スナイパーズ

確かな「顔」さえ判別できずにいるが

ペシミスティックな皮を被った

輪郭さえも掴めない

得体の知れない何かをリードに繋いで

背後からじりじりと迫ってくる刹那的スナイパーに

生命を狙われている

殺伐とした気配にさらされている 身の毛のよだつ感覚

これで何百 何千 何万回目だろう

病的なまでに冴えわたるこの感覚が

私が綻ぶ瞬間を逃すまいと

涎と血液を滴らせた爪牙を剥き出しにして

策士的な罠をどこまでも仕掛けてくる

ただ走るしかない 私はただ

避けるしかない 逃げるしかない

今 後ろを振り向いたら

二度と後ろを振り向けない躰にさせられてしまう

そんな気がしていた

追われている身でこんなことを謂うのもなんだが

ほんとうは私が

おまえを狙い追いかける立ち位置にいるべきなんだ

暗澹たる感情というものは

主人を迷宮にいざなうことを

いとも容易く成功させてしまう

その要塞には却って芳しいまでの憎悪が立ち込めていて

罠に陥れるために私の意識を奪いに来ようとする

抜け道を探さなければならない

はやくおまえの綻びを

暴いて仕留めなければならない

かつて世界は単純だった

呆れるほどに 単純だった

単純になるまえも あとも

主犯は他でもない

私自身だったのかもしれない

嫌悪が陶酔に化け

陶酔が世界を徐々に蝕んでゆき

何もかもが複雑になってしまった

そうだ

私の創造主は私であり

私の諜報員も私であったのだ

視界が拓けていく

罠が綻びが無防備にさらされていく

もう動じることはない 衒う必要もない

確実な方法でおまえを殺しに行く

襲い来る凡てを「爪牙」で薙ぎ倒し

ようやく出口に辿り着くことができた

意を決して後ろを振り向くと

今まで輪郭の掴めなかった姿が露わになる

一騎討ちをしようか

おまえの正体は

私だ

スナイパーズ

スナイパーズ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-01

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