「アマゾーン国探訪記」の、あとがきと批評解説です。
これは、「アマゾーン国探訪記」の、あとがきと、批評解説です。
本編では、語りきれなかったエピソードや補足部分を、セルフでツッコミながら、つらつらと語ります。
この物語は、前に書いた小説「庇護する女たち」
では、書けなかった表現などの反省をふまえ、名前のある血の通ったキャラクターや、躍動のあるストーリーを目指しました。
※反省点については、「庇護する女たち」のあとがきと批評解説をどうぞ。
あとがき
【注意】途中から、あまりにも淡々として、翻訳やAIのような文章になってしまいましたが、ちゃんと生身で書いてます。
遠近法とか時間軸が壊滅的!どう考えても時間が止まっているとしか思えないw(なかなか日が暮れない!?www)
ストーリーの展開上、主人公が目的地に着いてから、なんやかんやあって四日間くらいの話を、ムリクリ進めながら内容を濃縮させて詰め込んだ(それで、全十話の所を十三話になった。この手のやらかし三回目)ので、すごく不自然な流れになってしまったけれど、これならばいっそ、リアリティより、好きなように書いてしまえ。と、勢いとテンポの良さ(!?)でなんとか乗り切ったつもりです。
これだけは、自信があるっ。
……。
ここからは、作者が自作を読みながら、ツッコミ解説、感想を述べる流れになります。
第一話「レナトス」
主人公は、旅人で、本を書くために取材をしております。
裕福な生まれで、何不自由ない立場。慣れた感じで、今回も旅を楽しんでいます。
取材も上手くいって、今のところ順調なようです。
ただ、どうしても看過できないことが……。
男性、少なすぎ。
わざわざ探して、たった数人でもいるから多いと住人がみなす程、この国では男性が希少な存在であることを主人公は、実感します。
もちろん、本で知ってることも、多いでしょう。しかし、実際に足を踏み入れて実感した体験は、彼に感動と困惑をもたらします。
書物の世界が、目の前にある。
と、彼が思ったように、異文化風情漂う街の喧騒に酔いつつも、違和感もしっかり覚えております。
実感とは、良いものばかりではなかったのです。
そして、周りに翻弄されながらも、彼の旅は続きます。
この話もつづきます。
その二
第二話「ニュムペ」
この国では、男性は子供扱いされるようです。
みんなで、世話を焼いているからでしょうか?
彼は、高名な身分であり、属する国の影響力も強いので、常套手段である身分証を見せることで、切り抜けようとします。
そこに、ニュムペという少女が現れて、あれよあれよという間に、アマゾーン国のやり方に巻き込まれてしまうのです。
野心を持ち、プライドも高い主人公ですが、内省力があり、紳士的な振る舞いをします。
アマゾーンたちの常識に、カルチャーショックを受けつつも、新鮮な驚きを楽しむ主人公。
さすが、旅人って感じです。
そうこうしているうちに、ニュムペの家に男性がいることがわかり、話は進みます。
第三話「ルキウス」
主人公たちは、簡素だけど丈夫そうな小屋に着きます。
ニュムペは、自分で造ったと言います。
希少な男性に替わって、危険な仕事や重労働をこなすアマゾーンの女たちですが、十六歳の女の子がひとりで小屋を建てたことに、主人公は驚きを隠せません。
そして、運命の邂逅。
小屋の中にいたのは、主人公が長年尊敬していた詩人だったのです。
ちなみに、主人公の名前。レナトス・アトランティウスの由来ですが、アトランティスの語源をウィキペディアで調べたら、ギリシャ神話の天の蒼穹を支えるアトラス(名前の意味は「支える者」「耐える者」「歯向かう者」)とあったので、王家を支える家系にピッタリだなあと決めました。(ただ、意味が不穏)響きが気に入った、というのもあります。
レナトスの名は、レナトゥス (Renatus) は、「生まれ変わる、再生する (reborn)」を意味する("natos"は生まれるの意)、ラテン語が起源の名前。※Wikipediaより抜粋
で、後展開で意味を持ちます。
ルキウス・アポロニオスの由来は、テュアナのアポロニオス(生没年不詳)という、やたら神秘的な人物がいて、迫害されても奇跡の力で逃れたり、キリストに対抗する人物として、祭り上げられたりしたそうな。※コトバンク調べ
これも、キャラクターが、神官の家系という設定に合う(迫害を受けたり、旅をする所も)というのと、アポロの響きが好きなので、そのままでは何ですから、名の入った姓として決めました。(本編には、ほとんど出て来ませんが)
ティアナのアポロニオスはギリシャの人物ですが、ルキウスは、ローマ人の名前だよなー。(ごちゃまぜ)これまた響きが良いと、直感で決定。
ニュムペの由来は、ギリシア神話などに登場する下級女神(精霊)※ウィキペディア調べ
で、妖精みたいなもんですね。
ひたすら自由を求めて、奔放であろうとする所とか。
※これからは混乱を避けるために、主人公は名前で呼びます。(固有名詞を避けたがる、悪いクセだ)
レナトス(主人公)は、旅人で本を書くのが仕事ですが、詩を嗜んでいて、それはルキウスの影響なのですが、ふたりは、それで意気投合します。
それにしても、レナトスは、感情の起伏が激しい。
そりゃ目の前に突然、憧れの人がいたらね……。
気持ちは、わかるっちゃ、わかるっちゃ、わかるんですけどね……。
(こういうキャラ、嫌いじゃない)
その三
第四話「聖なる王」
正直、聖王の話いるかなぁ?と、思ったのですが、ルキウスは詩人ですから、やっぱり大事なことは詠うだろうし、披露する場面を作りたいという思惑もありました。
あと、なぜ彼らの国では、これほど聖王が厳格に信仰されているのか、説明する意図もあります。
それと、話を進めるのを優先して、デメトリアとアマゾーン国の神話の共通点とか、伏線ばかりで、まとまりが無いまま話を進めてしまったのですが、元々同じルーツの国が分かれて、そこから更に、それぞれの文化や信仰が新たに生まれて、広がり成熟したものと解釈してください(ご都合主義)
まあ、現実の神話もそういうとこ、あるでしょう?(コラ!)
元ネタとしては、古代オリエントの豊穣の女神と、穀物を司る男神(王)の聖なる結婚(聖婚※ヒエロス・ガモス)をモチーフにしています。
しかし、生贄になる王と、女神と結ばれ共に暮らす王。レナトスとルキウスのふたりは、同じ道を歩むことになるのです。
レナトスが、王と同じ名前なのも、それを示唆しています。
だいたい、話のベースはこんな感じですが、伝わったでしょうか?
もし、そうなら感謝します。
そうだったの!?という方、実は、そうなんです!
重い話が続いたので、後半は、ほっこりタイム。
ふたりには、さらなる展開が待っています。
第五話「ガイア」
街の世話役で、面倒見の良いガイア。
彼女のキャラクターは、物語のテンポや展開上、具体的なシーンではなく(これで、泣く泣く削ったシーンが数多ある)ニュムペやふたりに対する言葉や振る舞い、態度で表すことにしました。
ニュムペに、現実的なことを言って諭すところや、ふたりへの気遣いも、欠かさないところとか。皆を労い場を和ませるのも、人となりが出て良いと思いました。
ニュムペは、よく働くいい子だと思うんですよね。
ふたりは、呑気だなー。すっかり、くつろいでますね。そもそも高貴な生まれのふたりが、ご飯を作るわけないんですよ。ルキウスは、家計を気にして詩を書いてますけどね。
でも、ニュムペは、まんざらでもないようです。
アマゾーン(アマゾネス)の、設定について。
アマゾン
ギリシア伝説で,黒海沿岸あたりに住むとされた女戦士の種族(複数形アマゾネスAmazones)※コトバンク調べ
と言う意味だけど、種族名をアマゾーンとして、アマゾネスは、戦士を指すと言う設定にしました。
ロバに二人乗りって、ちょっと可哀想だったかな?
そんなロバに、優しいレナトス。繊細な所もあって、いろいろ気にするし、悩みます。ルキウスのことで、葛藤を抱えています。何があっても、自分だけ逃げ帰ることはできないのです。
それにしても、ルキウスは、かっこいい。
見なくてもわかる、イケメンですね!
これからも出て来ますが、やることなすこと、すべてが魅力的。常に、冷静沈着。寛大な心で、冒険心が強くて、無謀に走り勝ちなレナトスを、見守ります。
その四
突然の、実家感。
ニュムペは、思うところがあって、どこかへ行ってしまいました。
ガイアは、慕われているんでしょうね。
ここでも、彼女の普段の行いや、人間性が垣間見えます。
第六話「ニコロ」
村長の家に預けられた、ふたり。
この国では、自分たちの常識が通じないことを、ニュムペの兄であるニコロから教わります。
ニコロは、最初の印象とは違い、ふたりに好意的なようです。
ニコロたち三人は、家事仕事をします。
途中ですれ違った子供たちを含めて、この家にも、男性は、ニコロと二人の兄弟しかおらず、村も街同様、男性の存在が希少なことや、その立場や扱われ方について、レナトスとルキウスは、見聞きして知るのです。
この国では、男児が生まれると、家で大事に育てられるが、コストの関係もあって、神殿と呼ばれる場所で、保護隔離されることもある。
街に男性がほとんど居ない理由も、判明します。
※ここから、時間軸がおかしくなります。ずっと昼だったり、なかなか日が暮れません。
ご了承ください。
ふたりにとって、はじめての洗濯。
しかし、それすらも、楽しんでしまえるルキウスの余裕っぷり。
レナトスは、大変そうですね。でも、一生懸命やってます。
今度は、台所でパンを作ります。
これは、楽しそう。
お気づきの方もいるかと思いますが、彼らは、火や刃物を使う仕事をしていません。
他の炊事、パンを焼いたり、野菜を切ったり、肉を捌くような仕事は、家の女たちがやっています。
男性がケガをしないための、配慮なのでしょう。
彼らは、こうして守られていますが、反面、窮屈で不自由な立場であるとも言えます。
第七話「ひとときの宴」
仕事の合間にとるには、豪華すぎる食事。
某イタリアンチェーン店の料理を、ふたりに食べてもらいました。
ルキウスが食べているのは、煉獄のたまごですね。
レナトスが食べているのはフリコですが、今となっては懐かしい。
せっかくなら、出来たてのパンを食べるシーンも入れたかった所ですが、これまた文字数、展開、テンポ、諸々の事情で泣く泣く割愛。
レナトスとルキウスは、ニコロから、街について衝撃の事情を聞かされます。
街では、男性は市場で売られて、それを女たちがこぞって買い求めること。
街の女たちにとって、男は宝石のようなもので、虚栄心を満たすために求める云々…。
それは、花婿市場と呼ばれていて、まるで生贄のようだと、彼は言います。
ニコロの兄弟が、男性が女たちにチヤホヤされると勘違いして羨み、ニコロに窘められます。
ニコロは、街は、恐ろしいところだが、この村は違う。男を大事にするし、子孫を残す役目以外は、自由だし安全だと言って、ふたりに村に住むことを勧めます。
旅を続けたいレナトスですが、ルキウスを置いて行くこともためらわれて、結論を先送りします。
その五
第八話「神殿の丘へ」
レナトスたちは、みんなで皿洗い。
食べたら後片づけ、ふたりにとっては、一宿一飯の恩義でしょうか?(泊まってないけど)
どこからともなく、聞こえるラッパの音。
何かが、はじまる予感。
ニュムペは、家族のことや、勝ち気な兄と大喧嘩して、家を飛び出したので、実家には帰りたくなかったようです。
それでも、一人前と認められたいニュムペは、彼女なりに頑張って、家を建てて、働きながら、ルキウスの詩を売り込んでいますが、なかなか上手く行きません。
レナトスたちは、女戦士たちが、聖域である神殿の丘を通過していることを、村の女たちを通じて知ります。
旅人としての血が騒いだレナトスは、ルキウスと共に現地へ向かいます。
ニコロは、なんとかごまかして、廊下を早足で進んで…って、絶対廊下は走らない。
行儀の良いふたりなのだった。
レナトスは、カバンを肩にかけて…そういえば、ルキウスって手ぶらかな?きっと大事なものはレナトスがみんな持ってるんだよ(!?)
ふたりは、神殿の丘を目指して歩きます。
神殿は、太陽の光を受けて輝き、神殿の役割を知りつつも、ふたりは、荘厳な雰囲気に圧倒されます。
ふたりは、その後何度も、女戦士の部隊を目撃します。ルキウスは、この国で起きている異変を感じ取ります。しかし近くで見そびれて、レナトスは、再度機会を願い、ふたりは、部隊を待ちながら歩くうちに、何者かによって、連れ去られます。
自分で書いといて何ですが、腹立つわ~💢こいつら!
ちなみに、男の子のこと、僕って呼ぶの、上から目線だと思いませんか。
私は、昔から違和感があったので、あえて言わせたけど、やっぱり、ムカつきますね。
当然、レナトスもカッとなった訳です。
しかし、ふたりは、麻袋に詰められて、馬車で運ばれてしまいました。
ふたりの運命は、女神の手に委ねられたのです。
第九話「美しい鳥籠」
ふたりが、連れて来られたのは、男性保護施設。言わば、迷子センターのような所でした。
麻袋を解かれると、目の前にいたのは、施設の女性でした。彼女は、ふたりをいたわりながらも、その子供扱いな口調に、レナトスは、また、腹を立てます。(わかるよ)それから、身元確認のためのチェックを受けるのですが…話もかなり後半になってから、ふたりの容姿と服装が明らかに!これも、ストーリー上やむなし!それにしても、ふたりは同じ国なのに服装が違いすぎるな~まっ、立場も地域による文化の違いもあるし(すっとぼけ。本当は、好みと名前の雰囲気で決めた)
レナトスは、なくしたカバンが見つかって、安心します。中にある身分証が、助けになると確信しているからです。
それからすぐ、この施設の探検を始めます。
その切り替えの早さは、ルキウスもあきれるほどです。
施設は、シンプルな白い部屋の他に、豪華な客室のような広い続き部屋がありました。そこはレナトスが、最初に訪れた街のような異国風情漂う雰囲気でした。
大きな丸天井からは、日が差し込んでいた。
(なかなか、日が沈まない)
前にも話したように、この物語は、後半になると、時間軸があやしくなってくるので、そこは見逃して欲しい……。
そこに、謎の人物がいて、ふたりに声をかけます。
その六
声をかけたのは、初老の男性でした。
男性は、家族とはぐれて、この施設に保護されたそうですが、ふたりと違って優しく馬車に乗せられたとのこと。男性は、ふたりの扱いに首をかしげます。
男性は、この施設に来たのは、幼子の時以来二度目で、世間では、美しい鳥籠と、呼ばれるこの施設は、とても居心地が良い場所だと言います。
外装もさることながら、迷子の鳥を保護する鳥籠といった所でしょうか?
ふたりは、男性の話を聞いて、また、文化の違いを知るのです。
男性は、蔓草の装飾をした冠を被り、首飾りや腕輪などのアクセサリーを身に付けています。
簡素な他の住人たちと比べると、ずいぶん華やかです。
男性の話では、冠は既婚者の印で、男性は、複数人の女性と結婚していて、アクセサリーには、それぞれの結婚相手の家紋が付いています。
レナトスは、アマゾーン国と、自分たちの国との価値観の違いを受け入れ難く、拒否反応を示します。
ルキウスが、冷静に文化の違いや結婚観について男性に尋ねると、男性は、自分は他の文化は知らないと断った上で、結婚は良いもので、たくさんの人から愛され、必要とされ、自分に、神殿に居た頃とは違う、喜びと幸せをもたらしたと話します。
男性は、神殿で育ったことがわかりました。
第十話「聖なる結婚」
男性は、幼い頃家族とはぐれて、施設に保護されたものの、家族は現れずに、神殿で育てられます。
神殿は、天国と見紛うほど白く輝き、フードを被り長い服を着た男たちが慎ましく暮らしています。
男性は、優しく寄り添う彼らに、慰められて、家族と別離した心の傷を癒やします。
男性は、愛情に包まれ、平和に暮らしますが、彼には、定められていた結婚によって、再び別れが訪れます。
実は、神殿の目的とは、国の繁栄のために、命を繋ぐ男性を保護、養育することにあったのです。
アマゾーン国では、神話の時代から、希少な男性は、神々からの恩寵として大事にされてきました。
神話によると、かつて人間の男王と、大地の女神が結ばれ、大地に緑をもたらす信仰があり、神殿の男たちも、それらに則って結婚が行われます。
……。
別れのシーン、泣いてまうやろ!
皆、涙を流しながら、私を見送った。これが最後と、抱きしめてくれた。
なぜ、こんなことになってしまったんや!
(作者のせい)
はい、自分が悪いです。
しかし、すべてははじまりにすぎず、その後、男性は、人々から熱烈な歓迎を受けて、式は執り行われ、男性は、新しい家族を作りました。
アマゾーン国の事情と習慣もあり、男性には複数人の妻がいますが、彼女たちは、感謝と敬意をもって男性に接します。
男性は、そこで新たな幸せを掴んだわけです。
男性の話に驚き、感心するふたり。
ようやく、日が傾いてきました。
そのころ、レナトスのカバンを取りに行った、施設の女性が戻ってきて、男性の家族が迎えに来たことを告げます。
男性は、ふたりにお礼言って、女神の加護を願うと、部屋から出て行きました。
施設の女性が、レナトスのカバンの中には、身分証は無いと言ったので、狼狽したレナトスは、カバンの中身をひっくり返して探し、去りゆく女性を追いますが、ルキウスに、運命には従う時も必要と言われて、止められます。
その七
月明かりの夜。
窓を見上げて、途方に暮れるレナトス。
そこへ、心配をして様子を見に来たルキウスが現れます。
レナトスは、自分が初めて感じる非力をルキウスに伝えます。
ルキウスも、自分を迷子の幼子に例えて、レナトスを慰めます。
ルキウスは、持ってきたロウソクをテーブルに置くと、その小さな炎をふたりで見つめて、詩の女神に祈り、詩の力を信じることを自らに誓います。
しかし、非情にも彼らは、翌朝、身元不明者として、市場で売られるのです!
なんじゃそりゃーーー!
非人道的すぎるだろ! ヤバーン!
ふたりの運命やいかに!(お前が言うか!)
第十一話「花婿市場」
ニュムペは、奔走しています。
自分が現状から逃げたせいで、ふたりを守れなかったと、後悔しているからです。
兄のニコロの悔し涙も、強い影響を与えています。
自分は、自立して、男がいれば、一人前になれると思い、家族に頼らず、兄の思いも反発してきた結果、ふたりを守れず、危機が訪れようとしています。
ニュムペは、いろいろ考えて、ひとりではなく、ガイアに頼ることを思いつきます。
ニュムペは、ガイアがどこかに居るであろう街を目指して、ひたすら走ります。
レナトスとルキウスは、荷馬車で市場に連れて行かれようとしています。
何の罪も無いのに、理不尽な扱いを受けて、レナトスは、ルキウスを庇いながら女たちに抗議します。
ルキウスは、事を荒立てても、良いことは無いと判断して、レナトスをなだめます。
手枷を付けられ、鎖を引かれても、レナトスは、動けません。
彼の頭の中には、生贄になった男王や神殿で男が隔離される話や、ニコロが言った男が売られるイメージが思い浮かび、彼は恐れを抱きます。
彼は、自分が当事者になるとは、思っていなかったようです。
そんなレナトスにルキウスは、人々のために犠牲になった、聖王を思い出すよう言って発破を掛けます。
そのおかげで、レナトスは、女たちが手荒な事をする前に、荷馬車に乗ることができました。
荷馬車の中で、ルキウスは、レナトスを褒めます。
レナトスは、荷馬車に乗る時、自分が同じ名前でも、立派な人物と比べないでほしいと強く言って、女たちの手が迫る恐怖から逃れるために乗り込んだので、とても気まずいです。
荷馬車は、街へ向かい、レナトスは、ルキウスと向き合えないまま、ひとりで街を眺めています。
街の人々の反応は様々で、レナトスは、旅をはじめた時、こんな事になるとは思わなかったと、振り返っています。
市場のある街の中央広場には、女たちの群衆がひしめき合って、この国に慣れたレナトスでも、気分を悪くします。
広場にある舞台の上で、恰幅の良い中年の女商人が場を盛り上げて、これから競りが始まろうとしています。
その八
レナトスとルキウスは、荷馬車から降ろされて、舞台の様子を見守っています。
舞台の上では、手枷を付けられた若い男性が、女に鎖を引かれて群衆の前に現れました。
その姿は、ふたりが、神殿で育った男性から聞いた、結婚の衣装そのままでした。
女たちは、自分たちの神話に基づいた儀式と称して、男たちを取り引きしているようです。
ふたりは、それを確かめ合うと、ルキウスは、皮肉を込めて、花婿市場と言います。
女商人は、若い男性を売り込み、女たちは、値踏みしながら場が盛り上がった所で、ある女の提案で、男性の体を調べるために、服を脱がせることが決まりました。
男性は、蹲って抵抗します。それでも無理矢理立たせられると、泣いて、やめてくれるよう懇願しますが、女たちは皆、嗜虐心でその様子を楽しみます。
……。
なんか、心が痛む。正直、Sっ気出しながら、嬉々として書いたんだけど、後で読み返したら、ズーンと、心が重くなってしまった。なんや、これ。…なんか、すまんやで。
しかし、すんでのところで男性は、裕福な女に買い取られ、男性は、難を逃れました。
ふたりは胸をなで下ろしますが、レナトス、ちょっと、この世界に飲まれかけているような…。ルキウスは、自分の立場が危ういのに、他人の心配をするレナトスにあきれつつも、そこに、らしさを感じて肯定的に見ています。
ふたりは、今度は、自分たちの運命を乗り越えるために、互いに言葉を交わして決意を確かめます。
商人が再び、群衆を盛り上げる中、ルキウスが舞台に出て、レナトスも後に続きます。
女たちの好奇の目線と、商人の打算的な思惑を前にルキウスは、自分たちが詩人であると、高らかに宣言します。
第十二話「女神へ捧げる詩」
それを聞いた商人は、彼らが詩人であり、群衆の前で詩を詠むつもりであることを確かめて、売り込むのに都合がよいと、皮算用をします。
ふたりは、並んで群衆の前に立ち、ルキウスは、自分たちの扱いは、詩を聞いてから決めるよう言ってから、詩を詠いはじめました。
鳥籠で、詩の女神に祈り、自らに誓った思いを胸に、今、詩人としての力を発揮する時が来たのです。
それは、“聖なる王と女神の結婚”という、アマゾーン国と、デメトリア王国に通じる神話に基づく内容でした。
愚かな者の為に、身を捧げた王を愛する大地の女神。
愚かな者を、滅ぼそうとする女神。しかし、王は、愚かな者でも愛するゆえに女神のもとに来たと、女神に言って人々を庇います。
そんな王の愛ゆえ女神は、王を愛し、結ばれたのです。女神は、王が人々を愛する限り、大地を実らせ豊穣を約束します。
それに応えるように、王は、人々の幸いの為に女神の愛が注がれるよう祈ります。
レナトスとルキウスは、呼び合うように詠い合い、そして終盤は、共に詠いあげます…。
人々の知らない所で、人は愛され恵みを受けていることを詩にのせて、ふたりは詠い終えました。
「アマゾーン国探訪記」の、あとがきと批評解説です。