それもまた気持ちとして。



何も無いのが僕として,
文字通り,
何も無いのが僕として。







影法師でもなく
透明ってことでもなく
空白が生きて歩く。
触れるって意味じゃなく
空白を生むってことになって
歩くのもそれは,
空白地帯がズレるってこと。
くしゃみするにも埃が逃げ
(それは比喩に止まって),
息は吸って
吐くこと。
そこにはある程度の
(例えば気官といった),
過程が要る。
空白は空白だ。
多分息も要らないだろう。







空白は空白だから生きられる。
周囲の,
例えば道路を隔てた自動販売機
(もちろん隔てる道路自体も),
お家,
近所,
まとめて建造物。
何なら地球と宇宙。
個人的に,
父さんと母さんと
任意の,
各々の,
兄弟姉妹から従兄弟から,
家系図を巡り巡って
辿れる人,
知り合った人
(関係性の親密さも含めて),
知り合える人
(結局は可能性ということだけど),
これら周囲から成る空白域。
何もないというあり方。







何も無いのが僕として,
文字通り,
何も無いのが僕として。






空白は
生きるとして。
空白は
生きられるとして。







仮に,
これからここから
お花を摘もう。
そしてから
花輪にして,
妹にでも
恋人にでも,
出会って最初に
出会えた人に
精一杯あげよう。
空白は空白だから,
きっと花輪も
(一つの比喩として,
この世に在りうるのなら),
空白なのだろう。
空白の花輪は相手を悲しませる可能性がある。
空白の花輪に僕も悲しむ可能性がある。
可能性だけでいえば,
可能性だけでいえば,
2人とも喜べるのだ,
けれども







そうだお花を摘もう。
そしてから
花輪にして
妹にでも
恋人にでも,
出会って最初に
出会えた人に
精一杯あげよう。







空白は蜂に刺されるショックがなく,
不器用な手先に泣きもしないけど







そうだお花を摘もう。
そしてから
花輪にして
妹にでも
恋人にでも
出会って最初に,
出会えた人に
精一杯あげよう。







そうだお花を摘もう。
そうしてからも
お花を摘もう。







空白に雨が降って
(勿論皆にも),
傘も刺さない動物が居たら
(都会なら猫,
しかるべき場所なら狼。例えば。),
僕は途方に暮れるだろう。
背が高くても雨避けに足りず
(電柱登っても,近くの手頃な木に登っても),
背は低いから何も出来ない。
濡れる雨に濡れることも出来ず,
乾いたバスタオルで拭うことも叶わない。
歌?
どうだろうか。
震える空気はあるのかな?







震える空気はあるのかな?






空白域に雨が降って,
それは勿論皆にも で,
傘も差さない雨と一緒に
動物が居る。
動物が居る。
それは都会なら猫で,
しかるべき場所なら狼だ。
多分に物語はそこで終わって
空白域に雨が降る。
それは気象庁の
予報に近いと思う。







僕は思う。
それは気象庁の予報に
近いと思う。







レインコートの小さい子が
傘も差さずに歩いてく。
それは黄色の小さい子。
傘も差さずに歩いてく。







もう少しだけ鉛筆を削り,
丁寧に削ったあとを
ごみ箱に片して,
雲の一つも書いた。
画用紙は広がって
奥の方から風も吹いて
影から謎の飛行機もあった。
それは提出する絵にだった。
空白は残ってもいた。







隣のお友達の絵に並ぶ
僕の絵は園の中の
組みの中。
並んで見えた
組みの中。







空白の雨は止む。
それは予報に
近かった。







何も無いのが僕として。
文字通り。
何も無いのが僕として。






空白は
生きるとして。
空白は
生きられるとして。







空白は見つめる。
取り敢えずで腰を掛け,
バス停をピン代りに視界を留めて
電話ボックスの位置を知り,
ランニングマンの
タイムと数を数えて,
信号待ちの朝の車から漏れ聞こえる
予報に耳を傾け
(それは天気だけじゃなく),
絵の構図を考える頭に
ぽっかりと,
浮かべてから,
世界に言う。
それもまた気持ちとして。
それもまた気持ちとして。






それもまた
気持ちとして。






世界に言う。







文字通りにはいかないけど。







世界に言う。
それもまた
気持ちとして。

それもまた気持ちとして。

それもまた気持ちとして。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-11

Copyrighted
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