最後の夜

第一章 妖精

妖精

突然。窓ガラスがゴトゴトと音を立てて振動する。時計を見ると深夜の2時である。窓から強い光が差し込んでくる。この時間に変だ。まだ、夢見ているのかと疑いつつ窓を開けた。飛び込んできたのは大きなホウキにまたがっている妖精らしき感じがする。その顔はデイケアに居た真子さんに似ている。ドッドだどっす私の部屋の中に飛び込んできて停車した。
妖精「こんばんわ。私、知ってますか。今日からこの部屋で生活します」
私「頭がおかしくなった。ここはどこだ夢の中か」
妖精「私は地球上ではアンドロメダ星雲と呼んでる240万光年の彼方の星から一年かかってこの魔法のホウキでやって来ました。星雲には帰れません。星雲では1万年後の世界です」
私はとにかく布団を敷いて彼女を寝かせたのであった。目玉焼きのいい匂いで起きてきた私はびっくりした。
私「アンドロメダ星雲でも目玉焼きを食べるのか」
妖精「そのカラクリを教えましょうか」
妖精は喋り出した。私達の世界はこの地球の未来人の世界よ。魂は永遠に生き続けるのそれも同じ生命体として、日本では仏教が前世だとか言ってるけども本当はあなた自身の魂が永遠に意識として生き続けるの。真子さんの未来」
私「私の未来は何処にいるんだ」
妖精「知らないわ。私達は初めて出逢ったの。未来はこれから作らないと。私は朝ご飯食べたら。意識として真子さんのお宅にお邪魔してきます」
私はなんだかよくわからないが、夢の中でまた夢を見ているのだろうか。頬をつねってみると痛かった。
次の日デイケアにやって来ると。真子がいた。しかし、何気ない顔をしている。その日は会話する事もなく終わった。部屋に帰るといた。妖精さんが。
私「!!!」
妖精「なんかついてる」
私はこの妖精はいったい何者だろうか。たしかにホウキに乗ってきて窓からやって来た。
妖精「お風呂沸いてる」
なんて事だ、妖精のくせに風呂に入るのか。すると私の頭に妖精の脱いだ服が私の顔をふさいだ。
私はアンドロメダ星雲について調べた。一年前にこの場所と思われる地点から謎の怪電波が一定の感覚でキャッチされたらしい。この周波数は変化を伴っており、何か地球に対してのメッセージではないかという科学者も存在するらしい。私は、この妖精の地球に来た目的はなんなのか。興味を持ち始めた。
この怪電波はガンマ線や紫外線等とは違う。人間が発しているような周波数でないかという推論である。アンドロメダ星雲は太陽の様な恒星ではなく。地球の様な惑星て事は、この宇宙の8割を支配していると言われている暗黒物質の惑星と推測されているダークマターなのか。
妖精「何を考えてるの、私にはお見通しですよ」
私「何、人の心が読めるのか」
妖精は口に人差し指を当ててそれ以上の言葉はダメと言う仕草をした。
私「服を着れよ」
妖精はバスタオル一枚でやってきたのにまたもやびっくりした。私と妖精。妖精とは真子に宿っている意識。私と妖精との奇妙な生活が始まったのである。
朝から妖精は毎日目玉焼きを作っている。私は静かな口調で妖精に声をかけた。
私「目玉焼きしか出来ないの」
妖精「私の惑星ではお肉類は食べないし。タンパク質を取るためのお肉は大豆で埋め合わせます。卵はなかなか遺伝子変換も何年も時を経ても難しそうです。卵を産んだニワトリは処分して肥料になります。栄養価値が高く美味しい野菜が出来ます
私「何しに地球へ」 
妖精「真子さんが精神的に病気になり、未来の私としては助けに来ました。それと、大事な話があります。貴方の名前はセニョリータにして下さい」
私「そこのお嬢さんかい」
妖精「簡潔に話します。意識はどんなに遠くてもテレポーテーションする事が可能です。私の惑星でも意識は自由に行動してます。しかし、地球よりも少し文明が進んでるだけです。私は真子さんの分身です」
私「て事は多元宇宙論」
妖精「そうです。私は意識のテレポーテーションでやって来ました。
妖精「惑星に存在する人間には同じ意識の人物が無数に存在するのではないか。例えばガンに侵された人間には分身というものがこの多元宇宙の中に存在する。人間は感情のある動物です。感情「心」の病気は意識の交換。元気な分身のパワーをもう1人の自分に意識をテレポーテーションして治療します。我々の世界の心の病の治療法です」
私「!!!」
妖精「この意識の治療には愛が必要です。セニョリータさん真子さんを好きになりませんか」
私「まだ、出逢って一週間だぞ」
私は妖精から言われてからだんだん真子さんが気になり出した。
妖精「私の惑星では、意識から魂の存在が科学者達を悩ませています。知ってますか、アインシュタインの相対性理論を導いたヒントは一般人の何気ない一言だったらしいです」
いつもの目玉焼きの匂いがしないし台所の音もしない。窓を開けると妖精が歩いている。私はそれにしても何かおかしい、現代の世の中にホウキに乗って来るとは何かの錯覚ではないか。今日は休みである。久しぶりに図書館に顔を出す。科学雑誌のコーナーに行き読みあさっていると。現代の科学最前線と言う書物を気になり読み始める。
あるページで止まった。こう書いてある。未来の映画鑑賞はコンタクトを装着するだけで目の前にスクリーンが現れるのだそうな。だとしたら、最近の出来事は理解できないでもない。私はコンタクトをしているが、妖精が現れる3日前に新しく買い替えた。慌ててコンタクト店に行くとなんと閉店している。張り紙を見ると昨日店じまいらしい。私は家に戻りコンタクトを外してメガネに変える。そして手にとって見るがおかしな所はない普通のコンタクトレンズだ。妖精がいた部屋に入っても、今まで人のいた気配はない。私は早く月曜日にならないか焦ってきた。真子さんに確かめてみよう。
翌日。頭の中には妖精の姿が離れない。私は精神科に通っているおかしな言葉を発すれば入院手続きが行われる。私はスパイされる様な偉い人間でもない。あの妖精はいったい何者だろうか。たしかにデイケアに存在する真子さんかもしれないが、人間がホウキに乗って来るわけはない。それこそ入院でもなると一生出れないかもしれない。私はデイケアにいる真子さんの様子を伺うことにする。お昼休みになり隣にやって来た真子さんにそっと声をかけた。
私「アンドロメダ星雲と聞いて何か浮かんできます」
真子「ウルトラマンの故郷ですか」
私は妖精と真子さんは別人だと確信した。そして、もう一度妖精に会いたくなった。妖精はアンドロメダ星雲へ帰省したのか、それとも幻だったのか、コンタクトに仕組まれた罠なのか理解できない。そして結論が出た。真子さんと議論してみようと食事をご馳走する事にした。
私は、真子さんを連れて和食か洋食とでも思ったのだが、居酒屋に一緒に行く事にした。私はいきなり真子さんに唐突な質問を投げかける。
私「真子さんは宇宙の何処かにあなたがもう1人いると思いますか」
真子はこの質問に動揺した様子を見受けられないと言う事は妖精とはやはり別人物なのだろうか。もひとつだけ質問します。
「真子さんはホウキに乗って空を飛んだ事はありますか」
真子は不自然な質問に笑い転げた。私はこれ以上不可思議な質問をする事はやめにする。
私「なんで心を病むのでしょうね」
真子「人間だからです」
そう言えばあの妖精は人間だろうか、未来の分身と言ってたが、もひとつ質問をする事にした。
私「私にいずれ好意を抱くと思いますか」
真子「わかりません」
私「好意を抱くと言う事は意識が移動する事だと思います」
真子「変わった人ですね」
私「私の事をセニョリータと呼んでください」
真子「ジェントルマンじゃないですか」
私は、あの妖精は別世界の真子さんとは関係のない人物だと確信するが。意識については何か関連があるのかもしれない。私はこの日から意識。心について専門書を片っ端から読みあさるようになっていくのである。
私は2度目の食事に真子さんを誘った。目的は妖精についての手がかりはないだろうかだった。今日は熊本市の花畑町電停から徒歩で3分の京八寿司を予約した。老夫婦が2人でやっている。真子は何を尋ねてくるかと期待してた。私はこないだの質問はいい加減にしてくれと言われかねないし。
私「真子さん。妖精は好きですか。私はディズニーのティム・バートン ナイトメアー・ビフォア・クリスマス
のつぎはぎだらけの彼女が好きで。死体から作られ、偶然心を持って生まれた継ぎ接ぎだらけの人形。見た目は顔が青白く、口裂け女のような顔をしているが、心優しい性格。見た瞬間に虜になりました」
真子さんは、トロを注文した。口一杯に頬張っている。私はひたすら生姜をいただいている。
真子「生姜は好きなんですか」
私「河童巻きの次に好きです」
真子「いつも寿司屋で食べるのですか」
私「いや始めてきました」
真子「妖精は人間じゃないですよ」
私は真子さんが妖精ではないらしいと確信はしていたが、妖精の夢を見ますかと質問して見た。真子が返事を返す前に私はお勘定と席を立つのである。
店を出た。真子のヘアースタイル。ボディーにウエーブがかかった感じで大人びている。私はこの後用事はないのであるが、時計を見ると15時を過ぎている。寿司屋をハシゴするわけにはいかないが、寿司屋には今後しつこく誘ってみるかなと思案する。私は熊本城の周りを2人で散策する事にした。
私「よく優しいと言われるが。普通だと思うしそんなに男って優しくないですかね。真子さんを初めて見た時の印象をいいますと。デイケアにこんな可愛い人がいるのにびっくりして倒れそうになりました」私は二の丸公園の大きな木の下に座った。そっとハンカチを芝生に敷いて座ってもらった。しつこく、妖精の話をするかと思ったが辞めた。
私は何気なく誘ったつもりだったが、時間が迫ってくると少しソワソワしてくる。
今日はお疲れ様と一言言う前に、次回のお誘いをアプローチしようと。咄嗟に考えた決めゼリフはこうだ。
私「私は、カナヅチで」真子はおやっとした表情でこの人はカナヅチで私の頭を叩くのかしらと想像したがセリフは違った。
私「カナヅチで泳げませんが。プールはもろに泳げませんから夏になったら海に行きましょう」
真子は、海の方が危険な気がしたが口には出さなかった。私は真子が振り向いたときには市電に急いで乗っていた。電車の窓から覗くと真子は手を振っていた。そのシーンは映画のようだった。
この日から空白の日が3ヶ月程。デイケアを休んだ。私のところにやって来た妖精も幻なのか。外はだんだん寒くなりやがて冬を迎える。9月20日に思い出すのは熊本市の一大イベント藤崎宮大祭。空白の間にいろんな事を考えた。妖精さんが意識を、使ってやって来たと。意識は広い広い空間の中で色んなものを放出するものだと思う。妖精さんもその中から私を選んだのかもしれない妖精の真子さんか現実の真子さんかに心を奪われそうになったが何にも行動しないし考えてるだけだと物事に変化はおとづれない。私は落ち着き払っておとなしく生活してる時は病気が安定してると言ってもおかしくない。日常に刺激があるといい意味。ドタバタ騒動になる。久しぶりにデイケアに行くと真子さんへの姿もあった。何気なく挨拶した。やっぱし変化のない1日。お昼休みに真子さんらと茶話をやった。空間の中に無造作に放出されていた色んな人間の意識の中から真子さんを選んだ。その時に太陽の光で見えなかった。惑星アンドロメダ星雲から未確認電波がアメリカのNASSで発見されたとは知る余地もなかった。私は真子さんより妖精の真子さんにもう一度出逢えないものだろうか。たしかM87星雲は地球から240万光年彼方にあると、これは我々の住んでいる。天の川銀河の端から端までの距離の24倍である。我々の住む銀河系。その直径は10万光年。距離の単位は、光(約300,000km/秒)が1年間に進む距離。9,400,000,000kmで。この240万倍。太陽のように自ら輝く恒星が存在しています。恒星の周りには次々と惑星が見つかっており、そのうちの約2割は地球に近い大きさであることがわかっている。さらに、そのうちの十数個は液体の水が存在している可能性のある星です。と専門書には書いてあった。現代の理論物理学は素粒子の性質によるテレポーテーション「瞬間移動」が、可能だと言っている。その原理は二つの白と黒の箱がある。こちらに黒の箱があるともうひとつは白と言う事がわかる。これがテレポーテーションらしい。しかし、その片方の箱に入っている白の箱をどうやって何光年も離れた場所に置くのだろうか。意識だと言うが意識は何光年先に存在しても意識として存在するか私の知る限りの見解はこうである。もしも妖精の言ったアンドロメダ星雲の存在が正しければそこには巨大なブラックホールが存在する。超大質量ブラックホールと惑星の誕生の間に接点があるとはまったく考えられていなかった。条件さえ整えば、どんな恒星の周りでも惑星の形成は起こりえます。
妖精は意識を使ってやって来たらしいが、意識でテレポーテーションすれば一瞬で到達するのではないか。やはり、あの妖精は私の自我意識が作った産物だったのか。初めて真子さんと会った時に強烈な印象があって私の潜在意識に宿り物体化いや私の脳内記憶が妖精を幻覚として登場させたのか。妖精とは幻覚にしろ数日間を一緒に過ごした。真子さんとは行動を共にした事はない。この差が妖精にもう一度会いたい衝動に悩まされる。
妖精が来た日はたしか7月7日。七夕の日ではなかったか。次に会えるのは来年のこの時。私は真子が気にはなるが恋するとか好きと言う感情は湧いてこない。
玄関から単車の音が響いてきた。新聞配達さんが夕刊を持って来た。いつもは眺めるだけの新聞を久しぶりに読んでみた。広告の記事に天体望遠鏡で恒星を眺めようと書いてある。私は即、天体望遠鏡を購入した。意識って真子さんの部屋をイメージすると残像に見えてくる気がしてくる。真子さんと言う女性に不思議と惹かれる。その正体は意識なのか。ふと頭をよぎったのは妖精のバスタオル一枚で私の目の前に現れた出来事だ。テレビの中のドラマなら同じ人物が演じている。私は、戸棚からウイスキーを取り出してロックで一気に飲んだ。と言っても小さなグラスでだ。ほろ酔い気分で天体望遠鏡でM87のブラックホールがある位置を探す。おとめ座銀団」の「M87」の中心に位置しています。「M87」は直径約12万光年の中に、数兆個の星と約13000個もの球状星団を含む巨大な楕円銀河。「光速に近い速度で放出された宇宙ジェット」は約8000光年にもおよぶと言います。乙女座にあり、春先は南東の空に見えてゆったりと南から西へ傾いていきます。
私は少しテンションが上がった。なかなか寝付けないが5時間は寝た。この日が私の運命の流れを変えてしまった。その夜。私は恋に落ちた気がした。脳裏に真子さんが現れてくる。私は妖精に逢いたくなった。夢でもいいから。寝室の窓を開けて、ホウキでまたやって来る事を期待して深い眠りについた。
窓から注いでくる冷たい風で私は深い眠りから目が覚めた。徐々に寝る前の記憶が蘇る。私は妖精が戻って来るのを待っている。誰も居ないのにテレビが付いた。リモコンの周波数に合致した電波が流れてきてテレビのスイッチが入ったのだろうか突然明かりも消えた。テレビの画面はザワザワとした雑音が響いてアリ地獄の画面である。昔読んだ本にテレビの放送が終了した画面がアリ地獄に似ている画面に変化してきて。画面にかじりついて覗き込んでいると、瞬間瞬間に映像が映っていてこれは未知の世界からの信号と言っていた記事があった。窓の外を見ると満月。何か、満月の前にかぼちゃの馬車に乗った魔法使いがやってきている場面が浮かんできた。その時に声が聞こえてきた。小さな小さな独り言のようなささやき声だ。
「セニョリータ」
私の目の前で何もない透明な空気が渦巻いた。グルグルとそして模様となり形となって妖精が現れた。
妖精「こんばんわ」
私は全身がジーンと痺れた感じになり心の中から衝撃が走った。そして妖精と叫んだ。
妖精「惑星に戻ってあなたを探しに行ったの」
私「最初に現れた時は1年の旅行と言ってたが今度は速いなどうした」
妖精「意識の神秘です。意識は広大な宇宙の中に物体という鎧を持たずに透明な色で電波のようにさまよっています。行き先がわかったら意識が物体化するのは早いです。最初は手探りだから、宇宙についてはこの次に議論しましょう」
私「デイケアに通院している真子さんには宿らないのかい」
妖精「複雑だけどもさんには真子さんの意識があるわ。時がきた時にその意識は合体するの。そして宇宙の中に広大に漠然と浮遊するのよ」
私「妖精。君に名前をつけよう。真子は存在するから。ミーと名付けよう」
妖精「私ですね。いい名前ね。地球の真子さんを好きな気持ちに変化しましたか」
私「気にはなるが。好きとか恋したの感情は湧かないな」
妖精「意識の先にあるものを探しに行きませんか。勿論3人で、ミーとセニョリータと真子さんと。でもあなたの意識がどこにあるかわからないの。あなたは誰なの」
私の意識は現生にしか存在しないのだろうか。ミーは、凶悪犯罪等で死刑になった人達は、意識を通り越して地獄と言う所があるみたいと言ってた。ミーの惑星では意識の存在は掴めたがその先の魂と言うものが解き明かされないらしい。
テレビと言うものがある。空間にさまよう電波を受信機がキャッチして映像となる。人間の意識も似たような感じだ。テレビを人間に置き換えるといい。もしも、テレビに脳みそがあったらテレビは人間に化けると思う。私の住んでる地球では意識の存在は理論的には解明されそうである。
私は思った。未来に私が存在しないのは私は真子さんとは縁はなかったんだと言う事だ。ミーは一緒に外を歩こうと言ってきた。私は真子さん2人が出くわしたらどうなるかの質問に。
ミー「私はあなたにしか見る事が出来ないの。透明人間ね」
「メタマテリアル。光等の電磁波に対して自然の物質にない特性を持つように設計された人工物質の事。この理論は特殊な屈折率を持つ物質で物体を覆うとその物体は見えなくなると言う理論。それは、透明マントのようなものである。後ろから来る光の進む方向を変えて、迂回させるの。だから。こっちから見るとそこに誰もいなくて、でも、進むと物体にぶつかるの」私はミーを精神科のデイケアに一緒に連れて行くことにする。ミーは地球上で言うジャンバーみたいなのを着てる感覚だと。私はジャンパーを脱ぎ捨てると素っ裸のミーになるのかと質問した。
ミー「私は物体化していない意識なの。この世界では真子さんの未来ではあるが真子さんに宿り物体化する事はありえないの。それは、歴史を変える事なの。でも、歴史を変えるなんて事想像できます」
私「昔。映画の戦国自衛隊。この世界は我々が知る世界とは異なる歴史を持とうとしていたが、我々がこの世界へ来て歴史を変える事は不可能だった」
ミー「セニョリータさん。赤い糸伝説はあると思いますか。切れてる赤い糸を繋げる方法があったらどうしますか」
私は意識の世界と言うものの存在が今ひとつ理解できないでいる。そこで、ミーに質問した。ん
ミー「地球上の人間は他界したら意識となり広い宇宙に放り出されます。肉体は滅びているから意識。透明人間の様な感じです。テレビの電波を想像して下さい。テレビと言う肉体に宿った瞬間に意識は映像となり画面に登場します。意識はテレポーテーション。ミーがいる惑星の肉体に宿るか地球上の肉体に宿るかです。そうやって人間の意識は宇宙空間にさまよっています。ミーは今地球にいるからM87の惑星には意識として存在しませんが肉体はお布団の中で深い眠りにはいり夢を見ています。ミーと真子さんは意識で繋がっています。宇宙が多元宇宙なら意識も多元意識。あなたとそっくりな分身がいるわけです。ミーは真子さんの意識に吸収される時もあります。セニョリータさんは私に惹かれてます。ミーの意識もセニョリータさんに惹かれ始めました。しかし、真子さんはまだあなたに惹かれていません。あなたもまだ真子さんに惹かれてるのかはわかりません。ミーはあなたと真子さんに魔法をかけます。

夢から覚めて

夢から覚めて

デイケアにやって来た私の横にはミーがいる。当然他人には見えない。注意するのはやたらミーに対して話しかけない事。下手に話してると周りの他人には独り言をぶつぶつ言ってる様に見られて職員に通報されてやがて精神科医がやって来て即入院となる。これが精神病院の現実である。昼ご飯になれば総勢職員が5名以上で利用者達の様子を監視している。これは奴隷と一緒である。奴隷は職員には原則逆らえない。文句も言えない。言えばたちまちガッチリした体格の男性の看護士が3人やって来て利用者をはがいじめにして精神科閉鎖病棟の隔離室にぶち込まれる。隔離室は昔は血に塗られた壁。3畳ほどの板張りの床。明かりを灯す為に鉄格子の囲い。そして剥き出しの便器がひとつある。ミーは少しこの話をしたら具合が悪くなった表情を見せる。私は妖精でも人間みたいだと心の中で呟くとすかさずミーが言葉を返した。
ミー「妖精は意識が物体化した透明人間です。周波数のあった人しか存在を確かめる事が出来ません。今は地球人と同じです」
ミーの視線が真子に向かった。私はミーと真子の関係は理解できないでいる。
ミー「セニョリータ。真子の意識は真子自身の心の中にあります。意識が不幸により肉体から離れた時に宇宙空間に意識として浮遊します。ミーは真子の未来。分身です。真子の病が心配でやって来ました。真子の心が回復した時にミーは真子の意識に吸収されて消えます。意識は睡眠中は肉体から離れる事が出来る時があります。たまに霊感のある人が意識の見た世界の記憶が残っていてマスコミで取り上げられる事があるでしょう。セニョリータと私はアンドロメダ星雲において一緒にいる事もあるかもしれませんが、現生ではミーに好意を抱いてもそれだけの関係です」
私は真子と視線があった。
真子「お久しぶりです。妖精の研究でもやってましたか」
その時、ミーが私の身体を押した。私は真子につまづいて転んだ。真子は若いから反射神経がよく倒れたりはしなかった。私はよろめいて真子の手に捕まった。真子は少しかすり傷を負った。私は今だと反射的に言葉を発した。
私「怪我しなくて助かりました。お礼にラーメン食べに行きますか」
私と真子は、デイケアのお昼をキャンセルしてラーメン屋に出向いた。
私はラーメンをすすりながら、困惑した。何を考えているのだろうか。そして妖精はなんで物体化してるのか疑問を抱いた。誰かの策略かもしれない。私は真子をラーメン屋に置いて飛び出した。そして部屋に戻り隠しカメラがないか探し始めたがそれらしきものはない。
取り残された真子は、あの人は一体何を考えているのだろうか、私を誘ったりプッツンさせたり。しかし、彼に次第に興味を抱き始めた。
ミーの住んでいる。アンドロメダの文明は地球より千年は進んでいる。私は飛び出した瞬間の脳波が7.8hzに同調していた。これは。魂の本来の望みと「自身の考え」が、「周りの状況」がシンクロしやすくなり、自分の才能を発揮し、夢が叶い始める。7.8hzは、人が睡眠と覚醒の境目付近にあるときの脳波である。奇跡を起こすと言われている 7.8hzを発生させています。夢の中の真子のその表情はリアルでまるで。現実の世界にいるような感覚がある。私のネクタイのズレを直してくれた。ミーの存在は夢の中の彼女が物体化したのか。その夢の中の真子はミーなのか。この日から、ミーは私の前から姿を消した。  
いつもの様に、夕食をいただいていると、大好きだった。スーパーの惣菜の味の変化に気づく。旨味が半減している。お腹は空いてるのに、ご飯が進まない。ソファに寝そべり、ウォークマンのスイッチを入れて、いつもの様に、演歌を選曲すると、いやに、心地が悪い。それだけではない、手のひらの感触がおかしい、まるで、手のひらに綿が覆い尽くしている感覚。起き上がると背中が重い。まるで、何かに憑依されてる気がする。
「カラオケしませんか」デイケア室にはカラオケの部屋があり自由に歌える。何故か、リクエストしたのは、大原櫻子の恋のはじまり。出だしのメロディーがお気に入り。今までにはないレパートリーである。真子は特徴のある声をしている。西野カナのトリセツを披露した。私はこの声に酔いしれていて、実在の人間と真子の区別がわからないくらいになっていた。
忘れていた。ラーメン屋でドタキャンした事を謝り、菖蒲祭りに誘った。心地よい返事が返ってくる。
小田切川と並行に流れている。裏側に位置する裏側公園菖蒲祭り。祭りは明日からだ。まばらに人が鑑賞している。その手前に10人程が座れるスペースに椅子と大きなテーブルのある。休憩所にふたりは、腰を下ろした。私は。突然。「四次元空間を探しませんか」と尋ねた。すると。真子が四次元空間について、何ですかと尋ねてくる。私は静かに語り出す。「ここに。小さな檻に入っている。猫がいます。縦横奥行きで表されるのが、三次元空間である。地球の表面は緯度と経度で表せるから二次元。線は一次元である。もしも。檻の中の空間に四次元が存在するとすれば。猫は脱出できます。そして、妖精の話をした。真子は質問もしない。黙って聞いている。そして、自分の病の事を語り出す。
「私の病気は。天使の声を子供の頃から語り始めました。初めの頃は空想の様な話しでしたが、私の脳裏に浮かんでくるのです。お母さんに、天使は宇宙からやって来たの。7次元の高次元の世界から、よく。お母さんから産まれてきた赤ちゃんは、宇宙からやって来たんだと。語る人も多いです。その内に、魂の目的は、地球を楽しくする為にやって来たの。ちあまりにも。お母さんにしつこく話すから。精神科に連れてこられました。
真子は私に、四次元空間を探したい。理由を尋ねてきた。私はボソボソと口を開く。
「私の病名は統合失調症です。若い頃に東京は品川駅で、いまだ、突っ込めと言う声が聞こえてきて、気がついたら、東京の山手線の品川駅で、ホームに飛び込み電車を止めて、そのまま、精神病院にぶち込まれました。それから、十年後にまたしても。不可思議な出来事に遭遇します。派遣会社で工場に働いていて、好きな同僚の彼女の車がスーパーの駐車場に見えました。喫茶店でコーヒーを頂いていた。私は、即、声をかけようと、お金を払うのも忘れて、その場所へ向かいます。入り口の自動ドアが開いた瞬間に、彼女の声が、天井から聞こえてきました。入院には至りませんでしたが。幻聴が聞こえたのは、二度だけです。でも、幻聴って、簡単に精神病と理由をつけられると思いますか、僕は、何か、見えない世界の扉がある様に思えます。こんな話は、精神科医に話をしたら、精神病院にぶち込まれます。「私の統合失調症の世界を冒険しませんか」

第二章 テレポーテーション

第二章

テレポーテーション

朝からソワソワしている。それもそうだ、今日は、運動公園で真子と待ち合わせをしている。頭をよぎるのは、妖精の姿だ。あの数日間は、夢を見ていたのであろうか。過去は記憶の中にある。私が真子に惹かれるのには、理由があった。二十歳の頃に出逢った康子。当時、19歳の彼女に、顔といい仕草といい雰囲気といい似ている。思わず、双子かと錯覚を覚えてしまいそうだ。運動公園までは、徒歩で10分。郊外の静かな場所にある。小高い山だ。駐車場にやって来ると、水色の軽自動車が見える。
今日は、眩しい光に反射されて、塗装が襲って来る気配もない。その先を見つめると、真子が立っている。大きなメガネに、春らしい。大きいサイズ のフロントジップロングワンピース。何か、真子らしい雰囲気だ。私がおーいと声をかけると、手を振って答えた。すると、真子は、走り寄って来る。
周りには誰もいない。私は、真子の身体を抱きしめた。真子は無言だ。その瞬間、真子の唇を盗んだ。一瞬、3秒ぐらいだろうか。その瞬間。空から声が聞こえてきた。
「セニョリータ」私の思考の中の景色が、だんだん、薄らいでくる。その時、ドーンと言う音がした。一瞬、記憶を失った。それと同時に、私の周りの景色が変わった。建物の中だ。そして、廊下に立っている。先を見ると、真子が立っている。
時計を見ると、16時55分。まて、この景色には見覚えがある。そこは、18年前の、東京の医薬品会社に勤務していた会社の廊下だ。身体に背負っている。鞄のファスナーが開いている。中には、小さな箱。私の記憶が蘇ってきた。しかし、そこに、立っているのは、真子なのか、当時の康子なのか。私は、真子かいと、声を出した。返事は「うん」真子もこの現実に気がついているみたいだ。私は、鞄の中から、箱を真子に渡した。それは、平成17年5月4日。康子の誕生日の日だ。箱の中身を見ると。ティファニーの腕時計が入っていた。真子は思わず「こんな高いもの」そこへ事務の鈴木保奈美似のお姉さんがやって来た。
一言「貰っときなさい」私の記憶は更に蘇る。あの時、康子が囁いた言葉。私は、この出来事から、二度と、康子と顔を合わせなくなった。それは、ましてや、考えもつかない、出来事へと発展した。でも、今は、あの時の今ではない。令和に出逢った世界の、真子と私が存在する。
時計を見ると、17時を回っている。真子の机には、真子しかいない。この世界には康子はいないが、しかし、この会社の同僚達が近づいて来る。真子は、「今日は1人で帰るからと挨拶した。
バックは、令和の時代の私のバックだ。中身を見ると、スマホが入っている。とにかく、トイレに直行した。私もとりあえずトイレへ。私のポケットにも、スマホが入っている。日付は金曜日。スマホの画面は、見慣れない画面だが、LINEのアプリは入っている。私は、会社を、出て、右に曲がり、1キロほど歩くと、神田駅に着くから、改札口で待ってろと文章を打った。
ふたりは無事に待ち合わせ場所に来た。真子が、私のアパートはと呟くが、私の記憶に、アパートが浮かばない。私は真子に過去の出来事を話した。
「あの日、アパートに帰った。明日、土曜日。私は当直の日だ。私は不思議な体験をして統合失調症に襲われた。とにかく、明日は土曜日だ。もう、会社には戻るのはよそう」真子は、不安そうな顔を、さらに不安色に染めて、「どうするの。この世界から脱出しないといけないわ」真子は言葉を続けた。
「この世界は過去なの、だとしたら、何かの映画で見たわ、もう1人の自分がいると。たまたま、今日の日には、もうひとりの自分は存在しなかった」とにかく、今日は、ホテルにでも泊まろう。

財布の中の紙幣を覗くと、平成の時代の紙幣だ。ホテルに到着すると、ふたりは、疲れがどっと出て、そのまま、ベットの上で深い眠りについた。起きると、横に真子が寝ている。私は真子をゆすった。真子はびっくりして、起き上がると、一面を見渡した。景色が変わっていない。
ふたりは、改めて、大変な世界にいる事を実感する。そして、真子に、妖精の夢の出来事を話した。真子は、何か繋がりがあるかも。でも、今日は仕事に行って、私はホテルに泊まってる。スマホの画面は、LINE意外は、不自然な見慣れないアプリが並んでいる。とにかく、私は、会社に行ってみる事にした。18年前の、この日の記憶は。悪夢に出会った当直の日だ。
時計を見ると、8時を少し回っている。遅刻だ。会社の手前にある。喫茶店を目にして、記憶がよみがえった。面接の日に、着慣れないスーツのネクタイを締め直した場所だ。会社の手前に来ると、いた。もうひとりの私だ。その瞬間。記憶が薄らいでいくと共に、もうひとりの私に身体が吸い込まれた。
そして、合体した。事務所の中を覗くと、いないはずの。真子。嫌、真子はホテルだ。康子が机に座っている。あの仕草。私が事務所に入ると、必ず、あの仕草で自分をアピールしてくる。手を振るのだ。すると、鈴木保奈美似の事務の女性が、やって来た。「今日は、当直ですよ」そして、私を、事務所内へと誘導する。私は咄嗟に、「ネズミ」と大声を出してしまった。女性は、「あら、どうして、私が言おうとしたのわかったの」とびっくりした表情を見せた。この女性は。事務所にネズミが出て、糞の始末で、大変なのと訴える。あの時もそうだった。そして、引き出しの中を見せるが、糞のあとは存在しない。
夕方になると、康子が、当直の差し入れにパンを持ってきた。この日、康子と会話する事はなかった。あの時と一緒だ。

悪夢の再現

悪夢の再現

私は、各ビルの鍵の斡旋を確認して就寝の為に社長室にて、布団を敷いた。そして。スマホを取り出した。この世界でスマホが何故使えるのか、理由はわからない。試しに、電話をするが、電話は繋がらない。LINEを開くと、メッセージが来てる。真子からだ。
真子「どうですか、私はもう頭が狂いそう。今日は、
 ひとりで寝るのは怖いわ」私は、今日の出来事を真子にメッセージを送った。あの時、就寝したのは、20時だった。そして、深い眠りにつき、悪夢の出来事に遭遇したのだ。深夜〇時に目が覚め、部屋にある家具の上から、ゴソゴソと音が響いてきた。そして、咄嗟に。私はこれは、心霊現象が起こる、ラップ音だと閃き、深い眠りにつき、翌朝、一番にきた、休日出勤の60歳になる倉吉さんに。「この会社は幽霊が出ると、他の会社からゆすられていて、給料が安いと」妙な言葉を語りかけた、ここから、私の思考は、統合失調症の被害妄想の世界に突入していったのだ。
真子からLINEがきた。
「怖いわ私、早く帰ってきて、また、同じ事が起きて、龍太郎さんが。統合失調症の世界に突入したらどうするの、私は、こんな話を、この世界の人に相談したり、話したら、私は。狂人扱いされて、精神病院にぶち込まれるわ」私は、とにかく、大丈夫だとだけ、LINEに打っておいた。そして、布団に入り、目覚まし時計を、〇時に合わせた。
「セニョリータ」目覚まし時計のベルの音を消すと、何か小さな囁き声が聞こえる。「セニョリータ」その声は見覚えがある。夢の中の妖精ミーだ。家具の上がゴトゴトと音を立てる。あの日は、この音に思考が反応して、心霊現象だと悟り、深い眠りについたのだ。
ミー「セニョリータ、真子さんは、大丈夫よ。運動公園で、ふたりが再会した時に、太陽の黒点に異常が発生したの。温暖化より怖い寒冷化 低下続く太陽活動と異常気象。昨夏は国内で40度超の猛暑が続くなどして熱中症での搬送が過去最多を記録。大型台風も相次ぎ、西日本豪雨では多くの命が奪われた。炎暑は海外でも発生し、カナダやインド、ギリシャなどを熱波が襲った。そのギリシャには今年1月、氷点下23度の寒波が押し寄せ、アテネに雪が積もった。世界の平均気温は100年間で0・7度ほど高くなっており、二酸化炭素などの増加が原因と説明されている。その一方で、太陽の活動は、この30年ほど低下中。1800年ごろ以来の異変だ。と言っても、太陽から地球に届く光のエネルギー量は、この間も安定していて変わっていない。変化が確認されているのは太陽表面の黒点数だ。中心部で核融合反応が進む太陽は、磁場の星。その磁力線が太陽表面を貫いている場所が黒点なのだ。だから、黒点数は太陽の活動度の「表示目盛り」となる。多いほど活発だ。平安時代は温暖だったが、そのころ二酸化炭素を排出する産業が活発だったのか。気温が上昇した20世紀は大気中の二酸化炭素濃度が増加した時代だったが、全般的に太陽活動が活発な時期でもあった。今のように太陽磁場が弱まると地球に注ぐ宇宙線が増加し、その作用で雲が増えて気温が下がったり、豪雨を促進したりするという研究報告もある」
ミー「地球では、この様な推測がされてるが、宇宙的には、何か、太陽の黒点は、スピリチュアルが関係してるらしいと研究されてるの私の星では」
そして、ミーが、そのスマホに付いて説明するわ。その電波の周波数や波動は、私の星。アンドロメダから発射されています。ここからは、ミーは、LINEにメッセージを送ります。起きて。身支度をして、今、トイレに貴方の分身が入ったわ。直ぐ、タクシーに乗って、真子さんのいるホテルに向かって。じゃないと、明日の朝、起きたら、貴方は、統合失調症の世界に襲われるわ」
私は、タクシーを拾い真子のいるホテルへと向かった。もう、山手線は動いていない。私はホテルのドアをノックした。真子はまだ起きていた。ドアを開けると、真子は、今までの恐怖を追い去るように、私に抱きついてきた。私は、真子をかかへて、ベッドへと
連れて行く。真子には、今日の出来事を話した。すると。真子が質問してきた。
「妖精ミーって私なの」私はウーとうなづいてから、その質問は当たってるかもしれない。真子は夢を見るかと尋ねると、ノーと答えた。私の推測は外れた。そして、明日は、日曜日だ。会社では、私が統合失調症に襲われた所だ。統合失調症で、行動をしたのは、三日後だ。明日は。映画でも見に行こうと約束した。
翌朝、ふたりは渋谷に向かった。見た映画は、プロ野球を10倍楽しむ方法。ふたりには、今の状況は頭の中には存在しなかった。渋谷の街を手を繋いで歩いた。そして、目黒駅へと、昔、住んでた場所へ案内した。目蒲線に乗り、武蔵小山駅へと向かう。真子に、うどんとそばはどちらが好きかと尋ねると、うどんと答えた。私は、立ち食いうどん屋へ案内する。真子があっと店を前にして立ち止まった。
「龍太郎さんがいる」私もはっきり見た。もうひとりの私だ。そばを食べている。その時、その状況が蘇ってきた。真子に伝えた。
「あのそばには、汁の中に、ハエが浮いていた。私は。思考の中で、神様に試されてると思って、そっと。箸でハエを退けて、食べたんだよ。真子は笑った。そして、「なんで、、今度は、身体が吸い込まれて合体しないのだろうか」私は暫く考えてから答えた。「この、私らが、テレポーテーションしたのには、何か意味があるのかもしれない。半年前に、真子に伝えた、ツインレイと言う言葉を付け加えた。そして、振り向くと。もう、そのもうひとりの私の存在は消えていた。帰った様だ。
時計を見ると、16時を過ぎようとしている。「真子ちゃん、これから、どうする。もしも、現代に戻れなかったら」真子は涙が溢れ出している様だった。そして、再び。渋谷に戻り、よく、飲んだ。ウイスキーホワイトをキープした。居酒屋風な飲み屋に行く。おつまみのじゃがバターが、怖さ、寂しさを、そして、アルコールがかき消した。真子は少し、お酒のせいで赤くなっている。そして、真子は聞いた。統合失調症に襲われて、どんな行動をしたの。私は無言で、明日、その場所へ連れて行くよとだけ言った。私は、もう一度、会社へ戻り、もうひとりの自分と入れ替わろうかと思考をよぎる。でも、もしかしたら、それは、歴史を変えることかもしれない。昔見た。映画。戦国自衛隊。結果は歴史を変える事は出来なかった。真子は、必要以上に、何があったのと聞いてくるが、私は、話をする事はなかった。

最後の夜

最後の夜

「真子ちゃん、もう夜も遅いし、ラブホテルに泊まろうか」真子は、えっと、首を傾げたが、うなづいた。私は、この時代に生きていたが、ラブホテルに泊まるのは初めてだ。渋谷のラブホテル街、道玄坂裏から神泉にかけての円山町界隈が浮かぶだろうが、公園通りの裏方あたりにも散在していた。部屋に入ると、私は、真子に風呂に入ろうと誘った。そしてこう言葉を付け加えた。この先、どうなるかわからない。とにかく、裸になろうの言葉に、同時にふたりは服を脱いで湯船に入る。私は、興奮したが、真子はそれ以上に興奮しているのかもしれない。なかなか、先に出れなくて、30分間。お互い無言で、出ようの言葉に、浴室を出て。バスタオルで吹いた身体に、何も身につけずに、ふたりは、ベッドの布団の中に潜り込んだ。真子の身体は、温もりでポカポカしていた。そして、明かりを、消した。翌朝は、6時に目が覚めたのであった。真子の顔を見ると、笑みをこぼした。料金精算。外に出ると、今日一日。どう行動するか、思考に湧いてくる。歴史を変える事は出来ないはずだ。だとすると、15時間後に、あの出来事に遭遇するはずだ。18年前のこの日。私は会社を休んでいる。アパートの部屋で被害妄想の真っ最中だった。部屋を出たのは、夕方だ。真子は何をやるのとしつこく聞いてくるが、私は、今晩のお楽しみとだけ伝えた。真子は、ぷっと膨れた顔をしている。夕方まではまだ、時間はある。予想通りに、部屋を出るのは、何故か、記憶している。夕方丁度、17時だ。その部屋を出る瞬間に、身体がすり替わればいいが。私は、真子に、あの瞬間を、見てもらおうと思っている。康子と真子。奇妙だ。私は真子とは運命の相手なのだろうか。この時代には。真子はまだ、生まれていない。宇宙にいたのだろうか。私は、真子の前世の記憶を辿っているのか。せっかく、テレポーテーションしたのだ。あの時の自分をもう一度体験して、確かめたい。あの時、空の上から聞こえてきた声。テレポーテーションした現在が今なのか、それとも、現実に存在してた時代が本物なのだろうか。私は、真子と東京タワーに足を進めた。見物して。お昼ご飯を食べる。時計を見ると、15時。私は、真子に、上野駅に行ってくれと頼んだ。真子は、なんでなんで、嫌と言うが、とにかく、20時の山手線に乗ってくれ。そして、品川駅に着いた時に、良く、周りを観察しておいてくれと、頼む。理由は聞かないで、私を信じてくれ。私は、山手線の、上野駅で、真子に、20時までは。まだ。時間はあるが、喫茶店でもハシゴして。暇を潰していてくれ。「龍太郎さんは、何処へ行くの」
「私は。目黒の自分の住んでたアパートに行く」真子は、その言葉に。また、涙を浮かべた。「絶対、ひとりにしないでよ」私は。真子と、小指で約束した。私は、山手線に乗った。真子はいつまでも。手を振っている。私は、もうひとりの自分と身体が入れ替わった瞬間に。統合失調症の症状にも。憑依されると思う。しかし、あの時もそう。思考の意識の中には、ふたりの意識があった。狂った自分と正常の自分。だから、被害妄想の行動も全て覚えている。目蒲線に乗り、武蔵小山駅に降りた。その時。私は。計算間違いの思考に気がついた。あの出来事の後。私は。精神病院にぶち込まれていたのだ。もう遅い。武蔵小山駅に来た。
時計を見ると、16時半。予定時刻まで、あと、30分。私は、徒歩で20分のアパートまで、ゆっくりと歩いた。時計は、17時。アパートの前の、板の扉が開いた。中から出てきたのは、もうひとりの私だ。私は。猛ダッシュで走り。自分と。身体ごと体当たりした。その、瞬間。相手の身体が消えた。意識がテレポーテーションに成功した。思考は。意識がテレポーテーションした事に気がついてない。とにかく、正常な意識を保たなければ。そして、目黒駅に向かった。到着したのは、18時。上野駅に、20時に通過するには、19時30分に、電車に乗る。多少の。ズレがあるかもしれないが。歴史は変えられない筈だ。電車は、上野駅のホームに入る。ホームの前方に、真子の存在に気がついた。その瞬間。私の正常な思考が脱線した。思考が。電車の。ナンバーの数字に、引っ張られる。そして。思考の中に、真子の存在が消えた。電車の後部車両に移動する。思考の中は、被害妄想。そして。誇大妄想に変化する。天皇陛下の子孫と言う妄想も絡んでくる。浜松町に停車した。そして、ドアが閉まる。私の思考が爆発する。
「お前は、不死身だ、電車にぶつかっても、死なない。お前はスーパーマンだ」もう、真子の存在は思考の中に存在しない。品川駅のホームに近づき。ブレーキのかかる音がする。私は。後部車両から、猛ダッシュで、前方車両へと走り抜ける。一両目に、入ると。「あっ」と言う、声が聞こえた。真子の声だ。しかし、もう、真子の存在は思考から削除されている。電車のドアが開くと同時に。ドアを走り抜け、一気に、線路に飛び込んだ。左手の、視界に。電車が見える。その瞬間。私は。ホームに手を伸ばし駆け上がろうとする。後ろから。女性の叫び声が聞こえる。「りゅうちゃん。りゅうちゃん」真子の大きな叫び声。あの時も、聞こえた、その声。あの時は、まだ見ぬ、宇宙にいる。真子の声だと思った。しかしその声の主は、その座席に康子が座っていたのだ。そう、確認した瞬間。ホームに這い上がる。背後を電車の、空気の渦巻く風が、音を立てて、そして、ガーンと。目の前が、真っ暗になり、意識を失った。真子もその瞬間。目の前が、真っ暗になり。意識を失った。意識の空間で「美しい出逢いが待ってるでしょ」と言う言葉がメロディーの様に流れた。

第三章 康子

第三章

康子

目の前のホームに電車が急停車した。康子の視界にホームに駆け上った龍太郎の姿を見ている。周りには鉄道警察官が大声で「そんなに死にたいか」の言葉が飛んでくる。向かいのホームに行くと龍太郎の姿がない。何事もなかった様に人々は電車を待っている。
次の日会社に龍太郎は出勤していない。康子は昨日の出来事は胸にしまっておいた。そこへ総務の慶子が康子を呼び出した。電話があったのは龍太郎の両親からだ。「息子は精神病院に担ぎ込まれました。私らもすぐに東京へまいります」受け取ったのは、慶子だ。慶子は康子に打ち明けた。
「多分自殺は間違いないわ」
康子の脳裏に電車内を走っていく顔の表情は。なにかに憑依されたかの様な顔つき。異常だった。そして。精神病院。けれど。自殺よりも衝動に駆られていた。 康子はめまいがして気分が悪くなり食堂で横になる。「セニョリータ」無意識の空間の中で康子と真子の意識が重なり合う。姿は康子だが意識は真子だ。真子の脳裏には慶子の精神病院が大きく響いた。真子はひとりぼっちだ。龍太郎は精神病院へと聞こえた。自分の耳を疑ったが、私を置いて何故。真子は鏡を見た。自分に似ているが自分じゃない身体なのか、理解不能だ。時計を見ると17時が近づいている。会社が終わり何処へ帰ればいいの。不安はピークになる。康子は龍太郎のいる。精神病院の居場所を聞いた。品川区武蔵小山にある。
武蔵小山。龍太郎さんが住んでた場所。精神病院は目蒲線の駅の近くにあった。18時。外来の裏口から入る。眼鏡をかけた精神科医が対応した。そして、龍太郎のいる。独房室に案内される。真子は昔の精神病院の面影に寒気ひんやりとした殺気を感じる。三畳ほどの鉄格子の壁に龍太郎はいた。こちらを向いたがじっとしてるだけで気がついていない。龍太郎はこの世界の人間みたいだ。真子に気づかない。龍太郎は何処に行ったのだろうか。とにかく龍太郎の住んでるアパートはこの近くである。免許証を頼りに辿り着くと一階に住んでる。大家さんを訪問。出来事は黙っていた。部屋に灯りがついている。ドアをノックすると、扉が開いた。
「真子か」真子は。龍太郎がいた。ふたりは手を握って身体を抱きしめた。でも、この世界に肉体が二つあるのはどう説明するのか。いや真子は自分の身体だと悟った。龍太郎はこう説明した。
「多次元宇宙論。自分の分身が幾つもの次元に存在する。その理由だろう。この部屋の住人は今晩は帰ってこない。それよりこの世界から脱出しないといけない。そして部屋からも翌日には田舎から母親が駆けつけてくるのだ。真子のバッグの中に康子の免許証が入ってる。龍太郎は完全に分身が存在するが、真子は意識をテレポーテーションしてる可能性がある。康子は北区滝野川に住んでるみたいだ。ふたりは康子のアパートへ向かった。そして、東京の精神病院には一ヶ月入院して退院と同時に田舎に帰省している。昔読んだ小説に、精神病院は死の世界である。死の世界から。光の世界。すなわち下界に姿を現した瞬間に分身は吸収されてひとつの世界に収まる。問題は真子だ。真子と康子は肉体を共有している。龍太郎はその瞬間に意識はテレポーテーションするが真子にも同じ現象が起こるのか。とにかく暫く。真子は康子にすり替わって会社に出勤。龍太郎は仕事のノウハウを真子に教えた。龍太郎のいなくなった会社に真子は康子として出勤した。真子は康子が貰った時計をしている。この日真子は辞表を提出した。龍太郎のアパートへ向かうがその部屋にはもう龍太郎は存在しなかった。康子のアパートへ戻ると部屋に灯りがついている。真子は行き場所をなくした。この世界に存在しない人間だ。頼るのは龍太郎しかいない。龍太郎はふたり存在するのだらうか。この世界は地球の歴史に関わっているのかその時声が聞こえてきた。「セニョリータ」
「龍太郎はこの世界にもいない。未来にも存在しない理由がわかったわ。龍太郎は貴女自身なの魂は男性性と女性性が共有した存在。龍太郎のいる。精神病院に行きなさい。きっと貴女を誘導してくれるはずです」気がついたら病院の入り口に立っている。受付に行くと龍太郎はまだ独房室に閉じ込められてるらしい。会社は首になったらしい。
龍太郎は精神病院独房室に閉じ込められた瞬間に思考が正常に戻ったにも関わらずにもう三日間も閉じ込められている。やがて出せと暴れてドアに蹴りを入れるよりも大人しくした方が早く脱出できるのかという発想に転換した。力尽きた龍太郎は部屋の中で物思いにふけっていた。
「俺は未来からやってきた。宇宙人だ出せ」この世界の龍太郎には、未来の龍太郎の記憶が被害妄想となり龍太郎の意識に刻み込まれていた。
真子は精神病院へやって来た。まだ面会謝罪。とりあえず、近くのホテルに寝泊まりすることにする。お金は最終の仕事日が給料日だと言うので現金で頂いていた。しめて15万円。真子は。昔も今も金銭価値があまり変化ないのに驚いた。
お昼は龍太郎さんが行きつけの立ち食いそばやですませる。一週間が過ぎ病院へ向かうと主治医と話すことができた。そして特別に面会をゆるしてくれたのであった。龍太郎の顔を見た途端に泣き崩れながら真子は全てを話した。その場にいる龍太郎はこの世界の住人であること。そして真子の全てを受け入れた。真子は龍太郎のアパートで暮らすことになる。4畳半。小さな台所。共同トイレ。窓を開けると隣のアパートの共同トイレがある。困った事に深夜になるとトイレの明かりで部屋中が明るくなる。このアパートは女性専用のアパートだと龍太郎が言ってた。真子はこの世界で康子の偽装として存在することはできない。住民票もない。龍太郎は真子に康子のアパートを訪ねて事情を説明してくるように命じた。きっとちからになってくれるはずだ。

最後の夜

最後の夜

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-05-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 第一章 妖精
  2. 夢から覚めて
  3. 第二章 テレポーテーション
  4. 悪夢の再現
  5. 最後の夜
  6. 第三章 康子