「満月」
水色の玉露はこぶ銀の小鳥
杜若の花の糸は何を結わえるリボンなり
背中に守るは…むきだしの赤薊
溶いた紅に浸した赤薊
銀の小鳥は月夜をゆけり
白い月の使ひ鳥
心を砕いたすり硝子の片で
微かに刺した病める白肌
滴り落ち留まるは紅薊
それは嫁入り前の憧れの色
染まりし頬は桜なれど
長い睫毛は夜の帳
悲しき唇は涙呑む
手紙を託すも許されず
想いを溶いた水色の玉露一輪を
そっと小鳥に願いけり
愛しき汝に届きませ…
雨露花の紫の頬にうちひしがれて
逢われぬこの身を震えかき抱く
「満月」