「縁日」

 金魚の涙…売られゆく
 生温い水にビニールと閉ざされて
 西日の気怠さに当てられて
 薄ぺらくなる神経
 切れないナイフ
 刃の無い鋏
 徒らに消毒を重ねた熱いメス…
  …神経はノオトの切れ端より軽く
 辿り着けない冷えたせせらぎ
 流れの音
 風にそよがれ翡翠(ひすい)(ぎょく)を飲みに来る
 人里を知らぬ湧水の小川…金魚は辿り着けず
 曇り無き哀しい眼
 黒曜石も水に溶け
 金魚は香具師の手に引かれ…
 二度と帰れぬふるさとを捨て
 二度と帰れぬふるさとを捨て
 胡蝶(ちょう)に水の居場所を聞くばかり

「縁日」

「縁日」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-15

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted