にいるのだと語りかける)

コンビニで食べ物を買って家に帰った
猫が一匹待っている
私は不幸だろうか
この頃はあまりそういう事を考えなくなった
自分を客観視しても、美しい答えは返ってこない
それが理由かもしれない

雑詠(四月)

雑詠(四月)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2025-04-01

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