アステロイド終末紀行
停電した高層ビル群 斃死する烏
黒い太陽 嗤う木々
無人のバス停 千切れたイヤホン
白い病褥 青い夢
焼けた手記 仄かなぺトリコール
終息前夜 バイタルサインの嬌声
半開きの窓 閉ざした瞼
有刺鉄線の向こう いつもの伐採跡地でね
薪の叫び 微かな祈り
濁流の嘆き 167階から転落死
唸るアンドロイド 蠢くパラサイト
極夜とわたし
金属山の麓 錆と暮らす荒野
あまい溜め息 あまい辞書
詩書きと瓦礫 にがい雲
無色信号 無数の倒木
タールの湖 酸のスコール
怯える機械魚 電気砲台の連続
足りない情緒が静かに融ける
失くした五感が甦る
骸骨の軍隊が挙兵する
滅んだ白日を取り戻すために
廻り続ける 灰色の観覧車は今日も綺麗だ
急勾配の坂道には 破れた提灯が眠っている
空を泳ぐドローンは 積乱雲の餌食になった
立入禁止の管制塔で 無色の花火をつくりだす
ブラックアウトした海中で ふたりにしかわからない恋文を紡ぐ
3000年前に死んだ中華街で 余った心臓を捜し出す
今日は何として生きようか
今日もわたしを創ろうか
薄暗闇に微睡む肢体
朦朧とする透明虹彩
色と空を求めて
届くことのない最期のことば
輸血途中の彼女の瞳に
終わらない想いを描き遺した
「またいつか」
アステロイド終末紀行