果熟



イグアナにあげた果汁を知らない。
何とも言わない顔をしてるし。
色は蜜柑に似ていても
きっとそうだと言えないでしょう?




つねった右の鈍痛から
生える木には苺がなる。
白地の靴下を履いていて
潰したジャムが可愛くなる。




興奮と驚きに埋まる予定は
時々息をするのでしょう。
目は見えなくなってるだろうから
マンゴウジュースをくれたら述べて。




洗いたてのシャンプーから
桃の味なんて感じないで。
乾かしたくない秘密の蜜は
スプーンを重たくする触感なんです。




満ち満ちた水槽に
小ぶりの葡萄を浮かべてく。
横から漏れる紫を飲んで。
鼻の奥が香るから。




歯型も残る西瓜を前に
素足の形をいじくる午後に
甘え込んでる柔い甲,
痛くてお臍が生まれそうです。




お腹が空いたら嗅がせてあげる。
齧るの禁止の人差し指。
今日はどうやらご所望の
ちょっときつめの林檎が生きてる。




掻き分ける前に割ってみて。
意外に種は無いと思うよ。

果熟

果熟

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-08-08

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