信じられなくなること
さあもうこんな本を読んでいてはいけませんよ。
目にはみえない「わるいこと」であふれているから、ちょっとずつ、酸素が減っているとおもう。
華やかな景色に目がくらんで、ぼうっとしているうちに済んでしまった晴れの日が、ゆめのように、まぶたの裏にちらつく。
部活を辞めなかった可能性のこととか、別人格のじぶんで過ごす学校生活の、ゆめ。
午前二時、目が覚めるたびにすこしずつ、信じられるものが減ってゆく。ともだち、せんぱい、せんせい、ただしさ、すき、きらい。
すきときらいのしりとりで、不毛な孤独の数をかぞえる。指折り、たりない。
集合写真が届いた。すみっこに、初恋のひとが写っている。スーツがとてもよく、似合っていた。
たくさんの思いこみがいま、正体を現して、ぷかぷかうまれて、おどっている。音楽は、なくたって、おどれたね。
むかし。おとなたちのあざわらうようなことばひとつひとつが、そのうち、じぶんのくちからでるんじゃないかって、こわい。
自己主張のループ。全方位への敬意なんか、とっくに捨ててきた。
信じられるものが減ってゆく。息の仕方は、習わなかった。
信じられなくなること