『温水プール』
季節外れは大変だと言いつつ
楽しげに部活に向かう後ろ姿
『温水プール』
君の肩のラインとか濡れた髪とか
遠くからでもよく見える
眼鏡を外したってきっと見つけるわ
小説と君とで忙しい目線
こうして部活終わりまで待つという
大切なことに許可をくれたこと
そして少し離れただけで
君も目で探してくれること
貴方はいつも苦笑するけど
アタシにとっては大事なことなの
君がそこまで踣り込むとはねなんて
苦言めいた揶揄いも気にならない
貴方はそうでしょうけれど
アタシは違ったというだけよ
間違ってると言いたげな目のまま
アタシの眼鏡を奪うけど
欲望だけの関係は虚しいわ
だからもう二度とキスはしない
キッパリした態度を貫けば
貴方は興味無さげに眼鏡を返す
そういうさっぱりしたとこは
結構気に入ってたのよ
いつか貴方も出会えるはず
大切過ぎて壊したいくらいの人に
そうは言っても壊したりしない
大事に大事に温室で育てるの
薄暗いアタシの中身に気づくまで
沢山のキスで口移しの蜜を
「アタシが与えるものだけで育ってね」
『温水プール』