「裂傷」

 銀の輪
 片腕を縛れるほどな銀の輪には
 名前も無く
 ただ光に繋がる鎖は何
 銀の輪胸に迫りて
 開いた穴には
 水がするする落ちてはとおりすぎる
 いつの記憶かも分らない
 とおい身近な匂いがする
 思い出して微笑むには薫りは淡く
 泪もかなしく懐かしむことしか不能(あたは)
 空虚だけがそなたの名残
 今に花びらと消えさうで
 拳は冷たく濡れるだけ
 一粒の砂も包まれず
 血の色が
 きっと赤でありますように

「裂傷」

「裂傷」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-04-11

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