甲子園のスワンレイクナイター。



ポップコーンが多過ぎて
ホームランが生まれて,
隣の人の名前も知らず
こちらも特に名乗らないで,
9回表で戦い続ける。
バットがめがけて宙を飛ぶ。







階段を下る
売り子のお姉さん。
ウグイス嬢がその名を呼ぶ。
振り向くたびにビールの銘柄
(大きく分けて,現在2種類で),
キンキンの 音がする。
見えるのに遠いその背中,
声が届かないロボットガール。
タンクの未来。
僕ビール。
デシリットルの夢は叶うだろうか?







7回の裏の
Lucky seven。
キャップを正して
刻を待つ。
ざらつく舌の土埃。
甲子園には行ったことないのに。







ロボットガール。
そのタンク。
デシリットルの
未来はあるかい?







連れてこられた赤ん坊。
ここはどことママに捕まり
満月指差す。続けて握る。
掴めないこと,
知らないから。
ママに訪ねて満月指差す。
続けて握って続けて握る。
連れてこられた赤ん坊。
ここはどことママに捕まり,







ヒットが生まれた。
大人は纏まり
皆で喜び
分かち合う
その声。







赤ん坊は驚く。
満月はナイター中継。
関心は既に
ビスケットにとって変わられた。
月面上。
誰かがその上
歩いたとしても
満月はもうナイター中継。
ママの膝で
齧るビスケット。







ツーストライク
スリーボウル。
アウト数。
気になって。







掲示板を右に向けば
ポップコーンは
一杯だった。







ツーストライク
スリーボウル。
ワンアウト?
ツーアウト?







ニルヴァーナが聴けなくて
アイドルばかり追いかけなくて,
サッカーは今しがた
感動的なゴールを決めた。
白いシャツに収まるは黒電話。
バーゲンセールのメールの着信。
リンリンリリーン。
リンリンリーン。
リンリンリリーン。
試合経過が8回を迎え,
延長戦が後ろ足で
顔を掻きつつ滞りなく,
勝負は9回に進んでいく。
その裏は返りを待つ。
僕はビールを
諦めない。







ロボットガール。
そのタンク,
未来はまだ
残ってる?







ロボットガール。
その未来。
キンキンのまま
捨てるのなら。







僕ビール。
銘柄は
この際少しも,
問いはしないさ。






ロボットガール。
キンキンの
タンクは鈍く
泡が溢れる。







見た目に反するポップコーン。
膝に負担ない軽い重み。
もう終わり。
水面下なんて存在もしない。
スワンレイクは不満げだ。
試合は終わりに
差し掛かる。







赤ん坊は起きていた。
目が合うけどこちらを見ているか
好奇な意識が窺えずに
カキーンと鳴ってホームラン。
掲示板が裏返る。







1点入った満月は
ビスケットに取って代わられた。
行ったことがない甲子園。
土埃ごとビールを飲む。
ザラつきで味蕾を識る。
ダジャレには少しも笑えない。






カキーンと鳴るホームラン。
掲示板が裏返る。
ポップコーンは軽過ぎて
その見た目は多過ぎだった。







スワンレイクは満月に行く。
赤ん坊は仰ぎ見る。
スニーカーのタイプは古く
状態は真新しい。
Lucky sevenの裏側。






煙は1つも上がらない。

甲子園のスワンレイクナイター。

甲子園のスワンレイクナイター。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-10-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted