
縁結
アマゾンにて発売中。
正月特別公開です。
新米縁結びの神
縁 結
作 杉 山 実
14-1
{自己紹介しておきます、僕 去年この田舎の火傘神社に、呼ばれた新米の神様で浅宜彦って云います、
人間の世界の色恋の結びの神なのです}
火傘神社は歴史が有るのだが、少し町から離れているので、祭りと正月以外は参拝客が少なくて、繁盛していない。
神社の神主の松尾益次は苦肉の策で、縁結びの神様の降臨を願い出て、昨年小さな祠を造り迎え入れた。
{僕が来ても、CMをする訳でも無いので、唯、噂が広がるのを待つだけ}、
神社のパンフレットには、別刷りの紙が挟まれて僕を紹介した。
パンフレットを新しくする予算が無い、氏子の寄付頼みなのだった。
今も境内の空き地で、少年達がサッカーの練習をしている。
{こんな場所でするなよ、危ないよ}そうは云っても逃げられない、再三小さな祠をボールが掠める。
しばらくして「ガータン」大きな音が祠にして、屋根が傾いていた。
「痛い、ほら、当たったじゃないか、壊れたよ、予算無いから、神主さん修理してくれないぞ」
少年達は壊れたのを見ると、練習を止めて蜘蛛の子を散らす様に、消えてしまった。
{もうすぐ、お正月なのに、これは、恥ずかしいよ}
お賽銭はカウントされて、自分の成績として本山に送られる。
人間には見えない世界、神様も働かないと出世しない。
「誰だ、あの悪餓鬼共だな、修理の予算が無いのに、正月には間に合わん、簑でも被せるか」神主の松尾が困り顔で言った。
「そうですね、私の家に、古い簑が有ります、紐で縛れば、飛ばないでしょう」事務兼副神主の安間昭二が苦肉の策を言う。
夕方、小さな祠に簑が被せられ、それなりに形に成った。
綺麗な祠から一転、薄汚れた簑に代わった。
殆どの参拝客は本殿の参拝を終えると帰って行く、知名度が低いのにこの姿だ。
やがて正月前に成って、小さな看板の立て札が祠の側に立てられた。
(良縁を求む方は、お参りを)と書かれた。
これで誰かお参りに来てくれるかと、安間のお金を使わずにの作戦だった。
流石にお正月、この山の中の神社にも参拝客が訪れる。
数は少ないが縁結びの神様にお祈りをする。
賽銭が五円「チャリン」
「良い人に巡り会います様に」と手を合わせる。
二十過ぎの女性の二人組、もう一人が「イケメンに会えます様に」と手を会わせる。
{二人で十円、トホホ哀しくなるよ、それに良い人って云われても、僕判らないよ、イケメン?
無理よ、君の顔はイケナイメンだよ、具体的に言わないと、僕は動けないのよ、判る?}
参拝客を見ながら、ぼやきが入る浅宜彦だ。
今度は男性三人がやって来て、賽銭も入れずに
「良い女とSEX出来ます様に」
「女に今年一年困りません様に」
「誰でも良いから、一人廻して」と祈った。
{アホか?こいつら、後ろから押してやれ}一人の身体を押した。
つられて三人が階段につまずいて転ける。
{馬鹿}と笑うと
{こら、悪戯はいけません}と本山の師匠が怒る。
{すみません}何処に居ても見ていて、師匠に縮みあがる浅宣彦だった。
でもな!活躍出来ないよ、具体的に頼まれないと、良い人って誰だ?イケメンって?自問自答の浅宣彦なのだ。
そこに、三十歳位の女性が来て
「今年こそ、平野和紀さんと結ばれます様に」と百円を賽銭に入れた。
{おお、これだよ、賽銭も百円、願いもはっきりしている。チェック}この女性に付いて行こう、とマークを入れる、こうすればいつでも会える、人間に比べて便利だ。
一瞬で移動が出来るから、行動を調査出来るのだ。
しばらくして、今度は若い二十過ぎの女性が、千円の賽銭を入れて「平野さんと結婚出来ます様に」と祈った。
{えー、これ?三角関係?取り敢えずチェック、千円だからな}正月から難しい縁結びか?
暇に成ったら、調べて見るか、賽銭も多かった。
元旦はその二人だけで、他の人は統べて良い人に、巡り会えます様にのお祈りだった。
賽銭も二千円は集まった。
でもあの若い女性の千円が無かったら、哀しい程少ないと嘆く浅宜彦だ。
人気が出ないと無理だよな、でも具体的に言われないと対応は出来ない困るよ、具体的にとは書けないのだ。
翌日の昼間、賑やかに成って居た境内、地元出身の芸能人が初詣に来るとの噂でファンが多数、見学に来ていたのだ。
自分が此処に来てから初めての人数、佐用比奈子、最近売れ出した女優らしい、可愛い女性でお忍びの感じでは無い、友達数人と参拝をして、立て札を目にして立ち止まる。
「どうしたの?比奈子?」
「この神社に、縁結びの神様って有ったのだ」と祠を見る比奈子。
「そんな、薄汚い縁結び御利益無いわよ」と友人が言う。
「良いのよ、地元に戻るのが、少ないから」比奈子が薄汚れた祠の前に座って、賽銭を入れた。
{えー、万札だよ}驚く浅宜彦。
「先輩の堤功一さんと、会えます様にお願いします、話しも出来る機会が無いのです、お願いします、話しをさせて下さい」と一生懸命に祈って、少しの時間手を合わせる。
{これは、チェック、お賽銭も多い}
「何をお願いしているの?長いわね」
「彼氏!」
「比奈子、芸能界に居ないの?」
高校を卒業して、比奈子は東京に出て行った。
元々母親が芸能界好きで、習い事をさせて、芸能界に興味を持っていた。
母泰子も少しの間だが、芸能界に身を置いた事が有った。
直ぐに辞めて、地元に戻って母親の病が原因で、帰らなければ成らなかったのだ。
その為、娘が生まれて美人なら、必ずと考えていた。
その為亭主も顔の良い男を選んで結婚する周到振りだった。
念願の娘は美人に生まれた。
泰子はその為物心が付いた時から、毎日の様に比奈子に芸能界で役立つ事を教え込んだ。
去年から本格的に、芸能活動を始めて、今では来年の連続ドラマの主役の座を射止めたのだ。
{取り敢えず、この娘の願いは調べて、聞いてやらなければ}
その日もパラパラと参拝は有ったが、具体的な話しをする人はいなかった。
早速翌日から、調べに行く浅宜彦、留守の間は石が統べて記録して、見たり聞いたり出来る。
休憩に使うと、本山からお叱りを受けて、出して貰えなくなる大変厳しい掟だ。
まあ、人間の様に、食事も、着る物も要らないし、眠らないから、二十四時間営業、平野和紀に会いに行ってくれないと、自分では行けない、一度チェックを入れると自動で会いに行けるが、それ以外は行けないのだ。
児玉純子の処に飛んで来た。
平野和紀って?何処の誰だ?純子の背後を付いて行く。
この時この女性の名前、住所、仕事が判った。
一瞬でもう一人の女性の処に行く浅宜彦、その女性の名前は小林絹代二十二歳、同じ男の取り合いかな?
小林と児玉が同じ職場で、平野は共通の上司、しかも妻も子供も居る。
何だ!これは、初めての仕事から、困惑の浅宜彦だった。
.
初仕事
14-2
祠に戻って、本日の様子を聞く、何も残っていないと云う事は、誰も願い事が無かったのだ。
直ぐに児玉の元に戻るとこれからお風呂の様だが何か変だ。
{この子、妊娠しているのだ、平野の子供?益々混乱じゃあ無いか?まさかあの絹代も?}と移動する。
{わー、目のやり場に困るな、風呂場だよ、一人で住んでいるのか}
平野和紀に興味が湧く、でも会ってくれないと、どんな男か判らない。
比奈子の処に移動する。
机の写真を見つめる比奈子、そこには学生服の男性の姿、これが堤功一だな!
間違い無い、何処に居るのだ?この男は?写真をチェックする浅宜彦だ。
{あれ?おかしいな?反応が無いな、写真でも移動出来たと思うのだが、一度総本山に問い合わせしなくては?
可愛い女の子の涙には弱いよ}移動だ。
お風呂からあがって髪を乾かす絹代、ドレッサーの処に二人の写真、クリックをする浅宜彦、
一瞬のうちに、住宅の中に子供と遊ぶ平野和紀、四十代前半、美男子でも無い、
二人の子供と楽しそうに遊ぶ、小学生と中学生の女の子、児玉純子のお腹の子供の異母兄弟?
これは、複雑な事に首を突っ込んだと、調査が必要だ。
二人に頼まれたけれど簡単には叶えられない、そう思う浅宜彦、職場が同じ銀行の同じ支店なのは判った。
職場での様子を調べてから結論を出そうと思った。
祠に帰って、今日の願いを調べると、
ひとり七十歳のお爺さん工藤三郎が、菱田雅恵さんと良い仲に成れます様にと願いって一千円の賽銭を投入していた。
他は殆どが良い人が見つかります様にとか、良縁が来ます様にが、圧倒的に多い、
賽銭は二千五十一円、正月の三ケ日が終わっての合計二万万円には満たない、
比奈子が一万円を入れなかったら、僅か七千円弱、これは中々だと思う、同じ様に神主の松尾も賽銭箱を開けて溜息をつくのだ。
「正月でも認知度は低いですね」
「簑でくるんだのも、見場が悪かったですね、看板もう少し大きくしますか?」
「女性誌にCM流すと良いらしいですよ」
「実績だよ、何か実績が有れば、有名に成るのだが」
松尾と安間はバイトの巫女と一緒に、三ケ日の集計をしながら話していた。
異なる神様との交流は一切無いので、氏神様の実績は判らない、勿論会話も無い、
総本山とは、三ケ日の結果報告はしなければ成らない。
まだまだ新米の浅宜彦、頑張りなさいと励まされて今年の正月は終わった。
四日に成るとまばらな参拝客に成って、普通でも寒い山中がなお一層寒く成る。
今日から仕事始め、地元の銀行員が参拝にチラホラと来る。
その中にあの平野和紀の姿が見えた。
彼は縁結びの神には見向きもしない、縁が多すぎるのだろう、
それ程の美男子でも無いのに、女性には人気が有るのだと不思議だった。
彼と一緒に付いて行こうかと思った時、あの比奈子が一人のお忍び姿で来たのだ。
態々自分の処に真っ直ぐに来るではないか!何事かと思うと、再び万札を賽銭箱に入れて
「明日から、仕事で東京に戻ります、お正月にお願いしました事、よろしくお願いします、お忘れに成らない様に」
柏手を打って「堤功一さんと、夢でも良いから会えます様に」そう言うと一心に祈るのだ。
二万も貰った何とかしなくては、この浅宜彦の名が廃る。
{でも、写真で行けない、どの様に探す?家には行けるから、何か探してみるか?それとも比奈子に付いて行くか?}
比奈子は寂しそうに見えた。
東京に行くのが嫌なのか?兎に角今は平野の後を付いて行こうと思う浅宜彦だ。
銀行の正月は、年始廻りに支店長を始めとして、主だった人は出て行く、
この支店には三十二人の行員が勤めて居て、小林はカウンターの仕事、児玉は平野の補佐の仕事をしている。
昔の彼女が児玉で新しく手を着けたのが小林の様だ。
{この様な場合は、どの様に決着を付けるのだ、賽銭の多い方?
でも妻も子供も二人居るよ、これ以上縁を結ぶと泣く人多い、困ったな}
児玉の子供が平野の子供だったら?自分の仕事は結婚させるのが役目、一組結ぶとポイントが高くなる。
でもこの児玉と結婚をさせると離婚が成立して、殆どポイントは上がらない、もう少し良いお願いをして欲しいよ、
でもお願いが無ければ仕事も無いのだが、世の中には全く女性に縁が無い男性も居るのに、
こんな三角関係とか四角関係の願いしか無いのかと嘆く浅宜彦だった。
でもこれは、簡単には願いは聞けない、時間が懸かると判断をする浅宜彦なのだ。
祠に戻る。
今日の願いを調べると三人だ。
藤井宗平四十五歳「伊藤恵子さんと結ばれます様に」賽銭が千円、他の二人の願いは良い人だった。
早速飛ぶ浅宜彦、アパートの一人暮らし仕事はフリーター、夕飯時カップラーメンとおにぎり?
凄い生活だな、それで賽銭が千円?部屋に有るのは小さなテレビ、炬燵、タンス、風呂も無い、何故?こんなに貧乏?賽銭が多すぎる。
千円有れば、二日は生活出来そうだ。
食事が終わると、煎餅の缶を取り出して、何やら見つめている。
新聞の切り抜き女性の写真、随分古い色の変わった写真だ。
体育大会のインタビューの様な写真を、穴の空く程見ている藤井、この女性が伊藤恵子さん?早速チェックすると、移動した。
先程の家とは段違いの豪邸、写真の面影が少し有るが、随分美しい女性に成って居る。
三十歳前だろうか?不釣り合いが歴然としている。
伊藤恵子の家は地元の旧家で昔は造り酒屋、今、父圭三は市会議員、恵子の部屋には弓道の優勝カップが並んで居た。
でも同級生でもない、藤井との関係は?
母の恵が「恵子良い縁談よ、この人に決めたら、一度お見合いでもしてみれば?」
「私は、恋愛がしたいのよ」
「何を、言っているのよ、去年も変な男に付きまとわれて困ったでしょう」
「それは、そうだけれど」
「もう、三十歳よ、早くお嫁に行かないと、子供も遅く成るでしょう」
「気乗りしないのよ」
「いいえ、仲人さんには、会うと返事しました」
「えー、そんな」困り顔の恵子
「再来週の日曜日、お願いね」相手の写真を置いて母は恵子の部屋を出て行った。
写真をチェックする浅宜彦、一気に飛んだが薄暗い場所、スナックか?
見合いの相手、佐藤伸也三十二歳、一緒に飲んでいるのは若い女性、小南まどか二十三歳
「伸也、見合いどうしてもするの?」
「お袋が五月蠅いから仕方無くだよ、俺はお前が良いのだよ」
「ほんと!」そう言われてしがみつくまどか、
{若いだけ、恵子の方が綺麗だしお金持ちに見えるけれど}と考える浅宜彦
「その、恵子って女、ストーカーに付け回されていたって、本当なの?」
「お袋が、調べてそう話していたよ」
「その男に強姦されたとか、じゃあないの?」
「それは、無い様だ」
「お金持ちでしょう?」
「そうだと、思うよ、お袋が釣り合うのが良いと話していたから」
「伸也の家も金持ちだからね」
{あの男ストーカーなのか、恵子さんと結ばれたいとは、厚かましい男だな、賽銭貰っても、無理だよ、でもこの男も無理だな}
不適合とチェックを付けた。
これを付けると、絶対に結婚出来ないのだ。
浅宜彦にしては珍しく早い結論、見合いをしても絶対に決まらない、取り消しも出来ないのだ。
不思議と藤井宗平には何も決めない、浅宜彦の気持ちに何か違和感が残って居た。
事件を調べてみようと決めたのだ。
比奈子の恋人
14-3
浅宜彦は今、児玉純子、小林絹代が平野和紀との四角関係、そして佐用比奈子が堤功一との出会いを求めている。
工藤三郎が菱田雅恵と結ばれたいと願い出ている。
藤井宗平が伊藤恵子と四組を纏めなければ成らない。
一番沢山賽銭をくれた比奈子だけが、相手の堤功一とコンタクトが出来ない、不思議な事だ。
工藤三郎は連れ合いに死に別れて、今は年金暮らし、一緒に遊んでいた友人も一人いなくなり、また一人と減って、
いつの間にか一人に成っていた。
そんな三郎の楽しみはスナック、カラオケに行く事、田舎のスナックには年配のカウンター嬢も居て、
最近は一人の女性に的を絞った様に週に、三日彼女の出勤日に合わせて通う日々だ。
彼女の名前は菱田雅恵、本名が判るまで半年掛かって、
ようやく最近では食事からスナックに、漸く同伴出勤をする仲に成って居た。
年齢は本人が四十代と云うが、実際は五十代半ばだと、思っていた。
三郎は願望を込めて、新年の参拝の時にお願いをしたのだ、もし叶えられたら、結婚もしたいと考えていた。
雅恵は結婚を一度したのだが、亭主の浮気が原因で別れたと店でも、食事に行っても語っているから、本当なのだと思っていた。
浅宜彦は一番纏まり易そうな工藤から、ポイントを稼ごうと行動を起こした。
工藤の行動を見る為に一日付いて歩く、夕方食事を彼女とするらしい、これは彼女もチェック出来るとテーブルの横に腰掛ける、浅宜彦。
楽しそうに話す二人、
{これは仲が良い、支障が無ければ、結ばれるな}
十時位に工藤が帰ってからの様子を見れば、大体判る一度戻って、今日の参拝客のチェックをしよう、と祠に戻る。
参拝客二人、何も言わずに手を合わせるだけで、願い事は無い、東京の比奈子を見に行こう、まだ時間が有る。
一瞬で東京のスタジオに飛んだ、比奈子はドラマの練習をしていた。
春からの連続ドラマの練習、何故堤功一の処に飛べないのだろう?写真が悪い?
休憩の時、胸のペンダントを見る比奈子
{写真でも入っているのか?}と覗き込む浅宜彦、予想通りそれは堤の写真、これならとチェックをする。
移動だ{あれ?行かない?何故?}不思議だ。
今度師匠に尋ねてみよう、何かの時に行けない場合が有るのだ。
外国?行けなかったかな?兎に角時間が来たので、スナックに移動する。
丁度雅恵に見送られて帰る三郎、店はママと毎日交代で女性が入って居る。
金曜日は忙しいので三人、平日は交代で四十代の女性と雅恵が入って、ママとペアで働いて居る。
客も高齢化で若い客は少ない、ママも四十代だから、若い客は少ないのは判る気がする。
「工藤さん、雅恵さんに惚れているね」とママが言うと
「金払いの良いお客さんだから、良いでしょう?」
「助かるけれど、雅恵さんは工藤さんの事、どう思っているの?」
「どうって?」
「あの目は、本気の目だよ、気が無かったら、深入りしない事よ」
「判っていますよ、食事以上の事は行きませんよ、お爺さんには興味無いから」
{あれ!これまた、難しいのか、師匠と相談する事が増えたなあ、難しい}と頭を抱える浅宜彦だ。
祠に戻って師匠に尋ねる「すみません、写真で移動出来ない人が居るのですが?」
「それは、写真が正しくないのだ」
「正しくない?」
「本山で修行中、寝ていたのか?」
「いいえ」
「お前の成績は悪い、神としての独立としては、ギリギリだ、写真では無い、絵でも移動出来るのだ、
作られた写真合成とかの場合、それと写真の人物がこの世に存在していない場合も行けない」
「じゃあ、師匠、写真の人間が既に亡くなっている?」
「そうじゃよ、その可能性が高い」
「それから、三角関係とか、全く相手にされていない場合はどの様にすれば、良いのでしょうか?」
「本当に、お前は勉強したのか?」
「はい、一応は」
「複数頼まれた場合はお前の判断で一番良い人を結び付けるのだ」
「不倫の場合でも?」
「勿論だ、それがお前の仕事だ」
「はい、判りました、頑張ります」
浅宜彦は二つの事を知った。
死んで居ない人の処には行けない、自分の自由で縁を結べば良い事。
じゃあ、考えが変わってしまうのかな?嫌われている工藤さんが好かれるの?嘘?一度誰かで実験が必要だ。
急に態度が変わるのって気味が悪いな。
そう思ったが、工藤が気の俗に思う浅宜彦は師匠の言葉が、実際にはどの様に成るのかも確かめたかった、縁結びの石を適合にした。
明日は会わない日だが、二人の行動が気に成る浅宜彦、比奈子の彼氏が若しも亡くなっていたら、真夜中に比奈子の元に移動する。
マンション住まい、セキュリティの完璧なマンションの一室に比奈子は住んでいる。
寝顔が可愛い、枕元に立つ浅宜彦、若しも亡くなって居たら、彼女の頭の中に入れる筈、写真を比奈子に翳してクリックをすると、
そこは高校生の功一が見事に蘇っていた。
{亡くなって、居たのだ、何故?死んだのだろう?}比奈子の記憶の中を覗き見する。
{わー、無差別殺人、歩行者天国で、覚醒剤で錯乱状態の男が、暴れて、功一は比奈子を庇って、刺し殺された}
東京の大学に行くのが決まって、二人で遊びに来て居ての事故、功一高校三年の三月の事故だった。
比奈子は彼に会いたいのか!この記憶を蘇らせてあげよう、浅宜彦は二人の楽しい思い出を探した。
関西のテーマパークに行ったこの記憶が良いね、驚く程鮮明にその場所その情景が蘇るのだ。
記憶の扉を開いて、セットして、浅宜彦は比奈子のマンションから消えた。
翌朝、目覚めた比奈子は、我に返って、
「神様、ありがとう」「神様、ありがとう」と何度も呟いていた。
その顔はもう涙で濡れていた。
翌日の昼間、工藤三郎は、普段は行かないスーパーに買い物に行った。
いつもは近くのコンビニで必要な物だけを入り用買いだが、今日は何故か足が向いた。
色々な物を籠に入れる工藤、そうだ歯磨き粉だと何気なく、棚から取ろうとしたら、同じ物を持つ女性の手
「あっ、すみません」と謝って、
「あっ、工藤さん!」そう言われて見ると、
あの菱田雅恵「雅恵さん?偶然ですね」
「工藤さんも、此処で買い物されるの?」
「ええ、はい、嫌、時々」偶然に会う戸惑いで、言葉がはっきりしない工藤、
夜見る雅恵と異なって、凄く新鮮に見えて、何処か若く、見える。
雅恵も、昼間見るとそんなに年寄りに見えないわね、背筋も伸びて姿勢も良いわねと思う。
「コーヒーでも飲みに行きませんか?」
工藤の誘いに、雅恵は今から行く用事を忘れてしまった。
「良いわよ、時間有るから」二人は一緒に近くの喫茶店に入って行った。
飲んでいない二人が話しをするのは始めてかも知れない、中々感じの良い人だわ、いつも飲んでカラオケ歌って居る。
イメージが大きく変わった瞬間だった。
二人は時間を忘れて色々な話しをする。
昔の話しをする工藤を年寄りだと感じていた雅恵が、今は工藤さんって物知りですねに変わってしまった。
この偶然を浅宜彦が縁結びをしたからだ。
二人の気持ちが急速に接近した。
翌日の夕食の約束をして別れるまで、一時間以上此処で二人は仲良く話して居たのだ。
比奈子のツイッター
14-4
翌日、浅宜彦は結果を見る為に、夕方工藤さんを見に行く予定にしていた。
祠に参拝の客は皆無、神社に来る人も疎ら、山の中の神社にこの寒い真冬には中々参拝客が少ないのが実情だろう、
浅宜彦の縁結びは有名では無いので、本殿の参拝者が気づいて立ち寄る程度なのだ。
空は今にも泣き出しそうな黒い雲、開店休業は決定的、藤井さんの処に行くか、
浅宜彦はあのカップラーメンを食べながら、千円の賽銭を入れた事が気に成っていたのだ。
藤井は工事現場の旗振りの仕事をしていた。
今にも冷たい雨が落ちて来そうな空を見上げながら、旗を振っている。
若い時からこの様な生活なのか?あの恵子さんとはとても似合いとは云えない、年齢も離れている。
ストーカーの憧れ?恵子を見に行く浅宜彦だった。
丁度先日の見合いの話しを母親としている恵子
「貴女がはっきりしないから、先方から断られたわ、恥ずかしいわよ、こちらが断るのは良いけれど、見合いもしないで断る何て!」
と怒る母、恵
「良かったわ、私気乗りしていなかったのよ」
「そんな事を言うから、変な男に付け回されるのよ」
「藤井さんね」{おお、藤井さんの話しだ}浅宜彦は聞き耳を立てる。
「犯罪者にさん、って呼ばないでよ、気持悪い」
「私は、別に手も握られていないわよ」
「でも、警察が捕まえて、仕事も首に成ったでしょう」
「あそこまで、しなくても良かったと思うわ」
「いいえ、あの手の輩には、あれ位の罰を与えて当然なのよ」
{これは、何か事情が有るな、仕事を首に成ったのか?でも家族は?}浅宜彦の疑問は藤井の家族に向かった。
祠に戻ると、前で数人が話しをしている。
「移転しないと、此処では無理ですよ」と男が言う、
神主の松尾、事務の安間が「此処で、作るのは難しい?」
「はい」
「それじゃあ、本気で考えないといけないのか」
「折角、此処に来て貰ったのに、撤去ですかね」
{えー、撤去!そんな!}落胆の浅宜彦、
僅かの期間でお払い箱?失業か?本山に戻って、調査の仕事か!
沢山の願いの実証の為、各地に助手が飛び回って、今浅宜彦がしている事を助手に調べさせて、師匠が最終決断を下すのだ。
小さいけれど、独立すれば一応は自由だ。
昨日の工藤と菱田の様な事も出来る。
恵子の見合いも壊した。
本山に行けば自分では何も出来ない、嘘の報告をすると罰が降るので、正確な調査が必要なのだ。
結構疲れる仕事なのだ。
今夜は、工藤を見に行く元気も無かった。
浅宜彦の失望とは異なって、工藤と菱田は楽しそうに、食事の後店に来て、デュエットでカラオケを歌い続け。
「どうしたの、今夜はデュエットの曲ばかり歌うのね」とママの小泉容子が焼き餅を焼く程、二人で寄り添って歌うのだ。
いつもは十時に帰る工藤が十一時迄店に居た。
ようやく帰る工藤を送って行く、雅恵が戻ってくると
「どうしたの?今夜はいつもと、違ったけれど?」
「昼間ね、偶然会ったのよ」
「誰と?」
「工藤さんに決まっているわ」
ママは怪訝な顔に成って「昼間会って何か有ったの?」
「お茶行っただけよ」
「それで?今夜は変だったわよ」
「そう?工藤さんって、良い人よ、優しい、思いやりが有って、何故、今まで感じなかったのか不思議よ」
「えー、雅恵さん急に工藤さんを好きに成ったの?」
「違うわよ、前から好きだったのに気が付かなかったのよ」
「何よ、それ」
「明日も昼間、会うのよ、三郎さんとね」
「三郎さん?変われば変わるわね、恐いわ、金払いの良い爺さんから、変わり過ぎじゃあ?」
「爺さんじゃあ、無いですよ、背筋も伸びているし、まだまだ男性って感じよ」
「あちゃー」ママは店の閉店まで変な気分に成ってしまった。
雅恵は満足そうに帰っていく、帰る間際に工藤がメールで
(今夜も、お仕事お疲れ様、気を付けて帰って、明日待って居ます)と送って来たからだ。
浅宜彦の行った縁結びの効果を見ないまま、翌日に成った。
今日も昨夜の雨が残って昼頃まで降っている。
参拝客は皆無、雨が上がると、松尾と安間が祠の前に来て、立て看板を取り替えている。
祠の前にはお供え物が沢山並べられて、{取り壊す為に、こんなにお祭りをするのか?}不思議に思う浅宜彦だった。
「工事の人と検討をして、向こうの木々を伐採すれば、建築出来る様です」
「でも、三百万も寄付して、祠を立派して欲しい何て驚きですよね」
「何が起こったのか?訳が判らないよ」
「でも佐用比奈子さんって、地元の出身だから」
{えー、祠の新築?佐用比奈子さん?あの夢をみせてあげてのお礼なの?}
驚きの浅宜彦、撤去から一転、新築の祠に移動に、喜ぶ浅宜彦、早速比奈子を見に行く、
新人の比奈子には大金だろう、三百万そんなに感動するとは浅宜彦自身も驚きだったのだ。
お礼にもう一つ何か探して、プレゼントをしてあげようと芝居のリハーサルの会場を後にした浅宜彦だった。
夜に成って再び比奈子の枕元に向かう、眠りの中の比奈子に入る浅宜彦、これが良いと、
初めての出会い、比奈子と功一が高校の一年生と三年生の春の頃をセットして、去った浅宜彦だ。
お礼のつもりが、翌朝、比奈子が感動をして、自身のツイッターに浅宜彦の事を書いたのだ。
夢を叶えてくれる。
地元の神社の片隅に探さないと判らない程小さな祠で、ひっそりと佇む小さな縁結びの神様、
私の願いを聞いて下さる素晴らしい神様です。
人気の新人女優のサイトを見ている人は多い、同世代の若者、ドラマのファンとツイッターの段階では見ている人数は限られていた。
それでも地元でも数十人が、このツイッターのブログを見ていた。
その日の夕方に数人の参拝客が訪れた。
{今日は、何か有るのか?若い女性が多いな、}
神社に寒いのに参拝かと思っていたら「此処よ、これだよ」
「本当だ、小さい祠だね」
「御利益が有るのに大小は無いわ」次々と賽銭を入れてお参りをする若者
{僕を、目的で来たのか?}と驚く浅宜彦、日暮れまでに三十人を超えた。
{何が起こったのか判らないな}と驚きの浅宜彦、
でも誰も、良い人に会えます様にとか、恋愛がしたいが多く、具体的な願い事の人は誰も居なかった。
賽銭は五千円を超えて、平日としては最高を記録していた。
気分を良くした浅宜彦は夜に成ると、工藤の処に飛んだ。
仲良く食事をしている工藤と雅恵、自分はもう年齢が年齢だから、早く結婚したいと工藤が話している。
{えー、もう結婚の話しをしているよ、早-!}驚く浅宜彦、
これはもう決まりだよと立ち去ろうとした時、
「地元の女優さんで、新人の佐用さんを応援しているのだけれどね」
「ああ、あの可愛い女の子ね」
「孫娘と同級だったのでね、気に成ってね、こんなお爺さんがね」
「三郎さん、自分でお爺さんって言ったら駄目ですよ、まだまだ若いから」と雅恵に言われる。
浅宜彦がこれは、ラブラブだねと思う「彼女のツイッターのブログを読んで驚きました」
「えー、三郎さんツイッターを見るの?若い、若い」と笑う雅恵
「それがね、火傘神社の片隅の縁結びの神様の事が、書かれて有ったのですよ」
「へー、私も年に一度は神社に行くけれど、見た事無いわね、縁結びの神様が奉られているのね」
「その中に、初恋の人に会わせて下さる、素敵な神様と紹介されていたのでね」
「へー、初恋か、随分昔ね」
「私はね、今年の正月に、貴女と結ばれます様にとお願いしたのですよ」そう言われて驚きの表情に変わる雅恵だった。
参拝者
14-5
「えー、それ本当なの?」
「はい、本当ですが何か?」
「正直に話すわね、怒らないで聞いてよ」
「はい」真剣な表情の三郎
「私ね、三郎さんの事、好きでも、嫌いでも無かったのよ、でも先日スーパーで会ってから急に好きに成っちゃったのよ」
「そうなのですか?」
「その神様の御利益なの?」浅宜彦は驚いてその場から消えた。
ツイッターで自分を紹介したのだ。
比奈子さんが、それで?今日沢山来たのか?参拝の人が?明日に成ったらもっと増えるのかな?
浅宜彦の予感は的中した。
朝から大勢の若い参拝客がやって来た。
関東からも、祠の廻りに色々な人形とか、お供え物、賽銭も二万円を超えた。
今日は六十人程が参拝に来た。
土、日は凄い人が押し寄せるのかな?
それでも実際の願いを言う人は二人だけ、他は良い人に巡り会えます様に?
それに類する事柄が殆どで、幸せの度合いが判らないのと同じで、心の安らぎを求めた祈りなのだろうと思った。
大阪から参拝に来た、大越加代三十歳は具体的に、
同じ職場の九重茂さんと結婚出来ます様にトラブルが起こりません様に、の願いだった。
トラブルに少し疑問が残ったが、一応千円の賽銭でチェック、もう一人は中学生の女の子、
桜井佳奈将来クラスの本田誠君と結婚出来ます様にとの願いだ、少し若すぎだが、一応チェックする、浅宜彦だ。
土、日の事を考えると早く処理をしていかないと、悩んで居たら、どんどん増えるよ、忙しいのも大変だけれど、暇なのはもっと大変だよ。
よし、これから、平野の四角関係の調査に行こう、児玉純子の処に飛ぶ
{わー、大変な処に来たよ}と薄めで見る浅宜彦、今、純子はキスの最中
{あれ?相手は知らない男性?えー、平野の子供では無いの?}
浅宜彦は複雑怪奇な関係に訳が判らない
「平野は、お前のお腹の子供が自分の子供だと思っているのか?」
「多分ね、結婚を迫っているから、困っていると思うわ」純子が微笑みながら言うと
「内の銀行はスキャンダルを極端に嫌うから、平野は終わりだ、出世コースから脱落だよ」
「でも、あの時に酔っていたから、判らないのよ」
「でも、安心は出来ない、入籍させるか、子供の認知をさせないと」
「私ね、正月に神様に頼んで置いたわ、結ばれます様に、って」
「何処の神社だよ、そこの火傘神社よ」
「そんな、処に有ったか?縁結びの神?」
「有ったわよ、薄汚い祠だったけれどね」
「それは、御利益無いのでは?」
{この二人、相当の悪だな、それに私を馬鹿にしているのか?失礼な奴}
このお腹の子供は彼の子供か?取り敢えず、平野さんと児玉は不適合でセット完了、
この男と児玉をどうするか、もう少し見てみよう、小林絹代は何なのだ?
この男は同じ銀行の佐光英夫か、くせ者だ、調べる為にチェックだ。
浅宜彦は最初の考えを大きく変更した。
人が考えている事に不審感を持ったのだ。
平野和紀は悪い人では無いのかも、四角関係ではなくて、ライバルに蹴落とされる危険が有ったのか、人間は恐いよ。
大越加代も何か有るよね、トラブルが起こらないって、お祈りしていたからね。
平野の自宅に飛ぶ浅宜彦、今夜も仲の良い家族の印象、子供と遊ぶ平野、奥さんも悩みが有る様には見えない。
小林絹代も見に行こう、一気に片づけ様としていたのかも?絹代は反対に暗い、
{日記を書いているのか、少し読ませて貰おう}
彼女が書く日記を読む浅宜彦
{暗いのは、今日が金曜日だから?この子平野さんに片思いなのか?それで、金曜日に成ると二日会えないから、暗いのか}
絹代の書いている日記を見て納得した。
四角関係では無い、浅宜彦は別の日にちの日記も見た。
同僚の岸照男に告白された事が有るのだ。
相手の事を悪くは思っていないのだけれど、平野の事が好きで断ったのか、
一度岸を見てみなければ、浅宜彦は此処が自分の出番だと張り切っていた。
成る程、この様にして、縁を結んだり切ったりするのだな、何かコツを掴んだ気がする、浅宜彦なのだ。
深夜に成ると、比奈子の処に飛ぶ浅宜彦、三百万も出して貰ってツイッターで紹介までして貰って、感謝 感謝の気持ちだった。
今夜はどれが良いかな?と探す、これにしよう、夏の水泳大会か、比奈子の水着姿が眩しいな、これをセット、終わると消える浅宜彦。
翌日、朝から過去最高の参拝客、小さな祠に始めて行列が出来た。
明日は日曜日、もっと多いのでは、神主の松尾も安間も唯、驚きで、声も出ない、若い人のブログの威力を知った。
安間が、「グッズの販売も考えないといけませんな」
「そうだよ、お守りも作ってないよ」
「急いで作ります」
「それと、大工さんに祠を早急に作る様に急がせて下さいよ、最低二人はお祈りできる様にしないと、捌ききれませんよ」
「はい」二人は嬉しい悲鳴をあげていた。
土曜日なのに百二十人もの参拝客、それも全員のお目当てが縁結びの神様なのだ。
浅宜彦は、これだけ沢山の参拝客でもお願いは三件だった。
有り難いと云えば有り難いのかも知れない。
男性は僅か十五人殆どが女性、その少ない男性の一人窪田正次郎が野上静代さんと結婚願い、六十歳前の男性の願いだ。
前田みどりさんが高原義一さんとの交際を結婚では無い交際だ。
これは比較的簡単なのだ、交際でそこから結婚は本人達で決めるとか、もう一度頼むとかだから、
浅宜彦も比較的簡単に決める事が出来るのだ。
真鍋由佳子さんも同じく三木伸介さんとの交際を希望している、これも助かるお願いだった。
百二十人の参拝で三人、誰も目的もなく幸せに成りたいの、願望を持っているのがよく判るのだ。
比奈子さんは、結婚したいとお願いをしなかった。会いたい話しがしたいと言った。
それは彼氏が既にこの世の人では無かったからだ。
夢の中で会わせてあげて、こんなに感謝されて、寄付も頂いて、ブログに書いて貰って有り難い事だと感謝の浅宜彦だった。
翌日の日曜日、朝から予想した通り、昨日の倍近い参拝客がやって来た。
賽銭も沢山貯まった、ポイントが大きく上がった。
この日も二百人以上が参拝に来たが、具体的なお願いは殆ど無かった。
森本純子が武田進二さんとの交際希望、荒木美香子さんが垣内信夫さんと交際の二つだけ、
他は全員、良い人が現れます様にと、それに似たお願いだった。
浅宜彦は交際希望の人は全員交際をさせてあげようと、簡単にセットをしてしまった。
別に結婚に成るかはこの後の本人達の話しの結果だから、調査もせずに決めてしまった。
その後、佐藤佳奈の処に飛んだ浅宜彦、相手の本田誠君は、もうすぐ、転校で関東に行ってしまうらしい、
それで佳奈は哀しくなって頼んだ様だ。
交際が続けられる様にセットして実行をした。
浅宜彦、将来結婚に成るかは、判らないが、お互いが別れずに、話し会うのは確かなのだ。
交際のセットはお互いの意識の中に、相手が残る様に成るのだ。
仲の良い友達以上で、結婚迄は本人次第の関係だ。
ストーカー
14-6
翌日、銀行に飛んだ、浅宜彦は、絹代の処遇を考えていた。
平野の優しさに憧れだけで、結婚したいとお願いに来たのは明らかだ。
平野は行員に慕われる優しい性格だが、自宅には愛する妻と子供が居て、絹代の入り込む余地は残っていなかった。
でも、絹代の気持ちを変えなければ、可哀想だな、岸照男と交際させてやろう、二人が合えば交際に成って、絹代も平野を忘れるだろう。
平野和紀と小林絹代は不可、岸照男と小林絹代が交際、佐光光夫と児玉純子は結婚でセットして実行した。
佐光はスキャンダルが自分に成って困るだろう、自業自得だと思う浅宜彦、これで銀行四角関係は解決させた。
後日結果を見に行く事にする。
伊藤恵子と藤井宗平の問題がよく判らない、二人に何が有ったのだろう?年齢も離れている。
接点が無い、藤井のあの生活は?眠っている時に忍び込んでみるか?
人のプライバシーを覗く様で嫌なのだが、仕方が無いと浅宜彦は思う、早く解決をして、次の問題に進まなければ成らない、
神様は休みが無いのだ。
月曜日から、新しい祠の工事が、反対側の雑木林で始まった。
今の祠の五倍の大きさだ、松尾がお金を足して、建築に成った。
お守り、浅宜彦に関係の有るグッズの製作にも着手していた、看板も看板屋に頼んでいた。
松尾の最初の狙い通り、縁結びの神が当たる兆しが見えたので、ここは投資の時と判断したのだろう。
残って居るのは、藤井宗平と伊藤恵子の問題が古い、新しいのは大越加代と九重茂を調べなければ成らない、
窪田正次郎と野上静代も調べなければ成らない。
比奈子にはお礼も込めて、週に一度か十日に一度記憶の扉を開ける事にする。
他の交際の願いは統べて、交際でセットをしたので、後は各自が結果を出すだろう。
今日も願いは、良い人を求むが多くて具体的な願いは無かった。
夜に成って窪田の処に飛ぶ浅宜彦、六十歳を過ぎた男だ。
家は普通だが、年老いた母が老人ホームに入っているらしい、一人住まい、結婚歴無し、今宵もこれから何処かに出掛ける様だ。
この時間なら飲み屋?後を付いて行く浅宜彦、自宅から少し歩いてタクシーに乗る。
歓楽街に{キャバクラ?}
正次郎はキャバクラに入って行く
「正ちゃん、いらっしゃい」と女の子が直ぐにやって来た。
年齢は二十歳過ぎの孫の様な女の子
「静代さん、元気だった」
「正ちゃん三日前よ、会ったのは」
「そうか、随分長い間会っていない気がするよ」
{こんな、女の子と、結婚?騙されているよ、辞めた方が良いよ}静代にチェックを入れて、後日見に来る事にする。
人の噂も時間が経過すれば減少してくる、参拝客が徐々に減ってくる。
比奈子のブログの影響が薄れてきた様だ。
何人かの参拝は毎日有るのだが、特別希望のお願いが無い、浅宜彦はこの間に、
平野の銀行に様子を見に行く、岸と絹代が銀行の食堂で仲良く昼ご飯を食べている。
「でも、びっくりだったわ」
「本当だ、児玉さんが妊娠していた何てね」
「そうよ、それも佐光係長の子供だった何てね」
「不倫は内の銀行、出世に響くからな」
「佐光さん、飛ばされるわよ」
「児玉さん、この末に辞める、結婚に成るのかな?」
「佐光さんの奥様、実家に帰ったらしいわ」
「絹代さんも、奥さんの居る人を好きに成らずに良かったね」
「照男さんで良かったわ」
{おいおい、良く言うね!昨日まで結婚したいと、泣いていたのに、女は恐いよ}
浅宜彦は結論が出たと思って、その場を立ち去って行った。
午後、藤井宗平の処に飛ぶ、相変わらず旗を振っている。
近くで同僚が食事をしながら二人で話して居る。
「藤井さんも気の俗だよな、先生をしていたとは思えないな」
「そうなのか?」
「本人は喋らないけど、親方がその様に言っていたよ」
「小学校?」
「高校だった様だ、女子高生をつけ廻して、ストーカーで逮捕されて、首に成ったらしい」
{そうなのか?それで、古い写真を持っているのか?十五歳位の年齢差だったな?でも変だな?一、二年も前だよ、今頃?}
恵子の処に移動する浅宜彦、あれ?また見合い話だ。
「恵子さん、この柴田さんとお見合いをしてよ、お父様も乗り気なのだから」
「市議会の人の息子さんでしょう?」
「駄目なの?貴女が憧れていた先生はストーカーだったじゃないの、貴女は見る目がないのよ」
「今でも、信じられないわ」
「でも事実よ、被害者の女性が訴えて、有罪に成ったから、首に成ったのよ、憧れでは結婚は出来ないのよ、
お父さんの進める柴田さんとお見合いをしなさい。判った!」
{あれ?藤井さんがストーカーしたのは、別の女性?この恵子さんは、藤井さんの事を好きだったのか?}
高校の時の担任か部活の教師が藤井で、二人はお互いが意識をしていたのだ。
卒業後もコンタクトが有ったのだが、事件が起こった。
藤井は逮捕されて、学校を首に成った。
恵子は親にも反対されて、藤井を諦めた。
だが未だに忘れられないので、見合いを断っている。
その様な感じかな?浅宜彦の勝手な推理はその様に広がった。
藤井がストーカーをした女性は?何処の誰なのだ?今でも結婚したい程、好きな恵子さんが居るのに、その様な事をするのは変だ?
今夜にでも忍び込むか?
一度祠に戻る浅宜彦、昼間の状況を調べる。
加藤美奈子が最上辰郎との交際を希望していた。
交際は浅宜彦が基本直ぐに許可をしていた。
交際承認とチェックをした時、不可と成った。
{あれ?}、直ぐに加藤美奈子に飛ぶ
{おいおい、何だ?これ?}その光景に呆れる浅宜彦、小学生の子供が二人居て、今夕食を家族で食べている。
旦那も居る、不倫か?基本的にどちらかが結婚していたら交際は成立しない、浅宜彦ではどうする事も出来ないのだ。
この願いは不可扱いに成る。
個人的に自由に恋愛でも、何でもして下さい!状態だ。
美奈子が離婚すれば状況は変わる、不倫のお手伝いは出来ない。
真夜中、藤井の処に飛んだ浅宜彦だが、藤井は工事現場で働いて居て、起きていた。
調べられない、深夜まで働くのだ、大変だ、帰ろうとした時に藤井の携帯が鳴った。
待ち受けに女性の写真、浅宜彦は直ぐにチェック、何かヒントが有るのかもと女性の元に飛ぶ、
写真とは相当違う、名前は藤井伸子、妹だ、施設の様だ。
「これだけは、覚えたのよね」
「可哀想にね、お兄さんだけは判るのね」看護師が話している。
{病院だな、精神病院?身体は普通だな}
「おかしいわよね、自分の妹が強姦されて、精神異常を起こしているのに、ストーカー何かする?」
「私もそれは変だと思うわよ、他の事件なら判らないけれど、ストーカーは出来ないでしょう」
{妹は強姦されて、狂ったのか}
この看護師さんが言うのが正しいね、藤井宗平には有り得ない犯罪だなと浅宜彦は思った。
不幸な兄妹だな、自分の力で何とかして救えないものだろうか?祠に戻った浅宜彦は悩んで居た。
謹慎
14-7
浅宜彦は深夜に藤井伸子の処に飛んだ。
眠る伸子の記憶に入り込んだ、どれだ?これか?
仕事帰りに三人の男に空き家に連れ込まれて、代わる代わるレイプされている。
これは惨い、この男達チェックと三人をチェックして、浅宜彦は消え去った。
もう随分前の事件だ。
十二年も前、伸子の記憶から、仕事は市役所に勤めていたのか?大学を卒業して努めて少しの連休明けに襲われた?
長い病院生活、精神異常を起こす程のショックだったのだ。
事件に成ったが犯人は捕まらなかったのか、両親はこの事件が原因で亡くなって居る。
伸子は親が亡くなったのは判ったのだ。
警察には判らないが、浅宜彦には三人の男は直ぐに判る。
直ぐに飛ぶ一人目、富沢清孝土木部長、同僚かとんでもない男だな、
眠る富沢の顔を殴りたいのを我慢して、二人目高本陽介、福祉課長?誰が福祉課長だ!
ふざけている、浅宜彦の怒りは爆発寸前に成る。
三人目に飛ぶ佐藤拓也、水道の工事会社を経営している。
平和な顔で寝ているよ、この悪野郎と顔を叩く、頬に手を持っていく拓也、浅宜彦にはこれ以上の事をすると、違反行為に成る。
神様失格に成る、縁結びの神様で復讐の神では無いから、でも腹が立つ浅宜彦、家族も見てやれと別の部屋に移動して、仰天した。
{この男!}と思わず叫んでいた。
あの恵子の見合い相手だった、佐藤伸也その人だった。
{親に似ない子供は居ないは本当だ}呆れ顔の浅宜彦、見合い話を潰して正解だった。
そう思うと直ぐに伸子の処に飛んでいた。
浅宜彦は神様としての禁止行為をしてしまった。
余りにも伸子が可哀想に思った、優しい顔で眠るそれを見た時、伸子の悪夢の記憶を消してしまったのだ。
直ぐにその場を離れた浅宜彦、
祠に戻ると「浅宜彦、お前は神としての掟を破ったな」
「あっ、師匠様、余りにも可哀想で、許して下さい」
「お前が行った行為はもう誰にも戻せない、勿論私にも無理だ、それほど神の力は大きいのだ、
それが良い事でも悪い事でも、人間社会の秩序を神が乱してはいけない」
「でも、余りにも悪い男達で」
「それは、人間達が解決するか、他の神が行う事だ、よく覚えて置きなさい、
今回は初めての失敗なので、多目に見て、謹慎一ヶ月を言い渡す」
「どうなるのですか?」
「この祠から出る事は出来ない、願いも聞けない、人間の言葉としては聞けるが、
この一ヶ月に聞いた願いは、お前には何も出来ない」
「はい、今後気を付けます」
「反省をする様に」
本山から叱られた浅宜彦はその時から、祠の中で唯、待つのみの窮屈な時間を過ごす事に成った。
浅宜彦は、後悔はしていなかった。
神としては禁止事項だったが、一人の女性を救った事に満足をしていた。
一ヶ月の間に一千人以上の人が訪れて参拝をしていった。
知っている人も来たかも知れないが浅宜彦には何も残らないので全く判らない、
賽銭も結構な額が入って居るがこれも全く判らない、謹慎とは辛い物だとようやく理解した、浅宜彦だった。
やがて、新しい祠の完成が近づいて、松尾と安間が忙しく動いている。
新しい祠の落成式に佐用比奈子を呼ぶ、だが比奈子の日程が中々合わない、祠は完成したが、式は比奈子待ちに成っていた。
それは、浅宜彦にも有り難い事だった、謹慎が解除される時まで、待っている様に時間が経過していた。
比奈子も浅宜彦の異常を佐知していた。
定期的に夢を見るのに、この数週間全く見ていないから、何かトラブルが起こったと感じていたのだ。
比奈子自身もドラマの追い込みで忙しいのだが、祠の落成式には必ず出席するから、待って欲しいと伝えていた。
漸く謹慎期間が終わった。
浅宜彦に師匠が「お前の能力は凄いのだ、今後はよく考えて使う様に」
「はい」
「例えば、そこに居る二人を交際させる事も、自由に出来るのだ、心得て使う様にしなさい」
「はい」と答える浅宜彦の目の前で先程の二人が話し出した
「あれは、師匠の?」
「そうだ、あの中年の叔母さんに若者が」
「師匠、無茶ですよ」
「例えばの例だ、有り得ないカップルも作れるのだ、二度と謹慎に成らない様に頑張れ、謹慎中の願いは本山で処理をした、
お前は知らなくても良い」師匠は帰った様だ。
浅宜彦は早速気に成っていた藤井伸子の処に飛ぶ、春の日差しが眩しい公園に居る伸子、病院ではなさそう、
向こうからソフトクリームを持って歩いて来る男、宗平だ、退院したのだと浅宜彦は嬉しく成った。
「仕事が決まったのよ、お兄ちゃん、迷惑かけてゴメンね!」
「良かった、良かった、長い病院生活だったから、判らない事が多いだろうが、頑張って働けば良い事も有るから」
二人の明るい話し声に安心の浅宜彦が戻ろうとした時、
伸子が「お兄ちゃん、好きだった教え子の女の子と別れたの?」
「ああ、別れた」
「あの子、お兄ちゃんの事好きだったでしょう?」
「実は、色々有って、学校も辞めたから、もう戻れないよ」
「お互いに好きだったのに何故?歳が離れていても、大丈夫だったのでは?」
「十年は長いよ、俺の心配はせずに、仕事頑張れ」そう言いながら二人はソフトクリームを食べる。
宗平には伸子の退院は有り難かった。
親の残した家も財産も使い果たしてこれから、どうして生活をと考えていた矢先の出来事だったから、
僅かに残って居たお金で伸子のワンルームマンションを借りて、身の回りの物を用意した。
宗平、今度は仕事が決まったと云う、有り難い事だ、と思った浅宜彦。
先日も宗平は浅宜彦の祠を訪れていたのだ、浅宜彦には謹慎期間で判らなかったのだ。
その時、宗平は「自分のお願いはもう反古にして下さい、妹が社会復帰出来ます様にお願いします」と頼んでいた。
師匠はそれを聞いて願いを叶えたのだ、伸子の面接に行った会社の人に簡単な呪いをしたのだ。
浅宜彦の技術では出来ない技、印象を良くする呪いは面接者の気持ちを一気に変えてしまう、
多分入社の後も、それは続く、縁結びの神の高等技術だった。
浅宜彦は藤井の望みも叶えてやりたい、でも何故ストーカーに成っていたのだろう?変だな?それが判らない。
妹の事件と関係が有るのか?藤井と伊藤恵子は師弟関係でお互いが好き有っていた。
今でもお互い未練が有る。
恵子の見合いの相手が藤井の妹をレイプした男の子供?藤井宗平はストーカーで逮捕されて、教職を首に成った。
妹はレイプが元で精神に異常を起こして、十年入院していた。
藤井は誰をストーカーで逮捕されたのだ?そう思いながら祠に戻る。
今までの物は、そのまま使える様に戻って居る。
伸子の記憶の中をもう一度見る浅宜彦、友人が一人居るな。
役所の先輩か、この女性チェック、親しい感じの先輩だな、何度も細切れに成っている。
変な記憶だ、飛んでみよう、太田真理子、随分歳を取っている、伸子の記憶の中から、四十歳から五十歳の間だな、
何も変わった感じはないな、あれが旦那さんかと眺めて居ると
「今度の入札、お兄さんの処に行くからな、また頼むよと、内々に」
「はい、はい、私達も潤うからお互い様よ」浅宜彦はその時犯罪の匂いを感じた。
真相
14-8
「入札も形だけよね」
「そんなものだよ、お兄さんの会社もそれで大きく成ったのだから」
「公共工事は所詮税金だから、痛く無いのよね」
{若しかして、この女の兄って佐藤拓也なのか?この女性は妹?}
浅宜彦の想像は直ぐに的中した。
太田泰之が佐藤拓也達とゴルフに行った写真が、壁に飾って有ったから、変な雲行きだな?
伸子をレイプした?三人の一人が役所の?真理子が結婚している?
益々判らない浅宜彦、一度整理をしてみよう、祠に戻る。
伸子は役所に勤めていた。
先輩が当時佐藤真理子、伸子をレイプしたのは真理子の兄拓也達三人?拓也の息子と恵子の見合い話し、
役所関係での話で縁談が持ち上がった可能性は有る。
恵子と宗二は師弟関係で恋愛感情も有った。
宗二のストーカー事件で逮捕が二人を完全に引き裂いた、宗二は教師を首に成った今も、恵子を愛している。
恵子も心の何処かでまだ、未練が有る。
妹がレイプされて、狂った宗平が女性に対してストーカーをするだろうか?
事件は何年前なのだろう?再び調べに向かう宗平の記憶に入ろうとして、だが宗平は眠って居なかった。
深夜のバイトから戻った処、煎餅の空き缶にポケットの物を入れる。
この空き缶に大事な物を入れているのか、覗いて見よう、新聞の切り抜き、古い写真集合写真の様だ。
誰が写っているのだろう?記憶に残して、祠に戻る浅宜彦。
調べると、該当者が一人居た、真理子だ!何故?真理子の写真を宗平が、この写真は役所の旅行の写真、
もしかして、宗平のストーカーの相手は真理子?年齢も殆ど同じ位だ、間違われる可能性は有り得る。
浅宜彦は兄の為に伸子を誘き寄せたのが真理子なら、宗平がそれを、探し当てた?それを知られてストーカーに仕立てた?
でも確信をしていたら、復讐をするはず、確信が無いから、付け狙って居た?
まさか?真理子と宗平は知り合い?それだ!浅宜彦はそれで確信をした。
以前から藤井の妹に目を付けて居たのだ。
佐藤拓也が、宗平は真理子を問い詰めたのかも知れない、それで危険を感じた拓也は、宗平をストーカーにして訴えた。
他に何か有るな?これだけでは無い気がする浅宜彦。
恵子の自宅に飛ぶ、母親は何か知っていないのだろうか?眠る恵に入り込む、中々見つからない
「あんな、貧乏教師に娘をやれるか」
「でも恵子は、慕っていますよ」
「十五歳以上離れているのだ、両親も居ない、妹が病院に入院している、条件が悪すぎる」
「別れさせるのですか?」
「大丈夫だ、安心していれば、万事上手く行く」
{この会話は?何?父親が仕組んだのか?}浅宜彦の推理が間違っていた様だ。
続いて父親に入り込む浅宜彦。
拓也との会話が見つかる
「私に任せて下さい、始末します」
「頼むよ、娘に諦めさせねば」
「妹と知り合いですから、多分上手くいきます」
「君も、彼に困っていると」
「はい、妹に必要に言い寄って来るので、妹も困っています」
「上手に頼むよ、これは少ないがお礼だ」
「有難うございます」
「君と知り合えて良かったよ、同じ男で悩みが有ったとは奇遇だよ」
「全く知らない女性に頼みますから、御安心を」浅宜彦はようやく事件の真実を掴んだ。
佐藤兄妹を許せないと思う浅宜彦、自分の犯罪を隠す為に、ストーカーに仕立てて、それをまた利用して恩を売って、
最終的に自分の息子と結婚まで企んでいたとは、恐ろしい悪だな。
息子の結婚は浅宜彦が偶然潰していたのが救いだった様だ。
一先ず次の展開待ちで、比奈子の処に飛ぶ。
今夜はどれにするかな?久々だが、秋の体育祭の思い出をセットして、戻る浅宜彦、
その時記憶の中の功一が徐々に少なく成っている事に気が付かない浅宜彦だった。
翌朝、目覚めた比奈子は枕を濡らしていた。
久々に現れた功一に感動したのと、神様が戻って来た事が嬉しかった。
これで早い時期に祠の落成式に行こうと、スケジュールをマネージャーの小宮聡子に伝える比奈子。
比奈子から連絡が神社に有って、来週の水曜日に決まった。
綺麗に飾り付けがされて、当日を待つのみに成った。
前日の夜暗く成って、山中に比奈子が一人でやって来た。
若い女性が夜の九時に一人で来る場所では無かった。
近くの駐車場迄車で来たとしても、寂しい場所だ。
比奈子は、柏手を打って
「神様、有難うございます、明日は沢山の人が居るのでお話出来ないので、今来ました、
私の願いを聞いて頂いて本当に有難うございます、功一さんに何度も何度も会わせて頂き感謝しています、
今後も時々会わせて頂けます様に宜しくお願い致します」
そう言うと比奈子は帰っていった、東京から帰って直ぐに来たのだろう、目の前に東京のお饅頭の箱が置かれて有った。
翌日松尾の詔で移転が始まった。
神社の関係者、参拝に来た人、芸能の記者が一人来て居た安藤鈴与、
売れ出した比奈子の彼氏でも見つけて記事を書く為に付いて来たのだ。
安藤には比奈子がこの祠の建設に寄付をしたと、聞いて不思議に思いながら聞いていた。
浅宜彦には祠の大きさは神様の格に影響するだけで、そんなに変わりはない、だが気分は新築が良いに決まっている。
カメラマンが写真を撮影して、比奈子の寄付を大きく芸能記事にするのだろう、安藤が比奈子のインタビューに来るのは必至だった。
比奈子は言葉を用意していた。
「好きな人に会わせて貰える神様です」と微笑んだのだ、安藤には意味不明の話しなのだ。
無事新しい祠の落成式典は終わって、比奈子は駆け足で東京に帰って行った。
今日の事を事前に知っていたから、比奈子は昨夜此処に一人で来たのだと、浅宜彦は思った。
彼女には私の事が判るのだろうか?この落成式も謹慎期間が終わるのを待って居た様に思えて仕方が無かった。
浅宜彦は恵子のその後を見る為に飛んだ。
{あれ、見合いをしているよ}
柴田哲三と云う同じ市議の息子か?乗り気で無かったのに、見合いしたのだ、今から何処かに行くのか?
仲人とお互いの母親を残して二人が出て行く、車に乗り込む恵子と哲三、走り去る車、浅宜彦が母親の処に戻ろうとした時、
一台の乗用車が二人を追い掛ける様に走って行った。
{何だろう?}
浅宜彦は車と一緒に行く、中に入り込むと、あの佐藤哲也が三十過ぎの女性と、男二人が乗っている。
何故?見合いの車を付けるのだ?伸也はもうダメに成っただろうが?
不思議に思う浅宜彦、前の車を尾行しているのは明らか、しばらくして、公園の駐車場に柴田の車が入る。
続けて入る佐藤達の車「頼むよ」男二人が柴田の処に行く、口論が始まる、殴り合いが始まる。
二人の男は倒れながら、戻って来る。
「茜さん、ご苦労さん」佐藤がお金を渡す、
「この前よりは、簡単よ、ストーカーの時は警察に行くとは思わなかったから、困ったけれどね」
「すまなかった、伸也が変な女と仲良く成らなければ、決まっていたのに」
{この女?ストーカーの相手?}驚く浅宜彦だった。
幸せ
14-9
この女を使って一石二丁を考えたのか?レイプ事件を不審に思った宗平は、伸子の先輩だった真理子を、不審に思って探っていた。
伊藤圭三は、娘が憧れている先生宗平の事は乗り気で無かった、両親が居ない、妹が精神病で入院している。
自分の可愛い娘の婿としては不的確、何とか別れさせたかった。
そこに佐藤哲也は、この後籐茜を使って仕組んだ。
この二人の男も事件に絡んでいるのだろう、と思った浅宜彦、統べての謎が解けた気がした。
でも今のは?恵子の処に飛ぶ浅宜彦
「すみません、私、あの様な人知りませんのよ」
「判っていますよ、恵子さんの美しさに絡んで来ただけでしょう?」
「大丈夫ですか?お腹?」
「大丈夫です、でも少し痛いかも」
{見合いに消極的な恵子の、気を引く為の芝居を頼んだのか?}
とんでもない父親とこの男、即刻不可と烙印を押す浅宜彦だった。
すると、急に恵子が「変ね、何故?此処に私達が居る事が判ったの?」
「それは、判りませんが、痛いーー」とお腹を押さえる柴田
「私、調べたい事が出来ました、帰ります」と公園のタクシー乗り場に向かう恵子、
「俺も、別に好きじゃないし、勝手に」
それを見て浅宜彦は笑いながら、圭三の処に飛ぶ
「そうか、上手くいったか」
「はい、大丈夫だと思います」
「ありがとう、いつも、いつも、佐藤君には世話に成るよ」と電話に笑顔で答えている、圭三。
浅宜彦はこの時、藤井宗平の望みを叶えてやろう、と結婚の許可をした。
師匠の様な高等技術は無いので、この馬鹿共を懲らしめてやろう、僕の出来る範囲で、
この太田真理子は、この悪い亭主と離婚、レイプした連中の交際でセットしてしまった。
後籐茜を巡って四角関係勃発だよ、後はお楽しみだよ、富田、高木、佐藤が茜を好きに成るのも面白いだろう、
俺の技でも充分、苦しめられるよ、笑うとその場から祠に戻る浅宜彦。
自宅に戻った恵子が「私、もう決めたわ、先生と結婚するわ、反対するなら、この家を出て行く」
「何!見合いの相手は?」
「あんな人屑よ、自分の知り合いを利用するなんて」と怒りの表情の恵子、
母親がその時帰って来て「あれ?恵子もう帰ったの?」
「お母さん、私もう決めたの、先生と結婚する」訳の判らない恵は、唯、呆れて聞いている。
そのまま自宅を出て行こうとする恵子の携帯に「恵子さん、私だ、藤井だ」
「あっ、先生」
「急に、君に会いたく成って、我慢が出来なくて、電話をしてしまった」
「私も先生に会いたい、何処に行けば会えますか?」
浅宜彦の威力は大きい、一瞬で状況が変わる、唯、唖然とする、両親、
出掛けて行く娘を見送って「お父さん、もう諦めましょう、恵子の気持ちを尊重してあげましょう」
「でも、無職の男では?」
「お父さんの力で、就職も探してあげて下さいよ、首にした責任が有るでしょう」
「そうだなあ、子供には勝てないのが、親だな」と諦め顔の圭三、
妹が何故、病院に入院していたのかを知らない圭三は、その時から、事実を調査し始めたのだ。
娘の婿の妹が精神病院に十年も入院していた、原因を知らなければ、結婚の決断が出来なかったからだ。
浅宜彦は以前に聞いていた大越加代の調査に随分経過していたが向かう事にする。
その間に交際希望が三人有った、統べて適合でセットしていた。
加代は変な場所に居た。
{此処は?拘置所?}あら、どうしたのだろう?と調べる浅宜彦、
九重茂って相手とトラブルに成った?留置名簿に殺人と書いて有る。
この加代が誰かを殺したのか?暫く調べて、えー、九重茂を殺してしまったのか?
一ヶ月謹慎していて、何もしていなかったからな、もうどうする事も出来ない。
祠に戻って「師匠、引き継ぎはされていないのですか?僕の謹慎の間」
「判っていたが、三角関係のもつれだ、九重が悪い男で二股だったのだよ、加代が怒って刺し殺してしまった」
「そうだったのですか」項垂れる浅宜彦、人間の社会の怖さを痛感していた。
一応、頼まれていた事は消化して、一息の浅宜彦に、驚きの事件が起こる。
週刊誌の芸能ニュースに作用比奈子が地元の縁結びの神様に寄付をして、落成式に出席の写真と記事を掲載した。
春から連続ドラマの主役の話題なので、大きく取り扱った様だ。
佐用比奈子の思い人は誰でしょう?の見出しは読者の興味を大いに誘うには充分だった。
これは、何処の神社?何県?比奈子の思い人は誰?と出版元には多数の問い合わせ、場所の判った人達が、本の発行日から増加していった。
若い女性が圧倒的に多くて、神社もお守りとか関連グッズの増産を依頼する、嬉しい状態が始まった。
若い女性が多いと聞きつけた、男性も見学に来るから、境内は人が行列状態で、それを聞きつけたテキ屋も数店出店した。
マスコミの力の怖さだ、でも肝心のお祈りは、この様なお祭り騒ぎの時は、良い人が見つかります様にが、圧倒的に多くて、
浅宜彦の出番は、交際希望位で、数組の交際は即決で適合としていた。
騒ぎが落ち着いたある日、あの工藤三郎が雅恵と一緒にお参りに来た
「神様、有難うございました、昨日二人は入籍をしました、本当に有難うございました」
と一万円の賽銭を入れて、楽しそうに手を組んで帰って行った。
浅宜彦はそれを見て、良かった、良い事をした実感を、感じていた。
縁結びって簡単な様だが複雑な人間関係の縮図の様な物だと、浅宜彦は思う、
宗平もいつか、二人で此処に来る日が有れば良いのにと考える。
深夜に成って、比奈子の元に行く浅宜彦、部屋に神棚が設けられて、御札が奉られている。
先日の落成の時に買い求めた様だ、比奈子の思い出を引き出してセットする浅宜彦、
{あれ?もう思い出が少ない}と始めて気づく、後何回かで、終わる、その後は?どうすれば?その事を考えながら戻る。
何か良いアイデアは無い物かな?一度使うと二度と、再現出来ないのだ。
比奈子が思い出すのは可能だが、浅宜彦が故意に見せる事は一度切りなのだ。
比奈子の処に行っても、楽しませる事が出来なく成る日の近い事を感じる。
伊藤圭三は宗平の妹のレイプが原因で、精神病院に長期間入院していた事を知り、衝撃を受けていた。
圭三はレイプ事件迄、確かめ始めていたのだ。
胸騒ぎがしたから、遠い昔役所でレイプ事件の噂を耳にした事が有ったからだ。
職員の若い女性が、レイプされて、気が変に成って、退職して、病院に入院した。
その後、両親も病気で亡くなったと、圭三は昔、議会で公安関係の係をしていた時の事件だったから、よく覚えていたのだ。
結局犯人は捕まらなかったが、同じ市役所の関係者が犯人では無いかと噂が有ったのだ。
自分の身内に関する重大な事に今成っている。
事件を調べて、恵子の結婚が幸せに成る事を祈る、父親に変わっていた。
悪い奴ら
14-10
「今頃、昔の事件の調査ですか?」
「私の娘の婿に関する事だから、真剣に成るよ」
「そうでしたか、これが当時の事件の資料ですよ」
「よく、置いてありましたね」
「地元の未解決事件は、二十年は保管していますよ」
圭三は警察に顔が利くから、早速資料を読む圭三。
当事者達四人は浅宜彦が悪戯で、太田泰之と真理子は離婚の話し合いに入って、茜は何故か高木、佐藤、富田に会いたくなる.
三人も茜に好意を抱いて交際を迫る。
三人がお互いに茜と交際している事に嫉妬し始めて、三人は険悪なムードに成っている.
圭三は事件を調べる為に、事も有ろう、当事者の佐藤を呼び出して
「君なら、役所に詳しいだろう、この事件の真相を聞きたいのだが」とメモ書きを差し出した.
佐藤は一瞬驚いたが「判りました、調べてみましょう、でも今頃何故?」浅宜彦の思惑とは全く異なる、事件に進もうとしていたのだ.
茜欲しさに、三人が歪み合って、事件が表に出るとは.浅宜彦も想像出来なかった、結末に走り出していた。
「いや-、彼女が可哀想に成ってね、お詫びの一言でも言わせてやろうかと思ってね」
「判りました」この時,佐藤は二人のライバルを茜から遠ざけるには,最高だと思うのだ。
数日後、佐藤は富田土木部長の汚職を地元の新聞社にリークしてしまったのだ。
それは、圭三に言う前に、自分に降りかかるのを防ぐ為だ、市役所は混乱した。
証拠が余りにもはっきりしていたので、警察が介入したのだ。
逮捕される富田部長、苦笑いの佐藤、翌日には、高木福祉課長のスキャンダルと汚職も新聞社がスクープ記事にした。
介護器具の会社からの賄賂、介護職員との密会が大きく報じられた。
度重なる、役所の上層部の汚職に怒る伊藤圭三の元に、佐藤がやって来て、
「例の犯人が判りました」
「誰だね」
「それが、驚かないで下さい、富田部長と高木課長の犯行でした」
「何!それは、本当か、あの二人は、汚職はする、職員には手を出す、これは事件だ、社会から抹殺しなければ」と大いに怒る伊藤。
浅宜彦の祠に警告灯が灯る。
{あれ?高木、富田と茜に警告ランプだ}何が起こった?
茜の処に飛ぶ、佐藤と車の中「拓也さんは悪いわね、あの二人を密告したのでしょう?」
「それは、知らないよ、」と笑って
「当分、君には会えないだろう」
「そうね、会えても興味無いわ、地位もお金も無くなった人には」
「茜さんも恐い人だね」
{高木と富田に何か有ったのか?}と高木の処に飛ぶ、警察?富田に飛ぶ、同じく警察の関係する建物。
四角関係にしたから、争ってこの二人を佐藤が売ったのか?伊藤の親父は?
今度は伊藤圭三の処に行く、誰かを呼んで居る感じの電話だ
「だから、あの今逮捕された、役所の二人の過去の事件だよ、取り上げて、制裁を加えてくれないか?」
新聞社か週刊誌に記事の催促?もしかして、レイプ事件を二人に押しつけたのか佐藤哲也が?
恐ろしい悪だな、親子も混乱させてやろうか?茜と伸也の交際をセットする浅宜彦、今度は親子でもめて~~
圭三が新聞社に言うとは考えていなかった佐藤、翌日の紙面にスクープ記事で掲載されて、高木と富田の目に入った。
彼等が取り調べの警察に、総てを話すのに時間はかからなかった。
別々に喋ったので、ストーカー事件の事まで暴露されて、真実性は高いと、新聞社に伝えられた。
翌日の紙面に隠された真実として、掲載された。
驚いたのは佐藤哲也と妹真理子、名前は隠されているが、判る人は多い、圭三もその一人だ
「あの、佐藤哲也が、主犯、妹も共犯!」と怒る
「お父さん、よく判ったでしょう、先生は被害者よ」
「藤井君には悪い事をしたな、恵子にも辛い思いをさせた」
と後悔をする圭三、あらゆる処に話して、宗平の仕事を頼んだ圭三だった。
浅宜彦は結末を見ていなかった、テレビも新聞も見られないので、確認に行かなければ、判らないのが、神様の辛さだ。
久々に今日、渡辺裕美が堂本慎次との結婚を希望してお祈りに来た。
神様に結婚をお願いするには、それなりの訳が有るのだ。
普通は交際か、良い人が見つかります様にが、圧倒的に多い。
手が空いて居る浅宜彦は、裕美に付いて行く、車に乗り込む裕美、運転席に若い男、二人共二十歳過ぎ、
「私達どうなると思う?」
「無理だろうな」
「兄弟だからな」
「慎次の事好きなのに、結婚出来ないのは残念よ」
「両親が離婚する?」
{この二人は?兄弟?}
試しにセット出来たら直ぐに判るのだが、万一適合に成ると困るよな、まだ調べて無いのに。
今の話しなら、この渡辺裕美は堂本裕美だな、二人の両親の連れ子が恋愛をしたのか?
「実子に成っていなかったら、出来たかもね」
「裕美が小学一年で、俺が二年の時だったからな」
「今では二人共、お父さんとお母さんの子供だからね」
「これは、神様でも難しいよね」と話す二人
{大丈夫だよ、結婚出来るよ}と浅宜彦は囁いていた。
でも直ぐに適合にはしなかった、もう少し調べてから、考え様とその場を離れる浅宜彦。
その日の夜、比奈子の処に行く浅宜彦、記憶を探してセットしたが、次で終わりだ。
この後どうすれば良いのだろう?比奈子には大きな借りも有る。
可愛い寝顔を見ながら、その場所に佇む浅宜彦、眠る比奈子の瞳から涙が滲み出る。
{あっ、夢に彼が出て来た、様だな}
最後は、歩行者天国の事件の日の思い出だけだ、どうしよう、見せても良いのだろうか?そう思いながら立ち去る、浅宜彦。
数日後、あの藤井宗平が妹と恵子を伴ってやって来た。
千円の賽銭を泣き泣き入れた顔と異なって晴れ晴れしい顔で、一万円の賽銭を入れる恵子、
「望みを聞いて頂きありがとうございました、私達は無事に結婚する事に成りました」と声を合わせて言う、
「神様にお願いした、妹の社会復帰まで叶えて頂きまして本当にありがとうございました」
二人には夢の様な事だった。
あの精神病棟にいた、妹が今では仕事をしている。
こんな奇跡の様な事が起こるのか、それだけではない、恵子の父圭三の口添えで役所の関係先に宗平は就職が出来たのだ。
この秋には恵子との結婚も決まっている、地獄から天国の気分だ。
三人がお参りをして、階段を降りながら
「お兄ちゃん、此処って縁結びの神様よね、待っていて」と駆け戻って、伸子が千円の賽銭を入れて
「職場の清水誠さんと、交際出来ます様に、もし可能なら、結婚もしたのです、宜しくお願いします」とお祈りをした。
慌てて駆け下りて行く伸子
「どうしたの?誰か良い人でも出来たのか?」
「内緒、でもお兄さん達の幸せな顔見ていたらね!」と明るく笑う伸子。
浅宜彦も晴れ晴れとした気分になっていた。
伸子と清水誠の交際は直ぐさま、適合で処理をする。
浅宜彦、本当は、結婚でも良いのだけれど、仲良く過ごせば、結婚に成るだろうと思う。
縁結びも楽しい仕事だ、浅宜彦も幸せな気分だった。
複雑な願い
14-11
しばらくして、佐藤哲也も真理子も社会的制裁を受けて、藤井兄妹は完全に社会復帰を果たした。
伸子の様子を見に飛んだ浅宜彦は、同じ職場の一つ年上の清水誠と仲良く、弁当を食べていた。
元々美人の伸子だから、明るく成ると、一層綺麗に見えて、浅宜彦がこれは、結婚でも支障は無いだろうと思う、でも自然に任せよう。
堂本裕美の処に飛ぶ、家族は父隆史、母里美、慎次、裕美、久美の五人兄弟、
此処で浅宜彦は久美の部屋で意外な光景を見てしまう、ラブラブの写真だ。
裕美の妹久美が同じく慎次に恋しているのだ、慎次も妹共付き合っているのだ。
{何だ?この男は、姉妹と付き合う?}呆れる、これは困った。
この男はダメだ、もう少し様子を見るが、交際不可にするのが正しい様だ。
裕美は久美が慎次と付き合っているのを知らないのかな?久美は姉が付き合っているのを知らないのか?
この慎次が二人と遊んで居るだけ?先日の車の中の会話なら、慎次と裕美は結婚したいと話していたのに、これは?理解不能。
一度祠に帰る。
{何これ}と驚く、
そこには、慎次と久美が二人並んで、結婚願いを申し出ている。
これは?でもいつ来たのだ?
浅宜彦には意味不明の出来事だが、この二人は唯、二人が結婚出来ます様にと言うのみで、
????浅宜彦はこの男性が慎次で無い事にようやく気が付いた。
麻生悟だ、似ているな、チエックして始めて名前が判る、見ているだけなら、全く判らない、この男性と、慎次は似すぎている。
服装が同じなら多分見分けが出来ない、交際不可に慎次と裕美をしなくて良かったと胸を撫で下ろす。
直ぐにこの悟に飛ぶ、自宅だな、あれは母親か?五十歳前の女性が夕食を作っている。
悟は、居間でテレビを見ている
「お袋、頼みが有るのだが」
「お金なら、有りませんよ」
「実は、結婚したい女性が居るのだが」
「それは、驚きね、悟に結婚の話しをされるとはね、歳をとるはずだね」と笑いながら言う
「何処の女の子?」
「お袋がよく知っている子なのだよ」
「私が知っている?」
「そんな、年頃の女性知らないけれどね」
「言い難いのだけれど、堂本の次女」
母典子の顔色が変わって
「悟、付き合っていたの?気が狂ったの?世の中の女性統べて許せても、あの女の子供は許せません」
「そう言うと思っていたよ、今日週刊誌に紹介された、有名な縁結びの神様にお願いしてきたのだ」
「馬鹿じゃあないの、神様に頼んでも無理な物は無理よ、私からお父さんとお前のお兄さんを盗んだ女だよ、
私を殺してからにしなさい」と怒り狂う、もうそれから二人は会話が無くなった。
悟と慎次は双子らしい、母親が悟を父親が慎次を引き取った。
もう随分前だろう、十五年近く経過している様だ。
これは、中々難しいのだろうな、両親の記憶の中に入らなければ過去の経緯は全く判らないな。
浅宜彦はまたもや、難題を突きつけられたのだ。
小学生の頃に兄弟は引き離された。
両親の離婚で、その引き離された少年悟が何故?親父と再婚した、妻の連れ子と付き合っているのだろう?
あの怒り方から考えると、とても実父の住所を子供に教えて、会って来なさいと云う雰囲気は無い。
眠るのを待つ以外に近道が無さそうだ。
祠に戻る浅宜彦、珍しい話を松尾達がしている。
神前結婚式で、家族だけの式を希望しているらしい、良く聞くと、自分の祠ですると云う、
信じられない話しに、困る松尾達、当日が雨なら困る。
テント?誰の式だ?あの藤井宗平と恵子が希望したのだ。
この神社での式そのものが久しぶりの出来事なのに、
自分の祠だと云うから、結局テントを張る事で話そうと安間と松尾は決めた様だ。
あの二人は本当に浅宜彦が二人を結び付けたと信じて疑わない様だ。
あの市議の父が此処での挙式をよく納得したと驚く浅宜彦、その夕方、もっと驚く事にその伊藤圭三が妻を連れて、お参りに来たのだ。
式の打ち合わせを兼ねて来たのだろうが、二人が祠の前で
「すみませんでした、娘達から色々聞いて、神様の存在を現実の事と受け取りました、
娘夫婦が幸せに慣れます様に、私の我が儘から遠回りをさせてしまいました、お許し下さい」
と賽銭十万円を置いて帰ったのだ。
改めて、感激の浅宜彦、自分の力でも人の気持ちが変えられる事に感動していた。
そう考えると急に比奈子に会いたくなった。
でも、今夜で最後だと思う寂しさが込み上げる。
もう彼女に思い出を出してあげる事は出来ない、それを彼女は知っていない。
今夜の思い出はあの事件の日だ。
自分の身体の側で、背中を刺されて、亡くなる功一の姿、そして、今の自分も比奈子のお陰で成長した。
参拝客も増えた。
祠も大きく成った。
感謝の浅宜彦、比奈子の枕元に立つ浅宜彦に、
比奈子が急に「神様、ありがとうございました」と言ったのだ。
ドキットする、浅宜彦、比奈子に私が見えるのか?
それは、有り得ない、人間の中に、霊力が強くて神が見えると云う人が居るのだが、それは嘘だと浅宜彦は思っていた。
単なる気のせい、神様で商売をしているだけだと思う。
悲しむだろうが、仕方無く最後の思い出をセットして、去る浅宜彦、これ以上比奈子を見て居る事が出来なかった。
夢の中で泣き崩れるからだ。
もう、此処に来ても自分には何も出来ないと思う寂しさと共に祠に戻る。
浅宜彦は寂しい気持ちで一杯に成っていた。
その夜はとても、麻生典子の処に行く気持ちに成れなかった。
今頃比奈子は悲しみの中だろうな、と考えるだけ。
翌日の夜、気を取り直して麻生典子の処に飛ぶ浅宜彦、
眠る典子の記憶に入り込む、随分前の記憶の中に、若い堂本隆史が現れる。
二人が口論をしている、養育費での口論の様だ。
預貯金の分配での口論の様だ。
若い二人には殆ど貯金が無い、典子が実家から貰ったお金と自分が独身の時に貯めた貯金を分けろと要求している隆史。
これは、貴方には関係の無いお金だから、省いて考えてくれる様にと怒る典子、子供は二人共典子が引き取ると話している。
兄弟が別れるのが可哀想だと、主張する典子、別の記憶は大きく変わって、隆史が子供は統べて自分が引き取ると言い出している。
彼女には子供が出来ないと判って、隆史の考えが変わった様だ。
堂本家の跡継ぎ問題で、両親が口を挟んで来た様だ。
幾ばくかのお金を典子に払う事で、兄弟は引き裂かれた様だ。
別の記憶では、今後一切連絡はしない、子供には、住所は教えない、会わせないと決めている。
浅宜彦は纏めると、始め兄弟は妻典子が育てる事に成って居たが、
隆史の彼女だった里美には二人の娘を産んだ後、子供が出来ない事を知った。
隆史の両親が無理矢理兄弟を引き裂いた様だ。
もしかしたら、隆史が子供の引き取りを言い出して、典子が一人でも自分に残そうと戦ったのかも知れない。
典子は保険の外交の仕事で、その後は悟と二人で慎ましい生活で今日まで過ごしている。
隆史と典子の自宅は駅一つ離れて居るだけだ。
もし、住所が判れば子供達は行き来が出来るのだが?
恋心
14-12
約束を守らずに、どちらかが教えたのだろうか?明日はこの悟の記憶を調べて診たら、何か判るかも知れない。
翌日再び典子の自宅に行く浅宜彦、今度は悟の記憶に入る。
父親の記憶は殆ど無い、小さい時の物が僅かに有るだけ、最近は会ってないのか?
久美との記憶は?沢山有るな、切っ掛けは?と探すと、駅か?快足に乗り換える為に久美が降りたホームに悟が居たのだ
「お兄さん、珍しいわね」と声を掛ける久美に怪訝な顔をする悟
「どうしたの?不機嫌ね」と言うと
「君、頭大丈夫?」と言う悟に
「兄さんじゃあないの?」
電車が到着して乗り込む二人、四人掛けの席に向い同士で座ると
「でも、よく似ている」と顔をマジマジと見て言う
「君、失礼だね」と言うが、
久美に興味が湧いたのか悟が「歳は?幾つ?」
「私?兄貴?」
「お兄さんだよ」
「二十三歳かな?今年から働いて居るから」
「同い年か」
「そうなの?貴方も二十三歳?」
「そうだ」
「生まれた月は?七月だったら笑いだわ」と微笑むと
「七月が悪いのか?」と怒りながら聞く
「えー、七月なの?」
「そうだよ、七月七日だよ」
「嘘、嘘でしょう」と今度は久美が驚きの表情に成る
「どうしたのだ?」
「だって、顔も誕生日も同じだ、何て、誰でも驚くわよ」
「君は幾つだ?」
「十九歳、短大よ」
「そんなに、似ているのか?」
「瓜二つよ、双子みたい」
「双子???」悟は小さい時に微かに記憶に残っていた。
兄弟の事を母に尋ねた事が有った、母が兄は病気で亡くなったのよ、それが原因で父と離婚したと聞いていた。
浅宜彦はこれが出会いか?中々隠す事は出来ない物だ。
隆史の浮気で別れた夫婦、双子の慎次と悟は引き離されたのだ。
仲が良くていつも一緒に遊んで居た二人、突然居なくなった兄弟に二、三日泣いていたのだ。
悟の記憶の中には兄が亡くなった悲しみで泣いた記憶だけが残っていた。
浅宜彦には統べてが、判るが、当人の記憶には残って居なかった。
その後、二人はお互いの家庭環境を知らずに過ごすが、ある時に慎次と悟は対面する。
久美が慎次に話して、そんなに似ているのなら、一度見て見たいと会ったのだ。
二人は直ぐに別れた兄弟だと感じたのだ。
その日から戸籍を調べて確認した。
だが離婚の原因が判らないから、両親には内緒で何度も会っていた。
その中で慎次は裕美を好きに成り、悟は久美を好きに成った。
お互いに、結婚には難関が待って居た。
兄弟で結婚出来ない、悟は、母が離婚をした、最大の原因の女性里美の子供久美との結婚、
当初は遊び友達の範疇を守っていた二人だが、一線を越えて付き合いだして、急速に結婚へと考えが変わった。
兄弟三人がスキーに行くのに、隆史も里美も何も不自然さは感じていなかったが、
現地では四人二組のカップルでの行動に成って、男女の仲に成っていた。
一卵性の双子は同じ行動をする傾向が有るので、お互いが好きに成るのも同じ、相手も同じ様な人に成って、お互いが満足をしていた。
十五年以上の歳月を隔てて再び出会った兄弟は、昔の様に仲が良かった。
唯、両親には内緒だったが、いよいよ、決断をして告白し始めたのだ。
その困難な結婚を成就させる為、浅宜彦の力を借り様としていたのだ。
悟の記憶から総てを知った浅宜彦、愛し合う二組の為に、頑張ろうと思ったのだ。
慎次は大丈夫だが、この双子片方だけが結婚して、片方が破談に成ると、多分二組共に崩壊するのでは?
浅宜彦にはその懸念が有った。
その予想は翌日、見事に的中した。
双子が揃って、お参りに来たのだ、そして声を揃えて「二組が揃って挙式が出来ます様に」と祈る。
「僕達は、一人が幸せに成ろうとは、考えて居ませんので、宜しくお願いします」と声を揃えて言った。
浅宜彦には、難題だ、これは意志が固いので、片方の結婚適合が出来ないのでは?の疑問が湧いた。
両方の適合にすると、母の典子が無念に思い何をするか?危険をはらんでいる、この憎しみは半端では無いから。
どうするのが正しいのか?悩む浅宜彦、二組のカップルは愛し合っているのは確かだが、
その日の夜、堂本の家に飛んだ浅宜彦は隆史の記憶に入る。
隆史は保険会社の人間で、里美は当時前の夫、上月とようやく離婚が成立して、
自分で仕事を探して二人の娘を育てる為、働き出して直ぐに交通事故に遭ってしまった様だ、
当時里美の様に子持ちの女性が正社員で努める事がどれ程大変な事か、里美には天の助けに思われた正社員での採用、
上月とは、大学を出て、就職もせずに同棲から結婚、里美は別に技能も無く、仕事の経験の無かったので、
雇って貰えるか心配だったのに、そこの会社に事務の正社員で雇われた。
朝は九時、夕方六時には会社を出て、家に帰れる最高の職場を見つけたと思って居た。
だが、喜びもつかの間、帰宅時に自動車に引っかけられて、自転車が転倒、骨折をしてしまった。
通勤途上の事故だったが、その日は子供の塾の説明会で寄り道後の事故で、労災には成らず、
一ヶ月の入院とリハビリが必要との診断書で折角正社員の会社も解雇されてしまったのだ。
その時に保険の担当をしたのが隆史だった。
何度か里美に会う間に哀れみから愛情に変わってしまった、一番は娘二人が、隆史に懐いたのが大きかった。
当時上月との結婚に両親は反対していた。
その為同棲から始まったのだが、離婚で里美も両親を頼る事が出来ない状況に成って、
自立で娘達を育てる決心をしていたので、この事故は三人を地獄に突き落としたのだ。
事故の相手も若い大学生で、賠償能力が殆ど無く、困り果てていたのを、親身に援助までしたのが隆史、
だがそれを知ってしまった典子は逆上。
その為別居状態に、始めは親切心の隆史も典子の誤解と激怒に堪えかねて、里美と仲良く成って行ったのだ。
浅宜彦は{親切が仇に成ったのか?}
この事実は、この隆史しか知らないのだろうな?典子さんの誤解で始まった離婚劇なのか?
この夫婦は別れなくて、良かったのに、別れた。
典子の憎しみで、夫婦の修復は無理でも子供の幸せは確保してあげないと、どの様にすれば?思案する、浅宜彦。
その、浅宜彦の祠にまた年寄りのお婆さんが願いを言いに来たのだ。
もう七十歳を超えているで、有ろう老婆谷勝智恵が
「田所尚人さんと結婚出来ます様に」とお祈りをしたのだ。
過去に無い老人の願いに驚く浅宜彦、取り敢えず調べなければ、何も始まらない。
その日の夕方、同じ様な老婆鹿田静代が「田所尚人さんと結婚出来ます様に」と全く同じお祈りをした。
浅宜彦は驚く、こんな老人の三角関係?二人共誰かが一緒に付き添いで来ている。
何処かの施設?不思議に思うが取り敢えずチェックをして、いつでも飛べる状態にする。
老人も恐いね、若い時は男性が女性を巡る争いをするのに、歳を取ると、逆なのか?
思わず笑いそうに成る浅宜彦だった。
老婆の思い
14-13
翌日、浅宜彦は鹿田に飛んだ、昼の光が眩しい、
そこは老人ホーム、丁度昼食後のデザートの時間、ヨーグルトを食べているが、
口の周りに付けて、何とも食べ方が普通に食べられていない、
先日のお祈りの時はしっかりと名前を言って、恋愛だと思わせたがこれは少し違うのでは?
もう一人の谷勝さんの処に飛ぼうと移動する浅宜彦{あれ?同じ風景だ?}同じ場所に谷勝が居た。
この老人ホームの中の三角関係なのか?
同じ様にヨーグルトを食べる谷勝、多少は鹿田よりは食べ方が綺麗だが大差はない、ヘルパーさんが口を拭いて廻る。
処で、田所尚人は何処だ?このホームの中なのか?と探し廻る、名札の入った下駄箱が有る。
順に見ていく浅宜彦、何処にも見当たらない、二度も見たが居ない、何処の人だろう?
これは、記憶の中から探さないと判らないのか?
眠った頃にもう一度来るか、幾ら老人でも分け隔てなく縁を結ぶのが神様の勤めだと祠に戻る浅宜彦。
夜に成って老人ホームに行く浅宜彦、鹿田の記憶に入る
{わー、これは?もう記憶がバラバラだ}
驚く浅宜彦、これでは、本人は記憶を取り出す事は殆ど不可能に近いと思う。
自分は記憶を見る事が出来るが、本人にはもう断片的にしか思い出していないだろと思う。
比較的綺麗な記憶は、統べて子供の時代の記憶、老人が子供みたいに成るのもこれが影響している?
浅宜彦は鹿田の記憶から、田所尚人の記憶を探すのを残念して、谷勝の元に行く、記憶は殆ど同じ状況、
二人の老婆は全く同じで記憶から、田所尚人の存在を確かめる事が出来ない?誰だ?この田所尚人って?
此処の同じ入居の男性?若しくは、此処の出入りの業者?判らないとどうする事も出来ない、浅宜彦、
二人の記憶に有る最近の事では共通するのはテレビ番組、ホーム内の出来事で他は皆無、これでは調べられない、困った。
数日後昼間、老人ホームに行くと、鹿田がヘルパーに
「村田さん、神様にお願いしたのだけれど、中々よね、田所尚人さん、来てくれないわね」
「鹿田さん、お祈りして時間がまだ、少しだからね」
「嘘よ、もう去年だわ、忘れられたの?」
「まだ、十日位よ、神様も忙しいのでしょう」
「そうなの?美男子だから、沢山の女の人居るから、私が見つからないのかな?」
「大丈夫よ、それを叶えて下さるのが、神様よ」
{その通り、頑張っていますよ、お婆さん}でも田所さんが判らないのよ。
今日もヒントは無か?諦めて、悟の処に飛ぶと、
久美に会っている「一度、お父さんに会う?」
「でもなあ、会うとお袋に言うだろう、そうなると益々拗れるだろう?」
「お母さんが昔ね、悟のお母さんに悪い事をしてしまったと、泣いていた事が有ったのよ」
「何故?」
「お父さんがお兄さんと悟さんを引き離したのが、自分の責任だと」
「何故?」
「その当時、私は兄さんと悟さんの事は知らなかったけれど、お母さん、私を産んだ時に子供が産めない身体に成ったのね、
だから本当は、お兄さんはお父さんが引き取らない事に成っていたのが、急に引き取ったから可哀想だと思ったと、話して居たわ」
「お父さんに会わないで、お母さんに会わせてくれないか?」
「内緒に出来るかな?お母さん」
「その時は家を出よう」
「えー、悟さんお母さんと別れられるの?」
「一時的に、だよ」
久美は両親に内緒で付き合っているらしい、悟が最初に母に話して、様子を見た様だ、その結果が良くなかったので、
次の行動を話し会っているのか?
祠に戻る浅宜彦に、若い女性が
「菅野恭子と申します、大変厚かましいお願いですが?田所尚人さんとお付き合いさせて下さい、お願いします」
と千円の賽銭を入れて帰った。
恭子は二十歳程の若い女性、通常なら交際即許可の浅宜彦もこの時は許可が出来なかった。
同一人物?嘘だろう?同姓同名の別人?不思議な事だ、八十歳近い老婆二人と二十歳の女性が同じ人に交際を?
兎に角、この恭子を調べて見よう、後程行く事にする。
すると今度は、先日の谷勝がヘルパーと一緒にやって来て
「田所尚人と結婚出来ます様に」と百円の賽銭を入れた、
同じ事を二度言うのは、余程好きなのか?
「谷勝さん、良かったわね、これで神様も願いを聞いて下さるわよ」
「念願のお参りが出来ました、ありがとう」
{えー、先日も来たけど?俺そんなに馬鹿じゃないから、一度で判るよ}と苦笑いの浅宜彦。
比奈子の処に行ってから二週間以上が過ぎ去った、
行きたい気持ちは有るが、唯寝顔を見るだけでは、どうする事も出来ない自分、もう、思い出は使い切った浅宜彦。
翌日の夜、予期していない出来事が、この祠の前で起こった。
あの、佐用比奈子がお忍びでやって来たのだ、
「神様、先日の夜、功一が。。。。」
「あっ、やはり」と石段の下から女性の声が聞こえる、
お祈りの最中の比奈子が、暗い石段の方角を見る、声は女性、するともう少し向こうから
「困ります」の声、比奈子はその声がマネージャーの小宮の声だと直ぐに判った。
「小宮さんが、何故?此処に?」
「すみません、尾行されていたみたいで」
慌てて、走って石段をあがって来る小宮マネージャー、比奈子の処にゆっくりと、近づいて漸く、顔が見える
「貴女は?」カメラを片手に持った、芸能記者の安藤鈴与だった。
「此処で、彼氏との仲が成就する様に、態々夜を選んで着たのね、これはスクープよね」
「そうよ、彼氏との事をお願いに来たのよ、この神様は私の願いを必ず聞いて下さるのよ、
だから、この祠も私がお礼に寄進したのよ」
「恋の神頼みをしたの?お礼に来たの?」
「お礼とお願いよ」
「思って居た通りね」
二人の間に入って小宮が「比奈子さん、芸能記者と色々話すと、また書かれますよ、帰りましょう」
「私、まだお祈りしていないの、向こうに行ってくれない!」
「恐いわね、この様な場面でもお祈りするの?大した勇気ね」
「小宮さん、この人を向こうに連れて行って、心が乱れて神様にお話が出来ないから、
そうだ、後で話しを聞きますから、それで良い?」
「えー、比奈子さん、インタビュー受けるの?」
「お祈りが終わったらね、私も忙しい中、帰って来たによ、明日朝にはまた、戻らなければ行けないのよ、
両親にも内緒で帰って来たのよ、お願い邪魔をしないで!」
「はいはい、ごゆっくりと」
浅宜彦には意味の理解出来ない会話だった
、比奈子の亡くなった彼の事を週刊誌に書いても意味が無いのに、比奈子が此処に来た理由は判っている、
功一に再び会わせて欲しいと、お願いに来た事は聞かなくても判る、浅宜彦だ。
普通はしては行けない事をして、彼女に記憶を夢の中で再現してしまった事を後悔していた。
本山から叱られる、ギリギリの行為、それでも比奈子には夢の様な出来事だった筈だ、
だから新人の比奈子は三百万ものお金を寄付したのだ、自分の小遣いの統べてだったと思う、
それ程感動したのだ。
人は誰でも思い出を持って暮らして居る、蘇って欲しい思い出、欲しくない思い出、それが鮮やかに蘇った時、
人はどの様な行動に成るのだろう?浅宜彦には判らない。
週刊誌
14-14
比奈子のお祈りは浅宜彦の予想した事だった、もう一度見たい、だった。
人の記憶は時間と共に薄れて行く、比奈子も同じだ、
夢を止めて置く事は出来ない、毎日消える思い出にもう一度を願う気持ちは判るのだが、
何も出来ない浅宜彦、精々功一の顔と姿を夢の中に出す程度だ。
お祈りが終わると比奈子は三人で神社を後にした、
{あの芸納記者も酷だなあ、死んだ恋人の事迄記事にするのか?}思い出なのに、芸能界は恐い所だと思う浅宜彦。
悟と久美の母親が会った様だと、久美の処に飛んで知る浅宜彦、
「困ったわね、久美ちゃんと悟君を一緒にさせてあげたいけれど、難しい問題だわ」
「悟さんにお母さんを捨てさせる事は出来ないしね」
「でも、悟君は良い人だったわ、優しくて、久美の事、愛していると判るわ」
「でしょう、お父さんに話す?」
「まだ、早いと思うわ」悟君はどう考えて居るのだろう?浅宜彦は悟の処に飛ぶ。
悟が母典子と話しをしている
「先日、久美さんのお母さんに会って来たよ」
「えー、お母さんを無視して、よく会いに行けたね」
「結論から言えば、お母さんの誤解だよ」
「何が誤解よ、意味の判らない事を言わないでよ」と怒る典子。
「お父さんに、抗議しないとダメね、子供も私達も会わせない約束だったからね」
「別に父さんが会わせた訳ではないよ、偶然駅のホームで兄さんと間違えて久美が僕に声を掛けたのだから」
「何よ!それ、駅のホームで?」
「だって、兄貴と僕は瓜二つだから、見間違うよ、お母さんは最近のお兄さん見てないから判らないのだよ」
「例え、偶然会ったにしても、結婚迄話が行くのは変でしょう、兎に角ダメです」二人の話は平行線。
何か解決策が有るだろうと思う浅宜彦、今度は菅野恭子に飛ぶ。
この恭子の願い出た、田所と老婆二人の田所が同じ人物だとは、思えない、同一人物なら、こんな不思議な事は無いだろうと思う。
恭子は短大の帰りの電車の中だ、浅宜彦は始めて電車に乗った、
人間は何故?こんな疲れる物に乗るのだ、空は飛べないから、仕方が無いか、恭子は携帯ゲームをしている、
何処かに田所の写真は無いのか?
ゲームを楽しむ幼い女の子が結婚を頼むのかと呆れ顔の浅宜彦、すると携帯に
(恭子、来月田所尚人に会えるわ)とメールが届く、
急に笑顔に成って(一緒に、行くよね)
(勿論よ)
{一緒に会うのか?結婚相手に?}
不思議に思う浅宜彦、それに結婚相手に来月迄会わないのか?変な話しだな。
数日後再び恭子に飛んだら、同じく電車でゲームに集中の恭子、とても結婚する女性には見えない、
今日も友達からメールが届く(見た?週刊誌?)
(まだ、読んでいないわ、だって、私の彼が他の女性に目を向けるなんて考えられないから)
(でも、買えば週刊誌)
(今も車内に広告が出ているわよ)
浅宜彦が電車の中吊り広告を見て、仰天に成った。
そこには、神に祈る佐用比奈子、地元の縁結びの神様に、田所尚人との将来を願う、深夜のお祈りの見出し
{あれは、先日のトラブルの話し?田所尚人って俳優なのか?}
じゃあ、あの老婆も田所のファン?同一人物?この恭子も所謂ファンか?人騒がせな。
急いで谷勝に飛ぶ、テレビの芸能ニュースを食い入る様に見る二人の老婆
「鹿田さん、諦めましょうね、同じ神社に同じ事をお祈りしているのよ、この比奈子さんも」
「私が負けたの?」
「そうよ」
「許せないわ、私の尚人を盗んだ比奈子と云う女が、この近くでしょう、連れて行ってよ」
「何をしに行くの」
「家に火をつけて皆殺しよ」
「恐いわ、止めましょうね」
「いいえ、許さない」とヘルパーを困らせる。
この谷勝は若い時、その犯罪を実際に行っていた、
未遂だったが、恋人に振られて、火をつけたが、強風で燃えなくて、消えてしまった。
実刑を受けた、札付きの女性だった、今は老人ホームで半分呆けているのだが、恐い女だ。
反対に、谷勝は完全に暗く成って、口もきかない状態、好対照、
浅宜彦は、田所雅人と佐用比奈子は何も無いのだよ、と教えてあげたい、テレビに映る田所をチェックする、浅宜彦
後程調べて見よう、そんなに良い男なのか?見る為に。
比奈子の様子を見る為に飛ぶと
「問い合わせが凄いと、社長怒っていましたね」
「夜の神社まで、尾行されているとは思わなかったわ」
「でも、何故?否定をしなかったの?」
「だって、誰も信じ無いでしょう?亡くなった恋人に会う為に祠に来た何て?」
「私も信じられないわ?夢に過去の記憶が出るのは判るけれど、
比奈子の話だと、まるでその場所に居る様な体験でしょう、そんな夢は中々無いわよね」
「でも彼が死ぬ時から、もう無くなったのよ、私はもう一度見たくてお祈りに行ったのよ、でもあれから一度も無いのよ」
「夢は別にして、田所さんは?」
「はっきり云えば、向こうは落ち目、私はこれからのスターだから、利用されたと思うわ」
「比奈子の人気は上昇中よね、連続ドラマが終わる頃には、もっと人気よね」
「だから、田所さんは否定しないのよ」
「比奈子も否定してないから、成立?」
「そう、芸能ネタにされたのよ」
よし、田所を見に行こう、浅宜彦は尚人に飛んだ。
予想通り「佐用比奈子との話題を作る為に、もう少し話題を作るか?」
「はい、何を?」
「マスコミにたれ込んで、比奈子のマンションに行け」
「時々母親が来ていますよ」
「マンションに入るだけで良いのだよ、マスコミが勝手に撮影して話題にしてくれるから」
「でも、他にも何か手を打って下さいよ」
「判っているよ、今、交渉している、秋に共演の話しを」
「連続ドラマのヒロインは殆どスターに成るから、利用しないとね、
社長比奈子と密会でも良いですよ、まだ芸能界の手垢付いてないでしょう」
「お前も、相変わらずだな、昔から手だけは早いから、俺も随分尻ぬぐいをしたよ」
「でも、お陰で大きく成ったでしょう?会社」
「まあ、そうだが」
{悪い奴だな、何が尚人様だ!}と怒る浅宜彦。
総て、不可だ!と浅宜彦は尚人関係の願いを却下した、
でも今後も比奈子の人気に便乗を考えているので、時々見に行かねば、
比奈子の願いはもう叶えられないけれど、見守ってあげたい気持ちの浅宜彦。
慎次の処に飛ぶ浅宜彦はいきなり、驚いた
{何故?典子の処に?}
「お母さん、どうしても考えは変わらない?」
「ダメです、お前があの女の子供と結婚するなら、私は死にます」
「えー、お母さん、それは困るよ、でも諦められないのだ」
「諦めて、お願いよ」
「母さんは、今お兄さんに会えたら、会いたい?」
「当たり前よ、別れたくて別れたのでは無いのよ、無理矢理別れさせられたのよ」
{えー、今会っているのに?これは?}浅宜彦が今度は悟に飛ぶ。
「親父!悟に会いたい?」
「当たり前だろう、誰が子供に会いたく無い親が居る物か?小学一年から、会って居ないのだ、どうしているか心配だよ」
「そうなのだ、会いたいのだ」
浅宜彦は兄弟が入れ替わって、両親の説得に乗り出したと思った。
脅迫文
14-15
完全に入れ替わった、慎次と悟、
今は便利な携帯が有るので、お互いが判らない事の連絡を取り合って、何日間に成るか、両親に訴え様としたのだ。
親でも、見分けが付かない程似ている二人、
特に大人に成ると男の子は、親と接する機会が極端に減少するから尚更、判り難い。
でも二人は、涙が出るのを押さえて、演技をしているのだ.
お互いに十五年以上会話も顔も見ていないのだから、懐かしさで思わず抱きしめたく成る事も屡々、
悟は久美達の協力が有るが、慎次には誰の助けも無い、見破られるまでに、何とか母を、母の気持ちを変えなければ成らないのだ。
意外と大人に成ると子供は親と話す機会が少なく成っていたので、露見しなかった。
数日過ごす二人は、徐々に我慢が出来なく成ってきた。
何十年振りに側に母親が居る慎次は、僅か三日で限界に達していた。
「お母さん、もうダメです、僕は我慢が出来ません」と夕食の時に急に言い出した
「何を?言っているの?」
「実は、僕は兄の慎次です!」
「えー!」と大声で驚く典子
「嫌―ね、からかっているのね、ダメですよ、あの女の子供との付き合いは許しませんからね」
「違いますよ、本当に僕は兄の慎次ですよ」
「親をからかわないでよ、あの女の子供との付き合いを許さないから、脅かしているのね」と信じ無い典子
「お母さんのその疑いが、不幸を招いたのだよ」この時浅宜彦が飛んで来た。
「悟、気が変に成ったの?」
「悟では有りません、慎次です、これを見れば信じますか?」
慎次は右足を捲り上げた、そこには三日月の様な黒子が有った。
驚いてその黒子を凝視する。
典子「書いたの?知らないわよね」
「この黒子は慎次、即ち僕しか無い筈ですよね」
「。。。。。」驚く典子は我が子を抱きしめて良いのか迷っている。
慎次が堪らずに抱きついた「しんちゃん!なの?」頷きながら泣き出した慎次、小学一年以来の再会に感動していた。
流石の典子も涙が止まらなく成っていた。
無理矢理手放した我が子だ、本来なら兄弟一緒に引き取る予定が、堂本の実家の横暴で泣く泣く手放した典子だった。
しばらくして「何故、しんちゃんが、此処に?」
「誤解を解く為だよ」
「誤解?」
「怒らずに聞いて欲しい、今悟と久美が愛し合っているのは知っているよね」
「私は絶対に反対よ」
「それは、お母さんが久美のお母さんにお父さんを取られたからでしょう?」
「盗まれたのよ」
「それは、誤解だよ、僕は久美のお母さんから事情は聞いて、お母さんの勘違いからの離婚だったと知ったのだよ」
「何を言うのよ!」と怒った典子だったが、慎次の必死の説得に、一度慎次達の父親に会う事を渋々承諾をしたのだった。
浅宜彦はほっとしていた、これは何とか纏まるかも知れない、
悟に飛ぶ浅宜彦、早速慎次から連絡が入って、父親の隆史に家族全員で説得して、隆史も会う事を了承したのだ。
浅宜彦はこれで、二組の結婚は大丈夫だと、適合をさせた。
浅宜彦の力は凄い、数日後に会った元夫婦は、少しの時間話して、直ぐに結婚の話しを始めたのだ。
本人達も何かに引きずられる様に、結婚させように傾いてしまった。
そうなると不思議なもので、結婚の障害の兄弟の問題も直ぐに解決の方法が判って、慎次も裕美も大喜びに成っていた。
浅宜彦は比奈子のマンションに飛ぶ、
比奈子はまだ帰宅していないが、マンションの前が騒がしい、芸能記者が大勢、比奈子の帰りを待ち構えて居たのだ。
{何事?比奈子に何が有ったのだ?}驚く浅宜彦、田所が何かしたのか?
浅宜彦は比奈子の処に飛ぶ、
{あれ?此処は?}物陰に隠れているのだ、
「何処に、逃げた?」
「車を止めて、急に逃げ出すとは思わなかったので、すみません」
「今、物にしておかなければ、今後に影響が出る」
{あの声は、田所だ}比奈子を連れ込もうとしたのか?
「あんな、脅迫文が来るとは思わなかったよ」
{脅迫文?}田所に?比奈子に?兎に角此処は比奈子さんをあの悪の田所から守らなければ、どうしたら良いかな?
考えている時携帯が鳴った、田所は誰か話しをしている、話しの内容は判らないが、車に乗り込むと急いで走り去った。
比奈子は物陰から出て、大きく息を吸った。
路地から大通りに出て、タクシーに乗って自宅に向かう、途中にマネージャーの小宮に電話で、記者会見を開く準備を頼んでいた。
自宅に到着したのは一時間後だった。
比奈子は途中で時間を測っていたのだ、コーヒーを飲んで調整をして帰宅時には、報道の人は誰も居なくなっていた。
その頃、比奈子のプロダクションに田所のマネージャーが来て、会談をしていたのだ。
田所が比奈子を拉致しようとした事を、記者会見で暴露すると言ったから慌てて来たのだ。
比奈子の人気に便乗する予定が、比奈子の処に脅迫文が届いて、田所との交際を直ちに中止を要求して、
応じない場合は放火も辞さずの文章が、テレビ局に届いたので、マスコミが騒いだのだった。
明日、緊急記者会見を決定したので、マスコミが引き上げた、その時間を見計らって帰宅した比奈子だ。
浅宜彦もその会見が大いに興味が有った。
比奈子が何を語るのか?だが脅迫文は?誰?の疑問から、浅宜彦は直ぐに老人ホームに向かった。
あの谷勝の言葉が気に成っていた。
谷勝知恵は何だか嬉しそうに見える、ニタニタとして気味が悪い、
ヘルパーの人が「お婆さん、今夜は楽しそうね」
「そうよ、楽しいのよ、尚人を奪う奴は懲らしめないとね」
「懲らしめるって?どうして?」
「内緒!内緒!」
「お婆さん、ファンレターを度々出しているけれど、何を書いているの?」
「尚人様、好きと書いて出しているのよ、悪い!」
「返事は来ないでしょう?テレビ局宛だからね、沢山届くと思うわよ」
それだけの会話を聞いた浅宜彦は、谷勝の仕業だと感じた。
呆け老人にマスコミも振り回されたのか?
虚しい事だと思う、それに便乗して拉致を考える田所は許せないと憤りを感じる浅宜彦。
翌日、放送局で緊急記者会見が行われて、比奈子は田所尚人との交際の事実を完全否定した。
そして、自分が神様の祠にお祈りしたのは、
昔、歩行者天国で暴漢に自分を守って刺し殺された恋人に一目会わせて欲しいとお祈りした事実と、
夢の中で再会させて貰ったお礼に、お参りに行った事実を語った。
それだけ語ると、比奈子の恋人だった人間は直ぐに判明する。
比奈子は自分の胸の中に締まっておきたかったが、脅迫文、それも放火と聞いて公開したのだ。
この事実で田所との噂も消えるから、苦渋の決断だった。、
大盛況の神社
14-16
浅宜彦は、比奈子の気持ちを痛い程感じた。
もう与える事が出来ない思い出、その事を伝える事も出来ない脅かしい。
浅宜彦はその日は憂鬱そのもの、神様も気分の良い日も有れば悪い日も有る。
そんな浅宜彦の目を覚ますかの様な参拝客が押し寄せたのは、翌日からだった。
今度は参拝の人が年寄りの数も多く、境内に異様な雰囲気が漂っている
「この、祠かね、夢で会わせてくれる神様が居るのは?」
過去に無い参拝客に松尾も安間も驚きで対応に明け暮れている。
参拝に二時間待ち、山は祭りよりも多い人で、すし詰め状態。
参拝の人のお祈りは総て
「誰かに会わせて欲しい」
「死んだ、子供」
「亡くなった、夫」
浅宜彦本来の仕事は皆無に成っていた。
比奈子の記者会見で、此処は大変な場所に成ってしまったのだ。
{師匠助けて~~}と弱音が出る。
浅宜彦は何もする事が無い、比奈子に行った行為をする事は出来ない、直ぐさま神様失格に成ってしまう。
唯、噂が消えるのを待つだけ、中には思いが強く夜夢を見る人も居て、
「私、夢で見たのよ、だからお礼に来たの」
と言い出す人も現れて、ブームは続いた。
マスコミも取材に来て、火傘神社は毎日がお祭り状態、ガードマンを雇い、車と人の整理、毎日の賽銭、
関連グッズの売り上げと、巫女も沢山雇い入れて松尾は嬉しい悲鳴、最初の目論見とは多少異なったが、
縁結びの神を降臨願えた成果を噛み締めていた。
当の浅宜彦は全くお暇状態、何もする事が無い。
数日後深夜比奈子の処に行って、功一の姿だけを出すセットをして、側でジート眺めて居た、どの様な反応をするのだろう?
「功一さん!」と突然叫ぶ、
手を差し出して、掴もうとしているのだろうか?
必死で手を動かす「行かないで!」「いやー!」「戻って!」と叫ぶ、
現れた静止画の功一が全く動かないで消えたから、この様な行動をしたのだと浅宜彦は思うが、これ以上の姿は出せない。
しばらくすると、比奈子の瞳が開いた「神様ね!」と口走った。
思わず固唾を飲む浅宜彦、見えるのか?今度は怖く成る!
「もう、出せないのね?功一との思い出は?」
と比奈子が天井を向いて、まるで浅宜彦に語りかける様に言う、益々怯える浅宜彦は消え様とすると、
「また来てね!」と言われて慌てて祠に戻る。
祠には夜でも、少ないが人が来て居る、昼間の混雑を避ける為に、
{何もしてないのに、毎日凄い人だ}
その時大勢の男性が、数十人やって来て、作業を始めた、何が今度は始まるのだろう?
昼間には設置が出来ないから、夜中に来たのだ、テレビ局が中継の機材を祠の廻りに設置していたのだ。
照明が祠に当たって、新しい祠が綺麗に暗闇に浮かぶ。
「よし、ライトOk」
「明日は好天だから、雨の用意は必要無い」とスタッフ数人の指示で、カメラの設置場所を決める。
「佐用さん、夕方到着だから、警備も万全に、例の脅迫文は地元から出されているから、気を付けて」
{えー、比奈子さんが来るの?}驚く浅宜彦、
「昼間の様子も撮影するから、頼むよ」
三時間程で機材の設置が終わって、警備の人数人が残って、スタッフは帰って行った。
確かなのは、明日此処でテレビの中継が行われて、比奈子が来るらしい、夜のニュース番組で話題の神社を取り上げるのだ。
このブームを作った立役者の比奈子にこの神社の解説をさせようと企画された様だ。
松尾と安間それに巫女がインタビューをされて、中継を盛り上げる企画に成っている。
勿論松尾と安間には最高の宣伝に成ると、沢山の関連グッズを買い込んで準備をしていた。
事前に中継を告知すると、今でも大勢の参拝客で混雑しているのに、困るから、当日発表にしていた。
真夜中に立て札を設置する、松尾達、
(本日、夜十時過ぎ、佐用比奈子さん、当神社からテレビ中継)と簡単な言葉の立て札が五枚程境内に立てられた。
翌日も朝から大勢の参拝客が訪れる。
関連グッズ、御札、お守りが売れる。
先々週から境内の数カ所にテキ屋も次々出て、今では十数店が屋台を並べて、祭りよりも賑やかな様相、
参拝客は願い事以外に楽しみが増えて、たこ焼き、鯛焼きを食べながら、順番を待つ人も沢山増える。
今夜の中継の看板を見て、夜迄此処に居て、見ると云う人も出るから、尚更混雑している、バイトの巫女も大忙し、
夢見枕迄販売する安間達、それがまた飛ぶ様に売れる。
枕の下に敷く御札も強烈に売れている。
会いたい人の名前を書く趣向が大いに受けたのだ。
安間は来週から、ネットでこの御札の販売も考えていたので、今夜の中継はその宣伝には最高の舞台だ。
今までの縁結びの神様の場合は比較的若い人が多かったが、今では老人、中高年が圧倒的に多く成っていたのだ。
夜の中継で比奈子が
「誰でも、会えませんよ、お祈りが神様に通じた人だけが、その願いが叶います」
と放送で言ったから、自分が夢に出ないのはお祈りが足りないのだと理解する人が増えるのだった。
大勢の人に囲まれて、祠の前に立つ比奈子が松尾、安間にインタビューで、
この火傘神社に縁結びの神様の降臨をと聞かれて、世の中で出会いを求めていらっしゃる方の、お役に立ちたいから、
でもそれはこれから結婚される方だけではなく、過去の良い思い出を蘇らせる事も出会いだと感じます、
と言って浅宜彦の効果を縁結び以外に有る様に話した。
比奈子が私は何度も亡くなった彼が夢の中に現れて、楽しかった日々が蘇り、この神様に感謝していますと、涙を流しながら語った。
比奈子の言葉のインパクトは大きく、中継が終わると、昼間の様に近隣の人が参拝に訪れて、
比奈子が神社から出られない状況に成る程、ガードマンでは、比奈子を誘導出来ないので、社務所に避難する。
テレビ関係者、流石に松尾もこんな騒ぎに成るとは、想像していなかった。
テキ屋も販売の材料が無くなって、唯、呆然としているだけ、騒ぎは明け方漸く落ち着いて、比奈子達関係者は神社を後にした。
テレビ局への問い合わせも殺到して、もっと詳しい場所を教えてと回線が止まる程だった。
唯、当の浅宜彦はこの様子を驚きながら眺めているだけで、考えて居たのは、比奈子に自分の姿が見えて居るのか?
の疑問だけが堪えず有った。
近日中にもう一度比奈子の眠る時間に行って、様子を見ようと考える浅宜彦なのだ。
神様の苦悩
14-17
テレビの中継の翌日から、
今まで以上の参拝客に、関連グッズの追加発注に忙しい安間、ネット販売用の品物を急遽境内で売り出さなければ、
足らない状況に成っていた。
二人には何故、こんなに有名に成ったのか、今でもよく判らなかった。
サッカーボールが当たって、壊れた小さな祠に簑を被せて迎えた正月から、
数ヶ月でこの火傘神社が全国でも有数の有名な神社に成ってしまったから、佐用比奈子が地元だった以外変わった事は無い、
比奈子の人気以上に神社が有名に成っているから、松尾達には神懸かりとはこの事だと思わずには居られなかった。
翌日の深夜、浅宜彦は比奈子の枕元に行った。
熟睡で全く何も無い、自分の姿を見られる筈は無いと、可愛い寝顔を覗き込む、
折角来たのだ、静止画だけで良ければ、出してやろう、浅宜彦は比奈子の枕元でセットして、立ち去ろうとした時
「神様、いらっしゃったのね」と不意に言う比奈子の声に驚いて振り返ると、寝言だった。
次の瞬間「ありがとう、神様、もう大丈夫です、功一さんを出して貰わなくても」と言い出した。
寝言だが、今比奈子の夢には功一が出ている筈だ。
浅宜彦が比奈子は、本当に自分が功一の思い出を出している事を、知っているのだと確信した瞬間だった。
眠る比奈子の目尻から涙が流れ落ちていた、それを見ている浅宜彦には辛すぎた光景だった。
もしかして、この比奈子は功一を求めて死を選ぶのでは?の危険を感じていた。
自分と功一がダブって見えて、死ねば会えると考えて居るのでは無いだろうか?の疑問が湧いていた。
浅宜彦は{比奈子さん、死んでも功一さんには会えないのだよ}と叫んでいた。
もしも自分の考えが正しければ、どの様に教えれば比奈子に伝えられるのだろう?
自分が功一を夢の中に出した事が、比奈子の功一に対する愛と愛しさを増幅してしまって、
別の世界の存在を信じてしまった可能性が有ったから、自ら命を絶てば功一に会えると思って居る。
恐ろしい事をしてしまったと、浅宜彦は今、自分の行った事を後悔していた。
神の行っては成らない行為ギリギリの世界を作りだした事、{師匠!どうすれば?}と叫んでいた。
祠に戻った浅宜彦は落ち着かない、比奈子の行動が気に成って仕方が無かった。
昼間は仕事で沢山の人と一緒だから、自殺は無いか?夜は孤独で寂しいから夜か?
でも死ぬ気に成った人は何も考えないから、電車に飛び込む?ビルの屋上から飛び降りる?
死んでも別の世界が存在すると信じているから、恐い気持ちが無いから、何処ででも死ねるか?
困り果てる浅宜彦、祠を後にして、比奈子の後に付いて廻る事にするのだった。
比奈子がトイレに入っても、お風呂に入っても後に付いて行く浅宜彦、身体が綺麗とかそんな事を考える余裕は全く無かった。
眠っても側に佇むのだった。
昼間は仕事をてきぱきとこなす、しかし一人に成ると寂しそうだ。
翌日病院に向かう比奈子、眠れないと医師に訴えている?寝ているけれど変だな?
睡眠薬を貰う比奈子、これって、睡眠薬で死ぬのか?怖く成る浅宜彦、夜自宅で何かを考えて居る様子に危険を感じる。
睡眠薬を大量に飲もうとしているのでは?あの夜から五日目の深夜だった、ベッドに腰掛けて
「功一さん、もうすぐ会いに行くからね、貴方が居る世界を知ったから、でも今日まで勇気が無かったのよ」
{ああ、予想が当たっていた、大変な事をしてしまった、師匠助けて!}
冷蔵庫からコップに水を入れて持参する、比奈子、薬の袋から睡眠薬のカプセルを次々と押し出して机の上に並べる。
貰った薬を総て押し出して、コップの水を持った時「きゃー!」と大声でグラスを放り投げた。
水が飛び散って、身体が机に当たって薬が散乱する。
{何が?起こったの?}浅宜彦が廻りを見渡す、何も無い。
比奈子は、唯、胸を押さえて怯えて居るだけ、しばらくして、比奈子は掃除機で部屋に散乱した睡眠薬を掃除した。
冷蔵庫の水を流し台に総て捨てて、容器を丁寧に洗い出した、意味不明の行動だった。
{今回は助けたが、次回は無い、人の運命を変えては行けない}
{師匠でしたか?ありがとうございました、何が起こったのですか?}
{水の色を変えただけだ、赤に}
{助かりました}
{お前が、行っては成らない事をしたから、今回は助けたが、二度も三度も助けられない、
彼女の運命を変える事は出来ない、判ったか}
{はい}師匠は何処かに消えた様だ。
比奈子は血に見えたのか?水が血に見えたから飲まずに放り投げたのだな、流石は師匠だ、凄い技術だ。
今夜は何事も無いだろう、一度祠に戻って、何か仕事が入って居るかも知れない、
浅宜彦は祠に戻るが、願いは交際が五件、他は誰誰に会いたい、蘇らせてが、大半だった。
翌日も比奈子の処に行く浅宜彦、昨日は師匠の助けが有って寸前で助かったが、死ぬのを諦めるとは思えない、
比奈子が別の死に方を模索している様に思える浅宜彦、思い止まる方法を何か考えなければ、
夜寝ている時に、交通事故の恐い写真を見せるのも方法の一つだ、比奈子に死の恐怖を教えなければ。
夜、浅宜彦は事故の悲惨な写真を、比奈子の夢の中に登場させて、事故死の恐怖を植え付ける事をした。
事故死を防げば後は服毒、もう一度睡眠薬の可能性も考えられるが、一旦は収まるのでは?
浅宜彦は自分の過ちを痛切に感じていた。
だが、少しの隙に比奈子は又しても睡眠薬を病院で貰って、自宅に保管していた。
先日の血の色を思い出して、飲むのを控えて居たのだが、数日後浅宜彦が飛んだ時に飲もうとした。
浅宜彦は咄嗟にグラスの水を押して、机から落とした。
グラスは割れて、床に散乱した、驚く比奈子は手に持った薬を、机に置いて、唖然としている。
{浅宜彦!今の行為は規則違反だ、お前の身分でしては行けない事なのだ}
{すみません、仕方が無く、お許しを}
{謹慎}
水の色を変えて見せる技は浅宜彦にはない、階段から押す、突く、物を動かす事は行っては成らない、禁止行為なのだ。
速効で祠に閉じ込められた。
謹慎一ヶ月、比奈子がその後どの様に成ったのか、浅宜彦は自分の過ちで謹慎に成って、知る事は出来なく成った。
もしも、一ヶ月の間にもう一度自殺をしてしまったら、もう助ける事は不可能に成る。
自分の代わりに、師匠若しくは交代の神様が比奈子を助けない限り再び浅宜彦が比奈子に会う事は無いのだ。
変わる景色
14-18
何も判らず、祠に呆然と佇む浅宜彦、お祈りの内容も全く判らない、人間の言葉も聞き取れない、
{それにしても、毎日凄い人数の参拝客だ}と眺めるだけの浅宜彦、
比奈子は無事だろうか?それだけが心配の浅宜彦、一ヶ月が待ち遠しいのだ。
数日経過した深夜、浅宜彦は我が目を疑った、目の前で拝む比奈子を見たから、深夜に変装をして、参拝に来ている。
生きて居た、何を祈っているのか、全く判らない、浅宜彦には比奈子の無事な姿だけで充分だった。
自分の過ちで一人の少女の命を失わせてしまう事だけは避けたかった。
自殺は思い止まったのだろうか?何を祈ったのか?聞きたい浅宜彦。
待ち遠しい一ヶ月が過ぎ去り、自由に成った浅宜彦は直ぐさま比奈子の元に飛んだ。
飛べなければ既に死んで居るが、飛べた?そこは浅宜彦が見た事も無い景色、太陽が燦々と照りつける。
明るい風景{天国?}違うな、砂浜?比奈子は連続ドラマの撮影が終わって、休養に母泰子とハワイに来ていたのだ。
{良かった、死んで無かった}と胸を撫で下ろす、
浅宜彦にも初めての海外、一瞬で地球上何処でも行けるが、チェックしている人が行かなければ自分では移動出来ない、
比奈子の水着姿が日差しに眩しい、謹慎の前は、お風呂にも、トイレにも一緒に行ったが、今日の水着姿は新鮮に思えた。
そこに、あの芸能記者の安藤がやって来る、笑顔で話しをしている、母親の泰子も親しそうだ。
田所尚人の取材、神社の取材と険悪な感じの二人が親しげだ?これは?浅宜彦は自分の謹慎中に何が起こったのだ?
不思議な光景なのだ。
そこに、小宮も水着姿で、紙コップを二つ持って、やって来た。
比奈子に手渡す、四人が乾杯をしている、ビールを飲んでいるのだ。
浅宜彦が謹慎前とは比奈子の表情も異なる、何が起こったのか?
ドラマの撮影が終わって、芸能記者とハワイに楽しく来るのが変な事だ。
疑問の中、祠に戻る浅宜彦、ひとつ不思議な事に気が付く浅宜彦、参拝の人が居ない、
あれ?祠も見窄らしい簑を被った小さな祠に戻っている?何が?一ヶ月の謹慎期間に何が起こったのだ?
{師匠!これは?}
{お前の過ちを戻したのだよ}
{えー}
{比奈子さんの、自殺を見たかったのか?}
{いいえ}
{比奈子さんは、お前に願い事はしなかったのだよ}
{他の事は?}
{変わっては居ない、お前が縁結びをした人は幸せだ}
{堤功一の事は?}
{自分で確かめれば良い}
そう言われて、浅宜彦は死んで居る功一の処には行けない、場面を思い出した。
比奈子に頼まれて、飛ぼうとしたが、全く行けなかった事を。
浅宜彦は死んで居る功一の処飛んだ、すると飛べたのだ。
{えー、飛べた}そこは病室、身体に沢山の器具が付けられて、眠る功一の姿だった。
意識不明の状態でもう何年もベッドに眠って居るらしい、浅宜彦は死んでいる筈の功一を師匠が蘇らせたと思った。
{判ったか、お前が行った行為は彼女の死か彼の生かの選択肢に成ってしまったのだ、
神の仕事を簡単に考えては行けない、今回は蘇らせたが今後は注意をして、あらゆる事に対処しなさい}呆然とする浅宜彦。
自分の謹慎中に比奈子はまた自殺をしようとしたに違い無い、
それは浅宜彦の間違った行動が巻き起こしたのが原因だったから、
師匠は元を変えたのだ、だがそれは功一を元の身体に蘇らせる事では無かった。
比奈子は何日も病院に看病に来たがやがて芸能界に旅立って、今ではスターに成っている。
月に何度か病室を訪れる、治療費は比奈子が工面しているのだ。
自分の命をかけて守ってくれた功一の為に、芸能記者安藤はこの二人の闘病記事を芸能誌に発表して絶賛を浴びた。
連続ドラマの撮影終了を労い、四人のハワイ旅行に成ったのだ、そしてこの安藤の記事を元にドラマが作られ様としていたのだ。
浅宜彦は自分の過ちでこの様に変わるのかと、仰天していた
{比奈子さんが、お前の祠にお祈りを行わない設定にすれば、この様に成るのだよ}
{功一君はどうなるのですか?}
{運命は変えられない}
一瞬助かるのか?と思ったがそれは間違いだった様だ。
取り敢えず今の比奈子が、自殺する心配は全く無くなった安堵感は有ったが、
大きく変わっている自分の立場、閑散として日に一人も参拝客が来ない、見窄らしい祠、今日も子供達がサッカーを楽しんでいる。
松尾と安間は氏子に寄付を頼んで廻る日々、秋祭りの寄付集めが既に始まっていた。
翌日あの藤井宗平と恵子が久々にやって来て、子供を授かったと報告に訪れたのだ。
浅宜彦は、この縁結びは消えて無かったのだと安心した。
比奈子に関係の有る事は総て変わって居るのだと思った。
勿論田所尚人の事も変わっていた、何と功一の役を田所尚人が演じてドラマに成ると、浅宜彦が田所の処に飛んで知る事に成った。
世の中は少しのボタンの掛け違いで大きく変わるのだと痛感する。
そこで、会う人、会わない人数秒の違いですれ違う運命が有る事、功一と比奈子も数秒早いか遅い、
錯乱の男との遭遇で運命は大きく変わって居ただろう。
比奈子は芸能界で一生懸命に仕事をしている、それは自分を守ってくれた功一の治療費の為にが、支えて居た。
普通の新人に比べて極端に仕事の量が多いのだ。
浅宜彦には複雑な光景だ、もうすぐ死ぬ事が決められた功一の為に必死で働く比奈子が哀れに見えて居る。
ドラマの撮影が始まるともしかして功一は亡くなるかも知れない、その運命は浅宜彦には判らない、
今は唯、ベッドに眠るだけ、時々功一の母親が病院に来るが、遠方の為に月に一度二日程側に居るだけだ、
医者から植物人間だと宣告されて数年が経過していたから、比奈子が旅費を渡して月に一度来るのだ。
地元に連れて帰ろうと両親が言ったが、設備が無いのと比奈子が仕事の合間にも見舞いに来たいと言ったので
東京の病院にそのまま入院をしている。
浅宜彦の小さな親切が色々な人の運命を変えていたのだ。
その姿を見る浅宜彦は鎮痛の一言だが、当の比奈子は、功一が生きて居るだけで幸せだったのだ。
死んだと思ったのが、辛うじて植物人間に成ったが生きて居る幸せ、彼が死ぬか自分が死ぬか、
どちらかの命が尽きるまで、頑張って生きようと心に決めていたのだ。
翌週帰国した比奈子が、田所尚人達と一緒に功一との愛のドラマの制作発表会を、テレビ局で行って、
原作者の芸能記者、安藤鈴与が二人のエピソードを語って、涙する比奈子の人気がまたまた、上昇したのだ。
浅宜彦には複雑だった、自分の恋人を題材にドラマを作る気持ちが、理解出来なかった。
本当は純愛で密かにするだろうと思ったから、無残な彼氏の姿を曝すのが不思議だったのだ。
夜、比奈子の自宅に飛んでその謎が解けた。
「ごめんね、功一!」と呟く比奈子、
それは治療費の捻出の為に仕方無く公開する、比奈子の苦悩の姿だった。
植物人間
14-19
膨大な治療費の捻出の為に苦労する、比奈子がそこに居た、事件当初は実家も功一の家も出しては居たが、徐々にその支払いは比奈子に委ねられていたのが実体だった。
そこまで、頑張ってももうすぐ功一は死ぬ運命なのだと知っている浅宜彦は、また異なる苦しみを抱え込む事に成っていた。
翌日比奈子は、久々に功一の病院を訪れていた「どう?元気!」と語りかけるが反応は勿論無い、器具が取り払われたら多分死ぬだろう、何処で嗅ぎつけたのか、最近は比奈子のファンの人だと思われる男性が病院に来ると看護師が伝えた、秘密は中々守るのが困難だ。
浅宜彦の祠を訪れる人も少ないが、願いをお祈りする人は粗居ない、謹慎の前のこの神社の賑わいは一体何?テレビ局、テキ屋が所狭しと、軒を連ねて、関連グッズも生産が間に合わない程売れていた、閑散とした境内を見て寂しさを感じる。
しかし、師匠の能力は凄いのだと改めて感じる、浅宜彦だ。
今の心配は功一が亡くなった時、比奈子がどの様に成るのかそれが今度は心配の種に成っている、比奈子の仕事も生活も総て功一を中心に廻って居るから、以前の比奈子は功一の思い出だけで生きて居た、今回は状況が異なる、功一の延命が比奈子の運命を変えたのだ。
浅宜彦が行った小さな親切、神としては、しては成らない親切の波紋は新たな不安を呼んでいる。
功一の思い出だけで生きて居た比奈子に、夢を与え様として、思い出を取り出して見せた浅宜彦、余りに鮮やかな思い出の再現に感動した比奈子は神を信じる、それはエスカレートして、死後の世界が在ると信じてしまって、功一に会う為に何度も自殺を試みる。
浅宜彦の過ちで死なせられない、師匠は功一の死を止めて、浅宜彦に祈る以前に戻した、その結果自分の為に植物人間に成った功一の為に懸命に生きようとする比奈子に変わってしまった、師匠は軈て功一は死ぬ運命だと云う、その時比奈子は堪えられるだろうか?浅宜彦の行った小さな親切の波紋は困惑の度合いを増していた。
数日後、浅宜彦の不安は的中した、比奈子の元に飛んだ時、丁度病室に一人の比奈子が功一に語りかけた「功一は私の命だからね、若しも先に死んでしまったら、私も直ぐに後を追うからね、死んじゃあダメだよ、話せなくても良いから、生きて居てね、私の生き甲斐なのだからね」と語りかけていた。
浅宜彦の不安は的中した、結局比奈子は自分の過ちで死ぬのか?浅宜彦は益々困り果てる。
{師匠、何とか成らないのですか?}{残念だが、私が使った方法も一度しか使えないのだ、もう二度と彼女の運命を変えられない、功一君が生きる時間の中で比奈子さんが立ち直るのを祈るだけだ}{神様が誰に祈るのですか?}「そうだな、祈れないな、運命だ」{いつまで、功一君は生きて居るのですか?}{それは、判らない、長くは無い事は確かだ、一度死んだ命を蘇らせたのだから}師匠は最善の方法で比奈子を助けたのだが、後は時間だけ、比奈子に功一の死を受け入れる時間が?それが心配な浅宜彦。
祠に戻ってもいつも心配な浅宜彦、日に二、三度功一の病院に飛ぶ、何も変わらない、正確に延命装置が動いていた。
比奈子も仕事に一生懸命だ、田所尚人とのドラマの撮影も始まる、病院のシーンでは感情が入って思わず本気の涙を流す比奈子。
その姿に田所が今度は心が惹かれる、この前の状況と異なる展開に驚く浅宜彦、少しの違いで歴史が変わる筈だ、神の存在の恐ろしさを感じる。
だが、浅宜彦の希望も虚しく、功一は確実に命の灯火が小さく成って居た。
比奈子には長い時間が、浅宜彦には僅かな時間だ、一ヶ月前とは異なる不安を味会うのだ。
病室の異変を感じた、看護師が比奈子、家族に連絡をする。
医師が功一の病室に来て、色々処置をする。
比奈子よりも早く病室に浅宜彦は来ていた、不安で日に何度も来ていたから、遭遇したのだ、
{師匠!無理ですか?}
{方法は一つだけ有るが、それは恐ろしい事だ}
{教えて下さい}
{いや、それは教えられない}
{何故?}
{お前を犠牲に出来ない}師匠はその言葉の後、何も言わなくなった。
比奈子はドラマの撮影の途中で駆けつけて来た。
スタッフ、マネージャーの静止を振り切って、ドラマの衣装のままで病室に飛び込んで来た、その早さはもの凄く短時間だった。
どれほど、比奈子が功一を想っているか、その行動と姿を見れば病室に居る、看護師にも医師にも判った。
医師の懸命の治療で功一の危機は辛うじて脱した。
だが医師はもう、手を尽くしました、いつ亡くなっても不思議では有りませんと比奈子に伝えた。
呆然とする比奈子、今まで何年も植物状態でも生きて来たのに、何故?もう少し生きられないのか?
と医師に泣きながら詰め寄る比奈子が、可哀想で仕方が無い浅宜彦。
比奈子はスタジオには戻らない、そのまま病室に待機、数時間後に功一の母が訪れて
「もう、比奈子さん、功一を楽にさせてもらえないか?と告げた。
「嫌――!です、お母さん助けて下さい、功一さんを!」と逆に言われて困惑の母好子。
好子も功一は一人っ子で、比奈子以上に大事な息子なのだ、その母でももう諦めているのだ。
膨大な治療費、治る見込みの無い我が子、もう三年の歳月が流れようとしている。
自分の行った行為の重さを改めて感じる浅宜彦、病室に泊まる比奈子と好子、唯、それを眺めるしか方法が無い浅宜彦。
{師匠!助ける方法教えて下さい}
{.......}無言の師匠。
しばらくして、夜中再び、功一のベッドの器具が異常を示し始めた。
駆けつける医師と看護師、懸命の延命処置を施すが
「もう、ダメです、今夜が峠です」
「嫌―――、助けて、私の命を与えても良いから助けて下さい」と泣き狂う比奈子、その比奈子の身体を押さえる好子。
「比奈子さん、もう充分よ、諦めましょう」と懸命に説得する母好子。
{師匠!方法は?}
{。。。。。。。}
{教えて下さい、何でもします}
{もう、神には戻れないが、それでも良いのか?}
{本山で修行ですか?それでも構いません、私の失敗ですから、助けたいのです}
{そうか、そこまで言うなら仕方が無いな、さらばだ}
功一の心拍数が一桁に成った。
泣き叫ぶ比奈子、それを止める、宥める好子、困惑の医師達、異様な空気の深夜の病室。
奇跡
14-20
「お母さん!」急に大声に成る比奈子、医師が「何!何が起こったのだ」と大声で叫ぶ、
母、好子が驚きの顔に成る
「功一!」「功一さん!」と二人が叫ぶ、大きく瞳を開いた功一がベッドから、笑顔を二人に送っていた。
「これは、奇跡です」器具の値が総て正常値を表示している。
身体に取り付けていた器具を外し始める看護師
「何が起こったのだ?」
「わー!功一さんが生き返った」
「功一、気がついたのかい?」何も喋らない功一。
「これは、奇跡です、一応検査をしますから、暫く待って下さい」医師と看護婦は驚きの表情で戸惑っている。
「功一さん、気が付いたのね」
と比奈子が我に返って尋ねるが功一は言葉を発しない、ストレッチャーに乗せられて検査に向かうのだが、何も喋らない
「急に目覚めて、言葉を忘れたのかね」と母好子が言うと
「そうかも知れませんね、でも気が付いた事には間違い無いわ、良かった」と比奈子は始めて笑顔になった。
小一時間の検査の間、待合の長椅子に座る二人、不安に成ったり喜んだり複雑な時間を過ごす。
ようやく、功一が戻って来て、病室に戻された。
二人が医師に呼ばれた「記憶が途切れて居る様で、言葉を話せません」
「戻るでしょうか?」
「身体の異常は有りませんので、時間が解決すると想います、明日からリハビリで歩く練習と記憶を取り戻す訓練をしましょう」
医師の話を聞いて、もう功一の容体は良く成ったと思った比奈子は最高に嬉しい気持ちに成っていた。
功一が蘇ったのは、浅宜彦が功一の身体に入ったからだった。
身体は功一だが中身は全く無い状態、言葉は喋れない、浅宜彦はこの時、神から人間に成ってしまったのだ。
お腹も空くし、疲れる、眠らないと成らない、一瞬では何処にも行けないのだ。
人間の言葉は一度も話した事がないから、話せないのだ。
比奈子さんを助ける為に師匠に言われた。
もう神には戻れないとは、この事だったのか、始めて意味が判った浅宜彦、
これからは堤功一として生きる以外に方法は無いと思う浅宜彦、
この話しを比奈子に言っても到底信じて貰えない、僕は神様として落第だったのだ。
これからは人間として生きる訳か?そうは想っても中々馴染めない浅宜彦。
そんな事を考えて居たらいきなり比奈子が頬にキスをしてきた。
「ありがとう、生き返ってくれて」
と半分涙目、半分嬉しい顔で言う、キスってこんな感じなのだ。
浅宜彦には初めての感覚、食べる事も持つ事も無かったから、新鮮な出来事だ。
「早く、言葉を思い出してね」そう言われて始めて頷く動作をすると
「お母さん、功一さんが頷いたわ、言葉判るのよ、大好き!」
と今度は抱きついて、唇にキスをした、看護師も母も居る前で喜びを表す比奈子。
これは、良い感じだ、キスは良いなあ、悪く無い感覚だ、甘い味がしたな、人間も悪くは無いかも?
比奈子の胸の膨らみを感じる浅宜彦は身体が興奮して熱く成るのを感じた。
そして自分からキスを求めていた、喜んだ比奈子が今度は熱いキスに変わっていた。
部屋の中の人達が遠慮して、出て行ったのは直ぐの事だった。
浅宜彦はその日から、人間の言葉、行動、お腹が空く、トイレに行くとか色々な事を学ぶ事にした、兎に角言葉が一番先に必要だ。
病院で一週間居て退院して、リハビリセンターで、歩行訓練と言葉を習う事に成る。
比奈子は時間が空けば、必ず来る。
もう楽しくて、楽しくて仕方が無い様子、仕事をしないで、ずーと一緒に居たい気持ちの比奈子だが、
収入の為に働かなければいけないから、仕方無く帰る感じだ。
「私、功一さんが元に戻ったら、結婚するわ」そう言って母、泰子を驚かせた。
本当は反対したいのだが、とても反対出来る状況ではない、
今そんな事を言えばタレントを辞めると言いかねないから、ドラマのシナリオが大きく書き換えられて、ハッピーエンドに成っていた。
原作者の安藤鈴与も驚く事だった。
医者にも全く判らない功一の回復だった。
唯、功一は全く昔の事を知らないのが、医師も家族も比奈子も不思議だったのだ。
片言で喋る言葉も比奈子との思い出以外は皆無なのだ、父も判らない、昔の親友の顔も判らない。
比奈子はそれでも良かった。
自分との想いでだけは鮮やかに覚えていたから、身体は功一、中身は浅宜彦だから、
浅宜彦が知っているのは、比奈子との思い出以外、比奈子の仕事関係位で他は皆無だったから。
比奈子には楽しい功一も母好子には、赤の他人の様な気がしていたのだ。
学生時代の事も子供時代の事も何も覚えて居ない、不思議な我が子を毎回面会に来て感じるのだった。
一ヶ月のリハビリで言葉も身体も殆ど普通に戻った功一に、比奈子は一緒に住もうと言い出した。
東京の自分のマンションに来て欲しいと言う比奈子に功一は一度地元に帰りたいと話した。
それは自分を見たかったから、火傘神社の縁結びの神様を確かめたかった。
比奈子はそれじゃあ、一緒に帰ろうと言うので、電車にも乗った事が無いので、一緒に帰る事にする。
リハビリセンターを退院した。
その足で二人は新幹線に乗って、比奈子の地元に帰って来た。
比奈子には多少不思議だったのは、功一は母の住む自宅の場所では無く高校時代を過ごした比奈子の地元に帰って来たから。
「火傘神社に行きたいのだけれど」
「えー、あの山の中の神社に?」
比奈子は何度か参拝に行ったが最近は参拝も無かった。
功一が不思議に見えた、いきなり神社とは?自分が死の淵から戻れたお礼に行くのか?
そう思った比奈子はタクシーで火傘神社に向かった。
功一は何かを探す様に神社に入って行く、火傘神社の脇を探す功一
「何を?探しているの?」
不思議な光景に比奈子が怪訝な顔で尋ねる。
「この辺りに、小さな祠が無かった?」
「私は知らないわ、社務所で聞いてみましょう」
社務所の中には巫女さんが一人と安間が居た
「あっ、安間さんだ」と口走る功一を又怪訝な顔で見る比奈子
「すみません、安間さん」と声を掛ける功一に中から出て来て
「どちら様でしたか?」と不思議そうな顔をする安間
「あの、この神社に縁結びの神様有りませんでしたか?」
「えー、縁結びの神様ですか?昔、神主の松尾さんと考えた事は有りましたが、実現はしていませんね」
「そうですか」落胆の表情の功一だった。
足跡
14-21
浅宜彦はもう自分の帰る場所が無い事を感じた。
今後は比奈子の幸せを支えながら生きるのだと想う。
比奈子の実家に泊まった功一は、比奈子の母泰子の親切な態度に感激をした。
泰子は娘の犠牲に成って死んだかも知れない功一の無事を喜んだ。
娘が功一の事を愛したドラマがもうすぐ放送される。
連続ドラマから着実にスターの道を歩めるのは功一のお陰だと想っていたのだ。
娘比奈子は功一が死んだら後を追って自殺も考えられたから、奇跡に近い事なのだ。
佐用の家は父、郁夫、母泰子、弟和毅の四人家族、和毅も来年から大学生だ。
夕食時に「功一君は大学に戻るのかね」と父郁夫に尋ねられて
「いいえ学問は判りませんから」
「進学高から、東京の良い大学に入学出来たのに、残念だったね」
「はい、でももう忘れてしまいました」
浅宜彦には言葉を覚えるだけでも大変な事なのに、大学の勉強はとても出来ないのだ。
「東京にはいつ帰るのだね」
「時間が許せば、行きたい場所が有るので、明日からそこに行きたいです」
「そうか、浦島太郎だから、見物も良いだろう」
泰子が「比奈子はいつまで?」
「二、三日で帰らないと仕事が有るから」
「僕、一人で帰れないので、一緒に帰ります」と慌てて帰る日を伝える功一、まだとても、新幹線に乗れない浅宜彦。
夕食の後功一が「今から、スナックに行きたいのだけれど、一緒に行ってくれないかな?」
「えー!スナック?」比奈子は驚いた顔で聞く、自分は有名人だ。
スナックに行くと直ぐに見つかって騒ぎに成ってしまう
「何故?何処に?」不思議な事を言い出した功一に戸惑う比奈子。
浅宜彦は自分が神として行った実績が見たかったのだ。
スナックで工藤三郎と菱田雅恵を結び付けた事実が見たかったのだ。
祠も無くなって、祠の存在も消えていた。
師匠が最後に縁結びは消えないと言ったが本当だろうか?
浅宜彦には自分の存在が何だったのかを確かめたい気持ちで一杯なのだ。
「何処か行きたい、スナック有るの?」
「この町の歓楽街に有るスナックだけれど、名前は判らない」
「それじゃあ、探せないわ」
「近くに行けば判るよ、お願い連れて行って」
功一にせがまれて、仕方無く出掛ける比奈子、タクシーを呼んで夜の歓楽街に、
サングラスにマスクの変装に功一が「比奈子目立つよ!」と笑った。
でも功一が比奈子と呼んでくれて嬉しい比奈子は
「始めてね、比奈子って呼んでくれたの、意識が戻ってから始めてよ」
とタクシーの中で寄り添う二人に、
運転手が「もしかして、佐用比奈子さん?そうだよね」
「。。。。」
「佐用って聞いた時、もしかしてと想ったのですよ」
「運転手さん、内緒よ」
「彼氏?」
「そうよ、私の命の恩人で彼氏よ!」マスクを外して明るく答える比奈子。
功一は自分の知っている特徴を話して、スナックの場所を探した。
運転手は判った様子で「それはフィナスだろう」と場所を特定して、二人を運んだ。
比奈子は何故、功一がこんなスナックを知っているのか?何が目的で行くのか?
功一のお酒を飲んだ姿は、一度も見ていない比奈子に不審が涌いていた。
何の躊躇いも無く入って行く功一
「いらっしゃい」とママらしい女性が声を掛けた。
功一はカウンターに座って、早くもおしぼりを貰う、比奈子も隣に座ると
「綺麗なお嬢さんね」と声を掛けておしぼりを渡して
「あれ?佐用比奈子さんに似ているわね」とサングラスの比奈子をマジマジと見るママ。
「あの、ウーロン茶貰えますか?」と功一が言う
「お酒では無いのね」ママが言うので
「私がビール貰います」と間髪を入れずに言うと
「車なのね」と笑いながら、ビールとウーロン茶を用意し始める
「ママさん、一人ですか?今日は?」
「早い時間は私だけよ、もうすぐ女の子が来るわ」
ビールと突き出し、ウーロン茶が目の前に出されて
「本当に、比奈子さんにそっくりね」
「良く言われます」と微笑む比奈子、
サングラスを外して「似ているでしょう」と言うと
「本当だ、瓜二つね、貴女の方が若く、見えるわ」とグラスにビールを注いだ。
「このお店に、雅恵さんって女性以前働いていらっしゃいませんでしたか?」
「以前じゃあないわよ、もうすぐ来ますよ」とママが言う、功一は一気に落胆の顔に成る。
此処で働いて居るのだ、工藤三郎との縁は無かったのだ。
自分の縁結びは祠と一緒に消えたのだと、諦め顔、そこに扉が開いて一人の女性が入って来た。
慌てて見る功一を、怪訝な顔で見る比奈子。
「僕にも、グラス下さい」功一が浅宜彦は今まで一度も飲んだ事が無いビールを飲もうとしていた。
「いらっしゃい」
と二人の前に来た女性は雅恵には似ても似つかない女性だった。
功一はグラスに注いだビールを一気に飲んだ
「大丈夫?」比奈子が心配顔で尋ねると、
「容子さんです、よろしくね」と女性を紹介した。
功一はこの女性が雅恵さんだと想っていたから、ショックでビールを一気に飲んだのだ。
「わー、佐用比奈子さんだ!」容子が比奈子を見て叫んだ
「よく似ているでしょう?私も間違えたのよ」
「嘘!本人よね!」と覗き込む容子に微笑みながら
「良く言われます」と微笑む比奈子
「雅恵さんは?」と功一が赤い顔に成ってママに尋ねると
「もうすぐ、来るわ、旦那様とね」と笑う。
しばらくして扉が開いて「こんばんは!」と二人が入って来た。
振り返る功一、そこには紛れもなく工藤三郎と雅恵が居た。
「工藤さんと雅恵さんだ」と喜ぶ功一に
ママが「お持ちかねよ、こちらの若者が」隣に座る工藤と雅恵
「あの?どちら様でしたか?」工藤が功一に尋ねた
「あっ、堤功一と申します」と会釈をすると
「私も最近呆けが来ていまして、堤さんと云う方は知らないのですが、申し遅れました、家内の雅恵です」
雅恵が微笑んで会釈をして
「私も、堤さんは存じませんがどちらの?堤さんでしょうか?」
功一は赤い顔をして「兎に角良かった、ママさんビール一本下さい」
そう言って瓶を受け取ると、工藤夫婦にビールを勧めて、「乾杯!」と言った。
比奈子も工藤夫婦も、怪訝な顔で功一を見ている。
自分のグラスにまた注いで飲み干す
「良かった、良かった、ご夫婦で良かった」
「はあ、僕達は再婚同士ですから、もしかして、以前の連れ合いの知り合いですか?」
「いやー、再婚は知っています、仲人をしたのですから」
酔っ払った功一は意味不明の事を喋る
「私達は去年結婚したのですよ」比奈子が驚きの顔をしていた。
仲人?去年結婚?功一は、去年は植物人間で眠って居たのに?お酒に酔ったのか?
雅恵が功一の隣の比奈子にその時ようやく気が付いて
「佐用比奈子さんよね!」と驚いた顔に成った。
「似ているけれど、違うらしいわ」とママが言うと
「嘘よ、比奈子さん本人よ、私好きで連続ドラマ見ていたから、知っているわ、襟足の黒子覚えているわ」
「えー、」思わず驚いて黒子を押さえる比奈子
「そうです、佐用比奈子その人です、地元の皆様、よろしくお願いします」
と功一が酔っ払って喋ってしまった。
恐い酒
14-22
アルコールを生まれて始めて飲んだ浅宜彦は、完全に酔っ払っていた。
店の人も工藤夫婦も本物の佐用比奈子と判って、サインを貰おう、芸能界の話しを聞こうと話し始める。
功一は完全に酔っ払ってカウンターに眠ってしまった。
しばらくして「功一さん、寝ちゃったの?」と比奈子が起こそうとするが反応が無い、完全に浅宜彦が酔っ払っていた。
「あれ?」功一の身体が冷たいのだ。
「変だわ、冷たい」
「あら、嫌だ、救急車?」
「はい、お願いします」
「始めてアルコールを飲むと急性アルコール中毒に成るのよ」とママが電話をする。
手首の脈を診る雅恵が「大丈夫よ、脈は正常だったわ」昔少しの間、病院に勤めて居た雅恵は冷静だった。
でも身体は死人の様に冷たいのだ。
救急車が到着すると、歓楽街が大騒ぎに成った、狼狽えていた比奈子はサングラスも忘れていた。
「佐用比奈子だ!」「比奈子だ!」と騒然と成って居る。
救急隊員に運ばれる功一、黒山の人だかりの中、携帯で写す人が続出する。
救急車に一緒に乗り込む比奈子、酸素マスクの功一、青い顔はもう完全に死人の顔、脈を診る救急隊員が
、「顔色は悪いですが、脈はしっかりしていますから、大丈夫でしょう」
と言うが不安な比奈子、市民病院に運ばれる此処でも看護師が
「作用比奈子さんよ!」
「ほんとだ!」
「彼氏?」と当番の看護師達が騒ぐのだ。
治療の部屋で医師が首を傾げていた。
「脈も正確だ、でもこれは死体の様に冷たい」
看護師も身体に触れて「もう、死んで数時間経過した感じですね」と驚く、
何もする事が無い医師、身体が冷たい以外は悪い箇所は無い様なのだ。
ベッドでしばらく寝て、アルコールが身体から抜けると、何事も無かった様に目を覚ました、功一に比奈子が
「功一さんお酒はダメよ、飲んだ事が無いから、酔ったのね」
「お酒は恐いね」と呟く功一、目覚めると身体の温度が戻り功一の身体が蘇ったのだ。
浅宜彦の意識が無くなると、功一の身体が幽離してしまうのだ。
浅宜彦は自分の事がまだ理解されていないから、今回の様な事が起こったのだ。
意識が戻ると元気に成って、直ぐに比奈子と一緒に帰って行ったが、ネットのサイトには、比奈子の姿がデカデカと流れていた。
テレビ局はその騒ぎを次回の番組の宣伝に直ぐさま利用して、比奈子は恋人と実家に帰る。
始めて飲んだアルコールに中毒症状で病院に運ばれる。
献身的に支える比奈子、長期間寝たきりの恋人、近日放送予定(蘇った恋人)のモデルと報道して、反響を狙った。
翌日スポーツ紙に掲載された記事に驚く比奈子と功一
「テレビ局は上手ね」と驚く二人だが反響は熱狂して、比奈子の家にも何人かが自宅を探し当てて来て居た。
母泰子は嬉しそうに「嬉しいわ、人気が上昇した!」とはしゃぐ、
父は迷惑そうだが、「帰ろう、東京に、近所迷惑だわ」比奈子が言うと
「いいじゃない、スターの気分を味会うのよ」と喜ぶ母泰子なのだ。
比奈子は母を無視して、功一を伴って東京のマンションに向かう、
迎えに来たタクシーの運転手も「凄い人気ですね」と驚いて、サインを求めていた。
その日の内に東京のマンションに戻った比奈子と功一、始めて一つの部屋に居る二人、
感激の比奈子だが、功一は此処で一緒に住んで自分は何をすれば良いのだろう?と思うのだ。
比奈子と功一は昔、二度肉体関係が有った。
それは比奈子の記憶の中を取りだして知っていた浅宜彦だが、実際は全く判らない、初めての人間なのだから
「今夜から、一緒に暮らそう」比奈子は甘えた様に言う、困るのは浅宜彦だ。
人間のSEXが判らない?キスは気持ちが良かった。
若しかしてSEXも気持ちが良いのかも知れない、と考える浅宜彦。
「急にしなくても、良いのよ、身体が徐々に慣れてからで」功一の顔がその様に見えたのか、比奈子は先手を打って話した。
「まだ、眠りから覚めたばかりだからね、無理をしてダメよ、また救急車で運ばれるからね」
頷く功一に優しくキスをする比奈子、浅宜彦はキスが気持ち良いのよ~~~と陶酔の表情
「功一さん、蘇ってからキス上手ね」と唇が離れて言う比奈子
「そう?」と答える功一だが、昔の記憶を思い出そうとするが、キスの記憶が出て来ない浅宜彦なのだ。
翌日から比奈子は仕事に出掛ける。
功一はインターネットで色々な事を勉強して、人間社会の事を覚える。
夜遅くなると云う比奈子、何か食べないとお腹が空く功一、人間はこれが困るよね、
そう思いながらマンションを出て行く功一、タクシーには乗れる。
夜の繁華街を見学して廻る功一、相性判断の幟に懐かしさを感じる功一、一人の老婆が男女の客を前にして、占って居る。
面白い仕事だなと思う功一暫く見ていると、老婆が席を離れて何処かに行った。
功一は何気なく席に座る、机の上には右に星座が書かれていて、左に干支の絵が有る。
すると前に男女が座って「お兄さん、若い占い師ね」と飲み屋のお姉様と客だろうか?
「私達、どうなる?占ってよ」と二千円を差し出す
「は、はあ!」いきなり言われて、二人をマジマジと見る功一、いや浅宜彦か?
暫く観察していると、浅宜彦の目の前に二人の未来が浮かんで来る
「どう?判るの?」
「静かに!」と言う浅宜彦、
しばらくして「仲良く、暮らしますよ、結婚出来ます、子供が二人、大きな家に住んで幸せそうな姿が見えます」
と浮かんだ構図から、無意識に話し出す浅宜彦
「本当なの?」
「お前、出鱈目では無いよな」
「貴女は、今はキャバクラ(ファンシー)にお勤めで貴方は将来独立されます、今の建築関係の仕事で」
そう言うと「嘘!」と大声に成った飲み屋勤めのお姉さん
「ほ、本当だ!これは驚きだ!」と二人が騒ぐので近くに居た人が何事だと集まって来る。
「お前は凄いな、何故?判るのだ!」
「そうよ、店の名前なんか判らないでしょうが?」
「でも、素晴らしい占いだ、これチップだ」
と五千円札を差し出して「これは、嬉しいな」「結婚するのだね、
子供が二人だって、良かったわ」
「俺、金持ちに成るのだ、社長らしい」と嬉しそうに二人がその場を去ると、
直ぐに別の男女が座ってお金を払う
「私達、来月結婚するのよ、子供は何人?」と尋ねる、
沢山の人に囲まれて、目を閉じる浅宜彦暫くして
「子供さんは三人で男、男、女です、幸せですよ」と言うと
「本当、ありがとう」と立ち去る、
次の人が座る「今、付き合っている彼氏と将来どの様に成るか教えて下さい、彼氏は後籐雅夫さんです」
しばらくして「貴女の旦那様は後藤さんでは有りませんよ」
「えーー」と驚く女性
「小南直樹さんが旦那さんですよ」
「嘘―――、それって会社の上司だわ、でも奥様居るけれど?」
「私に見えるのはそれだけです」
「確かに良い人だけど」と考え込む女性に廻りの人が
「終わったら変わって!」と叫ぶ。
此処の占いの老婆は近くで食事をしていた
「貴女、バイト雇ったの?」と店の女将が尋ねる
「何が?」
「今、貴女の占いの処、黒山の人だったわよ、覗いたら若い男性が次々と占いをしていたわ」
「えっ、それ何?私知らないわ」急いで食事を終わらせる老婆。
慌てて自分の占いの場所に戻ると沢山の人が取り囲んで見えない位、
人混みをかいくぐって浅宜彦を見た老婆が
「あっ!」と驚きの顔に成って、その顔が見る見る青ざめていった。
占い師
14-23
老婆の名前は浅原きぬ、占い歴五十年のベテラン、功一に吸い込まれそうに成る、霊気を感じたのだ。
二十歳過ぎの青年が、次々と占いをしている、自分の場所で、その姿はとても人間には見えなかった。
功一が占いを終わった時に浅原に気づいて「あっ、お婆さん、すみません」と笑顔に成った。
「これ売り上げです」と手渡す
「お兄さんは、この辺りの人なの?」
「いいえ」
「そうだろうね、人間には見えないからね」
「えっ、僕は堤功一と云います」と驚きながら言うと
「それは、別の名前だろう」と老婆が尋ねる。
二人の話を不気味に感じたのか、周りの人達が、徐々にその場から去って行った。
浅原きぬには、功一の別の姿が一瞬見えたのだ。
今、目の前に居るのは二十歳過ぎの好青年だが、確かに占いの形相は別人が存在しているのが見えたのだ。
「お婆さん、僕の何が人間と違うの?」
「今は、普通に見えるが、占いの時は別人だった」
「隠さずに話すと、人間じゃあ無いのは本当だよ、事情が有ってね」
「そう、此処では話し難いから、私の家に来ないかい、もう何年も前に同じ様な人に会った事が有るのだよ」
「えー、本当なの?話が聞きたい」
功一は過去にも自分の様な人間に出会ったと云う、老婆に付いて行く事にした。
浅原は駅を五つ目で降りた。
古いアパートの一室に一人で住んでいる。
三階建ての一階の端の部屋に功一を招き入れると、番茶を台所から二人分湯飲みに入れて持参して、昔話を始めた
「私が、占い師を始める切っ掛けに成ったのよ」
「何年前ですか?」
「もう、四十年位前だったよ、お前と同じ様に占いをしていた男が居てね、私は見とれてしまったのだよ」
「次々と当てたわけですね」
「そうよ、占って貰った人が、驚いていたからね、私はその男の後を尾行したのだよ、
若い男が歳老いた老婆と住んで居て、占いで生計をたてていたのだよ」驚く功一に老婆は説明を続けた。
話しに、引き込まれる功一、尾行を見つかってしまって、若い男が自分はもうすぐ占いを辞めるから、
浅原に占いを教えてあげるからしませんか?と言った。
何故?辞めるのと尋ねると、一緒に暮らして居る老婆がもうすぐ亡くなるから、自分の役目が終わるのだと、話した。
浅原は凄い興味が湧いて、占いを教えて貰う事に成った。
一週間程で占いの方法と技術を学んで、自分で占いを始めて、三日後一緒に暮らして居た老婆が亡くなると、
突然占いの若い男が消えてしまった。
その時に貰った占いをする為の御札が役に立って、その後も占いを仕事として続けていると話した。
「教えてくれた、若者程上手には占いは出来ないけれど、恋愛、結婚の占いは当たるよ」
「その御札って見せて貰えませんか?」
「良いわよ、汚れているけれど」と引き出しから出してきた
「普段は持ち歩いてないの?」
「これはね、結婚とか重要な時に別料金で占う時に使うのよ」
机の上に置いた御札を見て「こ、これは?」と驚く功一
「何か?不思議な事でも?」
その御札には「ご縁結び神 浅宜彦」と書いて有ったのだ。
「。。。。。。。」
「どうした?此処に縁結びって書いて有るだろう、だから結婚とか重要な事柄は先ず、百パーセント当たるね」
「お婆さん、その若い男って僕に似ていなかった?」
「もう、随分前だから、そう言われれば占いの時の顔は似ていたかな?今も似ているかも知れない」
「私ももう歳だから、占いを辞めようと思っていた処だ、あんた、占い師をしたら?上手だったから」
「僕が?ですか?」
「この御札もあげるよ、占いをしないなら要らないからね」
「これから、どうするの?」
「名古屋に娘が居るから、世話に成ろうかと思っているのだよ」
浅宜彦にようやく見えて来た
「若い占い師と一緒に暮らして居た老婆の名前か何か判る事ない?」
浅原はしばらく考えて「そうだ!若い時は役者をしていたと話して居たよ」功一は比奈子の事だと直感で判った。
占いの件は次回迄に考えると話すと、老婆の家を後にして自宅のマンションに戻る事にした。
今日は自分でも驚く事が沢山起こったと驚いて帰宅する功一。
功一は浅宜彦が入った瞬間から年齢が止まる事が判った。
比奈子が亡くなるまで一緒に居て、何も仕事が出来ない功一は占いで生計を立てるのか?
でも今は売れっ子の女優の比奈子だから、蓄えも出来る筈だ。
少し異なる?でもあの御札は本山が松尾に渡した物に間違いは無い?
不思議だと思いながらマンションに帰ると比奈子が戻って居て「お帰り!何処に行って居たの?」
「見学に行って来た」比奈子は仕事で疲れていたのか、それ以上は聞かなかった。
二日後、功一は浅原きぬの自宅を訪れて、御札を貰って、占いの場所を来月から譲ると言われた。
功一には占いなら出来る仕事だと思う、御札の上に占う男女の名前を書いた紙を置くと浮かんでくると教えた。
浅宜彦には必要の無い御札だったが、浅原の願いを聞いて貰ったのだ。
比奈子には内緒で街角の占いを始める事にする浅宜彦、占いの仕事は自分には出来ると思っていたから引き受けたのだ。
一緒に住んでは居たが、キス以上全く何もしない功一に比奈子が心配をしていた。
始めは長い病院生活で、身体の具合が悪いのかと思っていたが少し違う様だと感じていた。
友人から医者を紹介して貰って、聞きに行く比奈子、若い男女が同じ部屋で過ごして、半月以上何も無いのは?
病気では?後遺症?の心配が有ったのだ。
本人には聞きにくいから、病院で聞くが判らないが答えだった。
タレント仲間が一度誘惑してみたら?裸で迫るとか?お風呂に入るとか?を勧められる比奈子。
功一がお風呂に入ったのを見届けて、自分も一緒に入ろうと押しかけると、
「ごめん、まだ入ってないから、先に入るの?」と言う功一に、
唖然とする比奈子、思い切って裸のまま抱き付きキスをすると、功一は嬉しそうにキスをする。
胸が比奈子の乳房に当たる。
柔らかいな、気持ちが良いと思いながら何もしない功一の手を持って、乳房を触らせる比奈子に、
この感じは中々良いなと思う浅宜彦は女性の乳房の感触を始めて知る。
神として初めての経験にキスも良いけれど、これはこれで良い感じだと思う、比奈子は勢いがついて、功一のペニスを握りしめる。
功一の身体の変化に戸惑う浅宜彦、
「おおー」と声を出す功一に積極的に成る比奈子
「思い出したのね」
「これは?あっー」
比奈子は風呂場から、ベッドに連れて行こうと、功一の身体を押しながらキスとペニスを握ったまま移動する。
そのままベッドに倒れ込む、訳が判らない浅宜彦は比奈子のリードで、比奈子に入る
「うぅ」「うぅ」とお互いが言う、
初めての経験に驚く浅宜彦、これはキスより気持ちが良いなと思う浅宜彦、興奮する比奈子に功一の身体が燃える。
これが人間のSEXか?比奈子は久々の功一とのSEXに喜びを感じる。
誘惑して良かったわ、功一さんが思い出してくれたと感激をしていた。
驚異の占い師
14-24
翌月から功一は比奈子が出掛けると、街角の占い師に変身していた。
功一が有名に成るのに時間は掛からなかった。
殆どの事が見える特に男女の仲の出来事は手に取る様に、占うので、街角での噂は僅か一週間で広がった。
あの浅原きぬの言葉が本当なら、功一は歳を取らない事に成る。
浅宜彦が入った瞬間の年齢肉体の状態で、過ごす事に成るのか?この御札は自分の物なのか?
あの老婆は比奈子の姿?功一の占いの往き帰りに考えるのはいつもその疑問だ。
比奈子に子供は出来るのか?もし出来たら神様の子?功一の子?
あの日から比奈子に誘われるまま何度かSEXをする浅宜彦、比奈子は献身的で可愛い、自分を心から愛していると思う功一。
二人が一つの身体に同居している。
そんな気分で毎日を過ごす浅宜彦、自分には何も能力が無い、学問も知識も無い、
縁結びの神としての修行以外過去の無い浅宜彦、功一に成ってからの知識の蓄積は有るが、
両親の記憶も全く無いから、恋しい気持ちも無かった。
時々東京に来る母好子は、事故で過去の記憶が消えたのだと解釈して、功一が生きて居る事実だけを受け止めていた。
比奈子には自分との思い出は総て有るので、不自然さは有るが、気にしていない、
身体が治って社会に順応出来れば何か仕事をすれば良い、自分が頑張れば、功一一人の生活は充分養えると考えていた。
それから、一ヶ月程過ぎた時、比奈子のドラマが放映された。
大きな反響が有った、主演の比奈子と田所尚人の人気は急上昇、
少し休みたいと思っていた比奈子に次々とドラマの依頼が殺到した、尚人との共演ドラマも依頼が来ていた。
一方、功一の占いが話題に成って、お昼のワイドショーで取り上げられたのだ。
プロダクションでテレビを見ていた、
比奈子が「何!あれ!功一?」と大きな声をあげたのだ。
プロダクションの社長の野々村慎次と、マネージャーの小宮が一緒に居て
「この人、意識不明の彼なの?」と尋ねたが、比奈子は驚きで食事を途中で止めて画面を凝視している。
野々村の問いかけにようやく「そうです、彼です」と答えると
「これは、使える、使えるよ」と嬉しそうな顔の成る。
「長期に渡り意識不明の比奈子の彼に霊能力が宿る、いけるよ!」
「はあ!」と驚く比奈子と小宮に
「早速、契約だ、契約だ!」大喜びに成る。
放送が変わると「明日、連れて来て、彼と契約するよ、大スターの予感だ」と上機嫌に成る野々村。
当の比奈子は心中穏やかでは無かった、体調が優れないと思っていた、仕事もしていないと思っていた。
現実はテレビに取り上げられる程の、有名な占い師に成って居る、これって?
夜早く帰る比奈子、功一はテレビの放送が録画だと知らないから、取材に来た日から幾日か過ぎていたので、
比奈子には見つからなかったと思っていた。
でも、今日の占いに来た人数は半端では無かった。
疲れた功一は
「申し訳ありません、今夜はもう、疲れて上手に占いが出来ません、
予約で後日占います、このノートに住所、名前、連絡先を書いて下さい」そう話して、切り抜けていた。
占って貰う人は、正しく占って貰いたいから、納得してノートに記入して、引き上げた。
昼間のテレビで放送された事を全く知らない功一だった。
ノートを片手に戻ると「あれ?」扉が開く、恐い形相の比奈子が待ち構えていた。
「早かったね」と家に入ると、
比奈子が「何故?何故?」と功一に迫ってきたので、
功一は思わず、キスを求めて居るのかと思い抱き寄せてキスをする。
比奈子は予定が狂った、問い詰める予定がいきなり抱き寄せられて唇にそして、舌が絡み合うキスに変わる。
浅宜彦は学んでいた、人間はこの様にすれば喜ぶ、この様にすれば、感じると、この数週間で比奈子の喜ぶ事をマスターしていた。
キスをしながら胸を触られ、比奈子は怒る気力を無くしていた。
もうその後は陶酔の世界に変わっていた。
何故?こんなに上手なの?全く何も知らなかったのに?
「功一、何故?占い師に成ったの?」その問いかけは甘い囁きに変わっていた。
「テレビ見ていたの?」
「うん」
「お婆さんに頼まれて、先月からしているのだよ」
「お婆さん?」ベッドの二人の会話は、比奈子の詰問の予定が全く異なる会話に成って居た。
「お願いが、有るのだけれど」
「何?」
「明日ね、プロダクションの社長に会って欲しいのよ」
「明日ね、忙しいのよ、今日占いの出来なかった人が一杯来るので」
「何よ、それ?」
「今日の夕方から突然増えたのだよ」
「それはね、今日放送されたからよ」
比奈子の言葉に驚いて「テレビはね、十日程前だよ」
浅宜彦には録画が判らないから、時間にずれが生じていた、比奈子は丁寧に説明する、ようやく理解した浅宜彦。
結局誰かに頼んで、街角に説明に行って貰う事にする比奈子、
説き伏せて明日は一緒にプロダクションに行く事で話が終わると、また比奈子が求めてキスに成る。
もの凄く上手だわ、キスもSEXも、功一無しでは生きて行けないと思う比奈子に成って居た。
翌日、功一に会った野々村はいきなり功一との専属契約を結ぶ、
訳の判らない比奈子も功一も条件の良いのに驚きながらも契約をする。
野々村には功一を使って一儲けの企みが有ったのだ。
街角の占いは今月で切り上げる条件に成っていた。
約束の人達だけの占いで終わる事にする功一、比奈子の給料と変わらない高給だったから、比奈子が納得したのだ。
でも比奈子には功一の能力は見た事が無い、不安も有った。
自宅に帰って私達の事を占ってと言うと、功一は即座に「判らない」と恐い顔に成って答えた。
知っていても言えない功一だったから、比奈子はその功一の顔を見て二度と聞かないと思う程だった。
翌日街角で約束の人達を占う功一を、比奈子がこっそりと見ていた。
そこにはあの功一の姿は存在していなかった、占う姿は功一では無かった。
比奈子は理解出来なかった、家に帰ると普通の功一に戻って居る、占って居る姿は何かの化身の様だったから。
野々村はテレビ局との交渉で功一の為の番組を提案して取り上げられていた。
「噂のあの人達の恋は本物か?」芸能人から一般の人まで幅広く呼んで、功一が今後を占う企画だった。
テレビ局は町の人気占い師を呼んでの企画だけなら、乗らなかったが、
比奈子のドラマが人気だったから、面白い企画だと、野々村の企画に興味を示したのだ。
テレビ局ではメインの司会に比奈子の起用を決めたのだ、話題には敏感な芸能界ならではの決定だ。
早速来週から、収録をして、三週間後にオンエアーされるのだ。
初回は芸能人を占う企画に成っている。
テレビ局の状況を殆ど知らない功一は比奈子のリードで、噂の芸能人カップルの今後を占う、浅宜彦には簡単な仕事だ。
与えられた名前、生年月日から次々と占ってゆく、それが当たりか外れかは時間が経過しないと判らない。
テレビ局には結果より話題が問題なのだ、来週からの素人の占いの方が心配なのだ。
子供
14-25
街角で人気の良く当たる占い師だけなら、話題に成らなかった功一も佐用比奈子の恋人で、
彼女を守る為に身を呈して暴漢から守り、意識不明の植物人間に成って、数年後蘇って、
その植物人間状態の時に霊能力が宿って、特に男女の結婚恋愛を占わせれば的確に言い当てる。
それはテレビ局には最高のストーリーに成った。
テレビの放送が始まると,功一の人気はうなぎ登り、比奈子の人気に勝る者と成っていった。
番組の司会は比奈子が行い、占いを功一がする二人三脚の放送、この放送を娘の家で見ていた浅原きぬは、
とても不思議な感覚で見ていた。
自分はあの浅宜彦の御札を使って、ようやく的確に占う事が出来たのに、テレビのあの青年は御札も使わずに次々と占う、
それは数日後結果報告が発表され出してから判ったのだ。
統べてが、的確に当たっていたから。
きぬは娘に「あの堤功一さんは神の化身だ、自分が大昔に見た御札を下さった神様だ」と言い出した。
娘は,母きぬが呆けて来たと思った。
母は「あの人は歳を取らないだろう、永遠にあの若さのまま、彼女が死ぬまで見守るのだよ」
「そんな、変な事信じられないわ」
「もう、自分はもうすぐこの世界に居る必要が無くなるからと言って、私に御札を下さった。
その御札を私が占いを辞めるから,引き取りに来られたのだよ」
「嘘よ、神様が人間に成る何て信じられないわ」
「私が昔その若者に尋ねたら、自分の過ちで人生を狂わせてしまったから、償いで人間に成ったのです、それがもうすぐ終わるのです」
「お婆さんは知っているのですか?と尋ねたら」
「はい、最初は内緒にしていましたが、途中から判った様です、自分だけ歳老いて、皺が出来る。
白髪が出来るのに、青年のまま変わらなければ,誰でも判るでしょうと言ったよ」
「それで、どうなったの?」
「お婆さんには、恋しい男性だったから一緒に生活がしたかった。
でも廻りの人が気付く前に引っ越す、仕事も転々と変わる。始めは夫婦、次は親子、最後はお婆さんと孫の様に成るから、
それでもお婆さんは彼から離れられない、愛していたから、最後は最愛の彼氏をした神様に看取られて、亡くなったのよ」
「その話が本当なら、佐用比奈子さんの本当の彼氏は,既に亡くなって居るのね」
「そうだよ、彼女は、今は幸せだよ、いや、死ぬまで幸せだろう、あの神様は彼女から絶対に離れないからね」
「嫌いに成らないの?」
「嫌われる事は無い、でもね!仕事は占いしか出来ないから、晩年は占いで生活をしていたね」
「あの有名な比奈子さんが、やがてはその様な運命なの?」
「神様にみそめられたのかも知れないね」
「お婆さんに、大昔に神様の青年が教えてくれたの?」
「もうすぐ、消え去るから、話がしたかったのかも知れないね」
「お婆さんに御札を渡して、何日位居たの?」
「貰った翌日には居なかったよ」
「お婆さんは?」
「翌日、老婆が孤独死だと、住んで居たアパートで話して居たので、私が荼毘に伏したよ、頼まれていたからね」
「えー、身寄り無かったの?」
「誰にも言えなかったのだよ、お婆さんは知り合いに会えないだろう、若い彼氏の姿を知っているからね」
「何故?神様はお婆さんを最後まで,面倒が見られなかったの?」
「お婆さんが息を引き取ると同時に,この世から消えるからだよ」
「そうなんだ、何だか、哀しい話しね」
「その神様は、どの様な過ちをしたのかは話さなかったけれど、多分命に関わる事だろうね」
「それじゃあ、今テレビに出ている、比奈子さんも命に関わる事件が有ったのね」
「そうだろうね、歩行者天国で覚醒剤中毒の男に、刺されたのだったよね」
「そうよ、先日もドラマに成って大反響だったわ、三年だったか四年だったか、植物人間だったでしょう、それが急に目覚めたのよ」
「それだね、多分」
浅原きぬの話は,駒田清子には衝撃的な話しだった。
夜、主人に話すと大笑いで、長い間占いをしていると、その様な錯覚に成るのだよ、
他で話したらいけないよ、お前が馬鹿だと言われて、恥をかくからなと一笑された。
清子も誰にも話さなかった、亭主駒田信夫の言い分が正しいからだ、子供にも話さない清子。
母きぬは、その数ヶ月後急な心臓病で亡くなった。
もう母の話を完全に忘れていた清子が数年後、テレビで作用比奈子が結婚をして堤比奈子に成っていて、
一緒にテレビに映る功一を見て、清子が比奈子は大人びているのに、全く二十過ぎの青年の姿に愕然とした。
「いつも、お若い御主人様ですね」
「はい、彼は童顔で永遠の青年ですのよ」と答える比奈子、年上の功一が遙かに若く、見えたのだ。
占い番組は数年で終わって、比奈子は女優として活躍をして、功一は東京に占いの館を建てて、その場所で占いを職業としていた。
清子は母の話が本当なのだと確信をしていた。
近日中にその占いの館に行こう、
数日後東京に向かう清子、占いの館は,数年前番組の終了と前後して完成をして、
功一は予約で、一日数十件の占いをしていた。
清子は予約をしても中々会って貰えないだろう、忙しいからと思っていたが、
祖母の名前と以前占い師をしていたと受付に話すと、意外と早く会って貰えたのだ。
功一は清子を占いの部屋に招き入れると
「お婆さんの話ですよね」と言われて驚きの表情に成った。
清子は母から聞いた話を功一に話すと,机の中から御札を取りだして
「貴女のお母様の話は事実です、これが頂いた御札です」
「貴方はこの浅宜彦様?」
「そうです、お願いが有ります、この御札をそこのローソクで燃やして、この場からお引き取り頂きたい」
不思議そうな顔の清子に
「貴女に神罰が落ちるのを防ぐ為です、お願いします」
「それは?」
「知ってはいけない神の事を知りすぎました、幸い何方にも話して無いとおっしゃったので、
この御札を燃やせば、災いは消し去れます、燃やすと直ぐにこの館を去って下さい」
そう言われて恐く成る清子、
御札を手に持って「それでは、燃やします」と言うと功一がその場を離れた
「これで、お別れです、お幸せに」と告げると奥に消えた。
清子は言われた通り、御札を蝋燭で燃やす、見る見る灰に成るのを見届けると同時に館を出た清子、
後ろを振り返った時、きぬに聞いた総てを忘れていた。
撮影現場に居た比奈子は何かを感じ,急いで功一の携帯に電話をするが繋がらない、
その頃、救急車が占いの館から功一を運び出していた。
占いの館に連絡した比奈子が、功一の事を知ったのは救急車が出た後だった。
受付の女性が、「先生はベッドで横に成って。。。。。。。」
「そう。。」と比奈子はそれ以上取り乱す様子は無かった。
数日前、功一は比奈子に事実を明かしていた。
それは最近比奈子が自分は歳を重ねて老けるのに、功一が二十歳過ぎのまま若い事に疑問を投げかけたから、
いずれは明かさなければいけない事実だった。
比奈子三十歳の誕生日の出来事だった。
その時、功一は御札を見せて、自分の名前は浅宜彦、比奈子が死ぬまで側に居る。
でもこの御札を燃やせる人が現れたら、比奈子より自分は先に人間から、神に戻れるかも知れない。
その時は悲しまないで欲しい、本当の功一さんに会えるだろう、形は異なるが大事に育てて欲しいと告げていた。
約十年一緒に生活した、偽の功一からの告白だった。
比奈子はその日泣き明かした、功一の幻と暮らした時間と感謝を涙で。。。。。
浅宜彦は浅原きぬの死を知っていた。
そして娘が尋ねて来る事も、その結末も判っていた。
病院に行った功一の身体は、死んでから間も無い遺体では無かった。
でもそれを誰も証明出来なかった。
比奈子が遺体を荼毘に伏して半月後、体調の変化を感じたのだ、妊娠が判ったのだ。
これが功一さん?違う、功一さんの子供?浅宜彦って神様が授けてくれたのだ。
比奈子はようやく意味が理解出来た。
自分が消えるが,最後の力で功一さんの身体を使って、子供を授けてくれたのだ。
約一年後、火傘神社に子供を抱いた比奈子と母泰子、功一の母好子の三人がお参りに来て居た。
神社の境内の脇に佇む祠に、三人はお参りをした。
神主の松尾が「この神社にも縁結びの神様に降臨頂きました」と笑って会釈をした。
比奈子も笑って会釈をすると「女優の佐用比奈子さんですね」
「いいえ、堤比奈子です、この子は息子の宣彦です」
「偶然ですね、この神様は浅宜彦と云う神様ですよ」と笑った。
比奈子は事実を誰にも話してはいない、誰も信じる人が居ない事を知っていたからだった。
完
2015.04.27
縁結