zoku勇者 ドラクエⅨ編 59

ドミールへ

光の橋を渡り合え、4人組が辿り着いた場所。そびえ立つ巨大な火山、
溶岩地帯が広がる場所。ドミールの地。この世界での物語もいよいよ
終盤、佳境に向け動き出す……。

「うう~、暑いねえ~……」

「仕方がないよ、……溶岩だらけなんだもの……」

早速愚痴り始めるダウド、本当に何処を見ても溶岩だらけである。
こんな所に住んでる人の気が知れないとグチグチ。けれど、確かに
地震でも来られたら怖いなあとアルベルトは思いながら周囲を見渡した。

(……あー!あっちぃのヨッ!アンタら早く休めるトコ探しなさい
ってのッ!)

「うるせーぞガングロっ!……けど、本当にこんな所に村や町があんのか、
俺、疑わしくなって来たわ……」

「もうー、ジャミルまで……、しょうがないんだから……」

「モン……、モォーン!!」

「どうしたい、モン……、モンスターかっ!!」

モンが騒ぎだし、4人は身構える。確かにモンスターである。
この土地に来て初お見えのモンスター、まるで雲の様な老人の
容姿のモンスター、雲大王……。

「……ガチョ~ンモン!」

「……え?あ、ああ、成程、ポーズがね……、って、何で理解してるの、
僕……」

項垂れるアルベルト。雲大王のポーズは、手のひらパーを前に突き出す、
所謂、ガチョーンのポーズだった……。

「ガチョーン!ガチョーン!」

モンはガチョーンを習得した。

「……せんでいいってのっ!何の役に立つんだっ!オラ、ダウドの所
行って暫く遊んでろっ!!」

「ま、またあーーつ!勘弁してええーーっ!!」

ジャミルはモンをダウドの頭の上にポイした。言葉を喋れなくなって
いるとは言え、余計な事は学習出来るらしい。モンはとても毎日
楽しそうだった。大好きなみんなと一緒にいられて遊んで貰える事、
それがモンの元気のエネルギーになっているのかも知れなかった。

「アゴガチョーンモン!……アゴチョ!アゴチョ!」

「……元気過ぎるってばあーーっ!!」

「よし、そうやってダウドに喝入れててやってくれよ……」

「……」

「あれれ?何か様子がおかしいな、アイツ、切れてねえ……?」

「はあ……」

アルベルト達は溜息を付く。原因は恐らくモンのガチョーンである。
あれだけコケにされれば怒り状態になるのが当たり前……。雲の大王を
切れさせた超本人は呑気にダウドの頭の上でアゴを伸ばして遊んでいる。

「……モンちゃんたらっ、もうっ!」

「アゴシャシャシャ!」

「と、とにかく……、戦うしかねえって事だ……、うわ!?」

雲の大王は稲妻を呼び寄せ、4人へと放出、ぶつけて来た。それでも
ダメージは全員食らって10程度、静電気ぐらいの痛みだった。
今のジャミル達のLVと装備品ならこれぐらいで済むらしい。

「……アブねえなあっ!電気は大事に使えってのっ!こっちこそ
ブチ切れだっ!」

「ジャミル、気をつけて!」

「分かってるさっ!」

アイシャに心配されながらもジャミルはドラゴンキラーを構え、
雲の大王へと突進。守備力自体も大した事はないので、あっさりと
斬ってしまいカタが付いた。斬られた雲の大王は只の水蒸気となり、
上空へと消えて行った。

「よしっ、先へ……」

ゴゴゴゴ……、ドシッ!!

「うわ!?地震かっ、早速来やがったか!!」

「違う、ジャミル!これもモンスターだっ!!」

「……げげげーっ!」

先程起きた振動はアルベルトの言う通り地震ではなく、巨漢系
モンスターの足音である。角が生えた一つ目の青い巨人モンスター、
サイクロプス2匹である。しかもこっちはさっきの雲爺と違い、
相当厄介……。

「……アイシャ、ダウド、今度は僕らも頑張ろう!ジャミルだけに
負担を掛けさせる訳に行かないからね!」

「ええ、分かってるわっ!」

だが、サイクロプス2匹は左右からジャミルに向かって突っ込み、
棍棒を振り下ろそうとする。機敏で動作が素早いジャミルは慌てて
咄嗟に避けたが、もしもこれがダウドやアイシャだったらもしかしたら
サンドイッチになっていたかも知れないと思うとぞっとした……。

「お前らなんかと遊んでる暇はねえんだったらっ!ていっ!」

ジャミルはジャンプするとサイクロプスの片割れ目掛け股間シュート。
痛みに耐えられず、サイクロプスは後ろ向きに慌てて転倒する。
隣にいたもう一匹の方も巻き込んで……。

「……よしっ、仲間同士で片割れが潰れたぞっ!今の内にっ!」

「はあ~、意地の悪い人だねえ~……」

「ヘタレっ、るさいっ!アイシャ、今の内に、魔法を頼む!」

「分かったわ、イオラーーっ!!」

アイシャが倒れたままのサイクロプス達にイオラをお見舞い。
止めはアルベルトのギガスラッシュで粉砕。巨大な巨人達は
あっという間に木っ端微塵になり、消えた……。

「とりあえず、終わったか……、早くドミールを見つけねえと……」

「ま、また来たみたい……」

「い、いいいいっ!?」

正面を見ず、滝汗を掻き掻き怯えるダウド……。先ほどの奴らとは
別のサイクロプスである。今度は雲爺も一緒に……。尚、仲間が
やられた事に相当ご立腹のご様子。

「……流石、長い事道が封鎖されていた未知の大陸だな、こりゃもう
今までの様にはいかねえかもな……」

(……道が封鎖されてた未知の大陸……、プ……、何か急に寒い……)

「何だ?ダウド……?」

「……何でもないですよお~……」

「どうする?このまま連続で戦うかい……?」

「いや……、とりあえず逃げるーーっ!!んなに何回も相手して
られっかあーーっ!!」

……4人組は只管溶岩地帯を逃げ回る。ドミールに行けば運良く
もっと良い装備品が見つかるかも知れない。だから今は相手を
したくなかった。だが、ドミール自体中々見つからない故、何処に
逃げてもサイクロプスと雲爺が瞬間移動で追いかけて来る……。

「……きゃっ!?」

……アイシャが思わず立ち止まってしまう。更に別のモンスター、
溶岩ピローが……。だが、此方はアイシャのヒャダルコであっと
いう間に一掃出来た。

「……ガアアアーー!!」

「ああーーっ!こっち、ゴーレム出たよおーーっ!助けてええーーっ!!」

「……ダウドっ、下がって、こっちに来るんだっ!!」

「アルううーーっ!!」

ダウドは鼻水を垂らしながらアルベルトの元へと……。やはり逃げて
楽をしようとしても結局モンスター達は邪魔をしてくるばかりで先に
進めない。暑い火山大陸でしこたまバトルを繰り返し、ある時は戦い、
またある時は逃げ回り、走り回った4人は疲れてヘトヘトになっていた……。

「モンプ~……、モン……(みんな……、大丈夫モン……?)

「も、もう駄目だ、MPがねえよ……、これ以上マジで出て来られたら
棺桶か教会まっしぐら行きだぜ……」

流石のジャミルも疲れで愚痴を溢す。それだけ疲労困憊しているのだった……。

「ねえ、ジャミル、……あれ、見て…」

「……ん?あ……」

アイシャに言われ、見上げると、山の中腹に聳え立つ集落が……。
そして側には、上と続いているらしき、長い階段がお目見えしている……。

「……此処がドミールだよな、それしか考えられねえ……、よし、
行ってみるか!」

「ええーーっ!……こ、この長い階段を……、勘弁してえ~……」

ダウド、またガックリする。もしもドミールじゃなかったら
どうするんだよお~……、と。

「……アゴッ!」

「あたっ!モン、痛いってばあーっ!」

「ドミールで間違いなければ宿屋で休めるじゃないか、さ、早く行こう……」

「もう少しよ、頑張りましょ!」

(ほらほら、ヘタレ、ガーンバっ!運動になっていいじゃん!)

……ダウドは項垂れたまま顔に青筋を浮かべる。大体普段から
ジャミルの中にいて、楽チン、クソ威張りしている奴に言われるのが
一番カチンと来るらしい……。それでも皆は項垂れている間に
どんどん先に行ってしまう。……仕方がないので渋々後を追う事にした……。

「とほほ~、ヘタレは辛いなあ~……」

「何言ってんだアホっ!オメーじゃなくたって皆疲れてんだよ!」

幸い、途中の層で宿屋らしき建物を見つけた。4人は早速行ってみる事に。
やはり一番喜ぶヘタレのこのお方。ジャミルは改めて上を見上げる。今日は
此処までだけど、まだまだ先は長えなあと。

「……よ、よかった、助かったよおお~……」

「えーと、取りあえず休憩場所は見つけられたから……、どうする?
人の姿もちゃんと確認出来てるし、情報収集もしておきたい処だよね」

「……嫌です、絶対宿屋の予約が先……、皆が嫌だって言っても
オイラは宿屋に行きます、例えモンに頭突かれても……、ガルルル~……」

「……アゴッ!アゴッ!」

……ダウドはアップでアルベルトに迫る……。アルベルトは汗。
こう言う時ヘタレは傲慢で主張が強くなるので誰にも止められ
ないんである……。

「アル、いいよ、此処はヘタレに従おう、……じゃ、ねえと……、
後々大変だしな……」

「……フ~ッ、フ~ッ……、フニャーゴ!!」

「……ヘタレ野良猫かよ!」

「ま、まあまあ、分かった、荷物を置いた後僕らだけでも情報収集に
行けるからね……、まずは宿屋の確保をしよう……」

この層には他に教会もある様だった。武器&防具、道具屋、民家も
ちらほら。吟遊詩人らしき人物も姿が見える。何か伝承的な話を
聞けるチャンスかも知れなかったが、とりあえずヘタレが
うるさいのでまずは宿屋へと……。

「待たれよ、お主達は見かけぬ顔だな……」

おじさんが4人に声を掛けて来る。いいえ、待ちませ……とダウドが
言いそうになった為、慌ててアルベルトにスリッパで引っぱたかれた。

「俺達、旅のモンだよ、最近ナザム方面から来たのさ、だから、
まだ此処の土地とかの詳しい事はよく分からないんだ……」

「モン!(旅のモンです)」

「なんと、……下界からの客とは、珍しい事もある物だ、此処は
ドミールの里、遙か昔、魔帝国ガナンと戦った空の英雄グレイナルを
崇める地だ、どう言う導きで此処に訪れられたのかは分からぬが、客人達よ、
ゆっくりしていくが良い……」

おじさんは行ってしまう。だが、おじさんの言葉で、此処が間違いなく
本当にドミールなのだと言う事も完全に確定、取りあえず安心出来そうである。

「いらっしゃいませー、ようこそ!英雄グレイナル様を称える宿屋へ!」

「……4人だよ、頼むよ……、此処にいる間暫く世話になるよ、宜しく」

「お任せ下さいませ、では、此方のお部屋へご案内致します……」

4人は通されたルームへと入る。余り広くはない部屋だったが何とか
休めそうである。ダウドは早速……。

「うん、寝ないよ、オイラ寝てませんよ……、……グウー!」

そう言いながら寝てしまうダウド。……ジャミルはやれやれ言いながらも
ベッドの一つにダウドを寝かせてやるのであった。

「ンモー!だらしないんだからッ!」

「サンディ、仕方ないの、ダウドも疲れてるのよ、このまま休ませて
おいてあげましょ、モンちゃん、駄目よ、悪戯しちゃ……」

「アゴ……モォ~ン……」

「……まだ一緒に寝るには早ぇしーな、飯の時間にも……、んじゃ、ダウドは
このまんまにしておいてと、情報収集行くか、……モン、オメーも来い、一人で
置いておくとダウドに何悪戯するか分からねえからな……」

「……シャープップップ!」

モンはプープー言いながらダウドが寝ている為、ジャミルの肩の上に乗る。
サンディは発光体へと戻り姿を消す。トリオはダウドを宿屋に置いて
外へと情報収集へ向かう。

「下界の人間がドミールを訪れるなど何百年ぶりの事なのだろうか、だが、
一体どの様なご用件で?」

「えーと……」

「……なんと!黒いドラゴンを追う為に空の英雄グレイナルに会いに
来たと?下界の方は冗談がお上手である、闇竜バルボロスも魔帝国
ガナンも300年前に滅んだと言うのに、詳しい事を知りたいなら
里の語りべか長に話を聞いてみる事ですな……」

「何か混乱するなあ、えーと、どうすっか、俺、新しい武器とか防具も
見てえんだけど……」

「うん、買い物もいいね、道具屋でも色々買い占めておきたいしね、
順番に行こう」

「さっき詩人さんみたいな人いたわよね、探してまずはお話聞いてみましょ!」

「ま、やっぱり情報収集から先か、基本だな……、このまま話を聞きに行くかね」

トリオは里の中にいた詩人を探し、話を聞いてみる事にした。詩人はどうやら
この里の語り部でもあるらしかった。

「よう、兄ちゃん達、客人かい?珍しいねえ!あー、忙しい、忙しいなっと!」

「はは、ども……」

丁度、厳ついガタイの良いおっさんが笑いながら重そうな袋を担いで
通り過ぎて行く。トリオは挨拶で頭を下げるがおっさんからは異様に
強い酒の匂いがした……。

「……モォ~ン?くんくん、くん……、ヒク……」

「そうですか、あなた方は下界からいらしたと……、これはまた、
不思議な出会いもある物ですね、私は空の英雄グレイナルの栄光を
人々に語り継ぐべく、語りべを務めております、少々長いですが、お聞きに
なりますか?」

「ああ、頼むよ……」

「それでは語らせて頂きます、……かつて魔帝国ガナンは世界征服の
野望を掲げ全世界に戦を仕掛けました、巨大な闇竜バルボロスを操り
大空を支配した帝国軍の前に数多の国が滅ぼされたそうです、誰しもが
絶望仕方けた時、この恐るべき悪に敢然と立ち向かう者が現れました、
……彼こそはグレイナル、世に並ぶ者なき空の英雄、グレイナルは
帝国軍に挑み見事この戦いに勝利しました、そして彼の勝利は人々に
勇気をあたえていったのです、帝国が滅んで300年、今もドミールの
民は空の英雄を崇め、称えているのです……」

「そうか、……300年……、ん?」

どうもジャミルは引っ掛かる事があり、気になっていたのだった。
だが、それを二人に伝えようとしたその時……。

「……ジャミル、ね、ねえ、モンちゃんは何処に行ったの……?」

「え……?……ああーーっ!いねえーーっ!!」

油断していた。自分の肩の上に乗っている物ばかりと思っていた
モンが、いつの間にかいなくなっていた……。恐らく、話を聞いて
いる間、退屈だったのだろうが、そーっと、何処かへ逃走して
しまったらしい……。

「……あんの、クソモンーーっ!!」

(だからデブ座布団には油断しちゃ駄目なんだってッ!何やってんのッ!)

「大丈夫だよ、この里から何処にも行かない筈だから……」

「急いでモンちゃんを探しましょ!」

「……見つけたらデコピンの刑だあーーっ!!」

「おーい、おーい、兄ちゃん達ーーっ!」

「ん?あ、あれ……?」

「……さっきのおじさんだわ」

トリオの処に、凄い勢いで血相変えて走って来る人物。先程、
重そうな袋を担いで何処かへと歩いて行ったガタイのいい
おっさんだった。何やら凄く慌てている……。

「ど、どうかしましたか?」

「……どうかしましたかじゃねえよ、金髪の兄ちゃん!た、大変なんだよ!」

「はあ……」

最初に詰め寄られ、そう言われても……と、困るアルベルト。だが、
おっさんが慌てている原因が直ぐに自分達の所為だと理解する事になる。

「おっさん、ちゃんと話してくれよ、何かあったのか?」

「……何かあったのかじゃねえよ!あ、あの、落花生みたいな形の、
座布団の様な変な人形はあんたらの玩具なんだろう!?あああ、
外の世界の最近の玩具は!変な機能ばっかり!全く、碌なモン
じゃねえや!!」

おっさんは今度は次にジャミルに詰め寄る。落花生みたいな形、
座布団、碌なモン、変な人形……、碌なモン、モン、モン、モン……、
……モォ~ンっ!!

「わっ、ジャミル、どうしたのっ!?」

「落ち着いてよ、ジャミル!」

急にジャミ公が発狂しだした為、慌てるアルベルトとアイシャ。だが、
おっさんは構わずそのまま話を続けた。

「そう!そうだよ、モンモン喋る変な人形が……、主様に捧げる
大事な地酒を舐めちまったんだよっ!……どーしてくれるっ!!」

「「えええーーっ!?」」

モンモン喋る、その一言で、アルベルトもアイシャも直ぐに理解。
どうやら此処では酒を作っているらしいが、モンがそのお酒を
味見してしまったらしい……、との事。突然消えたモンは、酒臭い
おっさんの後に付いて行き、おいたを犯したのである。

「そうか、あの野郎……、よし、後でデコピン今回は連打で20発だっ!」

「ジャミル、そんな場合じゃないよ!あの、それで、その人形は
今どうしてますか!?」

「ご迷惑をお掛けしてしまって、もうっ、モンちゃんたらっ!」

「ああ、そのまま地下の仕事現場にいるよ、今、酔って暴れて、屁を
飛ばしまくって、眠っちまってるよ、……舐めてくれた分はほんの少し
だから、今回はどうにかなる、あんな癖の悪い人形、屁も臭かったけど、
とにかく連れて帰ってくれよ!!それだけでいいから!!」

「「……申し訳ありませんでしたっ!!」」

トリオは声を合わせ、おっさんに謝罪。ジャミ公まで敬語を使い……。
モンが舐めた分はどうにか作り直せるので、とにかく連れて
帰ってくれるだけでいいとの有り難い対応だった。おっさんの
後に付いていき、急いで地下にある酒造現場に直行すると、真っ赤な
顔をしたモンが本当に伸びて倒れていた……。

「……あ、ああ、君たち、この人形の持ち主かい?来てくれたんだね、
助かったよ、これでやっと仕事に集中出来る……」

「邪魔されて困ってたんだぜ、やれやれ……」

「ふにゃらら~……、モン……」

「……見つけたぞっ、モンっ、テメこの野郎!!よーし、デコピン
してやるっ!!」

「ジャミルっ!……み、皆さん、お忙しい中本当に申し訳
ありませんでした!後で必ず、改めてまた謝罪に参ります、
本当に、何とお詫びしたら良いか……」

今度はアルベルトが代表でペコペコ頭を下げ捲る……。続いて
アイシャも……。しょうがないのでジャミ公も。これでは
ペコちゃん軍団である……。

「はあ、いいからいいから、さっさと帰んな!仕事が遅れちまうよ!
さあ、消えてくれ!時間がねえんだから、……それだけで有り難いんだよ!」

「……ういっ!?」

ジャミルは一番ぶち切れているらしい、おっさんを見た。おっさんは
体中びしょびしょだった。どうやら、暴れるモンを捕まえようとした際、
おしっこを掛けられたらしく……。トリオは今は、これ以上どう
謝ったらいいのか分からないので、今は大人しく引き下がるしか
なかった。一度、モンを連れてスゴスゴ宿屋へ……。

「えええー!?モンが!?」

「そうなのヨ、もうー、相変わらずバカで困るっ、コイツッ!今度から
デブ落花生だよっ!」

宿屋では既に目を覚ましていたダウドが皆の話を聞き仰天。サンディは
寝ているモンのボテ腹をていっと蹴飛ばした。

「もう疲れた、俺らも今日は外に出るのは止めだ、……な?」

「うん……」

「ええ……」

力なく返事するアルベルトとアイシャ。気疲れもあったらしく
ふにゃふにゃだった。

「でも、休む事も大事だよお、丁度もうすぐ夕ご飯だって、食べて
元気だそうよお、ね?」

「ご飯……、お腹すいたモン……」

「だよな、腹へっちまったよな……」

「そうね、此処では何が食べられるのかしらね……」

「楽しみだね……」

「お魚、食べたいんだモン……」

「……いいいいっ!?」

「……モンっ!?」

皆は一斉に、モンの方を見る。モンがちゃんとした寝言を喋っている。
言葉を失っている筈のモンが……。まさか、まさか、奇跡が起きて
言葉を取り戻したのかと……。

「ウッそ、マ、マジ……?デブ落花生が……」

「モンちゃん、私よ、お願い、アイシャって呼んでみて?ねえ……」

「モン、オイラもいるよ、ね、モン、起きてよお~……」

「ちんぽこモォ~ン……」

「あ、あはははっ!は、反応したよおおーーっ!モンが、モンがあーっ!
やったあーっ!またお喋り出来る様になったんだあーっ!あはははーーっ!!」

「おい、ダウド、落ち着けや!けど、アル、これ一体どうなってんだ……?」

「うん……、余り考えにくい事だけど……、もしかしたら、モンが
舐めたって言うお酒の強い力なのかな……、でも、はっきりした事は
僕にもよく……」

「ホントッ、よく分かんネー生物よネ、デブ落花生ってサ!」

「何でもいいじゃん!モンがまた喋れる様になったのならさ!オイラ
嬉しいよおー!」

「そうね、モンちゃん、目を覚ましたら……、またお喋り出来る様に
なってるって、きっと喜ぶわね!」

「……ま、今回だけはデコピン免除してやっか、さ、俺らも
飯食い行こうぜ……」

皆は喜びに満ちあふれ、ワクワクしながら一晩モンを見守る。明日の
朝にはまたきっと、モンと一緒にお喋りが出来るのだろうと、だが、
その喜びもたった一晩で消えるのである。

「モン、モォ~ン……」

「モン、どうして……」

「モンちゃん……」

夜が明け、モンも目を覚ました。だが、モンは再び言葉を失っていた。
特にダウドは愕然とし、肩を落とす……。

「酔いが覚めたからかな、やっぱり、一時的な物だったのかな、モン……」

「モォ~ン……?」

アルベルトの言葉にモンは不思議そうに首を傾げる。何せ、悪酔いした後、
モン自身もその後の事は覚えていないであろう、寝言で言葉を発した事も。
ジャミルはこのまま黙っていた方がいいだろうと思い。だが、ダウドは……。

「ね、ねえ、その……、お酒をもう一度飲ませれば……!」

「バカ言うなよっ、んな事出来るワケねえだろうがよっ!信じるしか
ねえんだ、いつかまた、モン自身が自分の力で言葉を本当に取り戻せる
日をさ……」

「……分かってるよお、うん、そうだね……」

「ダウド……、元気出しましょ?私達がしょげた顔してたら、モンちゃんも
心配しちゃうわ
……」

「うん……」

ダウドは拳でぐしぐし乱暴に自分の瞼を擦る。アイシャはそんなダウドを
優しく慰める。だが、本当にまたそんな奇跡が起きるのだろうか、自分で
呟いた言葉にジャミルは本当に奇跡を夢見るのだった……。

「さてと、今日は真面目に情報収集をだな……」

「うん、いつもふざけてるからね、たまには真面目にならないと
だよね……」

〔げんこつ〕

「……この里で後、グレイナルの詳しい話が聞けそうなのは長の家って
話だったな、行ってみるか……」

「……いだいよおおーーっ!ジャミルのアホーーっ!!」

だから、黙ってればいいのにと、泣き喚くダウドを見ながら
アルベルトは苦笑。聞くところによると、この里の長が住んで
いる家は、この層の上らしい。と、言う事は、更に上に
見えていた階段を昇って行けと言う事。4人はランニングを
しながら状態で、ヒーコラ階段を上がる。

「……ま、またきっとこれで、私、痩せられるわー!」

「きづいよおおーーっ!!」

「あたた、ま、また腰が……、うう~……」

燃えるダイエッター娘、泣き喚くヘタレ、そして、……爺さんな18歳。

(あー、ラクチンですこと~、ホーント、専属のアッシー君て助かるう~!)

「♪シャー!」

……普段一向にジャミルの中から出ず、快適に移動するガングロ、
ダウドの頭の上で寛いでいる落花生。……こいつらもう纏めて
デコピンしたろうかと思う状況だった。だが、ジャミルも最近、
デコピンのしすぎで少々指が痛んでいるのも事実……。

「アル、大分前の話でさあ、買ったパンチングマシーン、アレ、
貸してくれよ……」

「は?何言ってんの、あれはあの話だけだよ、それに君専用仕置き装置で
買ったんだから駄目だよ、貸さないよ!」

「ケチ……ってか、何が専用仕置き装置だっつーの!」

アルベルトに口を尖らせるジャミ公。いいもん、やっぱり俺はこの指と
拳で勝負すっから!と、開き直った。……かくして里の住人から長の家の
場所を教えて貰い、高台の方にある家の前に行くと、老婆が一人、
ウロチョロしていた。

「こんちは……」

「おや?何用ですかな?余り此処では見かけない顔の様じゃが……」

「実は……」

ジャミルは自分達は黒い竜、そして帝国の暴挙を止める為、下界から
グレイナルの力を借りに来た事を老婆に打ち明けた。

「グレイナルについて、何か詳しい話が聞けたらと思ってさ、この里の
長さんを訪ねるといいって……」

「そうですか、下界からわざわざ……、我が家は代々グレイナル様の
お世話を務める一族なのじゃ、それ故里の長を任されておる、ドミールの
民はグレイナル様を敬う者達の集ですからのう……」

「頼むよ、何か少しの情報でもいいんだけど……」

「ふむ、では、此方へ参られよ……」

4人は応接間へと通され、暫くの間待つ様に老婆から言われた。
中にいたメイドさんからも話を聞く事が出来た。魔帝国ガナンは
これまで如何に酷い行いをしてきたか、伝える伝承は幾つも
残っているが、だが、帝国がどの様にして滅んだのかは謎で
あると。やがて、頭の禿げた老人が応接間に姿を現した。

「私はこの里の長を務めておる者ですが……、こんな山奥にわざわざ
一体何用ですかな?」

「……うん、さっき婆さんにも伝えたんだけど……」

「何と、黒い竜を追う為、英雄グレイナルに助力を求めに来たと!?
そんなバカな、闇竜バルボロスは300年前の戦いでグレイナル様の
力により、倒されたのですぞ!しかし、わざわざそんな嘘をつく為
だけに危険を冒しこの地に訪れたとも思えませんの、分かりました、
ならばグレイナル様にお会いになるといい、無駄足かとは思いますが、
どうせお止めした処で聞くますまい、グレイナル様はこのドミール
火山の山頂にいらっしゃる、この家を出て、すぐ上に洞穴があります、
其所からグレイナル様の元へと行ける筈です、では失礼……」

老人はいそいそと又応接間を離れる。……大分機嫌が悪い様である。

「はあ、どうしてこう、またかあ~、な~んか、態度悪いよねえ~!」

「ダウド、仕方ないだろ、僕らはあくまで余所者なんだから……」

「ま、会っても良いって素直に言ってくれただけマシだよ、行こうぜ……」

「……ウシャウシャブーー!!」

「モンちゃんも、駄目よ……」

4人は屋敷を出ようとすると、屋敷世話係の婆さんが近づいて来た。

「ほう、お客人はグレイナル様に会いに行くのかね、ならば伝えて下され、
すっかりご無沙汰しておりますが、お世話役家のババは元気ですと、
……いや、年寄りだからと甘えてはいけませんの、何れは自分で会いに
いかねば、では……」

婆さんも再び家の中に姿を消す。取りあえず、家の直ぐ近くに
あると言う洞窟に行ってみる事にした。と、サンディが妖精モードで飛び出す。

「ふー、ね、前から思ってたんですケド、グレイナルって300年前の
人なんでしょ?会いに行けって言われたケドさ、そんな人が何で今も
生きてんのヨ、……もしかして、ゾンビ?……ゴースト?」

「……きゃー!いやーっ!!バ、バイオハザードっ!!」

「ガングロ、ヘタレがうるせーから突くなよ、頼むから……、ま、会って
みねえ事にはな、だから行くんだ、さて、どんな英雄さんなんだか……」

「神様みたいな感じの人なのかしら……」

して、洞窟の前には見張り番。長からグレイナルに会いに行く様
言われたと言付けると、見張り番の男は直ぐにどいてくれた。

「此処、山頂への道は溶岩が吹き出し、魔物も数多く出る危険な場所、
……気を付けて道中行かれよ……」

「いーやーでーす……、……きゃああーーーっ!!」

「うるさいっ!お黙りっ!抵抗しても無駄っ!さあ行くんだってのっ!!」

「……極悪非道の鬼ィィィーーっ!!」

やはり抵抗するヘタレではあったが、ジャミルとアルベルトに連行され、
モンにアゴでアゴアゴ突かれ中へと連れて行かれた。その後を洞窟へと
付いて入るアイシャ。見ていた見張り番はメンバーの中で一人
泣き喚いていたオールバックの少年を気の毒に思うが、どうか
無事でいてくれよとしか思う事が出来ず。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 59

zoku勇者 ドラクエⅨ編 59

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-04-27

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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