zoku勇者 ドラクエⅨ編 51

スクールカルテット・4

「……ま、魔法薬……?」

「そ、魔化学部の連中から少し分けて貰ったんだ、ラリホー薬だよ……、
こいつで後ろから抑え付けて奴を眠らせちまえば……」


ジャミル、モザイオ、青髪……、の、3人は薄暗い学院内を
屋上目指し歩いていた。モザイオはポケットに隠しておいた
ガーゼをいじりながら苛々していた。何とかジャミルを
後ろから羽交い絞めにして襲って眠らせる作戦なのだが、何せ
ジャミルは中々隙を見せない……。

「……モザイオ……、あのさ……」

「おい、お前、何してんだよっ……!」

「お前ら、どうかしたんか?まさか、怖くなったんじゃね?プッ……」

「!う、うっせえなっ!んな事あるかよっ!おい、ジャミ公、先に
行ってろよ!すぐ行くからよ!くれぐれも、俺らが行くまで
天使像には触るんじゃねえぞ!」

「へーへー、んじゃお待ちしてますよーっ!」

ジャミルはスタコラ先にすっ飛んで行った。モザイオはさっきから
青い顔をし始めた青髪を慌てて脅しに掛かった。

「テメエ、さっきから何なんだよ、そのツラ!……おい、まさか
マジで本当に怖じ気づいたんじゃねえだろうな……」

「だ、だってさ、もしも本当にバレたら……、俺達今度こそ
問答無用で退学だろ……、それに……、場合によっちゃ退学
ぐらいじゃ済まされねえ……あうっ!?」

「テメエも役に立たねえあのデブと同じか?……いいさ、帰ってもよ、
但し無傷で俺が素直に帰すと思うんじゃねえぞ……」

モザイオは青髪の襟首を掴み、拳を振り上げ脅す仕草をする。それを見た
青髪は慌てた。

「……わ、分かったよ、もう弱音吐かねえ……、ううっ!」

「それでいいんだ、それで……、素直に俺の言う事聞きゃいいのさ……」

モザイオは掴んでいた青髪の襟首から手を放すと彼を乱暴に
突き飛ばした。そして、冷静になり、もう一度ジャミルを襲う
作戦を練るのだった。

「何だ、簡単じゃねえか、要するに……、このまんま隠れた
フリして……、奴が油断してるウチにさっさと襲っちまえば
いいだけの事さ……」

青髪を連れ、屋上へと再び足を進める。だが、モザイオ自身も
急に気持ちが落ち着かなくなって来ていた。……先程の青髪の
態度の豹変……、冷たく突き放し、メンバーから外してしまった
パッツンデブ。段々と彼に孤独感が出て来たのである。

「糞っ!此処まで引き下がられるかってんだよっ!冗談じゃねえ!
……大体、俺がこんな下らねえ事しなきゃなんねえのも、全部
あいつらが悪ィんだっ!!」

もう余計な事は考えず、このまま猪突猛進で行こうと決めた。
モザイオ達が漸く屋上に辿り着いた頃。こっそり様子を
覗おうとしていたモザイオは仰天……。何と。ジャミルは
守護天使像の側で涎を垂らし、だらしなく眠ってしまって
いたのである。

「……モザイオ、こ、こいつ……」

「やっぱバカだ、相当のバカだぜ……」

だが、呆れている暇はあらず、薬品で眠らせる前に既にジャミルが
眠ってしまっていたとは好都合で、モザイオは冷ややかな笑みを
浮かべた。

「よし、このまま屋上から叩き落とすぞ、おい、手を貸せよ、
背中に負ぶうからよ……」

「わ、分かった……」

青髪は恐る恐る、ジャミルの身体に手を掛けた。その途端……。

「……俺を舐めるなっ!」

「!?」

「ああっ!?ひゃ、ひゃあーーっ!!」

眠っていたと思われたジャミルは突然目を覚ますと同時に、自分の
身体に触ろうとした青髪の腕を掴むと同時に思い切り一本背負いで
叩きのめし、蹴りを入れ、くるくるっと爆転する。

「て、てめえ……、寝たふりなんかしやがってっ!騙しやがったのかっ!?」

「フン、最初から分かってたさ、お前の考える事なんざよ、
甘かったな!ま、お前らも本気になってたみたいだから、
少し遊んでやろうかと思ってさ……、面白かったか?」

「……ううう~、や、やっぱり……、も、もう……嫌だ……」

「チッ!だらしねえっ!テメエも下っ端解雇だっ!……こうなったらっ!!」

モザイオは倒れて唸っている青髪を尻目に、自身も戦闘訓練用の
武器で所持している、隠し持っていた鋼の剣を取り出す。

「もうよせよ、……お前さあ、お前の事、心配してくれてるダチの
気持ちも考えろよ……」

「うるせえっ!テメエだけは、何が何でも許さねえ、言った以上は
テメエを何が何でも泣かせてやるよっ!俺のプライドに掛けてなっ!
それに何がダチだよっ!俺にはそんなモン最初からいねえんだよっ!!」

そのプライドを他の事に向けんかいと、ジャミルは大きく息を吐いた。
だが、つまらん事で変な意地を張り、ムキになる処も、少しジャミルに
似ているかも知れなかった。

「……モザイオーーっ!も、もう……やめろーーっ!!」

「ジャミルーーっ!!」

「お前ら……」

「く、糞デブ、何で……」

だが、突如、屋上にレスキュー隊?が、傾れ込んで来た……。
アルベルト達もどうにか間に合った様子……。

「何だ、お前ら来ちゃったんかい……」

「こらジャミルっ!何だとはなんだっ!僕らどれだけ心配したと
思ってるんだよっ!!」

「……もうーっ!今日こそ私もデコピンするわよっ!!」

「勝手な事ばっかりしてーっ!いつもいつもっ!!」

(……全くもー、アンタってホンット、バカっ!!)

「……」

心配して駆付けてくれた、吠えるアルベルト、アイシャ、
ダウド……、の、側にいる、発光体を見て、ジャミルは漸く、
自分の中にいるサンディに幾ら呼び掛けても、彼女が返事を
しなかった訳を漸く理解。

「……ガングロの仕業か、あの野郎……って、あいてーーっ!!」

「シャーモンシャーモン!……ウシャシャのシャーーっ!!」

……直後、モンが飛び出し、ジャミ公の頭に飛び乗り、そのまま
噛み付かれる。

「モンっ!オメーいい加減にしろっ!!……あたたたーーっ!!」

「ごめんなさいするまで許さないんだモン!!」

そんなジャミルと仲間達の姿を見て、モザイオの苛立ちは最高潮に達する。
仲間まで駆付けた以上、もう完全にジャミルを叩きのめす事は不可能に
なった。そして、苛立ちはジャミルの仲間と共に現れた、パッツンデブの
方へ……。

「よう、だらしねえな、テメー、俺に見捨てられた腹癒せに、
今度はこいつらに付いたのか?マジで情けねえクズのデブだなっ!!
テメーはよっ!!」

「……ち、違うよ、モザイオ……、僕はただ、君の事が心配で……」

「……んだとう……?」

「何がクズなのよっ!彼はあなたに酷い事言われても、ずっとあなたの事、
心配してたのよっ!だから此処まで追い掛けて来たんじゃないのっ!!」

アイシャは必死でパッツンデブを庇い援護する。だが、アイシャに
庇われるパッツンデブの姿を目の辺りにし、モザイオの怒りの炎は
益々燃え広がるのだった。


……情けない、やはり貴様は私が睨んだ通りの、落ちこぼれを超えた、
相当の救い様のないクズだった様だ……、この碌でなしめ……、夜中に
学院に忍び込み、悪さを企むとは……、許せぬ……


「……うあああーーーっ!!」

「……モ、モザイオっ!!何だ、この声っ!?」

「ジャミル君、あの時の落雷だよ、墓地で僕らを襲った、あの、
落雷だよ……」

「……きゃーアルうーーっ!ゆ、ゆゆゆ、幽霊だよおーーっ!ホントに
出たああーーっ!!」

「ダウドっ!……お、落ち着くんだっ!!」


……出て行って貰おう、この由緒あるエルシオン学院から……、
この学院の名誉は私が必ず守る……、邪魔なのだ、お前達の
様なクズは……、だが、貴様にも教育が必要だ、来い、私の
教室へ……、たっぷりと……、教育を施してやろう……


直後、謎の声と共に、モザイオの身体を稲妻が貫く……。モザイオは
その場にばったり倒れてしまうのだった……。

「……う、あああ……、やめろおーーっ!お、俺の中に入って
くんじゃねえーーつ!!」

「モ、モザイオ……」

「モザイオーっ!大丈夫かーーっ!?」

「……危ないっ!!」

モザイオに慌てて駆け寄ろうとするパッツンデブと青髪……。だが、
落雷は2人にも襲い掛ろうとする。しかし、アルベルトとアイシャが
間一髪で落雷を阻止し、2人を守ったのである。

「お前ら、なんで……」

「此処は僕らに任せて……」

「……ほう、援軍がいたのか、その魔法の力……、お前達は普通の
生徒ではない様だな、だが、何故そんなクズを庇おうとするのだ、
貴様らの知能もその程度か……」

(ジャミ公、アイツ、あの時部屋に出て来た奴だよっ!)

「ああ、間違いねえ……」

ジャミル、モン、サンディにはこの場に姿を現した初老の男の姿が
しっかり見えている。突然部屋に現れ、モザイオを睨んでいた男……。
姿は見えていない物の、アルベルト達にも声だけはしっかり
聞こえていた。

「やっぱりあなたがこの誘拐騒動の黒幕だったのね!他の皆は
何処にいるの!?」

「か、隠れてないで出てこーいっ!……い、いや、やっぱりいいです……、
きゃーーっ!?」

「ダウドのアホモンっ!シャーモンシャーモンっ!」

青髪は身を挺して自分達を助けてくれたアルベルトとアイシャの姿に
戸惑いを覚える。だが、青髪も、パッツンデブの言っていた言葉が
何となく分かって来た様であった。

「今は貴様らとやり合っている時では無い、……来い、お前だけでも
連れて行く……」

「……はい、僕、クズです……」

「モザイオっ!?」

「本当にどうしちゃったんだよーっ!」

倒れていたモザイオはむっくり起き上がる……。だが、まるで表情に
生気が無く、心配し必死で彼に呼び掛ける青髪とパッツンデブの
言葉もまるで耳に入っていない様だった。

「……僕は碌でなし、碌でなしには厳しい罰を……、エルシオン学院の
恥さらし……」

「……ああっ!モザイオーーっ!!」

モザイオはそのまま屋上からひらりと飛び降りてしまう……。だが、
彼は平気できちんと地上に着地、何処かへと走り去るのだった……。

「うう~、モザイオ、なんで……」

「畜生……、等々モザイオが連れて行かれちまったよ……」

「大丈夫だ、アイツは俺らが助ける!心配すんな!」

「……お、お前……、ジャミル……」

青髪は初めてジャミルを名前で呼ぶ。そして、ジャミルの言葉に
頷く仲間達。

「今ならまだ間に合うよ、急いでモザイオの後を追おう!」

「行きましょっ!」

「出動だモンっ!」

「はああ~い……」

「本当か?……本当にお前ら信じていいんだな……?頼むよ、モザイオを
助けてくれよ!……捕まってる俺らの仲間も……、済まねえ、お願いだ……」

青髪はジャミルに縋り付き、涙を零した。そして、彼も今までの事を
謝罪しようとするのだった。

「だから、んなの後々!今は事を争うんだ、待ってろ、何とか夜が
明ける前に絶対に皆連れ戻して来てやるから!よしっ、行くぞおーーっ!!」

「……あ、ああっ!?」

続いてジャミル軍団も屋上から飛び降り、地上に着地すると
ダッシュで駆け出す。……約一名、喚いているのもいたが、
取りあえず全員元気な様だった。

「スゲえな、けど、マジで何モンなんだよ、あいつら……」

「うん、きっと、勇者な天使様と、戦士さん達なのかな……、
ねえ、信じよう、絶対にジャミル君達がモザイオ達を
助けてくれるって……」

「信じる気持ちか……、俺、照れくせーけど、こんなの初めてだよ、
頼んだぜ、ジャミル、皆……」

そして、一方のモザイオの行方は……。

「僕はクズです、碌でなし……、最悪の碌でなし……」

「……け、結構足速いんだな……、んなろお~……」

「……いたよっ!ジャミ公、アソコっ!……って、あの方向ってサ……」

「墓地の方だ……」

「いーやああーーっ!!」

「ダウドっ、静かにしなさいったらっ!」

4人は突っ走るモザイオを漸く発見。だが、アルベルトの言った通り、
彼は墓地に向かっている様だった。墓地内に突入したモザイオは、
あるお墓の墓標を持ち上げる。そして、墓は地中に何処か続いて
いるらしく、階段を通り、中に入っていってしまう……。

「おーいっ!待てっつーんだよっ!あ、あれ?この墓って……」

「……この学院の初代学院長、エルシオン卿の……」

「お墓……、よね……」

「……何かますますいやだよおおーーっ!!」

4人は荒らされた墓の前に佇む。確か光る果実は、このエルシオン卿が
眠る墓にて消えたと言う。そして、モザイオもたった今、此処を通り、
消えていった。この墓の地下に、恐らく他の皆も連れて行かれたと見て、
間違いはなかった。

「じゃあ、アタシも消えるからっ!みんな、頑張ってねーっ!」

サンディは発光体になり、ジャミルの中へと……。だが、墓を
見つめながら、ジャミルも考える。連れて行かれた生徒達は
誘拐されてから大分日数が経過していると思うが、果たして皆
無事でいるのかと……。

「此処でじっとしててもしょうがねえ、とにかく動かなくちゃ、おい、
お前ら行くぞっ!」

……4人は意を決し、墓から地下通路へと歩き出す。皆が無事で
いてくれる事を、どうか間に合ってくれる事を信じて……。

「うわ……」

地下内部は、雅にもう一つの学院とも思える場所だった。だが、
既にもう内部は腐敗しており、彼方此方に毒の沼地が広がっている。
先に進むには避けて通れない場所だろう。

「いやだなあ~、もう~……、うう~、スゴイニオイ……」

彼方此方をチラチラ見ながら、怯えるダウド。モンはいつも通り
マイペースで、ダウドの頭の上で楽しそうにちんぽこちんぽこ。
動じない大物である。

「あ、本棚よ……、でも、本もなんとなく、カビだらけね……」

「勿体ないなあ……」

アルベルトは棚に納めてある書物を確認しながら、残念そうな
表情をする。本ももうカビと汚れで腐っており、ボロボロの為、
何一つ真面に読めそうな本は無い。……本嫌いのジャミ公は、
腐った本の臭いにいつもの倍吐き気を催し、口一杯に空気を
溜めて只管吐き気を堪えていた……。

「……其処までオーバーにしなくていいんだよっ!」

「あいてっ!!」

「……ひゃ、ひゃーーっ!モンスターだよおーーっ!!」

「……ちょっとダウドっ!何処に隠れようとしてるのっ!!」

ジャミ公とアルベルトが度付き合いを始めた頃、……やはり此処でも
当然の如く、モンスターが出現する。カマを持った呪いの藁人形、
アサシンドール、僧侶の容姿の様な、死の遣い、デスプリーストである……。
それにしても、パニックを装い、アイシャのスカートの中に思わず
隠れようとしたダウドの行為はわざとであろうか……。

「皆、今回も大変かも知れないけど、何とか乗り切ろう……」

「ええ、MPも節約しなくちゃね!」

「……もう~、勘弁してよおお~……」

「フン!腹黒に言われんでも分かっとるわーーっ!!」

4人に迫る2体のアサシンドール。さっきアルベルトにどつかれた
所為もあり、ジャミ公だけ異様に不機嫌。ヴァルキリーソードを構え、
アサシンドールに突っ込んで行こうとするが、デスプリーストの存在を
忘れ、うっかりザラキを喰らいそうになるが、間一髪、アイシャのメラミの
詠唱の方が早く、ゾンビの神官は瞬く間に炎に包まれた。

「……もうっ!無茶しちゃダメって何回言ったら分かるのっ!!」

「わ、わり、でも助かったよ……」

アイシャは膨れるが、多分、何回言っても無茶するのは治らないだろう。
……治っても返って怖いので困るが。

「僕ら今回、武器は持って来たけど、恰好は制服のままなんだから……、
本当に慎重に行動しなくちゃ駄目じゃないか!」

「へいへい、重ね重ねすみやせんねーっ!……あっ!」

「……ぎゃー助けてええーーっ!怖いよおおーーっ!!」

「モンモンーーっ!!」

何時の間にか、ダウドがアサシンドール2体に追い掛けられていた……。
ダウドの頭の上にはモンが乗っかったままであるが、モンは楽しそう
だった。しかも、逃げ回った挙句、毒の沼地の中をモロに走り回り……。

「……じ、び、れ、る……、ど、く……」

HPが半分になってしまい、動けなくなってしまうのだった……。

「……あーもうっ!何やってんだよっ!」

すかさず、ジャミル飛び出す。アサシンドール達に後ろから
蹴りを入れ、転倒させる。その間に自身も毒の沼地に突っ込み、
ダウド救出。

「あう~、ジャミルう~、ごめんよお~……」

「いいから暫く休んでろよ、早く自分の魔法で治療しろよっ!」

「面目ないよお~……」

暫くはダウドを自身の治療に専念させ、3人だけで敵と向き合う
事になる。だが、又もちょっとした隙に非常事態が……。先程倒した
筈のデスプリーストが、もう1匹が唱えたザオラルが成功してしまい、
復活し、2体に戻ってしまっていたのだった。

「ま、またややこしい事になってんなあ~……」

「先にデスプリーストを一気に倒した方がいいね……」

「でも……、あ、ああっ!?……きゃっ!!」

「……やべえっ!!」

相談している暇はあらず……。アサシンドールがドルクマを唱え、
魔法は暴走、ジャミル達3人は瞬く間に大ダメージを負い、あっと
いう間に窮地に追い込まれる。

(……ちょっとっ!アンタら何やってんのっ!しっかりしろーっ!)

何もせず、ほぼ吠えているだけのガングロ、非常にうるさい……。
其処にダウドの頭の上で遊んでいたモンが飛び出し、アサシン
ドールを威嚇し始めるのだった。

「……シャアーーっ!あっち行けモンーーっ!!」

「ジャミル、このままだとモンも危ない、何とかしないと……」

「分かってる、けど、俺らも傷を治療しねえと、……畜生……」

「みんなー、ごめんよおおー!はい、ゴスペルソングだよおー!」

丁度タイミング良く、自身のダメージの治療が終わり、ダウドも
テンションゲージが上がり、音痴ソン……ゴスペルソング発動。
ジャミル達の傷を癒やす。

「よし、……サンキュー!ま、デコピンは1回にしといてやるよ……」

「……がああーーんっ!?」

やはり、先程逃走しようとした分の仕置きはしっかり行なう
らしい。何はともあれ、ジャミル達は反撃タイムに移る。
……やはりMPをちまちま節約していてはもはやバトルも
困難な状況になって来ている。

「こうなったらもう一気に決めるわよっ!……ええーいっ!!」

アイシャのイオラでまずはデスプリーストをどうにか一掃。
……残りはアサシンドールのみとなる……。

「また、暴走されねえ様に……、っと!おりゃあーーっ!!」

2度目のドルクマを許さず、ジャミルの会心の一撃発動。
漸くアサシンドール一体だけとなり、此方の勝利が見えて来る。
そして、運良くアイシャの毒針攻撃が決まり、残りの一体にも
無事止めを刺す事になった。

「♪やったーっ!」

「アイシャ、ナイスだぜっ!」

「えへへ~!」

「スゴイんだモンモン!」

「アイシャ、お疲れ様!」

(ホントっ、マジ、やるじゃんっ!)

「あ、あのう~、オイラは……?オイラも……、ゴスペルソング……、
発動させたんだけど……」

アイシャが絶賛されている中、ヘタレがいじいじ、いじけ始める……。

「たく、逃げなきゃもっと良かったのによ、……ま、オメーも
頑張ってくれたよ、ありがとな……」

「え、えへへ~……」

と、何とかジャミルにフォローされ、ダウドの顔も綻び始める。
……が。其処に再び、今度はデスプリースト+トーテムキラー
軍団出現。……ヘタレきゃーきゃー再び逃走。……ゴールが益々
遠く感じて来た他のメンバーなのであった……。そして、地下校舎
最深部にある、謎の教室で……。

「……もうやだ、帰りたいよ……」

「お腹……空いたよう……」

「……」

「おい、其処のお前、新人のお前だ、教師に向かって何だその目はっ!!」

教室には3人の生徒がおり、椅子に座らせたまま、傍らに立つ恐ろしい
男の洗礼を受けていた。先に誘拐された生徒達、そして、連れて来られた
ばかりの新人の生徒、モザイオの姿であった……。

「身に沁みるが良い!私に逆らう物はこうなるのだ!厳しさこそ
教育!貴様らの様な弛んだクズはたっぷりと仕置きしてやるそっ!!」

男はモザイオに向かってビシビシ、容赦せず鞭を振り上げる。
……この男こそ、亡くなった筈の初代エルシオン学院の院長、
エルシオン卿であった……。

「どうだ?私の教育の有り難みが分かったか?」

「……分かんねーよ……、俺、バカだしさ……」

「そうか、ならば分かるまでこうしてやるっ!……どうだどうだあーーっ!!」

エルシオン卿は尚も自分に刃向かうモザイオへ教育的指導を続ける。
他の生徒達は泣きながら目を瞑る。……痛みと激痛の中で、モザイオは
自分が親のコネで無理矢理この学院へと入学させられた課程を思い出す。
親の名誉の為、……不良息子を更生させる為に。

「……冗談じゃねえよ、何がダチだよ……、ふざけんなよ、俺には
そんなモン、誰一人……」

「……クソ爺ーーっ!やめろおーーっ!!」

「……むっ?」

其処に傾れ込んで来た、ジャミル軍団……。疲れ切っていた生徒達は
驚き、目を見張る。モザイオも……。しかし、彼らの容姿も、もう着用
している制服がボロボロで、凄まじい姿になっていた。

「何で、お前ら……」

「うるせーなっ!何でも何もねえ、此処に来た目的は一つ!皆を
助けに来たんだよ!それしかねえだろっ、おい、大人しく待ってろよ、
直ぐに助けてやるからっ!」

「……ジャミ……ル……」

遂にモザイオが声を漏らす。その時、彼は初めて他者に救いを求めた。
ジャミルの横に並ぶ仲間達。ボロボロになりながらも、自分達を助けに
来てくれたその姿を見て絶望で溢れていた生徒達も希望を見いだす。

「……助けて、俺達、もうずっと此処に閉じ込められて……、
座らされて、も、もう、ずっと水しか飲ませて貰っていないんだ……」

「……授業中、ちょっと居眠りをしただけでいきなり此処に連れて
来られたの……」

モザイオを含む誘拐された生徒達の3人の内、1人は女の子である。
彼、彼女らは突如現れた救いの神に、涙目になっていた。

「おい、其処のお前!我が学院に遅刻して来るとは見上げた根性だな!
儂はこの偉大なるエルシオン学院院長、エルシオン卿なるぞ!クズ共!
早く席に着かんかっ!!この無能のウジ虫共めっ!!」

「……ジャミル、あの人が間違いなく、エルシオン卿なんだね……」

アルベルトの言葉にジャミルは、ああ……、と、返事を返す。突如
寮の部屋に現れ、モザイオを凄まじい凝視で睨んでいた男。あの時の男と
全く同じ姿。今回の誘拐事件の黒幕である幽霊には間違いは無いのだろうが、
今はアルベルト達にもその姿はしっかり目に見えている。

「……ウジ虫だなんて、酷いよお……、何だよ、自分はクソムシの癖に……」

「……早く席に着けと言っているだろう!貴様……、言う事が
きけんのかあーーっ!!其処の情けないツラの困り顔めがーーっ!!」

「……ひええーーっ!!だからこの顔は生まれつきなんですよおーーっ!!」

エルシオン卿はダウドに向け、鞭を掲げ脅す。さっきの呟きが
聞こえたらしい……。

「……ダウドっ、脅しに乗ったら駄目よっ!此処は堪えてっ!」

「えうう~……」

(……ちょ、ジャミ公!アレっ、デブ座布団がっ!!)

「あ?……モンーーっ!!」

「……モンちゃんっ!!」

「……居心地の悪い頭モン、……モンの太鼓裁きでおめめ覚まさせて
やるんだモンっ!!シャアーーっ!!」

モンは又無謀にもバカ行動を……。エルシオン卿の頭の上で下ネタ
太鼓を叩こうとしたんである。だが、エルシオン卿は頭の上のモンを
掴むと思い切り壁際に叩き付け、モン、壁からズズズ……と、
ずり落ち、気絶……。

「モンちゃん、モンちゃん……、返事をして、お願い……」

「モン~……」

アイシャは慌ててモンに駆け寄り、必死で呼び掛け、介抱。幸い、
コブを作って気絶しているだけだったが……。

「ふざけおって、そんな玩具を我が学院に持ち込むとは!これは益々
扱き甲斐のあるクソウジ虫共だなっ!……ふははははっ!」

「畜生……、おい、モザイオ、モンの事、頼めるか……?」

「お、俺がか……?だけど……」

モザイオはジャミルから差し出されたモンを見て、戸惑う。かつて、
自分はモンに危害を加えようとした。それでもジャミルはモザイオに
モンを託そうとしてくれている。……ボロボロになりながらも此処まで
命懸けで自分と皆を助けに来てくれた4人に、モザイオも返事を返した……。

「……分かった、俺が守ってる、任せろっ!」

「サンキューなっ!よーしっ、悪ィけど俺らもアンタをシメさせて貰うよ、
頑固者の老害暴力教師をな!これ以上のさばらせてたまるかっ!」

「……そうか、貴様ら私に刃向かうのか……、許せぬ……、
その反抗的な目……、その態度……、生きて……は、かえさ
……ぬ……、おおおおおーーーーっ!!」

エルシオン卿の周囲を黒い霧が取り囲み……、エルシオン卿は
巨大な鞭を手にした醜いモンスターへと変貌を遂げるのであった……。

「……ああーっ!お約束だあーーっ!!」

(……何吠えてんのよっ、バカヘタレっ!)

「……私の名は魔教師エルシオン……、この学院の創設者にて、
最強の教育者……、ウジ虫の貴様らにもはや説教など不要……、
仕置きだああーーっ!!血反吐が出るまで仕置きしてやるーーっ!!」

「冗談じゃねえっつってんだよっ!仕置きされるのはオメーだっ!
……いくぞっ、皆っ!」

「大丈夫だよ、ジャミル!絶対に皆を助けて此処から出よう!」

「そうよ、私達を馬鹿にしたら大変なのよ!負けないんだからっ!」

「……うう~、お、オイラも頑張ります……、……がうおー!」

「ジャミル、皆、あいつの変な術に気を付けろ、俺達、この机から
逃げられない様にずっと座らされて拘束されてるんだ……」

「分かったよっ、モザイオっ!よーしっ!」

ジャミル達4人は魔教師エルシオンに突っ込んで行く……。その姿を
見て、モザイオは自分は恐らく何をやってもジャミルには
勝てなかっただろうなと漸く理解する。

「……しかし、変な奴らだぜ……、……頼んだぜ、絶対に勝ってくれよ!」

「どうか、負けないで……」

「天界におわします、我らの守護天使様……、ああ、どうか彼らを
お守り下さい、力を……」

「……くたばれえーーっ!……この、ウジ虫共ーーっ!!」

「……うわああーーっ!!」

だが、魔教師エルシオンは自らの鞭に炎の力を絡ませると、4人目掛け
一斉に鞭を激しく振り下ろす。皆の声援も空しく、4人共揃って鞭で
弾き飛ばされ、早くも危機に陥る……。

「う、いててて……、み、皆っ!!」

大分遠くまでかっ飛ばされたジャミルは慌てて身体を起こし、
周囲を見渡す。はっと目に付いた物は、……魔教師エルシオンの
巨大な鞭に、アルベルト、ダウド、アイシャの3人が揃って一辺に
捕まり、締め上げられ、拘束されていた姿であった。

「……皆っ!」

「ジャミル、僕達の事は……大丈夫……、だから……」

「……エルシオン学院長を……止めて……」

「……面目ないでーす……」

「ふはははは!どうだ、私に逆らうウジ虫を捕獲したぞ!どうだ、
どうだっ!!おい、お前達もよーく見ておけっ!私に刃向かった
クソ共の哀れな末裔だっ!……そらそらそらーーっ!!」


「……あああーーーっ!!」


「う、ううう……」

「や、やっぱり怖いよう……、お父さん、お母さん……」

魔教師エルシオンは、容赦なく、拘束した3人を鞭ごと、ビシビシ床に
叩き付けた後、思い切り振り回す。まるで、サーカスで調教する獲物を
仕込む様に……。その姿を見、机で動けないまま、捕まっている生徒達は
恐怖で思わず目を反らすのだった……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 51

zoku勇者 ドラクエⅨ編 51

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-03-30

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work