ペーパークラフトマンシップ。
覚えたての舟みたい。
木の櫂を持った漕ぎ手は
波立てる損をせず
余すところのない風の良さを知る。
洗いたてのシャツがベストの内側で
クシャッとなるのが真摯さを感じさせる。
漕ぎ手は良く話し朗らかに笑う。
そうしないと舟が暇するのだそう。
横波で少し跳ねて感じたのは
照れた舟とのコミュニケートに思えた。
近付いた縁でまだ傷知らないみたいに
置いてみたペーパークラフト。
寂しがる子供に見えて
居場所決めた大人にも見えた。
舟折る職人のお爺さんは
ポパイの次にパイプが似合う。
ほうれん草は食べるんだそうだ。
処女航海に乗り合わせたのは
お孫さんの誕生日への贈り物と
新しいセーターを買うため,
お爺さんがそう答えた。
アランセーターが好きなお爺さんは
ピタッと舟に座る。
横向くお爺さんの後頭部。
煙吐くパイプは隠れて見えない。
風で煙は余すところなく散る。
その場所はお爺さんの頭頂部だった。
不安なんてないんだとお爺さんは言う。
天候は大きな雲が
のっそりと動くのがわかる晴れ曇り。
見えないパイプを隠れて信じた。
櫂を持つ漕ぎ手を含めた景色の中で
胡椒が効いたチキンを食べる。
昼食をココで済ませなければお腹空く旅。
塩の匂いも今は,
食卓を飾る調味料みたく幸せの一振りとなる。
偉く上から鳴いた声で鳥の姿を確認する。
食べるなら,今の内と急かす船の上,
喉を詰まらせる。
ワンパクだって言われたら,
照れ笑いをするのが良い。
海が少し入ってくる。
肌さらした腕に触れて冷たい。
舐めるには蒸発時間が短かった。
港で始めて中断していた
ペーパークラフトを再開する。
小さい手にも簡単なものだ。
折るたびに時間が進むように
作業段階を一段づつ登ってく。
お爺さんのアドバイスは時折の上手さに繋がり,
ない時は上手くない私の腕が挟まる。
可愛い奥さんの初料理。
笑って美味しいと言って欲しい,
そんな仕上がりになった。
少しバタつく私のペーパークラフト。
木の櫂を持った漕ぎ手は
余すところのない風の良さを知る。
ならばこれがいいぐらい。
そう思える旅路。
パイプを掃除するお爺さん。
背筋がはっきりとした漕ぎ手。
七分丈の腕を晒す私は
体育座りまでしてる。
ペーパークラフトマンシップ。
珈琲も,
飲んでみたい。
陸の上に上がった後にすることを話した。
お爺さんはお孫さんの,
誕生日への贈り物と自身の新しいセーターを買う。
漕ぎ手はゆっくりしてから考えるんだそうだ。
シャツの皺は整えはするらしい。
私はどうしようか。
むず痒くないマフラーが欲しいし,
伊達で決めたい眼鏡もかけ比べたい。
可愛い私の,
ペーパークラフトも続けたい。
だから私はその街に行くことにする。
街の中を歩き思い付いたら手に取り,
道すがらの気配に目を合わせて
石畳のノックに時差ぼけを起こして,
意地悪そうに砂利道をかき混ぜたり,
木のお店を余所余所しくコツコツし,
畳の硬くて柔らかい曖昧に困ったり,
色んな私になってから
雨降りに深まる街灯下で待ち合わせ,
名監督の役にも立ってあげる。
題名に加えたい。
『ペーパークラフトマンシップ』。
紙芝居でも素敵かもしれない。
途中までお爺さんと一緒にする,
口約束を交わす。
お爺さんはパイプを見せて煙草を喫み,
木の櫂を持った漕ぎ手は波立てる損をしない。
私は二度目の手料理に没頭し始めた。
お爺さんは笑ってる。
地平の距離は変わりなく
見かけの距離を思い知らされる。
それでも進んでいると言えるのは
海に置いたペーパークラフトは遠くなって,
見えないからだ。
置いてかれた子供にも見え
居場所を決めた大人にも見えたペーパークラフトは
偶然にも近付いた覚えたての舟の縁で
まだ傷知らないみたいに泳いでると思う。
また見かけたら拾っても良いと思う。
気持ち良い風の良さを
余すところなく知る漕ぎ手によって
舟は覚えたてを辞め
次の航路を覚えて行く。
次に乗る時には口髭蓄えて
ダンディーな口説きもしそうだ。
その時はお茶でも付き合っていい。
丁度珈琲も飲みたい気分。
偉く上から鳴いた声。
鳥の姿を確認する。
ペーパークラフトマンシップ。
私達は旅の途中。
ペーパークラフトマンシップ。