デュアル・ギア
この世界は「ギア」と言う力を秘める人間がほとんどで、持たない人間を否定し、その力が強ければ強い程肯定される世界。
他人にまったくと言っても良いほど興味がない、天埜苓亜(あまのれあ)が初めて会う新入生、織姫(おりひめ)を助けるために
興味がない他人を救う戦いが始まる。
‐序章‐
この国、いや世界中の人間は、力、「ギア」を
持つ人間がほとんどで、その強さによって
未来が変わっていくと言っても過言ではない。
逆に、持っていない人間がいると、嫌われたり、
無視されたり、避難されることが多いと言われるが
まだ僕は、その光景を見たことがないから、
本当のことなのかどうなのかは分からないけれど、
本当のことなのだろう・・・。
僕、天埜苓亜(あまのれあ)は、ギアを持つ生徒を育成する
教育機関、私立聖帝学院に通う高校2年生で、
幼馴染の炎条月(えんじょうあかり)の計らいで、生徒会の
副会長に任命されてしまったのだけれど、
月には色々とお世話になっているため、逆らえないのだ。
そして今日は、入学式、新しい新入生、
僕の後輩たちが来る日だ。
生徒会はほとんどの行事を指揮して、それと同時に、
他校のギア所有者から本校の生徒を守ると言う義務があり、
会長1名、副会長2名、そして四天王と呼ばれるギア所有者が
4名選出され、そのメンバーを最強のメンバーとして接することを
学校で規則にしている。不思議な学校だ、中学時代には
この様な規則はなかったはずなのだけれど・・・。
生徒会長は月、副会長は僕。
生徒会は白いローブの様なものを渡され、常時その様な
魔法使い的なものを着ていないといけない。
中は学校の白ランで、外は白いローブ。白尽くしだ。
「ねぇ、月」
「ん?」
「僕、あまり言いたくないんだけど・・・」
「仕方がないでしょ?それが、あなたの仕事」
「う、うん・・・そうだけど」
僕はこの大勢の前で入学祝の言葉を言うことになっていた。
本当は月が言うはずなのだけれど、なぜか嫌がり、
副会長である僕に回ってきてしまったのだ。
僕は他人などどうでも良いと言う考えで、
人とあまり関わらないが、大勢の前で話す機会など滅多に
ないため、この様な大仕事は初めてに過ぎないのだ。
「えー、では、生徒会からの挨拶」
き、来てしまった・・・、僕の番が。
「ほら、行ってきな」
「う、うん・・・」
僕は恐る恐る演台に立ち、深呼吸する。
うわー、大勢の生徒が見ている、緊張するし、
何より、目線が怖い・・・。
(ん、あれ・・・制服着ていない?)
目に入ったのは、制服を着ないで、1人、羽衣の様な
着物を着ている女の子だった。
綺麗な黒髪で、とても可愛らしい女の子なのだけれど、
目立つ羽衣、何か変な気持ちになっていたのだが、
今は祝福の言葉が先だ・・・。
そう思っていたのだけれど、いきなり1人の生徒が立ち上がり、
僕に言う。
「お前!本当に強いのか!?」
「え?」
「勝負だ!」
いきなりギアを纏う男子生徒。
でも、僕は上級生だし、学内で戦闘することは固く禁じられている。
あまり、本性を見せたくないのだけれど、
ここは仕方がない。
僕は何も言わず、演台から飛び降り、その男を
迎え撃つことにした。
「苓亜!」
「分かってる」
大きく飛び上がり、僕に向けてギアの力を発動する生徒。
火の力か・・・月と似ているけれど、
こんな火、月に比べたら大した強さじゃないな・・・。
僕は手を前に出し、その火を受け止めようとした。
でも、その目の前にさっきの女の子が立った。
さっきの、羽衣の女の子が。
「ちょ、バカ!!」
僕はその女の子を僕の方に引き寄せ、
手で受け止めるはずの火を背中で受け、女の子を
庇っていた。他人に興味がない僕にはもの凄く
珍しいことなのだ。
「っつ・・・」
「苓亜!?」
「平気だよ、月に比べれば、水の様だ・・・」
「そ、そう・・・でも、その火傷・・・」
さて、どうするか・・・本当に大したことのない熱さだったが、
この羽衣女、いきなり前に出てきて何のつもりだ。
「君、何のつもり?」
「あの、その・・・」
「まぁ、いいや、怪我はない?」
「は、はい・・・ごめんなさい」
僕はそれから、1人の男の名を呼ぶ。
「雷也!」
「へいへ~い、捕まえたぜ」
「ご苦労様」
神宮寺雷也(じんぐうじらいや)、僕の中学時代からの親友で、
僕は唯一、友達と認めた1人でもある。
雷のギアを持つ男で、雷の如く、どこからともなく
現れ、相手に雷撃を食らわせる男だ。
威力は凄まじく、学院第2位を誇っている。
「さて、お前・・・何者だ?」
僕は白く、腰まで伸びた髪を靡かせそう聞く。
この色と長さは校則違反なのだけれど、
僕はこの状態から伸びることもなく、切っても、数時間すれば
この長さに戻ってしまうため、校長直々に許してもらっている。
影響はわからないけれど、恐らく僕が持つギアの
影響だと思われる。
「君、なかなか威勢が良いけれど、あまり僕らに歯向かわないほうが良いと思うよ?」
「な、なんでだよ・・・」
「僕らに手を出すと言うことは敵対行為としてみなし、他の学校から襲われても、君を守る権利がなくなるからだよ」
「そ、そんなの必要ねぇ!!」
本当に勇ましい男だ。
僕ら生徒会に手を出し、それでもなお、反抗するというのか。
今の生徒会は僕と月、雷也の3人しかいないけれど、
それでも十分なくらい強い。
「そうか、なら勝手にするが良いよ・・・あとは月に任せるから」
「え?アタシ?」
「そ、後はよろしく、僕はもう行くよ・・・なんか冷めたから」
「そ、そう・・・」
さて、これからどうするか・・・、
入学式も抜け出し、ボーっと過ごすしかないのか・・・。
まぁ、今日は午前中で終わりだし、終わるまで
生徒会室で寝ているか・・・。
そう思い、入学式のため外していた、常時つけている
紅いマフラーを首に巻き、生徒会室に向かった。
今は4月なのだけれど、マフラーをつけていると
何となく落ち着くため、いつもつけている。
寝るときも、真夏の暑い時でもマフラーは欠かせない。
欠伸しながら生徒会室に入り、隅に置いてある
ソファーに寝転がり、天井を見上げた。
あの子、一体何者なのだろうか・・・、
あの羽衣に、火が向かって来ていると言うにも関わらず、前に出る。
まったく理解出来ず、そのまま浅い眠りについて
しまっていた。
僕が起きたのは、ドン!
と言う大きな音と共に目覚めていた。
その眠たいそうな目を擦って時計を見ると、
寝ていたのは30分程度で、音が気になり、窓の外を
見ると、月と雷也が他校の生徒と戦っていた。
またか、と思いながらボーっと眺めているが、
その数、約100人を相手ではさすがに厳しい状況になっている様で、
月と雷也は疲れきっていた。
良く見ると、多くの生徒が戦っている後ろで見守っている。
新入生でも一応ギア所有者、一緒に戦ったりしないのだろうか。
僕は仕方がないので、階段をゆっくり降り、その現場に
向かうことにした。
歩いている途中、頭の中で色々と整理する。
なぜ、こんなことになっているのか。
検討はつかなかったが、僕はあまり乗り気ではなかった。
あまりギアを使いたくないのだけれど、
それを知っているのは月と雷也だけ、僕が出て行けば
大勢の生徒が僕が来たことにより安心するだろう。
そうすれば、ギアを使わなければならなくなる。
さて、どうしたものか・・・。
そう思っているうちに、外に出てしまっていた。
あー、凄まじい戦いだな・・・。
仕方がない、月のためだ。
「はいは~い、ちょっと通してくれる?」
「あ、はい」
そう言って見ている我が校の生徒の中を歩き、
中心に歩く。
「苦戦してるね、月」
「あんた、何やってたのよ!?」
「あー、寝てた」
「はぁ!?」
そりゃ、怒るよな・・・。
でも、安心してよ、今回は僕も力を貸すからさ。
僕はローブを脱ぎ、その場に落とした。
「ちょ、あんたもやる気!?」
「当然」
僕は目を閉じ、集中する・・・。
次に深呼吸、そして・・・、爆発的に力を増幅させる。
目を開けると、普段の綺麗な紫色の瞳が
紅く染まり、目付きが鋭く変わっていた。
周りには光が纏っている。これが僕の力、
日本最強を誇る伝説のギア「ヘブンズ・ギア」。
制御が難しいため、僕のようなバカで運動神経だけ
良いような男に宿ると言うことだ。
納得してしまうのもあれだが、僕はこの力を宿したことを
誇りに思い、嬉しく思う。この力があれば、
大切な人を守ることが出来るのだから・・・。
「どいてろ、月、雷也」
「え、えぇ・・・」「あぁ・・・」
さて、お掃除の時間だな・・・。
「や、殺れ!!!」
100人がいっぺんに僕の方に向かって走ってくる。
その100人は一気に僕の上に乗っかり、
僕は下敷きになってしまった。
「や、やった・・・」
「苓亜、殺すなよ」
やがて、100人の間から、無数の光が漏れ、
爆発するように、100人全員を一気に
吹き飛ばし、無傷の僕が立っていた。
これが僕のギア、ヘブンズ・ギアの力・・・。
あれ?まて、この気配・・・近い・・・。
僕はその気配を感じ、戦いなどどうでもよくなり、
その気配のほうに向かって歩いた。
すると、僕に飛び掛ってくるように、飛び込んできて、
その勢いで、僕はその場に倒れてしまった。
「見つけた・・・」
「は?」
「天埜苓亜・・・さん」
「え?」
こいつ、羽衣女、でもこの気配・・・こいつなのか。
あの力を持った女は、こいつが僕の・・・。
「私の、許婚・・・」
やっぱり、こいつだったのか・・・。
「えぇーーーー!!??」と言う大きな声と同時に、
僕は思っていた、こいつの強力なギアの力の正体が本当に
あの力なのか・・・。
デュアル・ギア
書きたいことがたくさんあったので、あまり迷いませんでしたが、いかかでしたでしょうか?
よければ良いとこ、悪いとこ、どんどん言ってください。
お待ちしております。