practice(47)



四十七





 湯気に負けてる雪片をほっぽといて,頭上の木目の跡が鳴りに身を縮める。洗濯物には最適そうな日差しも弱々しくあちらと煌めいて,家の中には開けっ放しの縁側に腰掛けて伸び伸びした。畳にごろ寝もして,とたとたとする床の上では絞りを待つカメラとレンズが光沢ある赤茶色の食卓から取り上げられて,軒先にある緑と覆われる水色を空と分けて捉えている。曇りがちな磨りガラスにはお暇をしてもらった。左に右にと,座布団の耳を押さえながら,か細い声の景色の行きかたを見失わないように,切る。その二枚に別れた紙の上には金平糖がぱらぱらと分けられて,手の中で口を締められた袋の中にも残った。立ち上がり,交わす言葉と少しずつ少しずつ,減っていくのが甘い。どさっと落ちる音も吸われれば,積もられるものも多い。
 ボーンボーンとうちの時間が古く,掛け軸の気配が気になって覗きみる。おもむろになって墨の鶴が二羽とこちらに頭を向けて,首を上下に一度振った。こちらも振れば,羽根も羽ばたかせる。カメラを向ければ,そっぽを向いた。
 土を触れない足跡のようにと,カラスが落とした実が勿論割れることなく着いて,埋もれることもなくその顔を覗かせている。取りに向かおうか,しかしサンダルを取りにいくのにも億劫してぽりぽりと二三粒を楽しめば,鈴を鳴らして悠々と帰って来たわが家の猫はその前を通って家に入る。膝に入るのはあととばかりにそれからまんまの鳴き声を出して,一番近くで出来上がっていた,ぴょんと跳ねるはずの,白兎の鼻をすんすんと嗅いだのだった。
 撮りたかった瞬間はシャッター音より遅い。
 しかし手の中に重くあって,カメラから離す顔の辺りには浮かんで表情となる。癖で掻いたところは赤くなって歌に出てくるように,なってしまったようだ。

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-02-13

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