『小夜啼鳥』

赤い薔薇を咲かすため
捧げられたささやかな命


『小夜啼鳥』


真実の恋の完成なんて
夢物語だと知っていても
小さな身体を震わせて
死の痛みに耐える姿は美しかった

真っ白な雪に無造作に落とされた
血の色の赤い薔薇が踏み躙られる
それをただ見ているしかできない
私が咲かせたのは白い薔薇

心臓に棘をもっと押し付けろと
そう言ったのも私だった
貫かれる痛みに喉を震わせて
歌う恋のうたはこの世で最も尊い

芸術の完成を望んだ小さな鳥
白い雪に横たわり凍りつく羽根
こうして私の芸術は完成した
たとえ打ち捨てられた身体が朽ちようと

赤い薔薇より真実の恋より
君の献身は美しかった
余りに軽い小さな命は
この世の何よりも私の身を焦がした

燃え上がるような恋があるなら
きっとこれがそうなのだろう
君は自分で経験することなく
芸術だけを夢想して冬に散る

降り積もる白い雪に多い隠され
既に見えなくなったその身体
身を以て恋を賛美した小鳥
私の恋と引き換えに完成した美



「私の芸術の為に犠牲にされた命」

『小夜啼鳥』

『小夜啼鳥』

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-01-06

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