ヒトとして生まれて・1154
003 安芸の宮島の満潮の跡
グランドプリンスホテル広島の朝は、スパ(大浴場)で、朝風呂に
浸かり、朝食の会場も周囲が海の景色満載のオーシャンビューの中で
のバイキングとあって、ゆったりとした気分で食事を楽しんでいると、
ホテルの支配人が気を利かせて「写真を、お撮りしましょうか?」と
声を掛けて来る。
食事を終わって、売店に顔を出すと近畿ツーリストの旅行客は出発
時間らしく、まだ8時の時間帯だが乗車するバスに向かって急ぎ足で
回転ドアをすり抜けていった。
我々、阪急交通社の出発は、10:00なので「この違いは何だろう?」
と考えていたが、我々のバスが「予定通り10:00にホテルを出発して」
安芸の宮島に到着すると「すぐに、その理由が分かった」
安芸の宮島は、9:00頃は満潮時であったのだ。したがって厳島神社
の拝観通路などは、海面の下に位置することになるので厳島神社には
入場できないのだ。
したがって、グランドプリンスホテル広島を、10:00に出発すれば
タイミング良く厳島神社で拝観出来る。広島の宮島口から船に乗って
10分間で秋の宮島に着くのだが、船から降りると、すぐに土産物店
「だいこん屋」の店員がガイド役を担ってくれて厳島神社への案内に
始まり、厳島神社内の見どころの案内役を引き受けてくれるので大助
かりであった。
厳島神社の回廊は板敷になっており、床の表面には満潮時の痕跡が
残っていて、床面には、まだ海水の浸食の跡が残っていて湿っていた。
厳島神社では、適時、床に水を流して床面を洗うのだと云う。
帰りの船で、広島の宮島口に戻るときの集合場所も「だいこん屋」
だというので店の名前はすぐに覚えた。厳島神社の拝観を終わって
外に出ると、集合時間の15:30までは自由時間、先ずは昼食だ。
私と家内は、道沿いに橋を見付けて、橋を渡ると、店先で牡蠣を
熱そうに頬張る若者たちを発見、店の人に声をかけると、裏手には
食事処があると案内されて、案内通り裏手に廻ると入り口があった
ので、そのまま店内の食卓に席をとった。
そこまでの道のりで、どこの店にも行列が出来ていたので幸運な
道筋であった。献立は蕎麦が主体で私と家内は「穴子のフライ」を
載せたシンプルな昼食を選択した(この地域では穴子が名産)
食事に箸をつけたところで、外国人の夫婦が来店、私のつたない
英語で「どこから来たのか?」と 聞くと「スペインから」という
ので、私が両手の人差し指を耳の脇に着けて、猛牛の真似をすると
「その通り」といって、すぐに友達になった印象であった。
「今、食べているのは、なにか?」と、聞いてくるので「そば」と
答えると「それはラーメンか?」と聞き返してくるので「そば」で
あって「ラーメンではない」と応答すると、
注文取りに来た店員に「同じものを食べたい」と、男性客が注文。
私が「具は、穴子のフライだが」というと 「フィッシュか?」と
聞いてきたので「フィッシュだ」と答えると「同じものが良い」と。
奥様と思われるご婦人は、スマホを観ながら「具に牡蠣のフライ」
を選んでいた。
広島の観光客には「修学旅行生と外国人などの姿」が目立っていた。
我々ツアー仲間の声として、広島には、まさに溢れんばかりの観光客
がごった返しているがこれらの観光客の脚を津和野に向けてあげたい
ものだと思いながら昨日の津和野のお土産店の店主の顔を思い浮かべ
ていた。そして偶然にもだいこん屋で、津和野の店主に似た人に遭遇
奥さんと赤ちゃんが一緒だった。さらに偶然は、だいこん屋の店員で
厳島神社を案内してくれた女性は津和野出身の方で、津和野の鷺踊り
を厳島神社の舞台で披露したことも名ガイドだけに熟知されていた。
(両ガイド共に名調子が似ているので親戚関係だろうか?)
その後、船に乗って約10分、宮島口に着くと、一路、広島空港に
向かって帰路のコースに入る。現役の時代には、航空宇宙事業本部の
全社的な「業務革新の特命」を受けてIHI広島の呉の第2工場には
3か月毎に訪問していたので懐かしい空港である。
今回の旅も、広島発19:10便に搭乗すれば、一路、羽田空港、空港
からリムジンバスにのれば、所沢から最寄りの電車に乗って我が家だ。
今回は、比較的、天候にも恵まれて、楽しい旅程であった。
全日空の飛行機の中で目を閉じると広島のプリンスホテルの食事処
から眺めた周囲の海の景色が、昨年、仙台から北海道の苫小牧までの
間を、フェリーの旅客船に乗った時に、朝の食事をしながら外の海を
眺めた時のことを思い出した。
八十路を過ぎて、乗り物を選ぶときに、旅客船や飛行機よりも徐々
に新幹線のファンになりつつある自分に気付いたが、関西や九州また
北海道に行くときには、飛行機が速くてよいが、荷物検査が億劫だと
いう自分に気づき、これも八十路のわがままかもしれないと思う今日
この頃だが、近い将来、リニア新幹線がこの期待に応えてくれるかも
しれない。
(続 く)
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