調節の針
喉を締め付けてたベルトが
すっと、飛んだ感じがしました
私共の中にあるメーターが
ゆるりと、溶けた気がしました
動けなくしていた靴紐が
ぽたぽたと、こぼれたように思いました
僕は考えました
僕だけの世界は僕だけのものではないならと
朝、水銀の壁に差し込むスプーンも
昼、空いたバックパックを再び詰めるのも
夜、ひとすくいの海に沈むのも
これがそういうふうに、繰り返されるのも
僕は考えました
僕だけの世界は君のものでもなければと
君が僕の重荷を半分にして
悲しみを2人のものにしてくれるように
君が僕を置いてたったひとりで
悲しみをわけられずに黙ることがないように
調節の針