practice(40)
四十
嘴のそれか,それとも爪と思うそのままか。
丈だけ足りない柔らかいところに,乗せてもらったように頂戴した。いいのと聞かない,そのために強請ったりしたのだから白い思い出は葦原の中を流れて元の位置のことを覚えている,穏やかに見えてしっかりとしたものを,編まれたカゴの,大きい足場に積み上げては余計に過ぎるとかな,と考え直して一つ一つを降ろす。腕時計が隠れない捲し上げられた作業中に広げたランチョンマットに空っぽの弁当箱が寂しそうに留まって,端から飛んでいく地図だった。先を見据えて,その二枚目の,サイン。知らない名前のところに寄り添う,見覚えのある線と点と時間。到達は無事を連れて行く。期間はそうやって帰って来ない。伝えられて,赤い印とつけられた丸がここからここを,向こうから先を導き出す,足をブラブラさせていても脱いではいない靴があるから椅子の上に立って短い間の,爪先立ちで,限られた視界の片隅から片隅まで。
山々から水のこと。しんとした朝の鋭い様に触れた手先から目が覚めるみたいで,ゆっくりゆっくりと噛み締めながら聴く風のこと,それと運ぶお喋り。笑える冗談も混じる,それと元気で,踏みしめる大地と静かにしてても活きてること,預かれる恵み。射すものと陰る,芳ばしい匂い。ひた走る,そこに在ること。
浮かんで。
ポケットから落っこちた,渡したいもの,白く柔らかい交換条件にもならないもの。すぐに拾って,すぐに走って,いいと言うまで開けてはいけないという約束。確かめることはままならないけれど,に付け加わる。
「開けるのが勿体無いね。」
でもとそれでも,しっかりと掴まれて。
あるようにここから数秒間,伸ばし伸ばしの爪先立ちと引かれた線,それと点で結んだ地図の上に柔らかく,それと思うまま。届かせる,それに小さくなる姿,段々と大きくなってあれを気球と言うのなら。
ぎゅっと握った,嘴みたいに。
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