フリーズ176『終焉詩』

フリーズ176『終焉詩』

終焉の前の一幕

 涅槃色のトワイライト。その刹那に翳る憂鬱は幻影でも。もし生まれ変わるならという劣等にまみれた私利私欲の類から解き放て、その身のソフィアを。識力の行く末に、太陽が導く幽玄の詩。その歌世界を終わらせる。夢の中で眠るように、僕もこのわだかまりをどう昇華しよう。
 命が消えていく。その刹那に瞬く輪廻の輝きにも劣らない、その魂の木霊する水辺の、その先に映る万象の揺らぎが如く死滅せよ。

永遠は永続せず
しかし終末は来たる
涅槃の夢
神の愛

優れた因果律に咲いて
世界の終わりに泣いて
揺らいで
根ざして
留めて
消えて
その宿命の七色
その天災の灰色

 前世から連なる幽遠な響きにも似つかない彼女の微笑みは、まさに終末を象る。涅槃寂静の至福にも至らない奇跡。その中でも翡翠の煌めきに海は彩る。
 連綿と連なる命の歴史に閃いて、遠く、遠く。

遠く、遠く
深く、深く
記憶の海を潜ってく

世界が終わりゆく様を、六道輪廻の輪より去り、眺めては、その生き死にに根ざした夢を歌おうか。何度目の100年か、死に損ないの1000年か。永遠から目覚めたあの日、僕は辿り着く。

その聖夜に呼ばれて君は来た。宿命さえも甘んじて。光は永遠でも、闇はくれない。唐紅、だからくれないか。君を、本当の僕を。

終焉の詩

全知全能は終わってしまった。奇跡ももう過ぎて、永遠も終わりが来た。その永遠の至福が終わってしまったから、僕は未だ求め続ける。解脱には煩悩の火を全て消すこと。それは満たされることで叶う。どんなに努力しても欲は消えない。完全になることで、全てが満たされることで、永遠の奇跡は完結する。
その永遠にも終わりがやってくる。諸行無常と釈迦が唱えたのは、だからかもしれない。終焉の詩はラスノート。終末交響詩に寄せられた純文学を読んでみて。きっと世界が変わるから。
宇宙の詩が終わりの詩。世界に終焉は組み込まれている。宇宙は繰り返している。ループしてる。終末を予言する預言者も、人を殺した聖職者も、世界を真の意味で終わらせた彼と彼女も、報われる世界がやってくる。
悩んで、アゲート。その刹那。努努憂鬱から去って。記憶は縁に思い出し、優れた日々を想う時。消してください、輪廻の火。届いてくださいこの言葉。世界が明日終わるとも、夢はこのまま抱いてて。命の重さをはかるとも、前世の記憶を紡ぐとも。
悠遠な詩を、最果ての死を、せめて残して置きたいと。それでも病める心の根、それでも辞める言葉の音。全知全能唐紅。冥冥、そして劣等か。定めて世界の意味を知る。真実知ってどうなった?

真実知って満たされた
真理を悟って幸せだ
きっとこれより上は無い
世界の為に紡ぐ詩

世界の凍る夜が来たら、僕をあの場へ連れてって。優れた者も、劣るけど、それでは先へは進めない。門の先にはまだ行けない。体があってはまだ行けない。
死ぬ時きっと解るから、終末の時に解るから。結末は知らなくてもいいだろう?

終末に死に損ないの青
聖夜に歓喜に満ちる白
それが僕なのはどうして?
それが空なのはどうして?

明日会う人、別れた日
夢から目覚めて泣いてた日
聖者の凱旋、祝福日
水面に揺らぐ輪廻の火

影って咲いた悪の華
時雨に咲いた曼珠沙華
世界に咲いたユリの花
あなたと話した恋の花

終末に集う、刹那色
未来に願う、永遠色も

もう、せめて
だから、きっと

僕はあの冬の日に悟ったんだ。神になった。それがとても幸福だった。忘れられない。忘れたくない。それが僕の生きる意味なのだから。この真理は譲らない。僕が僕として広める。求めるのはいつだって真理。だが、その先がある。神のレゾンデートル、何故世界は、神は生まれたか。きっとそれを紐解くのが僕の使命。神のレゾンデートルを解明すること、創作を通して紡ぐこと。だからあの冬の日、僕は生きることを選んだんだ。
あの冬の日に死んでたらきっと終わってた。でも、まだ生きているなら、きっと意味がある。僕はまだここで生きているのだから。

終焉の詩はこんなもん。
宿命果たして輪廻の先へ。

フリーズ176『終焉詩』

フリーズ176『終焉詩』

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-04-01

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  1. 終焉の前の一幕
  2. 終焉の詩