『地上の物語。』

技巧と愛の赤。
生命の鮮やかさ。
真夜中を裂くちから。
歴史の深海を繋ぐ、いろ。

集う理由。
僕たちの身体にめぐる声。

熱くてもささやかでも、あらゆるリズムにのって僕たちである目印。

天高(てんたか)飴色(あめいろ)のあたたかさ。
どうしていつも人の寂寥(せきりょう)慰め(なぐさ)てくれるのだろう。
夕闇、真夜中、薄青(うすあお)い朝まで。


雪原の(すすき)の伸びる影。
()れた石に散る薄墨色(うすずみいろ)の花びらを、躊躇(ためら)いながら踏みしめて。
麦わら疲れた生温(なまぬる)い風のなか。
(だいだい)()れ落ちる光景を慰撫(いぶ)するよう思い出す、夕餉(ゆうげ)の匂い。
僕たちの毎日。


太陽が生きよと高らかに歌うなら、月はじっとそのまなざしを合わせる。

身体心まだここに()ると(うれ)()()う静けさ。
熱より優しい。


天空にぽつりと僕らの共鳴(きょうめい)

太古の(うろ)の物語を背負う、ひとびとの(うた)を、僕らはまだちゃんと知らない。

『地上の物語。』

パワフルでのびやかであり、美しいパズルのように整った音楽を聴いて書いたものです。

『地上の物語。』

夜。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-01-10

Copyrighted
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