practice(87)
八十七
よく冷えたティーポットの間に,指の二本で踏んだのはさっき割ったピーナッツの大きい欠片と中古机の小さな欠陥。入れない穴ぼこの,なだらかな下りにかたかたとしないソーサーの縁を回って,かたんと机上に着くから。
石畳の上に止まる蛙は気にかけていた。雨が降るという予報を彼,あるいは彼女が予め耳にしてそれを知り,そこで待っているとも思えなかった。曇り空とはいえ晴れ間は時々,いまも見えている。干からびる,なんて心配まではしていないけれど。真上から見えてしまう私の位置に,その姿は小さく小さく写ってしまう。跳んでいっても大して変わらない,鮮やかな花の高さの風景に収まってしまう。唇ででも,尖らせればそれで十分,待ち人を焦がれて待つ人ならば,きっとそうなのだろう。風に吹かれて集まって,気まぐれにも居なくなる。雨は降るという予報。時間は経って,部屋のオーブンで焼けたばかりのクッキーが重なる。
一輪挿しの瓶の隣で,あの高い木を止まり木とするのが一番近い。
通るつもりでも無かった猫が関心を持った,通りを示す青い看板と響かない電話。片手で抑えた電話口とお知らせは,ステージに似合う衣装と曲の選択について,それと傘は要るのかどうかと,私に関する質問。新しい取り皿の真ん中あたり。通るつもりで,関心を持った。
目をつぶるなんて勿体無い。耳を澄ませて,雨を歌う。
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