「縁日」
金魚の涙…売られゆく
生温い水にビニールと閉ざされて
西日の気怠さに当てられて
薄ぺらくなる神経
切れないナイフ
刃の無い鋏
徒らに消毒を重ねた熱いメス…
…神経はノオトの切れ端より軽く
辿り着けない冷えたせせらぎ
流れの音
風にそよがれ翡翠が玉を飲みに来る
人里を知らぬ湧水の小川…金魚は辿り着けず
曇り無き哀しい眼
黒曜石も水に溶け
金魚は香具師の手に引かれ…
二度と帰れぬふるさとを捨て
二度と帰れぬふるさとを捨て
胡蝶に水の居場所を聞くばかり
「縁日」