季々
一
伸ばしたハルの水に触れ
逆さに泳ぐ、浅く潜る。
表面さらう陽、ばしゃばしゃ割れて
かたむける、転がしことばの
またたき視界が幹のきき、きぎ
舞えば色々、匂いはき、
あかくした舌、吸えば生き死に
見上げ動くはしろあお、光
それら並べた点がほし、ぼし
白い歯見せた、まひる眩しく
閉ざす目、視ること
数え長々。
膨らむ肺の、肺の、
底。
足の裏を向けた青空、
高くて、広くて、滴が戻る、
そうして
開く、大きく
たいかん、
目、覚める朝。
私、回るみ。
二
ナツがあるなら、すくすく根差し、
吹いた風、止まらずのうち、
せかいのうち、なか。
指先沿わせた曲線、直ぐ、曲線。
額に浮かぶ、発想が泣く。
あなたの、と喋るあなたの
覆いは出かけ、
ひろげ、あなたのふとした見方、
見方。
あれがそう、と
飛んでく行機、雲にちかって、
口にした、のさ。そういうもの、もの。
わたしが綴る、記号に遊び。
きみにわたすと、わたしにいう、
きみ。
中々。順々に段落、
す、と書いたし、消さずに残し、
木、にしてみて、ふるふる探した。
けしゴム渡す、
貴方に私。
伸ばし、消える。
罫線は広く。
とんとん、とんっと
合図は早く、
かたづけ始め、
履いた足だけ、前を向いて、
話した私が、数十年と少し。
きみ、と呼ばれて後ろの姿、
低いえいえい、替えて、換えて、
影にしてみた。
あのひとわたし。
目と目であった。
わたしに会えて。
三
アキと鍵かけ、パタンと出かけ。
指差し、確認、
おててとつないだ。
枯れ葉、と、あれは?と
二人で進む。
大小、るる、らんらん、
と口ずさむメロディ。
まがる角、立ち止まるのが良し、
また指差し確認、
みぎ、あれひだり。
続きのお話、
そうだね、
「かもめはお口を、遠くに閉じて、」
それで、とここで一幕、
通りにさざめく黄色と、枯れ木。
任せる、
橙色のウソが舞い。
あの笛の近くの、
音階奏で、
絵本は忘れた、
じゃあ、頁を数える。
じゃあね、
と始める声から教わる、心。
きみはすてきな
ロ、をして笑う。
それならわたしは?
ト、と考え。
歩き、歩いて、
懐赤く、
曲がる角から
帰る思い出、
そうだ、あれだと、
笑んだ。
思い出。
温かい、にんじんが好き。
四
うさぎから、山の上まで。
(借りていた芽の名前を所定の場所に、)
ふかふかの、絨毯という。
大きな窓が取り込む方角に向ける、
首元のネクタイ。
係りの者が、
逃げていた蝶を持って来た、
頭を撫でた、撫でて欲しそうな仕草で、
大きな大きなあくび。
失礼、
と。
次いで、
ひと匙の、
動きが混ぜる季節の、
名前が耳にこなれた。
(運ばれて来て、)
誰かの名前が呼ばれた。
白い手袋が重ねられ、
厚いコートが腕にかけられる。
お礼、
(お呼びしていた、あれがそうです、と。)
舞い込む、足跡が続く。
お気を付けて、
と落ち着いた調子。
雪景色も、
途切れ。
浮かぶ白から、
しゃんと進んだ。
ふゆ。
そうなんだ、と願い込められた。
季々