「満月」

 水色の玉露(たまつゆ)はこぶ銀の小鳥
 杜若の花の糸は何を結わえるリボンなり
 背中に守るは…むきだしの赤薊(あかあざみ)
 溶いた紅に浸した赤薊
 銀の小鳥は月夜をゆけり
 白い月の使ひ鳥

 心を砕いたすり硝子の片で
 微かに刺した病める白肌
 滴り落ち()まるは紅薊(べにあざみ)
 それは嫁入り前の(あくが)れの色
 染まりし頬は桜なれど
 長い睫毛は()の帳
 悲しき唇は涙呑む
 手紙を託すも許されず
 想いを溶いた水色の玉露一輪を
 そっと小鳥に願いけり

 愛しき(なれ)に届きませ…

 雨露花(あじさい)の紫の頬にうちひしがれて
 逢われぬこの身を震えかき抱く

「満月」

「満月」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2024-03-11

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