ストーリー

小説です。

ママのかお

抱っこ紐の中でママを見る。ぼくはママをみてる。ママずっとななめ下をみてる。知らないおねえさんと目が合いにこやかに笑ってくれた。目はよくみえる。人のかおだけ分かる。感情はないから、ぼくは何も話さない。ママはだまったまま電車にのる。ずっとななめ下。何も聞こえないような。ぼくの声も聞かないことが一目で分かる。ママのことすきねと先生に言われる。そういうことは聞きたくない。
知らない中年女性が手を振ってるのをみただけ。ママに押されベビーカーが動いてる。
パパの帰りは少しおそい。それまで小さく聞こえるラジオの音。口も聞かないというよりか酷くかんしゃくを起こしてくる。パパが帰って来ても。話を聞いてもらえてないと思ってる。ぼくだって思うけど、あきらめてる。そのうち物を投げてくる。パパはしゃがんで抵抗しない。後から知ったが、男は強いからやったら言われるらしい。ぼくは何もしなかった。
デパートの下り階段でママはぼくの手を離した。すたすた歩くママの背を見ないようにして、足を出す。いつから黙ってるんだっけ。
ママのかおは顎しかみないようにしてる。妹ができた。実感はない。ママがいないときにパパはおにぎりをちぎって分けてくれた。大した会話はしてない。パパと過ごしてたのにママが来て二個目のおにぎりを奪い取って捨てた。ぼくはこっそり拾って食べた。いつもママといるからパパのこと知らない。だけど、その日パパのこと知った気がした。それでもパパは休みの日はどこかに連れてってくれる。家族旅行だ。行き先でママがボイコットみたいなの起こした。ぼくはママを無視した。夕食はジュースを飲んだそれ以来、旅行には行かなくなった。
知らない人に香水のにおいをお見舞いされる。思わず手を当ててしまった。ママのにおいだったから。 すれ違いざまだった。そう、すれ違いざま、ママと。感情が前に出るママとすれ違ってる。妹と同じにおいだった。

[イヤママ・リトル]

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ありがとうございました。

ストーリー

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-12-18

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