practice(43)
四十三
雑然の,またさらさらな。
一筋から一筋と,竹の風に晒される。そのかたち,目立つ匂いと光は辺りを退かず,葉と捲れてより露わになる,地肌はかさかさのもの。滴らせて,丸く広がり滲みるのが鈍くなるのは至極当然,ひと息と吐いて手の中にある重みとひいた汗で,爽快感はひた走る。反り,それと淡さに散り散ることを交え,吐いた白い息がそんなに遠くにいかない。押し退ける気は勿論のこととしてないから,額を拭いながらの観察,兎に角向こうを見ているような,真剣な気配と狙い。しなりともどりの行ったり来たりには,やはり重なり合いが後々を支配する。しかしそれもまたゆったり,静けさだって,こんなところで遊んでいるのだから何も言えない。大人しくするのはだから仕草,ここでのんびりとして成長して後戻りと一緒に,前ばかりを見ている。
それから閉口しない木登りの,途中で出会った息子と父が支度の夕餉に急ぐのは。
回るに似る,次から次へが見当たらないのはそういうものが教える,構えと止まれの競争には付き合わないのが勝ちと,それを用いる手長猿の隠し芸がまた見えるのも言わないのが劇と出入りする,立ち居振る舞いという。それは手長猿から聞けたのだ,というのがまた味噌なのだ。にししと笑って,言わざるの猿を真似るのが好きだそう,師である祖父の,それは師としての話。鼻緒を直した草履の類,と意味なく呟く癖のあったところもまた本当,『ピーヒョロロ』と歌いながら時刻を知らせる鳥もいたのだから。
「つくしんぼうが顔を出すみたいに空々しさとテンポよく仰ぎ見れば鬱蒼は影を忘れて隙を作る,その時こそ見ざるの猿と着飾った天女はここを飛ぶ。覚えておけ,それで損はないさ。」
よく聞いていた。幸い,それを見たかは内緒にする。
むず痒さと,それから二度とくしゃみをして着直しをすればそれを見かけた祖母の声,籠を背負って鎌を振る。山菜を,取りにきたのだと分かるのだ。しかと歩くその足取りで,師である祖父が居たのなら「ほれ見ろ。」とばかりに。
ならば足りないものを持っていかなければいけないか,羽衣なんてないけれど,羽織るものぐらいの一着なら。
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