空夢

君だけが聞こえるこの声で
名前を呼び続けている


ちいさな手のまもり方も
言葉のない温もりの伝え方も
教えてくれたのは君で

凍てつく心を解いて
刺で覆った身体を抱き締めて
君がつぶやいた名前はきこえない

つぶやいても届かない声が
叫んできこえない音が
みつからないひとつの影を捜せずに
泣いていた、


みえない壁の向こう側に
君は居たんだろうね。
けれど、どの壁伝いに歩いてみても
途切れない空と地面が
ちっぽけな心の中に不安を落としていく

同じ場所に居て
みえない姿の体温が
ふれあえない現実を嘆いた

大衆の舞台上 目が合った瞬間に
踏み切りがなる前に
町のゲートが閉まる前に
草原の中でも
茜色の空の下でも

君は苦しくなるほどの優しさで
笑っていた、

君と同じくらい強い人になれたなら
君に逢いに、
「はじめまして」
を言いにいこう
拙いひとつの質問を携えて。


「あなたは夢をみますか?」

空夢

空夢

以前に紙面で掲載した作品です。夢シリーズ3作品目。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-09-25

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