黒髪少年と試験管少年Ⅲ
黒髪少年と銀杏の試験管少年
試験管の底に、敷き詰められた銀杏。
鮮やかすぎる黄色に、思わず、目を細めた。
くすり、聞こえた笑い声は、試験管から。
銀杏と同じ色を纏った、鮮やかすぎる、君。
綺麗でしょ?
通った、銀杏並木を、思い出す。
そこで、出会い、目覚めた君。
その光景も、重なり、言葉が溢れる。
「綺麗、だな」
2024.12.11
冬の試験管少年を想う、黒髪少年
息を、吸う。
入ってきた、冷たさに、咳き込んだ。
痛いくらいの、風が、肺を占める。
この時季の、儀式と化したような、深呼吸。
それは、君の訪れを、感じるためのものに、なっていた。
かちり、かちり、懐中時計の音は、君の欠片が、身体の中で、響いているように、思わせる。
冬の、始まりだ。
2024.12.14
黒髪少年と雪の試験管少年
雪が、ちらついた。
僅かに、目を見開き、寒さに、納得する。
「そろそろとは、思ったよ」
溢れた声色が、足を軽くする。
部屋に着き、窓辺を見やる。
が、君は、いなかった。
結晶は、浮かんでいる。
ただ、まだ、そうではないらしい。
それなら、
「かくれんぼ、と、いこうか」
遠く、笑う声が、聞こえた。
2025.01.12
黒髪少年と試験管少年Ⅲ