小石
舞阪の浜辺が歩いている
満潮のときの波打ち際を
黒く光る小石が落ちつつある
落ちかねる寸前で
垂らされる手が小石をつかむ
小石はなぜいつまでも海であり
朝のはばたく空なのか
わからないまま 鳥は0になる
小石を持ち帰ろうと灰白質は言う
集合住宅はペット禁止なのに
かたい地盤を掘って
駐車場をつくるように
小指は小石の襞へ
からみつこうとする
コカコーラに浸された筋と腱
小石と肺の息遣い 重なる
特急列車が通過します
甲殻類にご注意ください
ひとりでに飛び立つ小石
おわりの海と
はじまりの空のはざま
ドラム缶の青へはさまれるなら
小石は誰かの前世になる
そのとき高らかに鳴り響く
駐車場の崩れ落ちるような
骨折音
小石