僕はその時から心の中に
僕は 僕の過去の記憶の入り口に いつのまににか
憤怒の形相の守護神を 置いてしまったようだ
少しでも過去の扉が開かれようとしたりすると
彼が猛然と立ち塞がり 大きな怒鳴り声をあげながら
バーンと扉を閉めてしまう
僕はその憤怒尊に 優しく囁いた
「もう、大丈夫ですよ。中に入っても昔のように
命を絶とうと想ったり、気が狂いそうになったり
人に会うのが恐くなったりもうしませんから。」
でも彼は憤怒の形相のままで、大きく顔を横に動かし
紅い火焔を吐きながら耳を劈く様な大声で
=ダメだあ~~~!!!お前はまだ、あの時のままだあ~~~
あの時とちっとも変ってはおらぬわあ~~~!!!=
そう叫んで僕の胸を真っ赤な手のひらで
現在へと押し戻そうとする
でもいまの自分は過去の結果存在しているのだから
過去を断ち切ることは 封印することは出来ない
でもまだ僕の心の中には あの時の辛さや哀しさや、
奈落の底に引きずり込まれるような 絶望の日々を
思い出すことに対する恐怖があり それが
憤怒尊を作り出している 原因なのかもしれない
彼が 優しい寂静尊の慈愛に満ちた笑顔に変わり
その頑丈な鋼鉄の扉とともに 消えてくれるのは
いつの日のことだろう
僕は 今日もそんなことを考えながら
ただ前だけを 未来だけを見据えて
懸命に 生きて行こうと している
僕はその時から心の中に