practice(103)
百三
光が窓とひそひそ話。雨がなぜか降ってきた。音から分かる粒の大きさに,その走りも早くて,途中で覚めた目がぱちくりと,セットしないプラスチック製のものはあちこちに。ふわっ,と出る欠伸は風船みたいに膨らんで,大の字で眠れるスペースを作ってくれる。くしゃくしゃなシーツの上,電灯は仕事を終えた。それから影は憩われて,壁やら下やらに。部屋にもう,回るものも飛ぶものも,何処にだってないけれど,回るCDプレイヤーだって,ケースは遠くに,と聞いて思うよりも遠くに片付けてしまったのだけれど,足が届かないベッドの端。お掃除は明日,と決めた遅い空の床に,歩けるみたいに。
まずは毛布から抜け出した,中くらいの頃と,木登り得意な猫の家出。ぱたたたっ,と続く。たたたっ,と止む。
そこらの大きな頃は,借りて来られた巻き尺を持って,木の扉,きちんとされた金具の辺りから伸びてきて,紺に色づけされた浅い夜の中の壁面に,鉛筆も用いて。しゅーっ,と戻るときに聞こえる。大きな頷きに,大きくてを振って。ガッツポーズもあったもんだ,と教えてくれた,太く大きく深い声が,どこか似ていて,どこか違う。
「さあ,どこだろう?」
さあ,どこだろう。それをパパに聞いても,多分一緒。
大きな樹々にぶらさがる。今日はここ。また明日も,そこ。そこから聞こえる景色には,どうしたって鳥が翔ぶ。
「双眼鏡でも何でもいいけど,準備は?」
雨が降った日。光と窓が,ひそひそ話。
肌と湿気が出会うことなく,とはいかないけれど,心地よさに,反比例するものが特に思い付かなくて。選んだ鼻歌は,だって,歌えるんだもの。
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