zoku勇者 ドラクエⅨ編 55

悲しみの記憶・全ての始まり

自由になったティルは引き続き、封印の洞窟について、何か少しでも
分かればと調べてくれると言う。ジャミル達は村を歩き回り、希望の
泉で会った女性の願いの探し物を開始する事に……。

「そっか、その幽霊さんの探し物がこの村にあるのね、それにしても、
ティルったら、あんなに小さいのに凄いのね……」

「モンモン!」

「だな、俺、頭が上がんねえよ……」

(ホントホント、どっかのジャミ公も見習えってカンジー!?)

「……其処のガングロ、お黙り……」

「あ、すみませーんっ!」

丁度村人が通り掛かり、アイシャが呼び止める。ジャミルは
止めようとするが、村人はこれまでとは違い、普通の態度で
ジャミル達に接してくる……。

「何か用かね?」

「あの、この村の守護天使像って何処にあるんですか?」

「一応、まだ有るには有るが……、村の外れに残ってる筈だよ、
興味があるなら行ってごらん……」

「有り難うございます!ホラ、ジャミルもお礼言って!」

「あ、ああ、ども……」

「いいや、じゃあ……」

ジャミルは戸惑いながら教えてくれたおじさんに挨拶をすると、
おじさんはそのまま去って行った。それにしても、これまで
風当たりが悪かった村人達も明らかに態度を軟化させている
様に見受けられた。試しに店に寄ってみた処、普通に装備品を
見せてくれたので、新しい装備品を購入出来たのだった。

「アル達のも買えたね、……早く、元気な顔を見れるといいな……、
又、4人揃った時、皆で新しい装備お披露目しようね!」

「そうだな……」

もし、魔獣の洞窟の封印を解く方法が見つかり、先に進める様に
なったとしても、2人を探し出さなければどうにもならない……。
それでもどうにかそれまでに、無事にアルベルトとダウドに
巡り会える事を引き続き願うしかなかった。

(あ、あれじゃネ?って、チョーボロボロなんですケド!?)

村の片隅に、漸くそれらしき像を見つけたが、もうボロボロで
崩れており、原型を留めていない。

「とにかく調べてみようや、言われた通りなら、この像の足下に
何かが埋まってる筈なのさ……」

アイシャ、モンも加わり、お宝?発掘が開始される。だが、
足下を掘ってみても全然それらしき物は姿を見せず。手が
汚くなっただけだった。

(な、なにもないじゃん……、もしかして、アタシタチ、
騙されたッ!?)

「……素手じゃこれ以上は無理よ……」

「モン~……」

「あれ?あれっ?ジャミルさん達、何してるの?」

其処にティルが通り掛かる。これこれ、こうで……、と、
説明すると、ティルはふう~んと不思議そうな顔をした。

「そうなの、この守護天使様の足下に何かが埋まってるの、
でも、見つからないんだね、ふう~ん……」

ティルは暫く不思議そうな表情のままだったが、やがて何か
思いついた様にポンと手を打つ。

「あのね、ボク、ずっと思ってたんだけど、ボクが前にいた町だと、
守護天使様の像って目立つ処にあってみんなにとっても大事に
されてたよ、なのに、この村じゃこんなにほったらかしにされてさ、
おかしいと思わない?」

「……ん~、そうなのかな……」

「だからさ、本当はもっと目立つ処に置いてあったんじゃないのかな、
もっときれいでみんなが集まる場所で大事にされていたとボクは
思うんだ……、あ、あっ、ボク、村長さんに頼まれてお使いの途中
だったんだ!」

「偉いわね、ティル!」

「アイシャさん、そんなことないよう~、えへへ~、あ、あのね、
ボク、色々と調べてみたんだけど、やっぱり、魔獣の洞窟の封印を
解く方法は分からなかったよ……」

ティルは申し訳なそうにジャミル達に謝るが、ティルはジャミルに
とって、命の危機を救ってくれた大恩人である。これ以上無理は
頼めず、ジャミルはティルに気にしないでくれやと伝えた。

「うん、ありがとね、ジャミルさん達!じゃあ、ボク、お使いに行くね……」

「おう、またな……」

ティルはジャミル達に手を振りながら走って行く。その姿を見つめながら、
ジャミルは
思い出していた事があった。

「そうか別の場所か、成程……、この村で、主に人が集まる場所と言えば……」

速攻で思い出す。最初にこの村に流れ着いた時に、集会があった場所。
寄り合い所の役目も果たし、……自分が散々叩かれ、罵声を浴びた場所。
其処は……。

「……教会かな……」

(マ、こんなボロボロの像見ててもしゃ~ないモンネ、探してみましょ!)

一同、教会内部へ。其処で、教会の中でちらっと見た、あの時は
気にも留めていなかった、謎の石碑の場所へ……。石碑にはこう、
文字が刻んであった。

「「村に災いをもたらした忌まわしき者に代わりてこの碑を残す、
人に頼ってはならない、自らが知らぬ者、知らぬ力に……」」

「……ん?この石碑の下、ほんの少し隙間があるな……、光ってる……?」

恐る恐る隙間の下に手を入れてみると、何かに触れる。そっと
引っ張り出してみると……。

「首飾りだ……」

「綺麗ねえ~、本当に光ってるわ!」

「モンモン!」

(これがあの女の探しモン?じゃあ、早く届けにいこーよッ!)

どうやら、あの女性の探し物も無事手に入った様である。再び希望の
泉に向かおうと教会を出ると、お爺さんがジャミル達に話し掛けて来た。
確か前に見掛けた、黒竜の事で頭を抱えて怯えていたお爺さんだった。

「あんたら……」

「ハア……」

「あのドラゴンと戦うつもりなのか?」

「ま、立場上、そう言う事になんのかね……」

そう言いながらジャミルは若干ヤケクソ気味に返答する。お爺さんは
そんなジャミルの様子を見ながら、大きく息を吐いた。

「……もう一度言うが、この村はな、かつて滅び掛けた事が
あったと言う話は以前にも、お主にしたかの?余所者の男を
この村の女が連れ込んだ、その男の所為だと言われておる、
その男の背中には翼が生えていたと言う話もあったそうじゃ……、
何処までが本当の話なのか儂には分からんが……」

「……」

「……空の英雄グレイナルにこの事を伝えられればの、だが、
グレイナルのいる、ドミール火山に行くには、この村の西に有る、
底なしの谷……、竜の門を超えねばならん、昔は谷を越えられた
様じゃが、今は無理だのう……」

お爺さんは去って行く。ジャミルは何だか、希望の泉に現れた
女性が、先程のお爺さんの話と何か、結びついている様な、
そんな気がしたのだった……。

ジャミル達は女性の探し物を届ける為、再び希望の泉へ。
ジャミル達が泉に姿を見せると、フードの女性も再び泉の
縁に静かに姿を現した。

「……持って来たよ、アンタが探してるのはこの首飾りでいいのかい?」

「ああ、これは……、本当に持って来てくれたのね……」

ジャミルは女性へと首飾りを手渡すが、女性の姿が見えない
アイシャは、何だか気持ちが不安になって来る……。

「本当に、其処に女の人が来てるの?」

「うん、来てるよ、ま、アタシらは見守るしか出来ないんだよ、ネ?」

「……そうね……」

「モン~!」

アイシャを安心させる様にモンがアイシャの肩に乗る。アイシャは
すり寄ってくるモンの頭を優しく撫でる。……女性はジャミルが
渡した首飾りに愛おしそうに触れた。

「……私の名は、ラテーナ……」

「ラテーナ?それがあんたの名前……?」

「この首飾りはあの人が私にくれた大切な物、天使が来ると
光りを放つって言っていた、まさかと思ったけど、あなたも
あの人と同じ天使なのね、でも、私にとっての天使はあの人
だけなの……、ああ、見える、あの人の姿が……」

「……う、ううっ!?」

「ジャミ公ッ!?」

「ジャミルっ!!」

「モンーーっ!!」

突如、首飾りから眩い光がジャミルの方に向け、放たれたかと思うと、
ジャミルはその場に意識を失い、アイシャ達の声が響く中、ばったりと
倒れてしまったのだった……。


……何か、あの時と同じだ、世界樹の側で意識が無くなって……、
変な夢見て……、確か倒れた時と……、……?


「此処は……」

気がつくと、何故かアイシャもサンディもいない。モンも……。
何処かで見た、村の門の側に立っていた。だが、景色がおかしい。
まるで昔の写真の様なセピア色の風景の中に一人だけ、カラー色の
自分がいる……。しかも村人達は誰一人、ジャミルの方を見ていない。
もしかしたら見えていないのかも知れなかった……。

「あのさ、おい……」

「全く、あやつにも困った者じゃ……、あんな余所者など……」

ある老人がブツブツ言いながらジャミルの側を通って行く。だが、
やはりジャミルには気がついていない。そして又、場面が突然代わり……。

「……あなたは本当に天使なのね、驚いたわ……、このナザム村は
エルギオスって言う守護天使様に守られているって聞いたわ、まさか
本当に会えるなんて……」

「……」

部屋の中に……、ベッドで必死に金髪の青年を介護する女性の姿。
青年には背中に翼が生えており、ボロボロで酷い怪我だった……。

「あれは……、ラテーナ?それに、天使って……、ん?ナザム、
じゃあ此処は……、まさか此処、過去のナザム村だってのか?」

……どうやら、傷だらけの青年は守護天使だったらしい……。彼は
地上への墜落の際、頭部の光輪を失った事で、人間界でも姿が
見えてしまう様になったらしい。それはジャミルも同じだった。
そして、咄嗟に思い出す。天使界でタブーだと何度も聞かされた
名前、エルギオス……、もしかしたら、もしかしたら……、何か
この記憶で謎が解けるのか……?そう思っていると……。

「……て、帝国兵かしら……?」

突如、窓の外からガシャガシャと、けたたましく、嫌な
集団の足音がする……。ラテーナらしき女性は傷だらけの
天使の青年に優しく声を掛けた。

「大丈夫、あなたは此処にいて?来ちゃ駄目よ……!」

「……あ、おいっ、アンタっ!!」

ジャミルが必死に呼び止めようとするが、声が届くはずも無く……。
天使の青年も必死にラテーナに向かって声を張り上げている。
其処で再び場面が代わり、先程の村の入り口の門の処へと風景が
戻る。だが、今度ジャミルが見た物は、荒々しく、武器を手にした
集団武装兵の姿だった……。

「何じゃお前さん方は……、この村には何もめぼしい物などない、
……出て行ってくれ……」

門の入り口に集結している何百人と言う集団兵……。かつての
この村の村長らしき老人はたった一人で兵に立ち向かい、兵を
追い返そうとしていた。だが。

「そうはいかぬ!この世の全てはこのガナン帝国の物!こんな薄汚い
ゴミ溜めの様な村でもな……!!」

兵の一人が乱暴に老人の襟首を掴んで揺さぶる。ジャミルは
止めようとするが、兵にジャミルの姿は見えていないのだから、
声も届く筈もない……。老人は襟首を掴まれたまま、苦しそうに
声を出した……。

「うう、こ、この村には本当に……、な、何もない、出て行ってくれ、
うう……」

「そうか?あの娘など中々器量がよさそうではないか……」

「お父さん!!」

「……ラ、ラテーナ、いかんっ!」

ラテーナが父親の危機に感付き、来てしまったのだった……。
村長……、ラテーナの父親を脅している兵はにやりと笑うと
仲間の兵に目配せする……。ラテーナはあっという間に
兵達に取り囲まれ、連れて行かれそうになる……。

「……やめろっ!ラテーナには手を出さないでくれっ!頼むっ!!」

「うるせぇ爺だっ!」

「……お父さんっ!止めて、お願いっ!……は、放してっ!!」

「畜生!ひでぇ事しやがる!何とかなんねえのかよっ!!」

ジャミルは必死で叫ぶが、此処は星の首飾りが見せている過去の
記憶の中……。助けてやりたくてもどうにもならず……。兵の一人は
蹴り倒したラテーナの父親の喉元に剣を近づけ……。そして、もう1人の
兵士はラテーナの腕を乱暴に掴み、連れ去ろうとする……。

「大人しくしろ!お前が抵抗すればこの村もお前のクソ親父も
どうなるか分からんぞ、……さあ来るんだっ!!」

「……お父さんっ!」

「ラテー……ナ……」

だが、其処に救いの手が差し伸べられる。……ラテーナ、父親、村の
危機を救ったのは、エルギオスと呼ばれていた青年だった。青年の
放った必死の攻撃は大半の帝国兵達を死に至らしめてしまう。
……生き残った兵達は発狂し、その場はパニックになっていた……。

「貴様、その力は……、そうか、覚えていろっ、……我がガナン帝国に
逆らう事がどれだけ愚かな行為だったかと言う事を後で思い知るがいい、
……撤退だあーーっ!!」

兵士達は青年を睨みながら急いで立ち去る。……ラテーナを
救おうとした、エルギオス……、元天使の青年の決死の行動が
後世に繋がる全ての悲劇の幕開けだったのである……。

「……あれ?俺……」

「ジャミル、……大丈夫?」

「アンタ、凄いうなされて叫んでたよ、もうそれこそ聞いてらんない
くらいにサ……」

「モン~……」

ジャミルの目は覚め、元の泉の場所にいた。アイシャもサンディも
ちゃんとおり、モンも心配そうにジャミルの頭の上に飛び乗る……。

「ラテーナ……」

そして、泉の縁に悲しそうに佇むラテーナの姿が……。彼女は泉を
見つめながらこう呟いた……。

「私の所為であの人は……、だから私はあの人を探し続けなければ
ならない……」

ジャミルは漸くナザムに起きた出来事を理解する。村の老人から
聞いた話。過去にナザムはある余所者の男を村の女性が連れ込んだ
所為で滅び掛けたと。悲劇の始まりを起こした人物達とは、村に
墜落した青年、エルギオスとラテーナの事だったのだったと……。
だが、この2人の結末には更なる悲劇が待ち受けていた事をまだ
ジャミルはこの時点では完全に知る事が出来なかった……。

「じゃあ、今度は私の番……、首飾りを見つけてくれたお礼に私も
あなたのお願いを聞くわ、私に出来る事なら何でも……」

ラテーナはジャミルに向け、本の少しだけ笑みを見せた。今まで
感情を見せる事のなかった彼女が初めて見せてくれた笑顔だった。
……静かな……。

「ラテーナ……」

「じゃあさ、じゃあさ、アンタ、あの村の元住人だったんなら、
魔獣の洞窟の入り方とか知ってる?」

「……まあ、可愛い妖精さん……、ええ、知っているわ、そんな事で
いいのなら……」

「か、可愛いだなんて……、あったりまえっしょ、ケド、アタシ本当は
妖精じゃ……、でも、な~んか気分い~いっ!ってか、知ってるんだったら
早く教えなさいヨッ!」

サンディと話をしているラテーナの姿がアイシャには見えないので、
機嫌がやたらといいサンディにアイシャは首を傾げるが。ジャミルは、
ま、暫くそっとしておいてやれよと。……滅多に褒められる事なんか
ねえんだからよと、心で余計な呟きもしておく。

「モン、モン~!」

「あら、あなたも可愛いわね、おまんじゅうのモンスターさんかしら?
あなたって、色んなお友達がいるのね……」

「モン……、オ……モン、ジュゥ……」

「あはははっ!俺って付き合い広えーからさっ!あははっ!」

「モン~……」

饅頭と言われ、少し不機嫌になったらしく、モンがふて腐れた
表情を見せた。ジャミ公はモンの様子を察し、慌てると小声で、
……可愛い言われたんだからいいだろがっ!……と、突いておいた。

「モンブ~……」

「モンちゃん、どうしたの、疲れちゃったのかな、さ、おいで……」

「モギャ、モギャ……、モォ~ン!」

モンは言葉を伝えられない分、態度でアイシャに思い切り
甘えて見せたのだった。

「……それから……、この人もあなたのお友達かしら……」

「え?……あ、あっ!!」

突如、泉が光り出したかと思うと、球体に包まれた人間が泉から
浮かび上がる。それは、紛れもなく、行方不明だった……。

「ダウドっ!!」

ダウドは静かに地面に降ろされ、球体状態から解放される。
だが、まだ眠ったままの状態だった。ジャミル達は急いで
ダウドに駆け寄った。

「ダウド、ダウドっ、……しっかりしろっ、おーいっ!」

「ダウド……」

「ヘタレ、よ、良かった……、ネ……」

「モン~……」

「……この人、傷だらけで此処の泉に倒れていたの、もう死んで
しまうかと思った、でも、運が良かったのかしら、此処の泉は
傷を癒やしてくれるのよ、生前、ある人に教えて貰った私の
魔法の力で、暫くこの泉に沈めておいたの……、もう傷も癒えた
みたいだしそろそろ目を覚ますんじゃないかしら……」

「ラテーナ、アンタがダウドを……、マジでありがとな、俺、俺、
何て言ったらいいか分かんねえ、俺、俺……」

ジャミルは錯乱し、ラテーナに向かって何度も何度も頭を下げた。
ジャミルの様子を見ていたアイシャは、自分には見えない幽霊さんが
ダウドを助けてくれたのだと、理解する事は出来た……。

「いいの、あなたは私のお願いを聞いてくれた、良かったわ、
この人があなたのお友達で……、さあ、もう一つの約束を
果たすわ、魔獣の洞窟へ……」

「ラテーナ、その事なんだけど、俺らにはもう1人、消息不明の
ダチがいるんだ、そのダチを見つけたら、直ぐに俺達も洞窟へ行く、
だからそれまで待っててくれないか?」

「……ええ、大丈夫、私は幽霊だから……、何年でも、何百年でも
待てるわ、あなたのお友達が早く見つかる様に祈っているわ……」

ラテーナはそう言うと姿を消す。彼女が消えた後、微かに唸り声が
聞こえた。ダウドが目を覚ましそうだった……。

「……ジャミル、ダウドが!」

「ダ、ダウ……、ダウドっ、おいっ、ダウドっ!しっかりしろっ、俺だっ、
分かるかっ!?」

ジャミルは必死でダウドに呼び掛ける。アイシャもサンディもモンも、
必死で見守っている。

「……ジャミル?アイシャ、サンディ……、モ、モン、オイラ……、
う、うう~……」

ジャミルの顔を見た途端、鼻水を垂らし始めるダウド……。
ジャミ公は何となく、いや~な予感がし、後ろに後さろうと
するが、パニくったダウドに案の所、飛び付かれたのである。

「うあーんっ!む、迎えに来てくれるの……、お、遅いんだよ
おおーーっ!……うああーんっ!!ジャミルのアホーーっ!!」

「だから落ち着けよっ!……は、鼻水たけんなあーっ!……コラーーっ!!」

「……ちーーんっ!」

ぴんぴんデコピン×1

ジャミルの胸で思い切り鼻を噛もうとしたダウドはジャミルに成敗され、
取りあえず落ち着かされる。アイシャにも、幽霊のラテーナがダウドを
助けてくれ、ずっと見守っていてくれた事も話した。

「そうなの、その幽霊さんが……、でも、ダウド、あなたも無事で
本当に良かった……」

「……たく、心配掛けるヤツが多くて、マジでアタシはモー胃が
イタいんだかんねッ!」

「サンディもありがと、オイラの事、心配してくれてたんだね……」

「!べ、別にィ!ぜーんぜんっ、こ、これっぽっちもっ!!」

サンディは悪態を付き、慌てて発光体になると姿を消す。でも、
ダウドは嬉しそうだった。

「モォ~ン……」

「モン……」

最後に……、モンはダウドの瞳をじっと見つめる。ダウドは分かっている。
もう、モンは自分とお喋りする事が出来ないのだと。それでも……。

「ダウド、モンは……」

「ジャミル、ん、分かってる……、でも、オイラ、こうして又皆と
会えた事、モンが無事でいてくれた事、本当に嬉しいよ、さ、モン、
おいでよ、久しぶりにね……」

「……モォーンっ!モンっ、モンっ!♪」

「ふふふ、やっぱりこうしてくれないと……、落ち着かないや、
良かった、あっ……」

ぷう~う……、プッ、プププププ……

「モ、モンちゃんたら……、ダウドに会えたのがよっぽど
嬉しかったのね……」

そしていつも通り。ダウドの頭の上に飛び乗ったモンは定位置に
安心したのか、思い切り屁を放いた……。やはり飼い主そっくりで
安心した、オイラ嬉しいよ!と、ダウドはジャミ公の方をジト目で
見るのだった……。

「……顔は笑ってんのに怒ってんじゃねーよ、オメーはっ!!」

「……怒ってませんよ、オイラ怒ってませんよーーっ!!ぜーんぜんっ!!」

こうして、ダウドとも無事再会を果たす事が出来た。後はアルベルトを
何としても探しだし、魔獣の洞窟へ向かうだけである……。

「取りあえず、一旦俺らが世話になってる村に戻ろう、お前も
疲れてるだろ?色々と話さなきゃならない事もあるし……、お?」

……ぶうう~ん……

「……ぎゃああーーーっ!!」

ダウドの頭の上を大きめのアブが飛んで付いて回っている……。又、
早速騒ぎになりそうだった。

「……サブだあーーーっ!!何とかしてえーーっ!!サブは絶対
刺すんだよおーーーっ!!」

おい、アブだろ、アブ……と、思いながら呆れるジャミ公。だが、
ダウドの頭の上にいるモンが舌を出し、あっという間にサブ……、
アブを人のみにしてしまい、食ってしまう。

「モンモン!(もう大丈夫!)」

「はあ~、助かったよお~、モン、ありがと……」

「モ~ン!」

「うふふっ!」

「な、何……、アイシャ、何がおかしいのさあ~!」

「やっぱり、私達、こうでないと……、まだアルには再会出来ないけど、
きっとまた、いつもの元気……、取り戻せるよね?」

「うん、きっと……」

……きっとまた、再会したら、4人でバカやってどつき合いして
笑い合える日が来る……。アイシャの言葉にジャミルもダウドも
そう強く願った。……直後、足を滑らせ、泉にダウドが落ちた。

「ううう~、……っくしっ!」

「しかし、オメー、泉と縁があるなあ、又新たな伝説誕生か……」

「……もう忘れてよおおーーっ!!」

……ジャミルの中から、甲高くけたたましいサンディの笑い声が
聞こえたのだった。ダウドを連れ、ジャミル達はナザムにと戻る。
決して、温かい対応とは言えないが、村人達は戻って来たジャミル達に、
……お帰りと言ってくれた。やはりティルを命懸けで探して連れて来た
事に、少なからず村人達は感心し、心を開いてくれた様である。

「ただいま……、です……」

「あ、ジャミルさん達、お帰りなさい!」

「……何だ、まだウロチョロしているのか……、お前達の行動はまるで
進展がない様だ、おまけに又1人余所者が増えているな、早く用事を済ませ、
此処から出て行って貰いたい物だ……、心配事が増えて敵わん……」

「あんの~、オイラ……」

困っているダウドにジャミルは、いいからよ……、と、注意。だが、
村長は相変わらずつっけんどんな態度な物の、以前よりは言葉に
刺々しさが少し消えていた様な感じがした。

「……村長、大変じゃ!力を貸しておくれ!」

突然、村長宅に村民の爺さんが傾れ込んで来た。黒竜に怯え、
ジャミルに過去のナザム村の事を少しだけ教えてくれた、あの
爺さんである……。

「何だ、マル爺か、騒がしいな……」

「……む、息子が……、アーレー山に入ったきり、戻ってこんのじゃ、
孫が突然、高熱を出してのう……、村で売っている薬草では熱が
下がらんのでのう、高度な薬草を求めて、山に入ってしもうたんじゃ、
じゃが……、もう行ってから数時間は経過しておる……、腕の立つ村の
者に頼んで捜索をお願い出来んじゃろうか、いや、迷惑を掛けておるのは
十分承知なのじゃが……」

爺さんはすがる様に必死に村長に頼んでいる。ティルは爺さんと村長、
両者の顔を交互に見つめていたが……。

「また勝手な事を……、近年のモンスターの凶暴性は知っておろう、
助っ人を派遣すれば、その者も危険に巻き込む事は爺さんも分かって
いると思うが……、もしかしたらもう戻って来るかもしれん、もう少し
待ったらどうだ……」

「そ、それは分かっておるが……、じゃが、儂は息子が心配じゃ、
孫も……、嫁も心配で倒れそうなんじゃ、このままでは……、頼む、
どうか……!」

爺さんは必死で頼んでいるが、村長は爺さんの方から目を反らしている。
ジャミル達はいたたまれなくなり、顔を合せて目配せし、頷き合った。

「あのさ、俺らで良ければだけど、探しに行くよ……?」

「……ま、また、お前達は……!」

「村長さん、大丈夫だよ、ジャミルさん達は強いんだもん、だって
ボクを悪い人達から助けてくれたんだよ!」

「元々俺らは余所モンだし、行っても平気だろ?」

「オイラ……、新参者ですけど、ジャミルの仲間です、こう見えても
僧侶ですから……、最近、高度な回復魔法も習得しましたので……、
傷の治療だけじゃ無く、熱ぐらいの病気なら、何とか治せると
思います……、

「な、何とっ!お前さん達がっ!?た、頼む、どうか、息子を助けに
行っておくれ!……孫の命もどうか……、救っておくれ!」

爺さんは今度はジャミル達にすがって来る。村長はそっぽを向いた
まま、一言。お前達で全部責任を取れと……。自分勝手な村長だが、
少なくとも、ジャミル達に任せてくれたのは事実である。

「わあ~、やっぱりジャミルさん達って凄いねっ、マルお爺さん、
ジャミルさん達にお願いすればもう大丈夫だよっ!」

「ティル、お前はもう部屋に入っていなさい……、さあ、さっさと
行ってくれ……」

「はーい、ジャミルさん、お願いします、マルお爺さんのご家族さんを
助けてあげてね!」

「ああ、任せとけ、行こう!」

「おお、おお……」

爺さんは涙を流し、何度も何度もジャミル達に頼み込み、お願いをした。
……爺さんの言う事だと、長きに渡る余所者との鎖国の所為で、村には
真面に医者も呼ぶ事も出来ず、困り果てている状況なのだと……。

「はあ、ったく、あの頑固村長にも困ったモンだよ……」

「ま~た、あんな感じの人なんだねえ……」

「でも、本当は心から悪い人じゃないんだと思うの、そう
信じたいわ……」

「モン~……」

(死ななきゃなおらん、頑固クソ爺っと!)

「サンディ、駄目よ、そんな事言っちゃ……」

アイシャに窘められるが、サンディはすっとぼける。又、少し大変な
事に巻き込まれそうだったが、そんな事は言ってられず。一刻も早く
山に入った爺さんの息子を探し出さなければならない。熱を出している
爺さんの孫も危険な状態である。時間は押している……。まずは、孫の
熱を下げに爺さんの家に向かう……。

zoku勇者 ドラクエⅨ編 55

zoku勇者 ドラクエⅨ編 55

SFC版ロマサガ1 ドラクエⅨ オリジナルエピ 下ネタ オリキャラ ジャミル×アイシャ クロスオーバー

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2025-04-13

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work