三題噺「生と死の狭間」「満ち引き」「朝と夜」
私は曖昧なものが好きだ。
近所の不良たちと命がけの喧嘩をして生と死の狭間を漂うのが好きだ。
朝と夜の切り替わる瞬間のなんとも言えない空気が好きだ。
夏には潮の満ち引きを体で感じようと、半日海に浸かっていたこともあった。
隣の家の奴はそんな私を笑うし、家族も私を変わり者として扱っている。
だが、私は曖昧なものを求めずにはいられないのだ。
そして、今日も私は曖昧なものを前に心臓の高鳴りを抑えつけられずにいる。
「じゃーん、今日は牛肉と豚肉と野菜を1:8:2の割合で混ぜてみましたー。」
目の前には皿。
盛られているのは赤や緑が入り混じった茶色の塊。
私は今日も家族が作った特製ドッグフードを思う存分味わう。
私は曖昧なものが好きだ。
だがこれに勝る曖昧なものはまだ、ない。
三題噺「生と死の狭間」「満ち引き」「朝と夜」