zoku勇者 ドラクエⅨ編 57

全員集合!

「アルベルトー、アルベルトーっ!ネー、ダイジョウブっ!?」

「……ハア、ゲ、ゲホッ……、僕は意外と頑丈だから何とか……、
昔、一度、姉さんにも滝壺に落とされた事もあるし……」

「そ、そうなんだ、……アンタん家も色々複雑なんだね……」

サンディは川から這い上がって来たアルベルトの無事の姿を見て
一安心するが、滝に落とすって、一体どう言う修行で、しかも
スパルタ!?と、驚きを隠せず……。

「僕の事よりも、モンが……、大分水を飲んでる、は、早く……、
水を吐き出させないと……」

「アタシに任せなさいッ!ちょっとあらっポーカモだけどっ、
エイッ!!」

「……ちょっ!サンディっ!!ああーーっ!?」

サンディはモンの腹まで勢いを付け、一直線に飛ぶと、ぽっこりお腹に
体当たりダイブ。モンは口からぴゅーっと、水を吐き出したのである……。

「モ、モォ~ン……、げっ、ふ……」

「モン……、よ、良かった……、やり方は荒っぽいけど、これでモンは
大丈夫だ、サンディ、有り難う……」

「ふふん!後で又、蜂蜜カクテルいただこーかなッ!それよりも、
この川ってアーレー山の近くッポイよ!急げば、まだジャミ公達
助けられるかもよ!?」

「ああ、急ごう……、う、ううっ……」

立ち上がろうとしたアルベルト。だが、傷だらけの身体で滝に落ちたり、
相当無理をしていた為、クラクラし、倒れそうになった……。

「や、やっぱダメだよっ!アンタまだ、傷治ってないんだしっ!
フラフラじゃん!」

「サンディ、此処でモタモタしていたら、何時又イザヤールが
襲撃してくるか……、一刻も早く、ジャミル達と合流しなくては……」

「分かったわよ、でも、マジであんま無茶しないでよネっ!」

「大丈夫、行こう……」

アルベルトはモンを背中に背負うと、目の前に聳え立つアーレー山を
見上げる。どうか、間に合う様に、今度こそ、必ず皆に会える事をどうか
願いながら……。そして、ジャミル達も、襲い掛って来るボストロール
集団を等々最後の1匹になるまで追い詰めていた。だが、体力の無い
ジャミル達は既にMPも尽き掛け、気力は限界に達していた……。

「……痛っ!きゃ、きゃあーーっ!?」

「っ、このデブっ!アイシャ、無理すんな!……下がってろっ!」

「駄目よっ、ジャミルだって、も、もう……」

「俺は平気だってのっ!……あと1匹だ、あと1匹なんだ、けど……」

ジャミルはボストロールの前に立ち塞がり、必死でアイシャを
庇いながら、ヴァルキリーソードを構える。だが、ジャミルも
既に傷だらけであり、息を切らしていた。回復担当のダウドは
初っぱなからやられており、それでも、薬草とホイミを使い分け
ながら、必死に此処まで頑張って来た……。ダメージは相当
与えたと言っても、ボストロールはいつ痛恨の一撃を出して
来るか分からない。……そして……。

「あ、あっ!?やべえっ、剣が折れやがったっ!ち、畜生……」

「ゲヘ……」

ボストロールは折れたヴァルキリーソードを抱え、滝の様な汗を掻いて
いるジャミルを見てニタニタと嫌らしい笑みを浮かべている。直後、
棍棒をジャミルに向け思い切り振り下ろした……。

「……うわあああーーーっ!!」

「ジャミルーーっ!も、もう……、絶対に許さないんだからっ!お願いっ、
奇跡よ、起きてーーっ!!」

ジャミルはボストロールに崖っぷちまで吹っ飛ばされ、その場には等々
アイシャ1人だけに……。それでも諦めたくなかった。絶対に……。
アイシャは必死で自身のテンジョンケージを高め、ミラクルゾーンを
繰り出そうとするが、波長が乱れどうしても上手く出来ず……。
ボストロールは遂にアイシャの目の前まで迫り……。

「……嫌、諦めたくない、だって、私達……」

「ア、 アイシャ……、ち、畜……生……」

「ウガアーーーーッ!!」

「……うっ、!!」

アイシャはボストロールから攻撃を受けるのを覚悟し、硬く目を瞑り、
ぎゅっと唇を噛んだ。

「……そうだよ、アイシャ……、諦めちゃ駄目だ……」

「えっ?こ、この声……、まさか、まさかっ!?」

一瞬聞えて来た声にアイシャの目が涙目になった。そして、倒れて
意識を失い掛けたジャミルもうっすらと目を開いた……。

(まさか……、アルなのか……?)

「そうだよっ!僕達は……しつこいんだよーーっ!!」

「グガアーーーッ!?」

ボストロールに渾身の一撃を込め、斬り掛かって行った金髪の青年。
アルベルトだった……。

「……アルーーっ!!」

「アイシャ、話したい事は沢山あるけど、今はコイツを倒さなくては!
大丈夫、此処は僕に任せて!まだ僕のMPは残ってるから!」

「アル、でも……、あっ、モンちゃん!」

アイシャはボロボロのアルベルトの姿を見て、胸を痛めるが、もう
戦う事が出来ない自分達にはアルベルトに全ての希望を託すしか
出来なかった……。アルベルトはアイシャに眠ったままのモンを渡す。

(うう、……アルの野郎……、む、無理すんなってのっ、バカ野郎……)

「アイシャ、もー、大変だったんだからっ!」

「サンディっ!も、もしかして、サンディがアルを連れて来てくれたの!?」

「だから話すと長くなるんだって!此処は素直にアルベルトに任せるしか
出来ないっしょ!アタシは暫く隠れてるからネッ!」

サンディは発光体になると姿を消した。アイシャはモンを抱き締めながら、
静かにアルベルトの勝利を願うのだった……。

(神様、どうかお願い……、アルを守って……)

「ウガアーーーーッ!!」

怒り心頭のボストロールは今度はアルベルト目掛け突進し、棍棒を
振り下ろそうとした。だが、アルベルトはひょいっと避けて交わす。
最後に残ったボストロールが特大級の肥満体過ぎの所為もあったが……。

「……弓を使うのは始めてだ、でも、やってみよう!」

アルベルトは武器を剣から弓へと持替える。そしてボストロールへと
矛先を向ける。この一撃に全てを込め、ニードルショットを発射。見事に
ボストロールの脳転に命中し、貫いた。ボストロールは地響きを立て、
地面に倒れ、絶命した……。

「や、やった、倒し……」

「……アルううーーっ!!」

アルベルトの身体が喜びで震える……。同時に、アイシャが泣きながら
アルベルトに飛び付いて来たのだった……。

「アイシャ……」

「良かった、本当に……、わ、私達、ずっと、ずっと……、
心配してたんだよ……、ひっく、ふぇ、ふぇえ~……、ほ、
本当に良かった……、良かったよう~……」

「有り難う、アイシャ、ただい……」

「駄目っ!それは皆の前でちゃんと言うのっ!まずはジャミルと
ダウドをどうにか起こさないとっ!えーと、えーとっ、……んーとっ!」

アイシャは取りあえず、キメラの翼を使い、戻って来てくれたアルベルト、
動けないジャミル、ダウド、モン+サンディを連れ、急いでナザムへと
帰還するのだった……。

……それから……。ナザムへと帰省したジャミル達。村長は又性懲りも
無く戻って来たジャミル達を見るなり困惑。だが、傷だらけ、ズタボロの
姿を見て、みっともない、早く部屋に戻れと激怒……。

「全く、奴ら戻って来る度、余所者が増えていくのは一体どう言う事だっ!
……ふざけおってからに……」

「でも、又新しいおにいちゃんに会えて、ボクはうれしいなあ~!」

「……ティル、お前はもう寝る時間だろう、早く部屋にとっとと戻らんか!」

「はぁ~い、お休みなさい、村長さん……」

「ふん……、おや?」

「こんな遅くにすまんの、村長さんはおるかの……?」

村長はティルを部屋へ押し込めた後、時計を見た。時刻は22時を回ろうと
していたが、ドアをノックする音。村長は仕方なしに玄関のドアを開けた。

「何だ、マル爺さんか、こんな遅くに年寄りがフラフラ出歩くな……」

「すまんのう、これは儂等からじゃ、大した物ではないが、あの子達に
食べさせてやっておくれ、どうか早く元気になる様に伝えておくれ……」

マル爺さんが村長に渡したのは、籠いっぱいの、元気が出る美味しそうな
果物。だが、村長は怪訝な顔をする……。

「わざわざ気を遣う必要もないだろう、奴らは好きでやった事だ、それに、
アンタの息子を送り届けた後、又山まで戻って行ったと言うでは無いか、
何を考えているのか全く分からん……」

「……それは、あの子達の友達が先に山に登って行ったのを知って
追いかけたんじゃろう?嫁も、息子も、儂も……、あの子らには本当に
感謝しておる、大怪我をしたと聞いて、儂ら心配でのう……、のう、村長、
あんたも本当はもう分かっているんではないか?あの子達は悪い子では
ないと言う事を……」

「マル爺、続きは明日だ、早く戻った方が良いぞ、熱が引いたとは言え、
まだ孫も油断出来ぬ状態なのであろう……」

「分かったわい、では、儂はこれで、どうかその果物を皆に食べさせて
やっておくれのう……」

マル爺はそれだけ伝えると、ヨロヨロ、暗い夜道を歩いて家へと
戻って行った。

「ふん、最近は爺さんまで、おかしな物だ……」

そして、部屋で休ませて貰っている4人組は……。久々の再会で
大騒ぎであった……。

「……びえーー!びえーーっ!……びいええーーっ!!」

「ダウド、そんなに大きな声で泣かないでくれよ、頼むよ……」

「そうだよっ、まーたあのうるせー村長が部屋に傾れ込んで来んぞっ!
……あいててて、す、少し動いたら、ま、また傷が……」

「ジャミルったらっ!じっとしてなきゃ駄目でしょっ!ダウドもよっ!」

「ううーーっ、だ、だって、嬉しいんだもん、当たり前じゃないかあーーっ!
め、目が覚めたら……、アルもちゃんといるし、うううーーっ!オイラ、
オイラ……」

「そうよね、嬉しいわよね、私も分かるわ、ダウドの気持ち……、凄く
大変だったけど、こうして又皆で会えたんだもの、ふぇ、ふぇっ……」

「……びええーーーっ!!」

ダウドも……、アイシャまで、4人揃っての再会に涙しだした。ジャミ公は
変顔で只管泣き喚いているダウドに呆れてはいたものの、本音はこうして
また4人揃って巡り会えた事が只管嬉しかった。

「たくモー、アンタらオーバースギっ!はあ……」

「サンディも本当に有り難う、君が来てくれなかったら、僕もモンも本当に
どうなっていたか分からなかった、……有り難う……」

「そうよ、サンディ、あなたがモンちゃんを追ってくれたから、アルにも
会えたんだわ、本当にありがとうね!」

「ガングロ、サンキューな!」

「ウッ、や、ヤダ、やめてよッ!な、な~んか、カユクなってきちゃった
じゃん!あーやだやだッ!アタシ、もう寝るッ!!」

サンディはそう言いながら姿を消すが、いつもの照れを誤魔化す為の
ツンデレである。

「うう~、これで、モ、モンが……、いつも通り……、オイラ達と……、
あ、ご、ごめん……」

「ダウド……」

アイシャは言葉を止めてしまったダウドの方を見る。ダウドは眠っている
モンのお腹を切なそうに突いた。言葉を喋れた時は、あれ程やられて
困っていた下ネタ叩きも、もう最近は控えめでやらなくなってしまった。
ダウドはそんなモンの様子を見ていて、モンと会話が出来なくなって
しまった現実が辛くて仕方がないのである……。

「そうか、もうモンは言葉を……、それでも……、言葉を伝えられ
ない分、自分が頑張ろうと……、僕を助けに1人で追って来て
くれたんだね、モン……、有り難う……」

「ぷーぷー、モンモン、ぷうぷう、ふにゃ……」

アルベルトもモンのお腹にそっと触れる。……と、同時に、勢いよく、
モンはいつも通り寝屁を放いた。

「……うん、大丈夫だ、モンはモンだよ、変らないさ、これからも……」

「ああ、俺ら、ずっと仲間さ、ダチだよっ!な!?」

「そうだね、ジャミル!」

「そうよっ!これからも私達、4人皆で力を併せて頑張りましょっ!
……例え大天使様だって、絶対許せないわ、モンちゃんを傷つけて……」

「だな、俺ももう迷わねえ、俺らを引き離そうとしたイザヤールの
野郎はよ、何考えてんだか知らねえけど、又邪魔しに来る様なら、
その時はこっちも全力で相手させて貰うさ……」

ジャミルは折れたヴァルキリーソードを見つめながら唇を噛み締めた。
イザヤールの本当の真意は今はジャミル達には分からない。理解したくも
なかった。だが又4人、こうして無事に再会する事が出来た。今度こそ
アイツの企みには負けねえと強く思いを馳せるのだった……。

「……うん、そうだね、オイラも頑張るよ、でも、やっぱりヘタレる
かも知れない、いや、ヘタレないとオイラじゃないから、だから
ヘタレるよ、許して……、だって、ヘタレじゃないとオイラじゃ
ないから……」

ぴんぴんデコピン×久々SP

「……いだああーーーっ!ケガしてても相変わらず手先は器用だねえーーっ!
バカジャミルーーっ!!」

「やっぱりコレやらないとな、気持ちいいなあ……、誰がバカだあーーっ!!」

「ふ、……あははははっ!」

「……ふぇ?」

「ど、どうしたの、アル……」

「おいおい、イザヤールに何かやられたんじゃねえだろうな……」

ジャミル達は突然大声で笑い出したアルベルトにきょとん……。普段、
余り大声を出して笑わない彼なので、非常に珍しかったのか……。

「な、何、僕だってたまには……、く、くくく、やっぱり安心するんだ、
この変な光景を見てるとさ、いつも通りだなって、ほっとしたんだ……」

「そうだね、アル……」

「ああ……、けど、変な光景で悪かったなっ!!」

「ふんだっ、もーオイラ疲れたから寝ますっ!お休みーーっ!!」

ダウドは唇を突き出し、3の形にするとベッドにごろん。そのまま
横を向く。だが、皆に見られない様に伏せている顔は嬉しくて、
嬉しくて笑みが溢れて仕方が無いのだった。

「たく、どうしようもねえな、このヘタレははよ……」

「ふふっ、じゃあ、私達も寝ようか?身体休めないとよ、アルもね!」

「うん、そうさせて貰おうか、お休み……」

「おう、また明日な……」

ダウドに続き、ジャミル達もベッドに入る。その夜、4人は久しぶりに
ゆっくりと、床に付けた様であった。大切な友達が側にいてくれる。
その何気ない幸せを心から感じる事が出来たのである。

「……う、うう~……」

そして、ダウドは夜中に変な夢を見て魘された。モンがお喋り機能付きの
ぬいぐるみになって喋っている夢だった……。

お喋りモンチャン、新発売! お腹を押すとおならをするよ!言葉を覚えて
沢山お喋り!お腹が空くと噛み付くよ!沢山遊んでご機嫌モードになると
頭の上でちんぽこ太鼓を叩いてくれるよ!更に、とっても嬉しいと凄く
でっかい臭いおならもしてくれるよ!

「……お、おならばっかりじゃないかあ~……、うう~……」

翌朝。怪我の痛みもどうにか内場になり、4人揃い、今度こそ新たな
場所へと動き出さねばならなかった。イザヤールの暴挙を止める為、
彼が言っていた帝国……が、新たな脅威になるのだとしたら……。が、
4人は早朝から村長に、すぐ食堂に来る様にと言われていたのだった。

「あんの~……」

「座れ、そして早くこれを食え、マル爺さんに仕方なしに頼まれてな、
昨日の礼だそうだ、お前達に食べさせる様にと、食ったら何処へでも
早く行け、何時までも居座りおって、余所者共が……」

ジャミルは相変わらずの、つっけんどんのうんち君村長にカチンと
来るが、それでも、戻って来る度、何のかんので、村長は結局は
ジャミル達の世話をしてくれる。それは皆、とても感謝しているの
だった。

「でも、美味しそうな果物ね、私、お腹空いちゃった!」

「モンモン!」

「そうね、モンちゃんもね、お腹空いてるわよね!」

「モオーン!シャーシャー!」

笑い合うアイシャとモン。朝、目を覚ましたモンの前にいた皆の姿を
見て、モンは大喜びで皆に飛び付いた。そして今に至り、忽ち元気に
なったのだった。

「あの、村長さん、こんなに沢山お持て成しをして頂いて本当に
有り難うございます、それに、僕の友人達がお世話になりまして、
心から感謝致します……」

「……お前、一つ聞いてもいいか……?」

「はい……?」

「どうもあんたはこの連中とは系等が違う様だが……、……本当に
知り合いなのか?まあ良い、余所者は余所者だ、それにこの果物は
儂が用意した物ではない、礼なら後でマル爺の処に行け……」

「はい、心得ております故……」

村長は先に此処に来ていたジャミル達とは明らかに系統が異なる
真面目なアルベルトに少々面食らっていたが、あくまで、誰で
あろうと余所者は余所者と言う考えを捨てず。ジャミルは、んなに
この糞村長に気ィ遣うこたぁねえんだよと、ブスくれた。

「とにかく、早く食ってしまえ、それだけだ……」

村長はそう言うと食堂から姿を消す。ジャミ公も久々に腹が減って
来たので、さっさと頂いてしまおうと思った。が、村長が食堂を出て
行った後、又誰かが食堂にひょっこり顔を出す。ティルだった。

「よう、お早う!」

「えへへ、お早うございます……、来ちゃった!」

「お早う、ティルもこっちに来て、一緒に果物食べましょう!」

「おいでよー!」

「モンモン!」

「じゃ、お邪魔しまーす!」

ティルはお誘いを受け、ジャミル達と一緒にちゃっかりと
テーブルに着いた。

「やあ、君がティルだね?昨日はちゃんと挨拶出来なくて……、
改めまして、僕はアルベルトです、ジャミル達が沢山お世話に
なったみたいで、本当に有り難う……」

「じゃあ、ボクも……、こんにちは、アルベルトおにいさん、ボク、
ティルです、ボクの方こそ、おにいちゃんとおねえちゃんが出来た
みたいで、すっごく嬉しいんだ!

「そうかそうか、良きに計らえ、ほれ、食え食え!食うがよいぞ!んー!
うめえなあ!」

ジャミルは相変わらず遠慮せず、ティルにも食べる様に勧めてはいたが、
いつもの軽い調子で、一足早く、テーブルの上の果物の一つ、リンゴに
手を出し口一杯に詰め込んでいた。……そんなジャミ公を見、アルベルトは
久々にスリッパを出したい衝動に駆られ……。

「もうっ、ジャミルったらっ!みっともないんだからっ!」

「ウシャシャのシャー!」

「ま、こんな感じ、いつも通りでしょ……、オイラはオイラで勝手に
頂くから……」

アイシャは怒り、ダウドはマイペース。……一時、バラバラに引き離され、
数日。やっと、皆再会し、徐々にいつものアホ4人組に戻りつつあった。

「でも、ジャミルさん達、……もう行っちゃうん……だよね……」

「ティル……」

ティルが言葉を溢し、一瞬淋しそうになった。漸く4人揃い、
ジャミル達もそろそろこの村を立たなければならない。そうなれば、
又ティルは独りぼっちになってしまうのではないかと言う事を
ジャミルは心配していた……。だが、ティルは……。

「大丈夫だよ、ボクね、此処に来た時は、寂しくて、本当に
辛かったけど……、でも、この村でも頑張ろうって決めたんだ、
友達もこれから一杯沢山作ろうと思うんだ、村の皆と仲良くするよ、
だから……、ボク、もう大丈夫だよ、心配しないで……」

「ティル……、そうか、そうだよな……、強くなったんだな、お前も……」

「うん……」

ティルはジャミルの顔をじっと見つめる。最初に会った時よりも、
ティルは随分と大人の顔になった。そう、ジャミルには見えたのである。

「偉いわ、ティル……、私達、ずっと応援してるからね……」

「えへ、有り難う、アイシャさん……、おっと!」

「モォ~ン!」

モンはティルに飛び付き、スリスリ。そんなモンの姿を見て、
ティルは優しくモンに触れるのだった。

「ねえ、アイシャさん、モンも応援してくれてるのかな?有り難う!」

「ええ、きっと、頑張れ!って、言ってくれてるのよ!」

「うんうん、ティル、えらいよお~、其処のリンゴむしゃむしゃ
むさぼり食ってる、ハムスターみたいなジャミ公と違って……、
あたっ!……なんだよおお!」

「るせーっ!この糞ヘタレっ!!オメーこそいい加減に精進しろっつーのっ!」

「……またっ!よしなさいったらっ!もうっ!2重にみっともないでしょっ!!」

「ウシャーーっ!」

アホとヘタレはティルがいるにも係わらず、また取っ組み合いを始めた。
モンはレフリーを買って出、そこら辺を飛び回る。……アルベルトは
顔が引き攣り、ヒクヒクと……。だが、ティルはそんなバカ光景を見て
ゲラゲラ笑い出す。……やれやれ、すっかりいつものチョーシよネと、
飛び出して来たサンディは呆れながら、ちゃっかり、テーブルの上の
酸っぱいレモンを一つ摘まんで口に入れたのだった。そして、その日の
夕方、4人組は村人達に挨拶をした後、旅立ち、ラテーナが待っていて
くれるであろう魔獣の洞窟の地へと向かったのである。

「やれやれ、今度こそやっと行ったか、もう戻っては来ないだろうな、
ふん、グレイナルに会うなどとそれこそ夢物語ではあるがな、奴らが
何処まで頑張れるか見物だな……」

村長は最後までこんな調子であったが、本音は……。ティルは
ジャミル達を見送った後、4人のこれからの旅の無事と成就を
その日、ずっと願っていたのだった。

「行ってらっしゃい……、ジャミルさん、ボクも、ずっとずっと皆の事、
応援してるよ……、どうか負けないで……」

「処でさ、俺も剣が折れちまったし、此処らで新しい装備品へ心機一転で
チェンジしとこうや、アルとダウドの分も買っておいたよ、こうやって
全員揃うまで待ってたのさ、……スゲー値は張ったけどさ、ほれ……」

「ジャミル、本当に……?」

「……ジャミルううう~」

「うん、私達、こうして4人揃うまで……、再会出来たら、皆でお披露目
しようねって……、ジャミルとね、本当にこの日が来て良かった……」

「有り難う、ジャミル、アイシャ……」

「ううう~、感激だよお~……」

ジャミルは袋に入れてずっと仕舞っておいた装備品をアルベルトとダウド、
2人に手渡した。受け取った2人は感激で胸が震えたが、直後……、揃って
声を揃えた……。

「「何これ……」」

※原始人の槍 ※野蛮人の剣

「……原始人はジャミルじゃないかあーーーっ!!」

「……うふふ、うふふ、うふ、うふ~ふ……♡(久しぶり)」

「あててて!冗談なんだからっ!すぐムキになるなっつーのっ!!」


「「なりますーーーっ!!」」


「まったくもう、またふざけるっ!調子に乗ってくるとすぐこうなんだから、
ジャミルはっ!!」

「モンモン……」

「ま、あのお調子モンのアホは死んでもなおらないわネ……」

ジャミ公は只管アルベルトとダウドに引っぱたかれた後、ちゃんと別の
装備品が入った袋を2人に渡したのだった。新しい自分の武器と同じ、
ドラゴンキラーをアルベルトに、ハルベルトをダウドに、アイシャには
氷の刃を。

「有り難う!引き続き毒針と混用で使い分けるわね!」

「ああ、お前らもな、……武器の値段のLVも滅茶苦茶上がってるしよ、
大事に使ってくれや、頼むぞ……」

「うん、大切に使うよ、ジャミル、ストックしておいてくれて感謝するよ……」

「オイラはハルベルトかあ~、……このネタ、大元のオイラ達の本編の
ゲームでも良く使われてたよね……」

そう言いながら、ダウドはハルベルトとアルベルトを交互に見比べた。

「……何で僕の方見るのっ!ほら、行こうよっ!時間が無いよっ!!」

アルベルトは吠えているが、手先はダウドの後頭部にしっかりスリッパを
押しつけていた。

新装備品お披露目会&装備状況 

ジャミル ドラゴンキラー 猛牛ヘルム ドラゴンメイル 銀のリスト 
忍びのズボン 静寂のブーツ 疾風のリング

アルベルト ドラゴンキラー 知力の兜 魔法の鎧 ドラゴンシールド 
剣士のズボン 鉄のグリーブ 

ダウド ハルベルト 知力の兜 水の羽衣 ドラゴンシールド 銀のリスト 
グリーンタイツ 巡礼のブーツ

アイシャ 氷の刃 知力の兜 水の羽衣 ドラゴンシールド 銀のリスト 
とんがりブーツ チェックのスカート 妖精の腕輪

「……あーははははっ!ま、また……、う、うしイイーーっ!……バ、
バッ○ァ○ーマン……」

ぴんぴんデコピン×10発

「ふんっ!ンモ~、んなモン、被らなくたって平気だってのっ!」

「あ、ああ、駄目じゃないかっ!ダウドはっ!!ジャミルが
外しちゃったよっ!!」

「……だってええ~、しゅ~ん、面白かったんだもん……」

「モォ~……ン、モォ~モン!」

「……あっ、モンちゃんが代わりに被っちゃってるわっ!」

「デブ座布団、まんまじゃん……」

ダウドに猛牛ヘルムをバカにされ、ふて腐れたジャミ公は、結局前まで
身に着けていた賊系フードを意地で再び装備したのだった……。そんな
こんなで揉めるのもいつも通り。一行はナザム村で場所の情報を聞いて
おいた封印の洞窟へ辿り着く……。

「いらっしゃい、待っていたわ、ジャミル……」

「ラテーナ……、随分と待たせちまって悪かったな……」

「いいえ……、前も言ったと思うけど、私にはもう実体もないし……、
何時までも待つ事は出来るわ、……あの人の行方を追い掛けながら……」

魔獣の洞窟の前にふっと姿を現したフードの女性の幽霊。ラテーナ。
此処へ彼女は様子を見に来ては消えたり、戻って来たりしながら、
ジャミル達を待っていたのである。

「其処にいるのかな?幽霊さんが……、ジャミルが話をしているんだね……」

「ええ、そうよ、この洞窟の封印を解いてくれるみたいなの……」

「何かオイラも助けて貰っちゃった、みたいな~?」

ラテーナの姿を見る事が出来ない仲間達は、その場でジャミルとラテーナの
やり取りが終わるまで待っている。

「……ん」

ジャミルは洞窟の入り口前の横にある立て札を見る。其処には
こう書かれている。像が見守りし地に光りの道を封す。決意無き
者は近寄るなかれ……。

「あなたが言っていたのは此処で間違いないのね、私は此処の
封印を開ける呪文を知っているから……、……我はナザムに
生まれし者、ドミールを目指す者に代わりて光の道を求める、
……我の祈りに答えよ……」

「あっ!?み、見てっ、洞窟の入り口を塞いでた壁が消えたわ!」

「本当だ、凄い……」

「こ、これで……、先に進めちゃうんだ、ほっとした様な、いや、
そうでない様な……」

「アンタ、結局さあ、先に進みたくないの?進みたいの?……どっちッ!?」

「シャーモン!」

「どっちもだよお……」

サンディとモンに突っ込まれ、相変わらずの汗汗ヘタレ。とにかくこれで
行く手を阻む障害は消えたワケで。後ろで見守っていた皆も一安心。

「……私が出来るのは此処まで……」

「ホント、スゲエや、ラテーナ、ありがと……、あ?も、もう行っちまうのか!?」

「私はあの人を探し続けなければならない、それが私の使命だから……」

ラテーナは再び姿を消す。ジャミルは、せめて礼ぐらい言わせてくれと
思うのだが……。もし、又会える時が来たら、その時こそはちゃんと彼女に
お礼を言うつもりだった。

「さ、お前らもいいか?愈々洞窟に入るぞ、んで、ドミールに向かうぜっ!」

「僕は又戻って来たばかりだから、正直、まだ話が良く分からない処も
あるけど、とにかく皆に付いて行くよ……」

「うん、前に進むしかないんだもの……、ね、ジャミルう、オイラ、
聞きたい事があるんだけど……」

「あん?」

……珍しく、ダウドが神妙な顔つきでジャミルの方を見ている。話したい事が
あるらしいが。

「……もしも……、イザヤールを倒せて、女神の果実も取り戻せたら……、
もう一度……」

「ダウド……、お前……」

ダウドは切なそうな顔でモンを見つめた。モンはきょとんとしている。
ジャミルには、ダウドの言いたい事はすぐ分かった。ダウドの気持ちも
理解している。それはダウドだけでなく、ジャミルもアルベルトも
アイシャも……、皆、同じだった……。

「残念だけど、もうそれは出来ねえ、無事、果実を取り戻せたとしても……、
本当はモンの事は、早く天使界に報告しなくちゃならなかったんだ、
イザヤールの言った通りさ、それは俺の罪だよ……、果実は全部、
天使界に献上しなくちゃなんねんだよ……、じゃ、ねえと、この世界と
天使界は……」

「……モォ~ン?」

「うん、分かってる、……ごめんよ、困らせる様な事言って……、さあ、
先に進もう!元気出さなくちゃね!」

ダウドは、女神の果実をもう一度モンに与えれば、奇跡が起こると
思ったのだった。もう一度、モンと会話がしたい、モンと喋れたのなら……。
ダウドの切ない願いは、ジャミル達、皆の想いだった……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 57

zoku勇者 ドラクエⅨ編 57

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-04-20

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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